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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1165087
審判番号 不服2006-25389  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-09 
確定日 2007-09-25 
事件の表示 特願2004- 12432「仮名漢字変換装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日出願公開、特開2004-152323〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成6年3月9日に出願した特願平6-38598号の一部を平成16年1月20日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1、2に記載された発明は、平成18年12月8日付け手続補正書によって補正された明細書の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項2に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項2】
仮名漢字変換装置を用い、
入力された文字列の前後に位置する既変換文字列を形態素解析した結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行い、その変換結果を候補リストに記憶させるとともに、該入力された文字列のみによって仮名漢字変換を行い、その変換結果を該候補リストへ記憶させる仮名漢字変換ステップと、
前記候補リストに記憶させた各変換結果に基づき変換候補を出力する変換制御ステップと、を実行し、
前記候補リストに記憶させた変換結果を基に各変換結果を出力する際、前記入力された文字列の前又は後の位置にある既変換文字列を含め形態素解析を行った結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行った変換結果を優先的に出力することを特徴とする仮名漢字変換方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-372047号公報(以下、「引用例」という。)には、
ア 「【請求項1】 仮名書きの文字列を漢字仮名混じり文字列に変換する仮名漢字変換装置において、仮名書きの変換対象の仮名文字列,変換対象の文字列が入力される領域の前に置かれている既に確定された漢字仮名混じり文字列である前置文字列,および変換対象の文字列の後ろの既に確定された漢字仮名混じり文字列である後置文字列を入力してそれらの文字列を必要な装置に分配する入力装置と、仮名漢字辞書から与えられた仮名表記の文字列を読みとするような漢字列を取り出す漢字検索装置と、漢字仮名辞書から与えられた漢字仮名混じり文字列の読みを呼び出された装置に返す読み検索装置と、上記前置文字列を上記読み検索装置を通じてその前置文字列の解析を行なう前置文字列解析装置と、上記前置文字列を解析した結果と仮名入力を上記漢字検索装置を使って解析を行なう入力解析装置と、上記後置文字列と上記入力解析装置からの解析結果を取り込み上記読み検索装置を使って解析を行なう後置文字列解析装置と、上記前置文字列解析装置からの解析結果と上記入力解析装置からの解析結果と上記後置文字列解析装置からの解析結果から出力すべき漢字仮名混じり文字列を決定する出力文字列決定装置とを備えたことを特徴とする仮名漢字変換装置。」(2頁1欄2行?23行)、
イ 「【産業上の利用分野】この発明はワードプロセッサ等に用いられるもので、仮名書きの日本語文字列を漢字仮名混じり文字列に変換する仮名漢字変換装置に関するものである。」(2頁1欄26行?29行)、
ウ 「【発明が解決しようとする課題】従来の仮名漢字変換装置は以上のようにして変換処理を行なうが、文章の編集を行なう場合、単語等の挿入や置換を行なう場合が多く、入力文が単語の一部を成していたり、付属語であった場合には適切な単語等への変換をうまく行なえなかった。例えば“慈善の心で”と言う文を入力した後、“慈善”と言う言葉を“慈悲”と変更したいと思った時、従来では次の二つの方法があった。即ち“善”を消去し“ひ”と書く方法と、“慈善”を消し新たに“じひ”と入力する方法とがある。前者が人間の感覚としてはあっていると思われるが、“ひ”には多くの同音語があり、“悲”を取り出すのに労力を必要とした。また、後者でも前者ほどではないが同音語は存在するため、少々労力を必要とした。また、上記先行技術においては、その変換装置内に記憶された1文節を使うため、このような削除後の変更などにはうまく対応できない。
