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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1165154
審判番号 不服2004-2589  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-09 
確定日 2007-10-01 
事件の表示 平成11年特許願第229885号「メダル遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月15日出願公開、特開2000- 42174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本願は、平成5年9月29日に出願した特願平5-241902号の一部を平成11年8月16日に新たな特許出願としたものであって、平成15年12月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成16年3月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という)と認める。

「【請求項1】 メダルを払い出すホッパー装置と、
このホッパー装置から払い出されたメダルを検出してメダル検出信号を出力する払出メダルセンサーと、
遊技機内にクレジットされたメダルを精算するための精算スイッチと、
ゲームの状況に応じて前記ホッパー装置を作動させて所定枚数のメダルを払い出すためのメダル払出信号を出力する遊技制御手段と、
この遊技制御手段からのメダル払出信号にもとづいてホッパー装置を駆動制御するホッパー駆動制御手段とを備えたメダル遊技機において、
上記メダル遊技機は、
払出メダルセンサーからのメダル検出信号にもとづいて、払い出されたメダル枚数をカウントするカウント手段と、
このカウント手段からのメダルカウント信号と上記遊技制御手段からのメダル払出信号とを比較して、カウント手段のカウント値がメダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数を超える場合に、不正検出信号を出力する不正検出手段と、
この不正検出手段からの不正検出信号にもとづいて作動する不正報知手段とを備え、
前記メダル払出信号には、精算スイッチの操作による、クレジットされたメダルの精算に基づくものを含み、
前記遊技制御手段は、メダルカウント信号とメダル払出信号とを比較して、前記カウント値がメダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数よりも少ない場合に、足りない分のメダルを払い出させるために、前記所定枚数に達するまで前記ホッパー装置を再び駆動させるようにし、
不正検出手段は、遊技制御手段からのメダル払出信号の非出力状態において、カウント手段からメダルカウント信号が出力された場合に、不正検出信号を出力するようにした
ことを特徴とするメダル遊技機。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-184709号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「コインホッパー37の下方部分には、コイン払出モータ38が設けられており、このコイン払出モータ38が回転することによりコインホッパー37内のコインがコイン払出口29から1枚宛コイン貯留皿30内に排出される。その排出されるコインが払出コインセンサ39により検出され、所定枚数(たとえば15枚)の払出コインが検出された時点でコイン払出モータ38が停止制御される。なお、クレジットゲームの場合において、クレジット得点として記憶されているコイン枚数がその記憶の上限枚数(たとえば50枚)を越える場合には、その越えるコインがコイン払出モータ38によりコイン貯留皿30内に払出される。・・・」(段落0020)
(b)「制御回路は、制御中枢としての制御部(マイクロコンピュータを含む)45を含む。・・・さらに、CPU46と外部回路との信号の整合性をとるためのI/Oポート49と、・・・を含む。」(段落0024)
(c)「・・・コイン払出モータ38(図2参照)によりコインが払出された場合にはその払出コインが払出しコインセンサ39により検出されて、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。・・・」(段落0027)
(d)「制御部45は次の各種機器に対し制御信号を出力する。・・・モータ回路57を介してコイン払出モータ38にコイン払出用制御信号を出力する。・・・」(段落0028)
(e)「図6および図7はゲームスタート処理を示すフローチャートである。・・・ゲーム切換操作がない場合にはS15に進むが、遊技者がゲーム切替ボタン16を押圧操作した場合にはS10に進み、今現在クレジットゲームモードになっているか否かの判断が行なわれ、なっていない場合にはS11によりクレジットゲームモードとする処理が行なわれる。一方、既にクレジットゲームモードになっている場合にはS12に進み、コインゲームモードにする処理が行なわれ、S13に進み、クレジットカウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれる。このクレジットカウンタとは、クレジットゲーム時において賞品として付与されるコインの枚数や遊技者が投入したコイン枚数を計数して記憶しておくためのものであり、後述するS35,S141により「1」ずつ加算更新されるとともに、後述のS31,S141により「1」ずつ減算更新される。このクレジットカウンタが「0」の場合にはS15に進むが、「1」以上の場合にはS14に進み、コインを1枚払出すとともにクレジットカウンタを「1」減算更新する処理がなされてS13に戻る。このS14の処理をクレジットカウンタが「0」になるまで繰返して行ないクレジットカウンタのカウント値に相当する枚数だけのコインが払出し制御される。つまり、クレジットゲームモードとなっている状態で遊技者が切換え操作してコインゲームモードにした場合には、そのクレジットゲーム時において加算記憶されているクレジットカウンタの値に相当する枚数のコインを遊技者側に払出す必要があるため、このS14により払出し制御を行なうのである。・・・」(段落0031)
(f)「図14は、コイン払出し制御のプログラムを示すフローチャートである。まずS138により、払出数が払出し予定数に達したか否かの判断がなされ、達していない場合にはS139に進み、クレジットゲームモードであるか否かの判断がなされ、クレジットゲームモードでない場合にはS142に進み、コインを1枚払出しそれに応じて払出数を「1」歩進した後S138に戻る。一方、クレジットゲームモードになっている場合にはS140に進み、クレジットカウンタがその上限値である「50」になっているか否かの判断がなされ、なっている場合にはS142に進みコインの払出しを行なうが、なっていない場合すなわちまだクレジットカウンタの記憶に余裕がある場合にはS141に進み、クレジットカウンタを「1」歩進するとともに、それに応じて払出数を「1」歩進した後S138に戻る。このS138ないしS142の処理を払出数=払出し予定数になるまで繰返し実行してそのたびにコインの払出しあるいはクレジットカウンタへの加算処理を行ない、払出数が払出し予定数に達した段階でS143に進む。」(段落0054)

