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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1165167
審判番号 不服2005-15982  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-22 
確定日 2007-10-01 
事件の表示 特願2000-145357「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月5日出願公開、特開2000-334126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年12月29日に出願した特願平5-351760号の一部を平成12年5月17日に新たな特許出願としたものであって、平成12年12月28日付けで手続補正がなされ、平成17年1月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成17年4月4日付けで手続補正がなされたが、平成17年7月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年8月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年9月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年9月21日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の記載のとおりのものである。
「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、複数の一般入賞口と、始動口と、打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置と、この変動入賞装置内に配置された継続入賞口と、複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置と、前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる電気的制御装置とを備えた弾球遊技機において、
上記電気的制御装置には、前回の大当り遊技から今回の大当り遊技までの抽選回数を記憶する抽選回数記憶手段と、
前記画像表示装置におけるリーチ状態から前記大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を記憶するリーチ状態記憶手段とを備え、
前記画像表示装置には、
前記抽選回数記憶手段に記憶された抽選回数の表示画面、
前記抽選回数記憶手段に記憶された前記大当たりが発生するまでの抽選回数に関連付けられて予め定められた解説のうち、いずれか一つの解説の表示画面
及び前記リーチ状態記憶手段に記憶された、当該大当たりに係るリーチ状態から前記大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を中間過程を省略して再現させて表示する表示画面を備えた、
ことを特徴とする弾球遊技機。」

なお、請求項1には「変動入装置内」と記載されているが、請求項1には「…変動入賞装置と、この変動入装置内に…」と記載され、さらに、「変動入装置」は、その意味を理解し得る記載ではないことから、「変動入装置内」は「変動入賞装置内」の誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。

3.引用例に記載の発明

(1)引用例1に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成5年12月27日に頒布された特開平5-345068号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