【0004】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、入力文字が前後の文字列と一体の単語であったり、また特別な接続をする場合においても、容易に変換に対応できるとともに変換の精度を高められる仮名漢字変換装置を提供することを目的とする。」(2頁1欄47行?2欄17行)が記載されている。
エ 「【0008】ここではその実施例として計算機上の仮名漢字変換サーバー装置にこの方法を使った例を上げる。
この装置は他のクライアントから仮名漢字変換に必要な情報を入力されると、それを仮名漢字変換した結果を出力するものである。入力装置101は入力された情報(3つの文字列からなる)を分離してそれぞれの装置に分配する。仮名漢字辞書102は、仮名で表現された読みに対して、それを読みとするような複数の漢字列が登録されている。このエントリは単語だけでなく、漢字単語表現の先頭を含む部分文字列の読みも登録される。そしてそれぞれの漢字列ごとにそれが単語であるかどうかの情報が付属している。またその漢字列が単語である場合、その単語の品詞が付随している。漢字仮名辞書103は漢字列に対して可能性のある読みが登録されている。
またこの辞書103にも、単語の先頭を含む部分文字列がこの辞書103のエントリとして登録されている。仮名漢字辞書102と同じように、エントリが単語かどうかと、単語には品詞情報と生起確率が付属している。文法辞書104には品詞と品詞の間の文節内接続情報が入っていて、ある品詞と別の品詞が接続するかどうかが判断できる。また記憶装置112は前置文字列解析装置107や入力解析装置108や後置文字列解析装置109や出力文字列決定装置110間の情報の受渡しを行なうための装置である。」(3頁3欄37行?4欄10行)が記載されている。
オ 「【0009】この実施例の動作を説明する。まず漢字検索装置105は、与えられた仮名文字列を、仮名漢字辞書102を用いて可能ならば漢字仮名混じりの単語か単語の一部分に変換し、付属情報とともに呼び出した装置に返す。もし辞書102にのっていない文字列であれば、何も返さない。また読み検索装置106は与えられた漢字仮名混じり文字列を、漢字仮名辞書103を用いて可能ならば、仮名の単語か単語の一部分に変換し、付属情報とともに返す。もし辞書103に載っていなかったら何も返さない。
【0010】図2は記憶装置112の内容の状態遷移を示す概念図で、図中の一つの枠(k1,k2等に対応する丸印等)は仮名の1文字を表している。また同図で楕円形が閉じているもの(1)等は、一つの単語となっている文字列であり、閉じていないもの(2),(3)等は単語になっていない文字列である。また、漢字表記もそれぞれの文字列が付属情報として持っており、単語はその文法情報も持っている。ところで、前置文字列解析装置107は入力された前置文字列a1,a2…anを次のように解析する。即ち前置文字列解析装置107は、前置文字列のai…an(i=1,…,n)を読み検索装置106に送り、その結果を成功したもののみ記憶装置112上に図2のように置く。
【0011】次に入力解析装置108の動作を説明する。入力解析装置108はまず前置文字列解析装置107で解析して、記憶装置112上に存在する結果の中で単語になっていないもの(2),(3)について、例えばc21…c24,k1…ki(i=1,…,6),c33…c34,k1…ki(i=1,…,6)の仮名文字列を漢字検索装置105に送り、単語となっているもの(4),(5)を記憶装置112上におく。次に、kj…ki(j=1,i=1,…,6)の文字列を漢字検索装置105で解析して、単語となっているものを同様に記憶装置112に記憶しておく。またk1…k6の文字列については単語になっていないものも記憶装置112に記憶しておく。次にjを2から6に変えて同様な解析および記憶を行なう。
【0012】次に後置文字列解析装置109は入力解析装置108の結果のうち単語になっていないものに対し解析を行なう。単語となっていない文字列の仮名漢字変換結果を取り出し(k’),k’,b1…bi(i=1,…,4)を読み検索装置106に送る。そのなかで単語になっている文字列のみ記憶する。
【0013】最後に出力文字列決定装置110は、以上の結果、記憶装置112に存在する情報を入力として、文法辞書104を使って、内部アルゴリズムにより複数の仮名漢字変換結果を評価し、出力すべき漢字仮名混じり文字列を一つに決定する。この実施例では文節数が最小となる様な単語の選択方法を採用し、最小なものが複数ある場合は前後の文字列の中で使用した文字数の多い解を優先した、(4)の品詞情報と(6)の品詞情報について文法辞書104を検索し、接続するならば一まとまりと考える。また(5)と(7)、(6)と(7)についても調べる。(6),(7)が接続し(7)が他と接続しないのならば、(4),(6),(7)は一つの文節である。また一つで自立語とならないものもある。
