• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  D06F
管理番号 1165391
審判番号 無効2007-800011  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-01-23 
確定日 2007-10-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第3828882号発明「物干し竿支持装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3828882号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
(1)本件特許第3828882号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成15年8月19日の出願であって、平成18年7月14日に特許権の設定登録がなされたものである。
(2)この特許に対し、請求人は、平成19年1月23日に特許無効審判を請求し、これに対して、被請求人は、平成19年4月3日付けで答弁書を提出すると共に同日付けで訂正請求書を提出して訂正請求をし、請求人は、平成19年5月16日付けで弁駁書を提出した。
(3)その後、被請求人は、平成19年7月5日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、請求人は、平成19年7月10日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、平成19年7月24日に口頭審理が行われ、被請求人は、平成19年4月3日付けの訂正請求を取り下げた。

2 本件発明
本件特許第3828882号の請求項1ないし5に係る発明(以下順に、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。(なお、被請求人は、平成19年4月3日付けの訂正請求を取り下げている。)
(1)本件発明1
「バルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定される支柱固定金具、該支柱固定金具に支持内挿され上下方向に摺動自在でストッパーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱、該スライド柱上端部に冠着され竿掛けアーム挟持部を有したアーム固定具、該アーム固定具の竿掛けアーム挟持部に第一のアーム枢着軸及び第二のアーム枢着軸にて枢着される竿掛けアームあって、
前記竿掛けアームはアーム上背側縁部に刻設した長手方向に伸びるスライド溝を有し、該スライド溝の端部で前記スライド溝の延長上に並列して第一のアーム枢着軸と第二のアーム枢着軸を突設して設け、該第一並びに第二のアーム枢着軸をアーム固定具の上部壁と斜壁並びにR壁が構成する竿掛けアーム挟持部に嵌着し、該アーム挟持部の範囲で摺動及び回動自在に枢設し、該第一のアーム枢着軸が前記アーム挟持部の上壁に当接され第二のアーム枢着軸が斜壁下部に当接されると前記竿掛けアーム長手方向が水平方向から略40度に保持されること、
を特徴とする物干し竿支持装置。」
(2)本件発明2
「バルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定される支柱固定金具、該支柱固定金具に支持内挿され上下方向に摺動自在でストッパーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱、該スライド柱上端部に冠着され竿掛けアーム挟持部を有したアーム固定具、該アーム固定具の竿掛けアーム挟持部に第一のアーム枢着軸及び第二のアーム枢着軸にて枢着される竿掛けアームあって、
前記支柱固定金具に支持内挿され上下方向に摺動自在でストッパーレバーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱は該スライド柱を少し上方向に持ち上げると前記ストッパーレバーが手前に移動して指が入る状態になり、該状態を指にて保持することで前記スライド柱の高さを上下動せしめ竿掛けアームの高さ調整可能としたこと、
を特徴とする物干し竿支持装置。」
(3)本件発明3
「前記第二のアーム枢着軸の半径が略40mmであること、
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の物干し竿支持装置。」
(4)本件発明4
「前記竿掛けアームに突接して設けられる第一のアーム枢着軸並びに第二のアーム枢着軸には合成樹脂等からなる軸キャップを被覆せしめ前記アーム固定具のアーム挟持部並びにスライド柱に設けられた摺動溝内部を移動する際に金属音の発生を防止し、該軸キャップ厚さ大きさを調整することで内部公差を吸収して竿掛けアームの横揺れを軽減すること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の物干し竿支持装置。」
(5)本件発明5
「前記スライド柱を支持内挿した支柱固定具をバルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定するための取付ボルトは合成樹脂等により成形されるカバー材にてカバーされ取付ボルトがむき出しにならず、また指等の係止部を作らないこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項4記載の物干し竿支持装置。」

3 当事者の主張
(1)請求人の主張の概要
請求人は、特許第3828882号の特許は無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、次の理由及び証拠方法から、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、また、同法同条同項第4号に該当し、無効とすべきものであると主張する。

ア 無効理由1について
本件発明1ないし4は、甲第2号証に記載されており、又は甲第3号証の2の写真の製品から知られ得るといえるから、本件発明1ないし4についての特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

イ 無効理由2について
本件発明1ないし5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(ア)本件発明1について
本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、又は甲第2号証に記載された発明と甲第5?8号証に記載された発明、又は甲第3号証の2の写真の製品と甲第7、8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明2について
本件発明2は、甲第2号証に記載された発明、又は甲第3号証の2の写真の製品、又は甲第2号証に記載された発明若しくは甲第3号証の2の写真の製品と甲第7、9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件発明3について
本件発明3は、甲第2号証に記載された発明、又は甲第3号証の2の写真の製品、又は本件発明1、2が容易に発明をすることができるとして挙げた各甲号証に記載された発明と甲第4号証の2の写真の製品に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)本件発明4について
本件発明4は、甲第2号証に記載された発明、又は甲第3号証の2の写真の製品、又は本件発明1、2が容易に発明をすることができるとして挙げた各甲号証に記載された発明と甲第4号証の2の写真の製品に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(オ)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1、2、4が容易に発明をすることができるとして挙げた各甲号証(甲第3号証の2は甲第3号証の1と読み替える。)に記載された発明と甲第8、10号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<証拠方法>
甲第1号証:本件特許の参考製品の写真
甲第2号証:特許第3163035号公報
甲第3号証の1:特許第3163035号製品のカタログの写
甲第3号証の2:特許第3163035号製品の写真
甲第3号証の3:特許第3163035号製品の販売記録の一部の写
甲第4号証の1:特許第3163035号製品の一部改造製品のカタロ グの写
甲第4号証の2:特許第3163035号改造製品の写真
甲第4号証の3:特許第3163035号改造製品の販売記録の一部の 写
甲第5号証:実開平5-39496号公報
甲第6号証:特開平9-173694号公報
甲第7号証:特開2002-360998号公報
甲第8号証:特開2003-175300号公報
甲第9号証:特開平7-328289号公報
甲第10号証:特開2001-317525号公報