【0003】このような遊技機の表示装置は、図柄や当たり表示等に特徴を持たせているものの、内容的には図柄の変動停止表示、当たり表示のほかに、特別遊技中の遊技状態の表示(入賞数、継続回数、継続状態等)、および異常時の異常表示等に限られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように遊技に関する表示だけでは機能的ではない。遊技機の情報や遊技店からの情報あるいは遊技以外でも遊技者が知りたい情報を表示できれば、便利でもあり、サービス性も向上する。
【0014】図1はパチンコ遊技機1の前面斜視図で、パチンコ遊技機1の前面枠2には、遊技盤3(後述する)の前面を覆うカバーガラス4の上方に賞球の表示ランプ5等が、カバーガラス4の下方にパチンコ球の供給皿6、受け皿7と、供給皿6からのパチンコ球を1個ずつ打ち出す打球発射装置の操作部8が配設される。
【0016】図2のように遊技盤3の表面には、ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17のほぼ中央に各種情報を表示可能な映像表示装置20が、その下方に変動入賞装置21が配設される。
【0017】変動入賞装置21の直上方には始動口22が配設され、始動口22には入賞球を検出する始動スイッチ23が設置される。
【0018】24は映像表示装置20の上方に設けられる天入賞口(一般入賞口)、25a?25dは遊技部17の左右に設けられる袖入賞口(一般入賞口)、26はアウト口を示す。
【0025】変動入賞装置21は、図2のように遊技盤3に取付けられる基板50の中央に長方形の大入賞口51が形成され、大入賞口51に球を受け入れない閉状態(遊技者に不利な状態)と、球を受け入れやすい開状態(遊技者に有利な状態)とに変換可能な開閉扉52が配設される。
【0027】大入賞口51の内部には、図示しないが中央に継続入賞口が、その左右に一般入賞口が設けられ、継続入賞口に入賞球を検出する継続スイッチ54が、一般入賞口に入賞球を検出するカウントスイッチ55が設置される。
【0038】遊技制御装置75は、役物用CPU76、ROM77、RAM78、バッファゲート79、出力ポート80等からなり、ROM77に定めたプログラムデータおよび始動口22の始動スイッチ23、普図始動口60a,60bの普図始動スイッチ61、変動入賞装置21の大入賞口51内の継続スイッチ54、カウントスイッチ55の検出信号に基づいて、映像出力制御装置45に表示制御信号を出力すると共に、記憶表示器39、変動入賞装置21の開閉扉52の駆動ソレノイド53、普通図柄表示器63、記憶表示器64、始動口22の開閉翼57a,57bの駆動ソレノイド58、各ランプ、LEDを制御する。
【0040】映像出力制御装置45は、ROM、RAMを内蔵した表示器用CPU82、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)83、V-RAM84,85、フォントROM86,87、RAM88等からなり、遊技制御装置75からの表示制御信号および設定器91、不正検出器92、球貸機10、排出制御装置72、外部操作スイッチ93、管理装置90からの表示要求信号に基づいて、映像表示器44の映像を制御する。
【0041】V-RAM84は遊技用、V-RAM85は割込み用で、フォントROM86に遊技映像表示データ(複数の図柄キャラクタ)、ディスプレイ表示データ、遊技情報表示データ等の遊技用表示データを、フォントROM87に遊技情報表示データ、球貸し用表示データ、営業情報用表示データ、その他各種表示データ等の割込み用表示データを格納している。
【0042】設定器91は、図8のようにパチンコ遊技機1の裏面部等に配設され、その設定ボタンによってセットされた数値に基づく遊技の図柄キャラクタ、特別の図柄(次の大当たりの発生確率が高くなる)、図柄変動時の更新速度、ラッキーナンバ(連続開放ナンバ)等の表示要求信号(設定信号)を送る。
【0050】RAM88には、天気予報、交通情報等の情報の表示データ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数も記憶する。
【0055】次に、遊技制御の内容を図11?図38のフローチャートに、映像出力制御の内容を図39?図54のフローチャートに基づいて説明する。フローチャート中、映像表示装置20を特図、普通図柄表示器63を普図と呼ぶ。
【0057】SW読込みは、図13のように特図スイッチ(始動口22の始動スイッチ)23がオンすれば、これを最大4つまで記憶し、特図用の乱数を読込む(2.01?2.05)。
【0059】特図ゲーム処理は、図14のように処理Noにしたがって各処理に入る(3.01?3.14)。
【0060】特図始動記憶がないときは、図15の通常動作にて、呼び込み転送データをセットし、特図始動記憶があれば、特図の図柄変動に入る(3.101?3.105)。
【0062】停止図柄決定は、図17のように始動記憶時に読込んだ乱数を、大当たり確率の変動中かどうかによって選定される大当たり値(特別の図柄の大当たり発生によって増加する)と比較し、乱数が大当たり値と一致すれば、大当たりとして当たり停止図柄を読込み、乱数が大当たり値と異なれば、外れ停止図柄を読込む(3.201?3.206)。
【0063】次に、その停止図柄転送データをセットし、左、中の図柄が一致のときのみリーチ転送データ、駒送り数転送データをセットする(3.207?3.211)。遊技の図柄は左、中、右の3つの図柄からなる。
【0070】大当たり動作(特別遊技)に入ると、図24のように変動入賞装置21の開閉扉52を開き、継続スイッチ54がオンする前は、継続入賞前転送データをセットし、継続スイッチ54がオンすると、継続入賞後転送データをセットし、継続入賞音を出力し、同時に継続回数転送データならびに継続スイッチ54、カウントスイッチ55のオン毎にカウント数転送データをセットし、大当たり動作音を出力する(3.551?3.558)。
【0071】変動入賞装置21の開閉扉52を開いてから、カウント数が所定数(10個)もしくは処理タイマがタイムアップすると、開閉扉52を閉じ、1回の特別遊技を終了する。
【0072】この際、継続スイッチ54のオンによって継続が可であれば、図25のインターバル動作の終了後、再び大当たり動作に入り、同じく特別遊技を繰り返し、継続が不可もしくは規定回数の特別遊技が終了すると、図26の大当たり終了動作に入る(3.560?3.564)。
【0093】特図始動記憶による図柄変動処理は、フォントROM86,87から左、中、右の変動図柄データを選択し、図43のように画像変更タイミング毎に画像変更(スクロール)を指令し、この後リーチ信号がないときは図柄変動処理(通常停止)に、あるときは図柄変動処理(リーチ)に入る(14.01?14.07)。
【0094】図柄変動処理(通常停止)では、図44のようにそれぞれ停止時間が来る毎に、左、中、右の図柄の順に停止を指令する(15.01?15.12)。
【0096】左、中、右の図柄が一致し、大当たりのときは、図46のファンファーレ処理にて、フォントROM86,87からファンファーレ表示データを選択し、画像更新タイミング毎に画像更新を指令する(17.01,17.02)。
【0098】大当たりの発生にて特別遊技に入ると、継続スイッチ54がオンする前は、図48の大当たり前半処理に入り、フォントROM86,87からカウント数表示、継続回数表示、大当たり出目(大当たり図柄)表示を指令し、このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令する(19.01?19.05)。
【0132】このように、映像表示装置20の映像が制御され、映像表示装置20には遊技条件にしたがい呼び込み動作、図柄変動、図柄停止、大当たりディスプレイ、入賞カウント、継続ディスプレイ等の遊技画像が表示されると共に、不正検出器92、球貸機10、排出制御装置72、外部操作スイッチ93、管理装置90からの外部の割込み要求、遊技制御装置75からの要求に基づく各種情報が表示される。
【0133】即ち、遊技表示のほかに、映像表示装置20に、遊技の説明、打止め、獲得球の交換指示、球貸し動作状態、球排出動作状態、遊技店情報(遊技店の定休日、閉店時間、開店時間、次の遊技機開放時間)、食事中、コマーシャル、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報、ラッキーナンバ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数、不正情報、火災、地震情報等が表示される。