同様にして文節と成り得るものを図3に表す。文は互いに重なり合わない文節のみからなっており、その中で入力文字列をすべて文節の中に持つような文節の集合は図4に示すようになり、その中で文節数が最小になるのはa,b,c,dになる。これらの四つのなかで前後の文字列をもっとも多く使っているのはaであるので、この出力文字列決定装置110はaの文節区切りを良い区切りとして、それぞれの単語の漢字仮名混じり表記をその並び順に出力装置111に出力する。」(3頁4欄11行?4頁5欄25行)、
カ 「【0014】このように上記実施例によれば、入力文字列の前後の文字列を解析し、この結果により仮名漢字変換を行なうので、通常の単語レベルの解析では現れない結果や、文節区分を取り出すことができ、したがって出力文字列決定装置の利用できる情報が多くなり、出力文字列の決定精度の向上が図れる。
【0015】例えば、“慈悲”と言う語句が辞書に入っていれば、入力文字列の前の“慈”を上記仮名漢字変換装置が取り込んで解析することにより、“ひ”と言う言葉を、“慈悲”の一部である“悲”であると解析することができる。また同様に文字列が後ろにつく場合も解析できる。このように入力された文字が前後の文字列と一体の単語であったり、また特別な接続をする場合においても、変換の精度を高めることができる。
【0016】なお、上記実施例では、出力文字列決定装置の決定手法に文節数最小法を応用したが、それ以外のヒューリスティック(最長一致法やコスト最小法)でもよいし、また意味情報を使った接続処理を行なってもよい。そのために辞書類の拡張(単語に対する生起コストや文節間の接続情報を載せたところの意味情報の付与)を行なっても良い。
【0017】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、仮名漢字変換用に入力された仮名入力以外にその仮名入力の前後に接続する文字列を取り出して利用し、仮名漢字変換を行なったので、入力情報が少量、特に入力が不完全であった場合にも良い変換を実現できる。即ち、この発明によれば、入力文字が前後の文字列と一体の単語であったり、また特別な接続をする場合においても、容易に変換に対応できるとともに変換の精度が向上するという効果が得られる。」(4頁5欄26行?6欄18行)が記載されている。
これらの記載ア?カ及び図面図1?図4によれば、引用例には、「仮名書きの変換対象の仮名文字列,変換対象の文字列が入力される領域の前に置かれている既に確定された漢字仮名混じり文字列である前置文字列,および変換対象の文字列の後ろの既に確定された漢字仮名混じり文字列である後置文字列を入力してそれらの文字列を必要な装置に分配する入力装置101、仮名で表現された読みに対して、それを読みとするような複数の漢字列が登録されている仮名漢字辞書102、漢字列に対して可能性のある読みが登録され、単語の先頭を含む部分文字列がエントリとして登録され、エントリが単語かどうかと、単語には品詞情報と生起確率が付属している漢字仮名辞書103、品詞と品詞の間の文節内接続情報が入っていて、ある品詞と別の品詞が接続するかどうかが判断できる文法辞書104、与えられた仮名文字列を、仮名漢字辞書102を用いて可能ならば漢字仮名混じりの単語か単語の一部分に変換し、付属情報とともに呼び出した装置に返す漢字検索装置105、与えられた漢字仮名混じり文字列を、漢字仮名辞書103を用いて可能ならば、仮名の単語か単語の一部分に変換し、付属情報とともに返す読み検索装置106、前置文字列解析装置107、入力解析装置108、後置文字列解析装置109、出力文字列決定装置110からなる仮名漢字変換装置を用いるものであって、
前置文字列解析装置107は、前置文字列のai…an(i=1,…,n)を読み検索装置106に送り、その結果を成功したもののみ記憶装置112上におく手順、
入力解析装置108は、前置文字列解析装置107で解析して、記憶装置112上に存在する結果の中で単語になっていないものについて、例えばc21…c24,k1…ki(i=1,…,6),c33…c34,k1…ki(i=1,…,6)の仮名文字列を漢字検索装置105に送り、単語となっているものを記憶装置112上におき、次に、kj…ki(j=1,i=1,…,6)の文字列を漢字検索装置105で解析して、単語となっているものを同様に記憶装置112に記憶しておき、またk1…k6の文字列については単語になっていないものも記憶装置112に記憶しておき、次にjを2から6に変えて同様な解析および記憶を行う手順、
次に後置文字列解析装置109は入力解析装置108の結果のうち単語になっていないものに対し解析を行ない、単語となっていない文字列の仮名漢字変換結果を取り出し(k’),k’,b1…bi(i=1,…,4)を読み検索装置106に送り、そのなかで単語になっている文字列のみ記憶し、