さらに、請求人は、他の証拠として、弁駁書とともに、甲第11号証の1ないし甲第11号証の4、及び甲第12号証を提出している。

ウ 無効理由3について
本件発明1ないし5についての特許は、特許法第36条第4項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(ア)特許法第36条第4項第1号に関して
従来例としてなぜ甲第2号証を挙げたのか不明であり、また、「第二アーム枢着軸の半径が略40mm」の数値限定の臨界的意義が不明である。
(イ)特許法第36条第6項第2号に関して
「スライド溝」は何のための構成であるのか不明であり、「R壁」は何のためにRでなければならないのか不明であり、竿掛けアームを収納する構成が記載されていない。また、第一アーム枢着軸、第二アーム枢着軸の2つがなぜ必要であるのか、これらのアーム挟持部における関係、竿掛けアームが固定される関係が不明である。更に、「略40mm」の限定の意味が不明である。

(2)被請求人の主張の概要
ア 無効理由1、2について
(ア)本件発明1について
本件発明1は、竿掛けアーム13を倒していくと、第一の枢着軸17は動くことなく、第一の枢着軸17を中心として、第二の枢着軸18がR壁に当接しながらR壁10に沿ってスムースに軌道し、第二の枢着軸18がアーム挟持部7の斜壁9にあたった状態で、竿掛けアーム13は40度の仰角を持って固定されるものである。
これに対して、甲第2号証記載の発明には、本件発明1において必須の第一の枢着軸、R壁がない。
したがって、両者の構成は全く相違し、構成の相違により、作用も異なるものであるから、新規性進歩性は否定されない。
(イ)本件発明2について
甲第2号証記載の発明は、「スライド柱を少し上方向に持ち上げると前記ストッパーレバーが手前に移動して指が入る状態になり、該状態を指にて保持することで前記スライド柱の高さを上下動せしめ竿掛けアームの高さ調整可能とした」構成がなく、甲第7、9号証記載の発明は、本件発明2の前提となる「アーム固定具の竿掛けアーム挟持部に第一のアーム枢着軸及び第二のアーム枢着軸にて枢着される竿掛けアーム」の構成がないから、新規性進歩性は否定されない。
(ウ)本件発明3ないし5について
本件発明1、2が新規性及び進歩性を備えたものであることは上述のとおりであるから、これらを前提とする本件発明3ないし5の新規性進歩性もまた否定されるものではない。

イ 無効理由3について
請求人が主張している点は、特許請求の範囲、並びに明細書に記載されている事項から全て説明でき、且つ、何の不都合も生じていないから、請求人が述べている、特許法第36条第4項、第6項の規定を満たしていないとする箇所は、全く存在しない。