前記摘示の記載及び図面によれば、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17には、天入賞口(一般入賞口)24及び袖入賞口(一般入賞口)25a?25dと、始動口22と、球を受け入れない閉状態と受け入れやすい開状態とに変換可能な変動入賞装置21と、
この変動入賞装置21に形成された大入賞口51の内部に設けられた継続入賞口と、
左、中、右の図柄が一致すると大当たりとなる特図ゲームを行わせる映像表示装置20と、
前記始動口22の始動スイッチ23がオンすれば、これを記憶し、特図始動記憶があれば、特図の図柄変動に入り、フォントROM86,87から左、中、右の変動図柄データを選択し、画像変更タイミング毎に画像変更(スクロール)を指令し、それぞれ停止時間が来る毎に、左、中、右の図柄の順に停止を指令し、左、中、右の図柄が一致し、大当たりのときは、変動入賞装置21の開閉扉52を開き、カウント数が所定数もしくは処理タイマがタイムアップすると、開閉扉52を閉じ、1回の特別遊技を終了し、継続スイッチ54のオンによって継続が可であれば、再び大当たり動作に入り、同じく特別遊技を繰り返し、継続が不可もしくは規定回数の特別遊技を終了させる映像出力制御装置45と遊技制御装置75とを備えたパチンコ遊技機において、
前記映像出力制御装置45のRAM88には、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数を記憶し、
始動記憶時に読込んだ乱数が大当たり値と一致すれば、大当たりとして当たり停止図柄を読込み、その停止図柄転送データをセットし、
映像表示装置20に、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数が数値により表示し、
大当たりの発生にて特別遊技に入ると、フォントROM86,87からカウント数表示、継続回数表示、大当たり出目(大当たり図柄)表示を指令し、このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令するパチンコ遊技機。」

(2)引用例2に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成2年4月10日に頒布された特開平2-98383号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「特定の条件が満たされたときに1回の作動を行う補助遊技器を備え、この補助遊技器によって当りが得られたときには特典を与えるようにした弾球遊技機において、
前記補助遊技器の作動回数を計数する計数手段と、この計数手段の計数値を表示する表示手段と、前記補助遊技器で当りが得られたか否かを判定する判定手段とを備え、判定手段により当りが検出されたときには前記計数手段を初期値にリセットするようにしたことを特徴とする弾球遊技機。」(特許請求の範囲)