以上の記載事項によれば、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。

「コイン払出モータ38が回転することによりコインホッパー37内のコインがコイン払出口29から排出され、
その排出されるコインが払出コインセンサ39により検出されて、その検出出力が制御回路のI/Oポート49に入力され、
所定枚数の払出コインが検出された時点でコイン払出モータ38が停止制御され、
クレジットゲームモードとなっている状態で遊技者がゲーム切替ボタン16を押圧操作してコインゲームモードにした場合には、クレジットカウンタのカウント値に相当する枚数だけのコインが払出し制御され、
制御部45は、モータ回路57を介してコイン払出モータ38にコイン払出用制御信号を出力し、
コイン払出し制御では、払出数が払出し予定数に達したか否かの判断がなされ、達していない場合には、処理を払出数=払出し予定数になるまでコインの払出しあるいはクレジットカウンタへの加算処理を行なうスロットマシン。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭53-95739号公報(以下、「引用例2」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「この発明はパチンコ遊技機の不正遊技検出方式に関し、特に例えば入賞球数と入賞球に応答して賞品球を払出す賞品球払出装置の作動回数との不一致に基づいて自動的に不正遊技を検出するようなパチンコ遊技機の不正遊技検出方式に関する。」(第2頁左上欄第8?12行)
(イ)「また、前記賞品球払出装置BOは前記入賞球センサS2から入賞球検出出力が与えられる毎に所定数の賞品球を払出す。このとき、賞品球払出装置BOに関連して設けられる作動検知スイッチSWが、賞品球払出装置BOの1回の賞品球払出動作に応答して1個の出力パルスを作動回数カウンタCT3に与える。このため、作動回数カウンタCT3は賞品球払出装置BOの作動回数を累積的に計数してレジスタR4にストアさせる。このレジスタR4にストアされている賞品球払出装置の作動回数が比較回路COの一方入力として与えられる。この比較回路COには、前記レジスタR2にストアされている入賞球総数が他方入力として与えられる。この比較回路COはレジスタR2にストアされている入賞球総数とレジスタR4にストアされている作動回数とを演算比較し、入賞球総数と作動回数が不一致のとき不正遊技検出出力を導出して警報装置ARに与える。」(第3頁左下欄第2?19行)
(ウ)「また、その他の不正遊技として、パチンコ遊技機の前面扉を開け、前記モータ28を不正に駆動させるために該モータ28へ不正に電源を供給した場合であっても、入賞球カウンタCT2は計数値を歩進しないが、作動回数カウンタCT3は賞品球払出装置BOに含まれるモータ28が不正に駆動された作動回数を計数するため、該カウンタCT2とカウンタCT3との計数値が不一致となることによって、比較回路CDは不正遊技検出出力を導出する。」(第4頁左上欄第7?16行)