4 無効理由2についての判断
(1)甲第2、5ないし10号証の記載事項について
甲第2、5ないし10号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
ア 甲第2号証
(ア)「腕杆は、少なくとも一方の側縁に突条部を有すると共に、突条部の基端部に案内突起を設けて成り、支柱は、腕杆の案内突起を摺動可能に案内するガイド部を設けると共に、上端部に蓋具を取り付けて成り、蓋具は、上部に腕杆の突条部を摺動可能に案内するガイド部を設けて成り、腕杆は、突条部が蓋具のガイド部に案内されると共に、案内突起が支柱のガイド部に案内されて支柱に摺動可能に取り付けられ、上方に摺動すると、案内突起が支柱のガイド部から外れて回動が可能となるよう構成され、蓋具のガイド部に合成樹脂製の案内カバーを設けると共に、案内突起は表面を合成樹脂製としたことを特徴とする物干装置。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「本発明は、ベランダ手摺Tに固定ねじ24で固着される裏基板22に取付具1をボルト23・23で固着し、この取付具1に支柱2を摺動可能に取り付け、さらに支柱2に、竿受部28・・・28を設けた腕杆3を摺動可能かつ回動可能に取り付けて成るものである。」(段落【0006】)
(ウ)「取付具1は、押し出し材で、前部に両側外方に突出する被抱持突条25・25を設け、後部に裏基板22への取付部を設けてある。取付具1の下部には、回動可能な係合具15をばね16で前方へ突出するよう付勢して取り付け、下端部に設けた操作部26を押すことによってこの係合具15をばね16に抗して回動・後退させることができるようになっている。」(段落【0007】)
(エ)「支柱2は、押し出し材で、前部に略蟻溝状のガイド部10を設けると共に、その相対向する内側面に突条11・11を設け、後部に略蟻溝状の抱持溝12を設けると共に、その底面中央に凹溝13を設けその底板に係合具15が係合する係止孔14・・・14を間隔をおいて設けてある。そして、支柱2のガイド部10内に停止具4が取り付けられる。なお、支柱2は、本実施例の構造に限定されるものではなく、腕杆3を摺動可能に取り付けられるものであればよい。」(段落【0008】)
(オ)「支柱2の上端は斜めに切断してあり、そこに受具21を蓋具17と共に固定してある。蓋具17は、支柱2の一部であり、上方の一部及び前方が開口しており、相対向する内面には、略扇状に内方に突出するストッパー18・18を設けると共に、その前端上部に、さらに内方に突出する受止突起20・20を設けて、ガイド部10を設けてある。このガイド部10は、腕杆3の突条部27が摺接するので、合成樹脂製の案内カバー30が取り付けてある。なお、蓋具17は、ガイド部10が設けられていれば、本実施例の構成に限定されないし、支柱2に単独で固定してもよい。」(段落【0010】)
(カ)「取付具1の被抱持突条25・25を支柱2の抱持溝12で抱持させて、支柱2を取付具1にスライド可能に取り付け、取付具1に取り付けた係合具15が支柱2の係止孔14・・・14のいずれかに係止して停止できるようになっている。支柱2を下方に移動するには、係合具15の先端に突起があるので、その突起をよけるまで支柱2を持ち上げ、操作部26を押して係止孔14から係合具15の係合を外し、支柱2を下方へ移動させ、適当な係止孔14の位置で操作部26を放せば、ばね16により係合具15が前方へ回動し別の係止孔14に係合して下方調整できる。また、支柱2を上方に移動するには、操作部26を押さなくても単に支柱2を持ち上げれば、係止孔14の下縁が係合具15を回動・後退させるので移動でき、別の係止孔14のところで係合具15がばね16により前方へ回動した時に、支柱2を放せばその係止孔14に係合具15が係合し上方調整できる。なお、支柱2は、被取付面に固定するものでもよい。」(段落【0011】)
(キ)「腕杆3は、複数の竿受部28・・・28を設けると共に、後端部を除く周縁に厚み方向に突出する突条部27を設けてある。突条部27は、上突条部27aと下突条部27bを略半円状の接続突条部27cで接続されている。また、上突条部27aの基端部にさらに厚み方向に突出する抜止部19を設け、さらにその外側に、抜止部19よりも厚み方向及び上下方向に少しだけ大きく突出する表面が合成樹脂製の案内突起29を設けてある。腕杆3は、案内突起29が支柱2のガイド部10に摺動可能に係合するものであり、収納状態では、下端の抜止部19が停止具4上面の緩衝材7に当接している。腕杆3を上方へ摺動させると、案内突起29及び抜止部19が支柱2のガイド部10から外れ(支柱2上部の蓋具17のガイド部10からは外れない)、抜止部19が蓋具17のストッパー18に当接しながら、腕杆3は前方へ回動する。そして、腕杆3の後端が受具21に当接し、案内突起29及び抜止部19が蓋具17の上板及びストッパー18に当接し、上突条部27aが受止突起20に当接して、腕杆3は斜め上向きの使用状態に停止する。なお、腕杆3は、水平横向きや斜め下向きに停止するものでもよいし、また、支柱2にガイド部10によって摺動可能にガイドされればよいもので、案内突起29と抜止部19を同一のもので兼用してもよい。さらに、案内突起29は、表面に合成樹脂を被覆して固定してもよいし、回動可能なように取り付けてもよい。」(段落【0012】)
(ク)図2は、腕杆3が斜め上向きに保持されている使用状態を示す図であって、図2には、蓋具17が支柱2上端部に冠着され、案内突起29が蓋具17の上板下部に当接し、抜止部19が蓋具17のストッパー18に当接している態様が図示されている。