「この計数値の表示により、遊技者は関心事である当りの確率を類推することができ、遊技台を選択するときの判断材料が得られる興趣を織り込んだ弾球遊技機を提供することができる。」(第4ページ右上欄第13-16行)

前記摘示の記載及び図面によれば、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「特定の条件が満たされたときに1回の作動を行う補助遊技器を備え、この補助遊技器によって当りが得られたときには特典を与えるようにした弾球遊技機において、
前記補助遊技器の作動回数を計数する計数手段と、この計数手段の計数値を表示する表示手段と、前記補助遊技器で当りが得られたか否かを判定する判定手段とを備え、判定手段により当りが検出されたときには前記計数手段を初期値にリセットするようにしたことを特徴とする弾球遊技機。」

4.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17には、」は本願発明の「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、」に対応し、以下同様に、「天入賞口(一般入賞口)24及び袖入賞口(一般入賞口)25a?25d」は「複数の一般入賞口」に、「始動口22」は「始動口」に、「球を受け入れない閉状態と受け入れやすい開状態とに変換可能な変動入賞装置21」は「打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置」に、「この変動入賞装置21に形成された大入賞口51の内部に設けられた継続入賞口」は「この変動入賞装置内に配置された継続入賞口」に、「左、中、右の図柄が一致すると大当たりとなる特図ゲームを行わせる映像表示装置20」は「複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置」に、「パチンコ遊技機」は「弾球遊技機」に各々対応し、引用発明1について次のことがいえる。

a.引用発明1の「前記始動口22の始動スイッチ23がオンすれば、これを記憶し、特図始動記憶があれば、特図の図柄変動に入り、フォントROM86,87から左、中、右の変動図柄データを選択し、画像変更タイミング毎に画像変更(スクロール)を指令し、それぞれ停止時間が来る毎に、左、中、右の図柄の順に停止を指令し、左、中、右の図柄が一致し、大当たりのときは、変動入賞装置21の開閉扉52を開き、カウント数が所定数もしくは処理タイマがタイムアップすると、開閉扉52を閉じ、1回の特別遊技を終了し、継続スイッチ54のオンによって継続が可であれば、再び大当たり動作に入り、同じく特別遊技を繰り返し、継続が不可もしくは規定回数の特別遊技を終了させる」構成は、表現上の差異があるだけで、実質的には、本願発明の「前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる」構成に対応するものであり、そのように制御する引用発明1の「映像出力制御装置45と遊技制御装置75」は本願発明の「電気的制御装置」ということができる。

b.引用発明1の「映像出力制御装置45のRAM88には、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数を記憶」する構成(以下、「構成b」という。)と、本願発明の「電気的制御装置には、前回の大当り遊技から今回の大当り遊技までの抽選回数を記憶する抽選回数記憶手段」は、引用発明1の「大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数」が「遊技上の抽選に関連する回数」といえるから、両者は「電気的制御装置に、遊技上の抽選に関連する回数を記憶する回数記憶手段を備える」点において共通するものである。

c.引用発明1の「始動記憶時に読込んだ乱数が大当たり値と一致すれば、大当たりとして当たり停止図柄を読込み、その停止図柄転送データをセット」する構成(以下、「構成c」という。)と、本願発明の「画像表示装置におけるリーチ状態から前記大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を記憶するリーチ状態記憶手段」は、引用発明1の「当たり停止図柄」が、大当たりの発生状態を示すものといえるから、両者は「画像表示装置における大当たりの発生状態を記憶する記憶手段を備える」点において共通するものである。

d.これらの引用発明1における構成b及びcが、「映像出力制御装置45と遊技制御装置75」に備えられていることは明らかなことである。

e.引用発明1の「大当たりの発生にて特別遊技に入ると、…大当たり出目(大当たり図柄)表示を指令」する構成、及び、「大当たりの発生にて特別遊技に入ると、…このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令」する構成と、本願発明の「リーチ状態記憶手段に記憶された、当該大当たりに係るリーチ状態から前記大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を中間過程を省略して再現させて表示する表示画面」は、引用発明1の「大当たり出目(大当たり図柄)」、及び、「特別の図柄(次の大当たりの発生確率が高くなる)」(段落0042)との記載から、確率変動図柄を意味することは明らかである「特別図柄」が、大当りの発生状態を示し、「指令」することにより、その後に表示されることは明らかであるから、両者は「大当たりの発生状態の表示画面を備える」点において共通するものである。