以上の記載事項によれば、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されているものと認められる。

「レジスタR2にストアされている入賞球総数とレジスタR4にストアされている賞品球払出装置BOの作動回数とを演算比較し、入賞球総数と作動回数が不一致のとき不正遊技検出出力を導出して警報装置ARに与える比較回路COを備えたパチンコ遊技機。」

3 対比
本願発明と引用発明1を比較する。
引用発明1の「コイン払出モータ38」及び「コインホッパー37」は本願発明の「ホッパー装置」に相当し、以下同様に、「コイン」は「メダル」に、「払出コインセンサ39」は「払出メダルセンサー」に、「検出出力」は「メダル検出信号」に、「制御部45」は「遊技制御手段」に、「コイン払出用制御信号」は「メダル払出信号」に、「スロットマシン」は「メダル遊技機」にそれぞれ相当し、さらに以下のことが言える。
(い)引用発明1の「ゲーム切替ボタン16」は、クレジットゲームモードとなっている状態で押圧操作することにより、クレジットカウンタのカウント値に相当する枚数だけのコインを払出すものであり、その作用効果からして、本願発明の「遊技機内にクレジットされたメダルを精算するための精算スイッチ」に実質的に対応する。また、引用発明1の「コイン払出用制御信号」(メダル払出信号)が「ゲーム切替ボタン16」(精算スイッチ)の操作による、「クレジットカウンタのカウント値に相当する枚数だけのコイン」の払出し(クレジットされたメダルの精算に基づくもの)を含むことは自明である。
(ろ)引用発明1の「制御部45」(遊技制御手段)が「モータ回路57を介してコイン払出モータ38にコイン払出用制御信号を出力」する事項は、本願発明の「ホッパー装置を作動させて所定枚数のメダルを払い出すためのメダル払出信号を出力する」事項に対応し、かかる事項が「ゲームの状況に応じて」なされることは自明である。また、「モータ回路57」は、その作用効果からして、「ホッパー駆動制御手段」に相当する。
(は)引用発明1は「所定枚数の払出コインが検出された時点でコイン払出モータ38が停止制御され」ることから、「払出コインセンサ39」(払出メダルセンサー)からの「検出出力」(メダル検出信号)に基づいて、「所定枚数の払出コイン」(払い出されたメダル枚数)をカウントする手段を備えていることは自明であり、本願発明の「払出メダルセンサーからのメダル検出信号にもとづいて、払い出されたメダル枚数をカウントするカウント手段」を実質的に備えている。
(に)引用発明1の「コイン払出し制御では、払出数が払出し予定数に達したか否かの判断がなされ、達していない場合には、処理を払出数=払出し予定数になるまでコインの払出しあるいはクレジットカウンタへの加算処理を行なう」事項について検討すると、
「コイン払出し制御」は「コイン払出用制御信号」を出力する「制御部45」(遊技制御手段)が行うことが明らかであり、
上記(は)で述べたとおり、引用発明1は「払い出されたメダル枚数をカウントするカウント手段」を実質的に備えており、「払出数」とは、このカウント手段から出力された値であって、本願発明における「メダルカウント信号」の「カウント値」に対応し、
「払出し予定数」は、「コイン払出用制御信号」にもとづいて払い出される所定枚数であって、本願発明における「メダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数」に対応し、
「コインの払出し」を行うことは、本願発明において「ホッパー装置」を駆動させることに対応する。
よって、引用発明1の上記事項は、本願発明の「前記遊技制御手段は、メダルカウント信号とメダル払出信号とを比較して、前記カウント値がメダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数よりも少ない場合に、足りない分のメダルを払い出させるために、前記所定枚数に達するまで前記ホッパー装置を再び駆動させるように」する事項に実質的に対応する。