上記(ア)ないし(ク)の記載事項及び図示内容からみて、甲第2号証には次の発明が記載されていると認められる。
「ベランダ手摺Tに固着された裏基板22にボルト23・23で固着された取付具1、この取付具1の被抱持突条25・25を支柱2の抱持溝12で抱持させて、取付具1に摺動可能で係合具15を介して摺動方向に連結釈放可能な支柱2、この支柱2の上端部に冠着された蓋具17、この支柱2に摺動可能かつ回動可能に取り付けられた腕杆3であって、腕杆3は、周縁に厚み方向に突出する上突条部27aを有し、この上突条部27aの基端部には抜止部19を設けられ、さらにその外側には案内突起29が設けられ、蓋具17には上板、ストッパー18、受止突起20が設けられ、支柱2の上端部には受具21が固定され、腕杆3を上方へ摺動させると、案内突起29及び抜止部19が支柱2のガイド部10から外れ、抜止部19が蓋具17のストッパー18に当接しながら、腕杆3は前方へ回動し、抜止部19がストッパー18に、案内突起29が蓋具17の上板下部に当接されると腕杆3が斜め上向きに保持される物干装置。」(以下、「甲第2号証記載の発明1」という。)
「ベランダ手摺Tに固着された裏基板22にボルト23・23で固着された取付具1、この取付具1の被抱持突条25・25を支柱2の抱持溝12で抱持させて、取付具1に摺動可能で係合具15を介して摺動方向に連結釈放可能な支柱2、この支柱2の上端部に冠着された蓋具17、この支柱2に摺動可能かつ回動可能に取り付けられた腕杆3であって、取付具1に摺動可能で係合具15を介して摺動方向に連結釈放可能な支柱2は、支柱2を持ち上げ、操作部26を押して係止孔14から係合具15の係合を外すことで移動可能となり、腕杆3の高さ調節可能とした物干装置。」(以下、「甲第2号証記載の発明2」という。)

イ 甲第5号証
(ア)「ベランダ等に取付けられる筐体と、この筐体に回動自在に且つ摺動自在に取付けられ、水平な状態と、斜め上方に傾斜した状態と、垂直な状態に選択的に設定保持される腕杆とを備え、
前記筐体は、前面に開放し前記腕杆の基端部を出入り自在に収納する収納部を有し、また収納部を形成する上壁奥方には前記腕杆を水平な状態に設置保持する第1係止部が設けられ、収納部の奥壁は上端が前記第1係止部に接続し、下端が筐体の前面側開口部に接続する奥方に向かって凸となる湾曲壁面に形成されて、その中間部に前記腕杆を傾斜した状態に設置保持する第2係止部が形成され、また前記湾曲壁面の下部が前記腕杆の基端部を下方から支持する支持部を形成し、さらに前記収納部には前記腕杆を回動自在に且つ摺動自在に保持する軸が設けられ、
前記腕杆は、基端部側端面が、前記収納部の湾曲壁面に沿って摺動し得るよう連続した凸曲面に形成され、また基端部上面には前記第1または第2係止部に選択的に係合する係合部が設けられ、基端部下面および前記基端部側端面の中間部が前記支持部によって支持される被支持面をそれぞれ形成し、さらに腕杆には前記筐体の軸が摺動自在に挿入係合される溝が長手方向に形成されると共に前記筐体からの脱落を防止するストッパが設けられていることを特徴とする物干装置。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】)
(イ)図1には、腕杆の上背側縁部に溝が形成された態様が図示されている。

ウ 甲第6号証
「【目的】物干竿を掛けたままの状態でワンタッチで収納姿勢または使用姿勢にする。
【構成】二枚の挟持支持板4,4を突設し摺動間隙6を構成したアーム受け金具1と、摺動間隙6間に挿入可能な竿受けアーム5の先端に竿挿通孔8、中央部上縁側に脱落防止プレート13を設けた竿掛架溝孔9を構成する。竿受けアーム5のガイド溝17に挟持支持板4のガイド軸19を遊嵌し、受軸18上に竿受けアーム5を摺動する支持一体化構造とする。基端に係止鉤20を構成し、挟持支持板4,4間の水平姿勢係止突起21と45度姿勢係止突起22とに選択係合する構成として基端部を鉛直方向から水平方向の角度範囲で回動支承し、また鉛直姿勢時に昇降自在に枢設して収納状態に維持することを特徴とする。」(【要約】)

