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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R |
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管理番号 | 1165213 |
審判番号 | 不服2005-1870 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-03 |
確定日 | 2007-10-05 |
事件の表示 | 平成10年特許願第242256号「床下収納装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 7日出願公開、特開2000- 71890号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年8月27日の出願であって、平成16年12月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成17年2月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月18日に手続補正がなされたものである。 2.平成17年2月18日付け手続補正書の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年2月18日付け手続補正書の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成17年2月18日の手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 フロアパネル(5)に配設されて床面(2)の高さを調節し、且つ床面(2)に開口する凹部(7)が設けられた嵩上げ部材(6)と、 前記凹部(7)に着脱可能に装着される収納ボックス(10)と、 前記凹部(7)の開口形状と略同一の周縁形状を有することで前記収納ボックス(10)を覆蓋すると共に床面(2)に敷設されるカーペット(8)と同一のカーペット(8)が上面に敷設されることによって覆蓋した際に床面(2)を形成する蓋体(12)とを備えたことを特徴とする床下収納装置。」 と補正された。 前記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「蓋体(12)」の形状及び構造を限定するものであって、平成18年改正前特許法(以下「旧法」という。)第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(旧法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-329052号公報(以下「第1引用例」という。)には、図1?8と共に、次の(イ)、(ロ)の事項が記載されている。 (イ)「【0009】 【実施例】以下本発明の一実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。図1および図2は、自動車の下部車体構造を示したもので、フロアパネル1は両側にサイドシル2が設けられており、中央部の前後方向にフロアトンネル3が設けられている。フロアパネル1の前方には、クロスメンバ4に補強されたダッシュパネル5が設けられ、かつ、途中には補強用のクロスメンバ6が溶接されている。 【0010】7は上記サイドシル2、フロアトンネル3、ダッシュパネル5、クロスメンバ6で囲まれたフロアパネル1上面を底上げした底上げ板であり、この底上げ板7は図に示すように、中央部に収納用凹部8が形成されている。この底上げ板7は収納用凹部8の底面をフロアパネル1上面に当接させて配設されており、収納用凹部8の開口面を塞ぐ蓋9が底上げ板7の上面に載置されている。 【0011】上記底上げ板7は図3および図4に示すように、前後にネジ孔10が形成されており、このネジ孔10にネジ11を介してダッシュパネル5およびクロスメンバ6にネジ止めされている。一方、底上げ板7に載置される蓋9は図5および図6に示すように収納用凹部8を塞ぐように所定の大きさに形成されている。上記底上げ板7および蓋9の上面にはカーペット12が敷かれてフロアパネル1上面を一定高さ底上げしている。 【0012】上記構成によると、フロアパネル1上面に底上げ板7を固定し、底上げ板7の上に蓋9を載置する。底上げ板7および蓋9の上にはカーペット12を敷いてフロアパネル1を覆う。こうして、フロアパネル1を一定高さ底上げすることができる。上記底上げ板7の収納用凹部8は収納用ボックス13として用いることができる。」 (ロ)「【0013】 【発明の効果】以上述べたように、本発明による自動車の下部車体構造によれば次のような効果を奏することができる。請求項1において、板面に収納用凹部を形成した底上げ板を、上記収納用凹部の底面の少なくとも一部がフロアパネル上に当接するようにしてフロアパネル上に配設し、この収納用凹部の上部に蓋を配設してフロア面を所定高さ、底上げするようにしたので、ブラケットを廃止して部品点数の削減を図り、異なる機種間でのフロアの共通化を図ることができる。底上げ部分を収納ボックスとして利用することができるので、デッドスペースの有効利用を図ることができる。また、フロアがフロアパネル、底上げ板、蓋とで3重構造となり、防音効果が向上する。請求項2において、底上げ板をダッシュパネルとクロスメンバに固定したので、底上げ板を確実に固定することができる。」 前記記載事項(イ)の「7は上記サイドシル2、フロアトンネル3、ダッシュパネル5、クロスメンバ6で囲まれたフロアパネル1上面を底上げした底上げ板であり、この底上げ板7は図に示すように、中央部に収納用凹部8が形成されている。」、「上記底上げ板7および蓋9の上面にはカーペット12が敷かれてフロアパネル1上面を一定高さ底上げしている」との記載や図面から、「底上げ板7」は、「床面」の「高さを調節」するものであって、底上げ板7の中央部に収納用凹部8が形成されていることから、底上げ板7には、「床面に開口する」収納用凹部8が設けられている。 また、前記記載事項(イ)の「底上げ板7に載置される蓋9は図5および図6に示すように収納用凹部8を塞ぐように所定の大きさに形成されている。」