出力文字列決定装置110は、記憶装置112に存在する情報を入力として、文法辞書104を使って、内部アルゴリズムにより複数の仮名漢字変換結果を評価し、出力すべき漢字仮名混じり文字列を一つに決定し、該決定された文字列のそれぞれの単語の漢字仮名混じり表記をその並び順に出力装置111に出力する手順を実行し、
該決定の際、文節数が最小となる様な単語の選択方法を採用し、最小なものが複数ある場合は前後の文字列の中で使用した文字数の多い解を優先し、出力することを特徴とする仮名漢字変換方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「仮名書きの変換対象の仮名文字列」、「変換対象の文字列が入力される領域の前に置かれている既に確定された漢字仮名混じり文字列である前置文字列,および変換対象の文字列の後ろの既に確定された漢字仮名混じり文字列である後置文字列」、「単語となっているもの」、「記憶装置112上におくこと」は、本願発明の「入力された文字列(入力文字列)」、「入力された文字列の前後に位置する既変換文字列」、「変換結果」、「記憶させること」に相当する。
引用発明の「前置文字列解析装置107」、「入力解析装置108」、「後置文字列解析装置109」及び「出力文字列決定装置110」は、仮名漢字変換装置を構成するものであるから、これら各装置を用い各手順を実行することは、仮名漢字変換装置を用い、各ステップを実行することといえる。
引用発明において、「読み検索装置106に送り、その結果」を得ることは「形態素解析した結果を得ること」に他ならず、「仮名文字列を漢字検索装置105に送り、単語」を得ることは「仮名漢字変換を行うこと」に他ならないから、引用発明の「前置文字列解析装置107は、前置文字列のai…an(i=1,…,n)を読み検索装置106に送り、その結果を成功したもののみ記憶装置112上におく手順」及び「入力解析装置108は、前置文字列解析装置107で解析して、記憶装置112上に存在する結果の中で単語になっていないものについて、例えばc21…c24,k1…ki(i=1,…,6),c33…c34,k1…ki(i=1,…,6)の仮名文字列を漢字検索装置105に送り、単語となっているものを記憶装置112上にお(く手順)」は、本館発明の「入力された文字列の前に位置する既変換文字列を形態素解析した結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行い、その変換結果を記憶させる仮名漢字変換ステップ」に相当する。
引用発明の「後置文字列解析装置109は入力解析装置108の結果のうち単語になっていないものに対し解析を行ない、単語となっていない文字列の仮名漢字変換結果を取り出し(k’),k’,b1…bi(i=1,…,4)を読み検索装置106に送り、そのなかで単語になっている文字列のみ記憶(すること)」は、上述した前置文字列解析装置107と同様であるから、「入力された文字列の後に位置する既変換文字列を形態素解析した結果(を基に)」といえる。
また、引用発明において、「kj…ki(j=1,i=1,…,6)の文字列」は、入力された文字列(入力文字列)であるから、入力解析装置108の、「次に、kj…ki(j=1,i=1,…,6)の文字列を漢字検索装置105で解析して、単語となっているものを同様に記憶装置112に記憶しておき、またk1…k6の文字列については単語になっていないものも記憶装置112に記憶しておき、次にjを2から6に変えて同様な解析および記憶を行う手順」は、本願発明の「入力された文字列のみによって仮名漢字変換を行い、その変換結果を記憶させる」に相当する。
引用発明の「出力文字列決定装置110は、記憶装置112に存在する情報を入力として、文法辞書104を使って、内部アルゴリズムにより複数の仮名漢字変換結果を評価し、出力すべき漢字仮名混じり文字列を一つに決定し、該決定された文字列のそれぞれの単語の漢字仮名混じり表記をその並び順に出力装置111に出力する手順」は、記憶させた各変換結果に基づき、出力するものであり、変換を制御しているといえるから、本願発明の「前記記憶させた各変換結果に基づき、出力する変換制御ステップ」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「仮名漢字変換装置を用い、
入力された文字列の前後に位置する既変換文字列を形態素解析した結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行い、その変換結果を記憶させるとともに、該入力された文字列のみによって仮名漢字変換を行い、その変換結果を記憶させる仮名漢字変換ステップと、
前記記憶させた各変換結果に基づき、出力する変換制御ステップと、を実行する仮名漢字変換方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本願発明は、変換結果を候補リストに記憶させているのに対し、引用発明では、そのことが記載されていない点。