エ 甲第7号証
(ア)「竿受部を有する腕杆と、該腕杆を支持する支持体と、該支持体が取り付けられた支柱、およびこの支柱を昇降可能に支持する支持具とからなる物干装置において、支持具の所定位置に、先端の上方に抜け止め突部が設けられ、先端寄りの側方に係止突部が設けられた係止レバーが、回動可能に取り付けられ、この支持具が摺動可能に係合した支柱には、上記係止レバーの先端が係脱可能な係止孔が、上下方向に複数、設けられ、係止レバーの先端が、支柱に設けられた何れかの係止孔に係合することにより、支柱が所望の位置で落下不可に支持され、かつ、この時の支柱側の重量により、係止レバーの係合解除方向への回動が阻止されるようになされたことを特徴とする物干装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
(イ)「係止レバー7は、図4に示すように、側面視略逆への字形で、先端(図2において右端)の上方に抜け止め突部7aを設けると共に、この抜け止め突部7aからやや後退した支点寄りの側方に係止突部7bを設け、かつ、支点の他方側に平坦な操作部7cを設けたものであり、支点となる軸8には、係止レバー7の先端を支柱側に付勢するキックばね9を取り付けている。」(段落【0020】)
(ウ)「まず、支持具4がベランダの壁面Wに固定された設置状態において、腕杆2が取り付けられた支柱3は、図2に示すように、支持具4に取り付けられた係止レバー7が係止孔3cに係合することにより、落下不可に保持されている。この時、係止レバー7は、その側面に突設された係止突部7bが、係止孔3c近傍の隔壁3aに当接し、それ以上、その先端が下方に回動できないようになっている。また、この係止レバー7の先端側には、支柱3側の全荷重がかかっており、かつ、その先端の抜け止め突部7aは、係止孔3cの裏側(図2において右側)に位置しているので、係止レバー7の操作部7cを押し下げようとしても係止レバー7を回動させることはできず、係止レバー7と係止孔3cの係合を外すことはできない。よって、係止レバー7が不用意に回動されて支柱3が落下するおそれはなく、支柱3は安全確実に所定の高さ位置に保持されるものである。」(段落【0022】)
(エ)「次に支柱3の高さを変える場合は、まず、支柱3を持って支持具4に摺動可能に係合した支柱3をやや引き上げれば、係止孔3cの裏側(図2において右側)周縁と当接し、係止レバー7の回動を阻止しているその先端の抜け止め突部7aと、前記周縁との係合が解除されるので、操作部7cを押下することにより、この係止レバー7をキックばね9の付勢力に抗して回動させることができる。よって、その後は、支柱3を自由に上下に移動させることができるので、所望の位置近傍で係止レバー7の操作部7cの押し下げを止め、支柱3をある程度上下に移動させると、ばね9で回動付勢されている係止レバー7は、係止孔3cが設けられた位置で、その先端が係止孔3cに挿入される方向に回動し、係止レバー7が他の係止孔3cに元の状態と同様に係合し、支柱3を落下不可にその位置で係合保持するものである。」(段落【0023】)
(オ)「なお、支柱3の高さを上げる場合は、支柱3を持ち上げれば、係止レバー7の先端側が、係止孔3cの下端縁で押し上げられ、キックばね9の付勢力に抗して係止レバー7が、その係合が解除される回動されるので、必ずしも係止レバー7の操作部7cを押し下げ操作する必要はない。そして、その後は、上記の場合と同様に、キックばね9で付勢された係止レバー7が、係止孔3cが設けられた位置で回動するので、支柱3を下ろせば、係止レバー7が係止孔3cに係合し、支柱3を落下不可に保持する。」(段落【0024】)

オ 甲第8号証
「尚、図中16は固定部材2を壁面に取り付ける為のボルト孔を示している。また、16aはボルトを(図5参)、更に16bはボルト16aを覆うよう冠着等されたボルトキャップを示すものであり(図6参)、このボルトキャップ16bの存在により、見苦しいとも云いうるボルト16aは外観上目視されなくなるので意匠的にも好もしいと云える。」(段落【0020】)

カ 甲第9号証
(ア)「【目的】物干し竿受け部材の高さを自由に変えることのできる物干し竿の受け装置を提供する。
【構成】先端に向かって複数個の孔2が形成されている物干し竿受け部材3を上端に取り付けてなる昇降軸4を上下一対のガイド部材5,6の貫通孔5a,6aに上方より挿通させて昇降自在に構成し、前記昇降軸4には上下に適当間隔をおいて小孔4a,4bを備え、上側のガイド部材5には前記小孔4a,4bの何れかに係合して昇降軸4の下動を止める爪部材7を小孔4a,4bに対して係脱自在に設けた物干し竿の受け装置。」(【要約】)
(イ)「図4に左右一対の物干し竿受け部材3,3に物干し竿32を掛けた状態を示しており、布団やシーツなどの大きな物を干す際、布団やシーツなどが地面に引き摺るおそれがある場合は、図4実線で示す状態の物干し竿受け部材3,3を図4二点鎖線で示す高さまで上げれば良い。このとき、前記昇降軸4を持ち上げることによりその力で前記爪部材7の先端が昇降軸4の下側の小孔4bから外れる方向に回転する。そして、昇降軸4の上側の小孔4aが前記爪部材7のやや上側まで持ち上げ、昇降軸4を少し降ろすことにより爪部材7の先端が昇降軸4の上側の小孔4aに係合して昇降軸4の下動が止められる。このようにして、干す物の大きさなどに応じて物干し竿受け部材3,3の高さを簡単に調整することができる。」(段落【0010】)

キ 甲第10号証
(ア)「アンカーボルト頭部を覆い隠すキャップ本体と、そのキャップ本体内に嵌挿され、アンカーボルトに螺合されたナットの外壁に圧接される取付部材とからなり、取付部材は外周縁部がキャップ本体の内形より小さく内周縁部がナット外形より大きくなされたばね性のある基板からなり、その基板の外周縁部から複数の取付爪が外方へと突設されてキャップ本体の内壁に圧接され、その基板の内周縁部には複数の圧接片が斜め上方内向きに突設されてナット外壁に圧接されるようになされたことを特徴とするアンカーボルトのキャップ。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
(イ)「キャップ本体1はポリエステル、ポリカーボネート、AAS樹脂等の合成樹脂、鋼、アルミニウム等の金属製であり、上端が閉塞された円筒状となされており、地上に突出されたアンカーボルト3の頭部を覆い隠す大きさとなされている。また、キャップ本体1の内壁には係止段部11が設けられている。」(段落【0012】)