との記載、及び図面から、蓋9は、収納用凹部8の開口形状と「略同一の周縁形状を有する」ものであり、収納用ボックス13を「覆蓋」するものである。 そして、収納用凹部8や蓋9などによって、「床下収納装置」を構成していることは明らかである。 そうすると、前記記載事項(イ)、(ロ)及び図1?8の記載を総合すれば、第1引用例には、 「フロアパネル1に配設されて床面の高さを調節し、且つ床面に開口する収納用凹部8が設けられた底上げ板7と、 前記収納用凹部8は収納用ボックス13として用いられ、 前記収納用凹部8の開口形状と略同一の周縁形状を有することで収納用ボックス13を覆蓋すると共に床面に敷かれるカーペット12が上面に敷かれ、覆蓋した際に床面を形成する蓋9とを備えた床下収納装置。」 の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認める。 また、同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-193715号公報(以下「第2引用例」という。)には、図1?8と共に、次の(ハ)、(ニ)の事項が記載されている。 (ハ)「【0008】図1?図6は本発明に係る荷室構造の実施の形態を示している。図において、1は本実施の形態の荷室構造が適用された四輪自動車であって、当該自動車1の車体後部2には荷物を載せて収納する荷室3が設けられている。この荷室3の下部には、フロアパネル4を深くしぼって下方へ凹ませることにより形成したスペアタイヤ取付用凹部のスペアタイヤハウス5が配設されており、該スペアタイヤハウス5内にはスペアタイヤ6が収納配置されるようになっている。なお、スペアタイヤハウス5内のスペアタイヤ6は、締付ネジなどから成るスペアタイヤホルダ7によってブラケット8に固定されている。 【0009】また、上記スペアタイヤハウス5の上部には、図1?図3に示すように、スペアタイヤカバー9が配設されており、スペアタイヤカバー9によってスペアタイヤハウス5の開口部5aが覆われるように構成されている。しかも、このスペアタイヤハウス5の開口部5a周縁には、図3に示すように、段部10を有するフロア構成部材11が設けられており、該フロア構成部材11によってフロアパネル4の上面が嵩上げされた構造となっている。なお、フロア構成部材11の段部10は、スペアタイヤカバー9および後述のトレイを載置した状態で、これらスペアタイヤカバー9の上面とフロア構成部材11の上面とがほぼ面一となる高さ位置に形成されている。 【0010】一方、上記スペアタイヤカバー9の下方位置には、複数個に仕切られた凹部12aを有する樹脂製のトレイ12が配設されており、このトレイ12の周縁部はこれをフロア構成部材11の段部10に載置し、スペアタイヤカバー9にて押さえ付けることにより固定されるように構成されている。また、トレイ12の中央部には、図3?図6に示すように、ほぼ四角形の収納孔13が穿設されており、この収納孔13には物入れとして用いる有底筒状体のバケツ型ボックス(収納容器)14が上方から単体で取り出し可能に配置されている。 【0011】このため、収納孔13の周縁部には、上方へ突出する位置決め用のボス15が設けられており、該ボス15にバケツ型ボックス14のフランジ部14aを嵌め込んで引っ掛けることにより、バケツ型ボックス14が位置決めされた状態でトレイ12に取付けられるように構成されている。 【0012】また、上記バケツ型ボックス14は、通常はトレイ12の一部を構成し、収納容器として用いる場合に取り出せるものであり、容量を大きくすべくスペアタイヤ6のホイール16内まで達する底の深い有底筒状に形成されている。したがって、バケツ型ボックス14の下部側は、スペアタイヤ6のホイール16内に収納配置されるようになっている。なお、バケツ型ボックス14には、取り出しに便利なようにハンドル17が設けられている。また、図3において、実線で示すスペアタイヤ6はノーマルタイヤを表し、鎖線で示すスペアタイヤ6はテンパタイヤを表している。 【0013】本実施の形態における荷室構造において、スペアタイヤハウス5内のスペースSに小荷物を入れる場合には、まず、図2で示すように、スペアタイヤカバー9の後部側を回動させて持ち上げ、トレイ12を露出させる。そして、トレイ12の凹部12aやバケツ型ボックス14内に小荷物を入れ、しかる後、スペアタイヤカバー9を降ろし、その周縁部をフロア構成部材11の段部10に載せることにより荷室3内の下部を平坦面にして元の状態に戻す。また、バケツ型ボックス14内に収納した小荷物を取り出す場合には、上記した手順でトレイ12を露出させる。そして、ハンドル17を把持してトレイ12からバケツ型ボックス14を持ち上げ、ボックス中の小荷物を取り出す。その後、図6に示すように、バケツ型ボックス14をトレイ12の収納孔13内に入れ、スペアタイヤカバー9を降ろし、上記した手順で荷室3内の下部を平坦面にして元の状態に復帰させる(図3参照)。 【0014】本実施の形態の荷室構造では、従来のようにトレイ12をスペアタイヤ6の上部に載せず、トレイ12およびスペアタイヤカバー9の周縁部をフロア構成部材11の段部10に載置して固定しているため、スペアタイヤ6の種類(ノーマルタイヤとテンパタイヤ)による影響を受けることがなく、当該トレイ12をスペアタイヤハウス5内に確実に収納できる。また、本実施の形態の荷室構造においては、トレイ12を外すことなく、バケツ型ボックス14を単体で取り出すことが可能であるため、小荷物の出し入れが便利となり、利便性が非常に高い。しかも、バケツ型ボックス14は、スペアタイヤ6のホイール16内まで達する底の深い形状に形成され、かつ下部側はスペアタイヤ6のホイール16内に収納配置されているため、大きな(又は多くの)小荷物を入れることができ、スペアタイヤ6のホイール16によるデッドスペースを有効に利用できる。」 (ニ)「【0016】 【発明の効果】上述の如く、本発明に係る荷室構造は、フロアパネルを凹ませることによって荷室の下部にスペアタイヤを収納するスペアタイヤハウスを設け、該スペアタイヤハウスの開口部をスペアタイヤカバーによって覆うものであって、上記スペアタイヤハウスの開口部周縁に段部を有するフロア構成部材を設ける一方、上記スペアタイヤカバーの下方位置にトレイを配設し、該トレイの周縁部を上記フロア構成部材の段部に載置して固定しているので、ノーマルタイヤとテンパタイヤがあるスペアタイヤの種類による影響を受けることがなくなり、トレイをスペアタイヤハウス内に確実に収納して使用でき、スペアタイヤハウス内のスペースを有効に利用することが可能となって、非常に便利である。