f.引用発明1の「映像表示装置20に、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数が数値により表示される」構成と、本願発明の「抽選回数記憶手段に記憶された抽選回数の表示画面」は、上記b.と同様に、「遊技上の抽選に関連する回数の表示画面を備える」点において共通するものである。

g.上記e及びfで述べた引用発明1における表示が、「映像表示装置20」に表示されることは明らかなことである。

そうすると両者は、「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、複数の一般入賞口と、始動口と、打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置と、
この変動入賞装置内に配置された継続入賞口と、
複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置と、
前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる電気的制御装置とを備えた弾球遊技機において、
上記電気的制御装置には、遊技上の抽選に関連する回数を記憶する回数記憶手段と、
画像表示装置における大当たりの発生状態を記憶する記憶手段とを備え、
前記画像表示装置には、
遊技上の抽選に関連する回数の表示画面、
及び大当たりの発生状態の表示画面を備えた弾球遊技機。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点1;遊技上の抽選に関連する回数について、本願発明は、「前回の大当り遊技から今回の大当り遊技までの抽選回数を記憶する」と共に、「抽選回数記憶手段に記憶された抽選回数」及び「抽選回数記憶手段に記憶された大当たりが発生するまでの抽選回数に関連付けられて予め定められた解説のうち、いずれか一つの解説」を画像表示装置に備えられた表示画面とするのに対して、引用発明1は、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数を記憶すると共に、それらの回数を画像表示装置に備えられた表示画面とする点。

相違点2;大当たりの発生状態について、本願発明は、「画像表示装置におけるリーチ状態から前記大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を記憶する」と共に、「リーチ状態記憶手段に記憶された、当該大当たりに係るリーチ状態から前記大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を中間過程を省略して再現させて表示する表示画面」を画像表示装置に備えるのに対して、引用発明1は、当たり停止図柄を記憶すると共に、大当たり出目(大当たり図柄)の表示し、特別図柄の場合には、特別画像合成して表示する点。

5.判断
相違点1について
引用例1には、「このような遊技機の表示装置は、図柄や当たり表示等に特徴を持たせているものの、内容的には図柄の変動停止表示、当たり表示のほかに、特別遊技中の遊技状態の表示(入賞数、継続回数、継続状態等)、および異常時の異常表示等に限られている。しかしながら、このように遊技に関する表示だけでは機能的ではない。遊技機の情報や遊技店からの情報あるいは遊技以外でも遊技者が知りたい情報を表示できれば、便利でもあり、サービス性も向上する。」(段落0003-0004)と記載されており、この記載によれば、引用例1は、遊技者が求める情報を表示することで、便利でサービス性を向上させることを目的としたものと認められるから、引用発明1に特定される「大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数」以外にも、遊技者が求める情報を表示しようとすることは、当業者が当然の如く成し得ることである。
ところで、弾球遊技機である引用発明2は、「補助遊技器の作動回数を計数する計数手段と、この計数手段の計数値を表示する表示手段と、前記補助遊技器で当りが得られたか否かを判定する判定手段とを備え、判定手段により当りが検出されたときには前記計数手段を初期値にリセットする」ものであるところ、「補助遊技器の作動回数」及び「表示手段」は、本願発明における「抽選回数」及び「画像表示装置」ということができ、引用発明2の「判定手段により当りが検出されたときには前記計数手段を初期値にリセットする」構成は、「抽選回数」が、前回の当りから今回の当りまでを計数したものであることを示すものであるから、引用発明2は、前回の大当り遊技から今回の大当り遊技までの抽選回数を記憶すると共に、画像表示装置に、抽選回数記憶手段に記憶された抽選回数の表示画面を備える弾球遊技機ということができる。
そうすると、引用発明1に、同一の技術分野に属する引用発明2を適用し、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数以外にも、「遊技者は関心事である当りの確率を類推することができ、遊技台を選択するときの判断材料が得られる」(引用例2の第4ページ右上欄第13-16行)という、遊技者が求める情報といえる「抽選回数」を記憶して表示することは、当業者が容易に想到できることである。
さらに、弾球遊技機の状態に関連付けられて予め定められた解説のうち、いずれか一つの解説を表示することは、例えば、特開平2-124192号公報の「ゾッコウ」及び「シュウリョウ」の表示、特開平2-174879号公報の「2回目ヒラキマス」及び「3回目ヒラキマス」の表示等の記載に見られるように、弾球遊技機の技術分野における周知技術(以下、「周知技術A」という。)であるから、引用発明1に引用発明2を適用するに際して、周知技術Aを参酌して、「抽選回数記憶手段に記憶された大当たりが発生するまでの抽選回数に関連付けられて予め定められた解説のうち、いずれか一つの解説」を画像表示装置に備えられた表示画面とすることは、当業者が適用に際して適宜設計的に成し得る程度のことである。