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲第2号証記載の発明1とを比較する。
甲第2号証記載の発明1の「ベランダ手摺Tに固着された裏基板22にボルト23・23で固着された取付具1」は、その機能、構造からみて、本件発明1の「バルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定される支柱固定金具」に相当し、以下同様に、「係合具15」は「ストッパー」に、「支柱2」は「スライド柱」に、「腕杆3」は「竿掛けアーム」に、「物干装置」は「物干し竿支持装置」に各々相当する。
また、甲第2号証記載の発明1の「この支柱2の上端部に冠着された蓋具17」は、本件発明1でいう「竿掛けアーム挟持部」を有していて、腕杆3(竿掛けアーム)を固定するものであることは明らかであるから、本件発明1の「スライド柱上端部に冠着され竿掛けアーム挟持部を有したアーム固定具」に相当する。そして、甲第2号証記載の発明1の「ストッパー18」は、蓋具17の上部内面に設けられていて上部壁を構成しているから、本件発明1の「上部壁」に相当し、同じく「上板」は「斜壁」に相当し、「抜止部19」は、腕杆3(竿掛けアーム)の回動、保持時にストッパー18(上部壁)に当接するものであるから、本件発明1の「第一のアーム枢着軸」に相当し、同じく「案内突起29」は「第二のアーム枢着軸」に相当し、甲第2号証記載の発明1の「腕杆3」(竿掛けアーム)は、蓋具17(アーム固定具)の竿掛けアーム挟持部に抜止部19(第一のアーム枢着軸)及び案内突起29(第二のアーム枢着軸)にて枢着されているといえる。
更に、甲第2号証記載の発明1の「腕杆3を上方へ摺動させると、案内突起29及び抜止部19が支柱2のガイド部10から外れ、抜止部19が蓋具17のストッパー18に当接しながら、腕杆3は前方へ回動し、抜止部19がストッパー18に、案内突起29が蓋具17の上板下部に当接されると腕杆3が斜め上向きに保持される」は、腕杆3を上方へ摺動させ、案内突起29及び抜止部19が支柱2のガイド部10から外れると、抜止部19(第一のアーム枢着軸)及び案内突起29(第二のアーム枢着軸)が、蓋具17(アーム固定具)の竿掛けアーム挟持部に嵌着し、竿掛けアーム挟持部の範囲で摺動及び回動自在に枢設され、少なくとも抜止部19(第一のアーム枢着軸)がストッパー18(上部壁)に、案内突起29(第二のアーム枢着軸)が蓋具17(アーム固定具)の上板(斜壁)下部に当接されると腕杆3(竿掛けアーム)は斜め上向きに保持されるものであるといえるから、本件発明1とは、第一並びに第二のアーム枢着軸をアーム固定具の竿掛けアーム挟持部に嵌着し、該アーム挟持部の範囲で摺動及び回動自在に枢設し、該第一のアーム枢着軸が前記アーム挟持部の上壁(上部壁の誤記と認められる。)に当接され第二のアーム枢着軸が斜壁下部に当接されると前記竿掛けアーム長手方向が斜め上向きに保持される点で共通する。

そうすると、両者は、本件発明1の文言を用いて表現すると、
「バルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定される支柱固定金具、該支柱固定金具に上下方向に摺動自在でストッパーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱、該スライド柱上端部に冠着され竿掛けアーム挟持部を有したアーム固定具、該アーム固定具の竿掛けアーム挟持部に第一のアーム枢着軸及び第二のアーム枢着軸にて枢着される竿掛けアームであって、第一並びに第二のアーム枢着軸をアーム固定具の竿掛けアーム挟持部に嵌着し、該アーム挟持部の範囲で摺動及び回動自在に枢設し、該第一のアーム枢着軸が前記アーム挟持部の上壁に当接され第二のアーム枢着軸が斜壁下部に当接されると前記竿掛けアーム長手方向が斜め上向きに保持される物干し竿支持装置。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
スライド柱と支柱固定金具の摺動自在の連結構造に関し、本件発明1は、スライド柱が支柱固定金具に支持内挿されているのに対して、甲第2号証記載の発明1は、スライド柱(支柱2)の抱持溝12が支柱固定金具(取付具1)の被抱持突条25・25を抱持している点。
<相違点2>
竿掛けアームの構造に関し、本件発明1は、アーム上背側縁部に刻設した長手方向に伸びるスライド溝を有し、該スライド溝の端部で前記スライド溝の延長上に並列して第一のアーム枢着軸と第二のアーム枢着軸を突設して設けているのに対して、甲第2号証記載の発明1は、周縁に厚み方向に突出する上突条部27aを有し、この上突条部27aの基端部に抜止部19(第一のアーム枢着軸)を設け、さらにその外側に案内突起29(第二のアーム枢着軸)を設けている点。
<相違点3>
竿掛けアーム挟持部の構造に関し、本件発明1は、アーム固定具の上部壁と斜壁並びにR壁で構成しているのに対して、甲第2号証記載の発明1は、蓋具17(アーム固定具)のストッパー(上部壁)、上板(斜壁)、支柱2の上端部に固定された受具21で構成している点。
<相違点4>
竿掛けアームの保持角度に関し、本件発明1は、竿掛けアーム長手方向が水平方向から略40度であるのに対して、甲第2号証記載の発明1は、斜め上向きに保持されるものであるが、その角度は明らかでない点。