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者の対応関係は次のとおりである。 引用発明の「収納用凹部8」は、本願補正発明の「凹部(7)」に相当し、同様に「底上げ板7」は「嵩上げ部材(6)」に、「収納用ボックス13」は「収納ボックス(10)」に、「蓋9」は「蓋体(12)」にそれぞれ相当する。 引用発明の「収納用ボックス13」と本願補正発明の「収納ボックス(10)」との、それらの配置構造について、「凹部」に「設けられ」ているという限りにおいて共通している。 また、引用発明の「カーペット12」と本願補正発明の「カーペット(8)」との、それらの配置構造について、床面(2)や蓋体(12)の「上面に敷かれる」という限りにおいて共通している。 それゆえ、本願補正発明と引用発明とは、 [一致点] 「フロアパネル(5)に配設されて床面(2)の高さを調節し、且つ床面(2)に開口する凹部(7)が設けられた嵩上げ部材(6)と、 前記凹部(7)に設けられた収納ボックス(10)と、 前記凹部(7)の開口形状と略同一の周縁形状を有することで前記収納ボックス(10)を覆蓋すると共にカーペット(8)が上面に敷かれ、覆蓋した際に床面(2)を形成する蓋体(12)とを備えた床下収納装置。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明では、収納ボックス(10)が凹部(7)に着脱可能に装着されるのに対し、引用発明では、収納用凹部8によって収納用ボックス13を形成している点。 [相違点2] 本願補正発明では、床面(2)に敷設されるカーペット(8)と同一のカーペット(8)が上面に敷設される蓋体(12)であるのに対し、引用発明では、床面に敷かれるカーペット12が上面に敷かれる蓋9である点。 (4)判断 [相違点1]について 第2引用例には、前記記載事項(ハ)から、トレイ12の中央部には収納孔13が穿設されており、この収納孔13には、物入れとして用いる有底筒状体のバケツ型ボックス(収納容器)14(本願補正発明の「収納ボックス(10)」に相当。)が上方から単体で取り出し可能に配置され、利便性を高めることが記載されている。 それゆえ、引用発明において、第2引用例を参酌して、底上げ板7に形成された収納用ボックス13である収納用凹部8を、例えば、利便性を考慮して、取り出し可能にして着脱可能な収納用ボックス13とすることに格別の困難性はなく、それを妨げる技術的事情も見あたらない。 [相違点2]について 床面に敷設されるカーペットと同様のカーペットを蓋部材に敷設することは、周知技術である(必要であれば、実公平7-19888号公報(カーペット本体5)、特開平8-244511号公報(繊維材34)、実公平5-30528号公報(第1フロアマツト9,第2フロアマツト60)参照。)ので、引用発明において、カーペット12を、床面と蓋9とにそれぞれ敷設して、前記相違点2に係るようなカーペットの配置構造とすることに格別の困難性はない。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、第2引用例の記載事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、第2引用例の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、旧法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年2月18日付け手続補正書の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成16年9月28日付け手続補正書の手続補正の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるとおりのものにある。 「【請求項1】 フロアパネル(5)に配設されて床面(2)の高さを調節し、且つ床面(2)に開口する凹部(7)が設けられた嵩上げ部材(6)と、 前記凹部(7)に着脱可能に装着される収納ボックス(10)と、 前記収納ボックス(10)を覆蓋すると共に床面(2)を形成する蓋体(12)と を備えたたことを特徴とする床下収納装置。」 (1)引用例 原査定の理由に示された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「蓋体」について、形状に関する発明特定事項を省き、前記本願補正発明を上位概念化したものである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、前記「2.(3)」に記載した一致点で一致し、相違点1で相違するが、当該相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、前記「2.(4)」の「[相違点1]について」で説示したとおり、第2引用例に記載された事項を参酌して、格別困難であるとは言えない事項である。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明、第2引用例の記載事項から当業者が予測できる範囲内のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、第2引用例の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-03 |
結審通知日 | 2007-08-08 |
審決日 | 2007-08-21 |
出願番号 | 特願平10-242256 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 島田 信一 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
山内 康明 柿崎 拓 |
発明の名称 | 床下収納装置 |
代理人 | 長門 侃二 |