相違点2
本願発明は、変換制御ステップが、変換候補を出力するのに対して、引用発明では、出力すべき漢字仮名混じり文字列を一つに決定し、それを出力する点。
相違点3
本願発明は、候補リストに記憶させた変換結果を基に各変換結果を出力する際、前記入力された文字列の前又は後の位置にある既変換文字列を含め形態素解析を行った結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行った変換結果を優先的に出力することを特徴とするのに対して、引用発明では、そのことが記載されていない点。

4.当審の判断
以下、相違点1?3について検討する。
相違点1について
引用発明は複数の変換結果を得て記憶装置112に記憶するものである。そして、引用発明が属する仮名漢字変換の技術分野において、複数の変換結果を候補リストに記憶することは慣用手段である(例えば、特開昭60-49425号公報参照。)。
してみると、引用発明において、「変換結果を候補リストに記憶させている」こととすることは、当業者が容易に想到することができたものといえる。
相違点2について
引用発明は、出力すべき漢字仮名混じり文字列を一つに決定し、それを出力するものである。
また、引用発明が属するの仮名漢字変換の技術分野において、1つの変換結果を出力することに伴う課題を解決するため、複数の変換候補を同時に出力する構成を採用することは、周知な技術事項である(例えば、特開昭63-138450号公報、特開昭60-49425号公報参照。)。
してみると、引用発明においても、1つの変換結果を出力することに伴う課題を有していることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明において、1つの変換結果を出力することに代え、上記周知な技術事項を採用し、「変換制御ステップが、変換候補を出力する」ことは、当業者が容易に想到できたものである。
相違点3について
引用発明は、上述したように、「入力された文字列の前後に位置する既変換文字列を形態素解析した結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行い、その変換結果を記憶させるとともに、該入力された文字列のみによって仮名漢字変換を行い、その変換結果を記憶させる仮名漢字変換ステップ」を実行するものである。
引用例の課題についての記載(記載イ)、効果についての記載(記載カ)は、引用発明は、「入力された文字列のみによって仮名漢字変換を行った変換結果」よりも「入力された文字列の前又は後の位置にある既変換文字列を含め形態素解析を行った結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行った変換結果」を出力することを教示している。
しかしながら、文書作成時、単に文を挿入する場合などでは、「入力された文字列のみによって仮名漢字変換を行った変換結果」も有用となることは明らかであることから、この有用な変換結果を活用することは、当業者にとって、普通に考えられることである。
また、引用発明は、「文節数が最小となる様な単語の選択方法を採用し、最小なものが複数ある場合は前後の文字列の中で使用した文字数の多い解を優先し、出力する」ものであるが、引用例の段落番号0016に「【0016】なお、上記実施例では、出力文字列決定装置の決定手法に文節数最小法を応用したが、それ以外のヒューリスティック(最長一致法やコスト最小法)でもよいし、また意味情報を使った接続処理を行なってもよい。そのために辞書類の拡張(単語に対する生起コストや文節間の接続情報を載せたところの意味情報の付与)を行なっても良い。」とあるように、他の方法でも良いことを示唆している。
してみると、引用発明において、複数の変換結果の中から、「候補リストに記憶させた変換結果を基に各変換結果を出力する際、前記入力された文字列の前又は後の位置にある既変換文字列を含め形態素解析を行った結果を基に該入力文字列の仮名漢字変換を行った変換結果を優先的に出力することは、当業者が容易に想到できたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-13 
結審通知日 2007-07-24 
審決日 2007-08-06 
出願番号 特願2004-12432(P2004-12432)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 手島 聖治
青柳 光代
発明の名称 仮名漢字変換装置及び方法  
代理人 土橋 皓  

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