そこで、上記相違点1ないし4について以下に検討する。
(ア)相違点1について
スライド柱と支柱固定金具を摺動自在に連結するために、どちらを内挿するかは設計上適宜決めればよいことである。
したがって、スライド柱を支柱固定金具に支持内挿して本件発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が適宜なし得た設計的事項である。
(イ)相違点2について
甲第5号証には、「腕杆には前記筐体の軸が摺動自在に挿入係合される溝が長手方向に形成される…物干装置。」との記載があり(上記「4(1)イ(ア)参照)、また、腕杆の上背側縁部に溝が形成された態様が図示されており(上記「4(1)イ(イ)参照)、この「腕杆2」、「溝53」、「物干装置」は、本件発明1の「竿掛けアーム」、「スライド溝」、「物干し竿支持装置」に相当するから、甲第5号証には、竿掛けアームのアーム上背側縁部に長手方向に形成されたスライド溝を有する物干し竿支持装置の発明が記載されているといえる。
そして、第一のアーム枢着軸と第二のアーム枢着軸をスライド溝の延長上に設けることは、竿掛けアームの保持を考慮して設計上適宜決めることであるあるから、竿掛けアームにスライド溝を設け、本件発明1の上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、甲第2号証記載の発明1及び甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)相違点3について
本件の請求項1の記載からみて、「R壁」は、第一のアーム枢着軸、第二のアーム枢着軸がアーム挟持部の範囲で摺動及び回動自在になるような「アーム挟持部」の一部を構成する壁であり、かつ、上部壁、斜壁以外の壁であるという程度のものであるから、甲第2号証記載の発明1では「受具21」が該当する。そして、請求項1の記載の限りにおいては、特段「R壁」であることの技術的意義も認められないから、「受具21」を「R壁」のように構成することは当業者が適宜なし得る設計的事項である。
してみれば、アーム挟持部を構成する1つの壁を受具21に変えてR壁とし、本件発明1の相違点3に係る発明特定事項とすることは当業者が適宜なし得た設計的事項である。
(エ)相違点4について
竿掛けアームの保持角度をどの程度にするかは、使用者の使い勝手を考慮して設計上適宜決めることであるから、竿掛けアーム長手方向を水平方向から略40度として本件発明1の相違点4に係る発明特定事項とすることは当業者が適宜なし得た設計的事項である。

また、上記相違点1ないし4によって本件発明1が奏する作用、効果は、甲第2号証記載の発明1、甲第5号証記載の発明から予測される範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証記載の発明1、甲第5号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、被請求人は、本件発明1は、竿掛けアーム13を倒していくと、第一の枢着軸17は動くことなく、第一の枢着軸17を中心として、第二の枢着軸18がR壁に当接しながらR壁10に沿ってスムーズに軌道し、第二の枢着軸18がアーム挟持部7の斜壁9にあたった状態で、竿掛けアーム13は40度の仰角を持って固定されるものである旨主張している。
しかしながら、請求項1の記載からは、第一の枢着軸は、竿掛けアーム13を倒していく際、動かないとはいえず、また、R壁に関しても、竿掛けアーム13を倒していく際、第二の枢着軸がR壁に当接するとはいえない。
したがって、被請求人の上記主張は、請求項1の記載に基づかない主張であり、採用できない。

イ 本件発明2について
本件発明2と甲第2号証記載の発明2と比較する。
本件発明2と甲第2号証記載の発明2の各発明特定事項の相当関係は、「4(2)ア」で述べたとおりである。
また、甲第2号証記載の発明2の「取付具1に摺動可能で係合具15を介して摺動方向に連結釈放可能な支柱2は、支柱2を持ち上げ、操作部26を押して係止孔14から係合具15の係合を外すことで移動可能となり、腕杆3の高さ調節可能とした」と本件発明2の「支柱固定金具に支持内挿され上下方向に摺動自在でストッパーレバーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱は該スライド柱を少し上方向に持ち上げると前記ストッパーレバーが手前に移動して指が入る状態になり、該状態を指にて保持することで前記スライド柱の高さを上下動せしめ竿掛けアームの高さ調整可能とした」は、支柱固定金具に上下方向に摺動自在でストッパーレバーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱は、スライド柱を少し上方向に持ち上げてストッパー(係合具15)の係合を外すと移動可能となり、その状態を保持することでスライド柱(支柱2)の高さを上下動せしめ竿掛けアーム(腕杆3)の高さを調整可能としている点で共通する。
そうすると、両者は、本件発明2の文言を用いて表現すると、
「バルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定される支柱固定金具、該支柱固定金具に上下方向に摺動自在でストッパーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱、該スライド柱上端部に冠着され竿掛けアーム挟持部を有したアーム固定具、該アーム固定具の竿掛けアーム挟持部に第一のアーム枢着軸及び第二のアーム枢着軸にて枢着される竿掛けアームあって、支柱固定金具に上下方向に摺動自在でストッパーレバーを介して摺動方向に連結釈放可能なスライド柱は、スライド柱を少し上方向に持ち上げてストッパーの係合を外すと移動可能となり、その状態を保持することでスライド柱の高さを上下動せしめ竿掛けアームの高さを調整可能とした物干し竿支持装置。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
スライド柱と支柱固定金具の摺動自在の連結構造に関し、本件発明1は、スライド柱が支柱固定金具に支持内挿されているのに対して、甲第2号証記載の発明1は、スライド柱(支柱2)の抱持溝12が支柱固定金具(取付具1)の被抱持突条25・25を抱持している点。
<相違点5>
ストッパーの係合を外し、その状態を保持する手段に関し、本件発明2は、スライド柱を少し上方向に持ち上げるとストッパーレバーが手前に移動して指が入る状態になり、該状態を指にて保持するようにしているのに対して、甲第2号証記載の発明2は、スライド柱(支柱2)を持ち上げ、操作部26を押して係止孔14からストッパー(係合具15)の係合を外すようにしている点。