相違点2について
引用発明1は、「大当たりの発生状態の表示画面を備える」ものであり、大当たりの発生状態の表示画面についても、遊技者が求める情報を表示しようとすることは、上記「相違点1について」に示した引用発明1の目的から、当業者が当然成し得る設計的な事項である。
ところで、画像表示装置を備えた遊技機の技術分野において、遊技中に発生した特に関心が持たれる遊技について、その遊技場面の起点から結果までの進行過程を記憶しておき、該進行過程を適宜に画像表示装置に再現させて表示するようにすることは、例えば、「マイコン BASIC Magazin」第9巻第4号第237ページの「本塁打のリプレイ・シーン」、「’93 遊戯機総合年鑑」第192ページの「ゴールするとリプレイされるVTR機能」、「’93 遊戯機総合年鑑」第195ページの「ゴールすると、そのプレイをスローで再現」等に記載されるように周知技術(以下、「周知技術B」という。)である。なお、上記周知例において、進行過程を記憶しておくことは、その機能上必然的である。
さらに、弾球遊技機において、大当たりの発生状態、中でも、リーチ状態から大当りの発生までの画像表示装置における状態は、種々の趣向を凝らしたリーチアクションと称されるものが遊技者に提供されているように、遊技者にとって関心が持たれる場面、即ち、遊技者が求める情報であることは、当業者にとって常識的なことである。
そうすると、画像表示装置を備えた遊技機として共通の技術分野における周知技術Bを参酌し、引用発明1においても、リーチ状態から大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を記憶して表示することは、当業者が容易に想到できることである。
さらに、再現して表示するに際して、記憶される全ての情報を表示することなく、中間過程を省略して再現させて表示することは、例えば、特開平3-80782号公報等に記載されるように、一般的な周知技術(以下、「周知技術C」という。)であり、また、例えば、スポーツTV番組において、編集した、即ち、中間過程を省略したハイライトシーンが放映されたり、映画等において、複数の関連したシーンからなる、即ち、中間過程を省略した回想シーンが上映されたりする等、日常的に目にする一般常識でもあるから、引用発明1において、「リーチ状態から大当り遊技に移行するための大当たりが発生するまでの状態を記憶して表示する」に際して、周知技術Cや日常的に目にする一般常識を参酌して、「中間過程を省略して再現」することは、当業者が適用に際して適宜設計的に成し得る程度のことである。

作用効果について
本願発明の「前回の大当り遊技から今回の大当り遊技までの抽選回数を遊技者にわかり易く表示できる」、「遊技者は、当該弾球遊技機における大当り発生状況を的確に把握し、当該遊技機における遊技を継続するか否かを判断することができる」及び「遊技者は、当該弾球遊技機における大当り発生状況を的確に把握し、当該遊技機における遊技を継続するか否かを判断することができる」との作用効果も、引用発明1、2及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-30 
結審通知日 2007-08-02 
審決日 2007-08-14 
出願番号 特願2000-145357(P2000-145357)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎納口 慶太  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 土屋 保光
小林 俊久
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 米山 淑幸  
代理人 竹山 宏明  

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