したがって、両者は、
「メダルを払い出すホッパー装置と、
このホッパー装置から払い出されたメダルを検出してメダル検出信号を出力する払出メダルセンサーと、
遊技機内にクレジットされたメダルを精算するための精算スイッチと、
ゲームの状況に応じて前記ホッパー装置を作動させて所定枚数のメダルを払い出すためのメダル払出信号を出力する遊技制御手段と、
この遊技制御手段からのメダル払出信号にもとづいてホッパー装置を駆動制御するホッパー駆動制御手段とを備えたメダル遊技機において、
上記メダル遊技機は、
払出メダルセンサーからのメダル検出信号にもとづいて、払い出されたメダル枚数をカウントするカウント手段と、
前記メダル払出信号には、精算スイッチの操作による、クレジットされたメダルの精算に基づくものを含み、
前記遊技制御手段は、メダルカウント信号とメダル払出信号とを比較して、前記カウント値がメダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数よりも少ない場合に、足りない分のメダルを払い出させるために、前記所定枚数に達するまで前記ホッパー装置を再び駆動させるようにしたメダル遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
カウント手段からのメダルカウント信号と上記遊技制御手段からのメダル払出信号とを比較して、本願発明では、カウント手段のカウント値がメダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数を超える場合に、不正検出信号を出力する不正検出手段と、この不正検出手段からの不正検出信号にもとづいて作動する不正報知手段とを備えており、さらに、不正検出手段は、遊技制御手段からのメダル払出信号の非出力状態において、カウント手段からメダルカウント信号が出力された場合に、不正検出信号を出力するようにしているのに対して、引用発明1では、そのような不正検出手段及び不正報知手段を備えていない点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明2の「レジスタR2にストアされている入賞球総数」及び「レジスタR4にストアされている賞品球払出装置BOの作動回数」は、それぞれ「払い出される回数」及び「払い出した回数」と包括的に表現することができ、また、「不正遊技検出出力」、「警報装置AR」及び「比較回路CO」は、本願発明の「不正検出信号」、「不正報知手段」及び「不正検出手段」にそれぞれ相当する。よって、引用発明2は「払い出される回数と払い出した回数を比較して、払い出される回数と払い出した回数が不一致のときに、不正検出信号を出力する不正検出手段と、この不正検出手段からの不正検出信号にもとづいて作動する不正報知手段を備えたパチンコ遊技機」とすることができる。
引用発明1及び引用発明2は何れも遊技媒体を用いた遊技機の技術分野に属し、また、引用発明2の「払い出される回数」及び「払い出した回数」は、引用発明1の「払出し予定数」(メダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数)及び「払出数」(カウント手段のカウント値)にそれぞれ対応するものであり、さらに、引用発明2における「払い出される回数と払い出した回数が不一致のとき」の具体的態様として、不正防止の観点から「カウント手段のカウント値がメダル払出信号にもとづいて払い出される所定枚数を超える場合」及び「遊技制御手段からのメダル払出信号の非出力状態において、カウント手段からメダルカウント信号が出力された場合」が想定されることは当業者にとって自明であるから(特に後者の場合については、上記2(ウ)で摘示したとおり、引用例2にも示唆されている)、引用発明1に引用発明2を適用して、上記相違点にかかる本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到しえたものである。
そして、本願発明の作用効果も引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できる範囲のものである。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-27 
結審通知日 2007-08-02 
審決日 2007-08-16 
出願番号 特願平11-229885
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 土屋 保光
中槙 利明
発明の名称 メダル遊技機  
代理人 米山 淑幸  
代理人 竹山 宏明  

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