相違点1については、上記「4(2)ア(ア)」で述べたとおりである。
相違点5について以下に検討する。
本件発明2の相違点5に係る発明特定事項の技術的意義について、本件特許明細書には「不用意にストッパーレバーを操作してスライド柱が急落下することを防止すると共に、前記スライド柱を上方向に持ち上げないとストッパーレバー操作ができないので急落下を更に防ぐことが出来て安全である。」(段落【0013】)と記載されている。
ところで、通常、ストッパーレバーの先端には、スライド柱側の全荷重がかかっていてストッパーレバーを回動させることはできず、また、一般的には、ストッパーレバーの先端には抜け止め突部が形成されていて(本件発明2については図5、図6参照)、このことからもストッパーレバーを回動させることはできないものである(必要なら、甲第7号証「4(1)エ(ウ)」参照)。
したがって、本件発明2の相違点5に係る発明特定事項の特徴は、スライド柱を上方向に持ち上げないとストッパーレバーの操作ができない、すなわち、スライド柱を上方向に持ち上げないとストッパーレバーの係合が外れないことにあるといえるから、スライド柱を少し上方向に持ち上げるとストッパーレバーが手前に移動して指が入る状態になることは、単に、ストッパーの係合が外れた状態を指にて保持できることにその技術的意義があるといえる。
一方、物干し支持装置の技術分野において、スライド柱を少し上方向に持ち上げるとストッパーの係合が外れ、その状態を指にて保持してスライド柱の高さを上下動せしめ竿掛けアームの高さを調整可能とすることは甲第7号証に記載されている(上記「4(1)エ」参照)。
してみれば、甲第2号証記載の発明2に、ストッパーの係合を外し、その状態を保持する手段として甲第7号証に記載された発明を採用し、本件発明2の上記相違点5に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

また、上記相違点1、5によって本件発明2が奏する作用、効果は、甲第2号証記載の発明2及び甲第7号証に記載された発明から予測される範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、本件発明2は、甲第2号証記載の発明2及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2に、第二のアーム枢着軸の半径が略40mmであることを付加するものである。
そこで、本件発明3と甲第2号証記載の発明1、2と比較すると、両者は、上記各一致点で一致し、上記相違点1ないし5に加えて、次の点で相違する。
<相違点6>
本件発明3は、第二のアーム枢着軸の半径が略40mmであるのに対して、甲第2号証記載の発明1、2は、該半径がどの程度か明確でない点。

相違点1ないし5については、上記「4(2)ア(ア)ないし(エ)」及び「4(2)イ」で述べたとおりである。
相違点6について以下に検討する。
第二のアーム枢着軸の半径が略40mmであるとは、この文言からは何が略40mmであるのか一義的に解することができないが、発明の詳細な説明の記載全体を参酌すると、第二のアーム枢着軸が軌道する半径が略40mmであると解される。
ところで、甲第2号証記載の発明1、2の第二のアーム枢着軸(案内突起29)も、第一のアーム枢着軸(抜止部19)のストッパー18に当接しながらの移動にともなってある円弧軌道上を移動するものである。
そして、その軌道半径をどの程度にするかは、アーム固定具の大きさ等により適宜決めるものである。
したがって、第二のアーム枢着軸の半径を略40mmとし本件発明3の相違点6に係る発明特定事項とすることは甲第2号証記載の発明1、2に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

また、上記相違点1ないし6によって本件発明3が奏する作用、効果は、甲第2号証記載の発明1、2、甲第5号証記載の発明、及び甲第7号証に記載された発明から予測される範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、本件発明3は、甲第2号証記載の発明1、甲第5号証記載の発明、又は甲第2号証記載の発明2、甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1又は本件発明2に、竿掛けアームに突接して設けられる第一のアーム枢着軸並びに第二のアーム枢着軸には合成樹脂等からなる軸キャップを被覆せしめアーム固定具のアーム挟持部並びにスライド柱に設けられた摺動溝内部を移動する際に金属音の発生を防止し、該軸キャップ厚さ大きさを調整することで内部公差を吸収して竿掛けアームの横揺れを軽減することを付加するものである。
そこで、本件発明4と甲第2号証記載の発明1、2と比較すると、両者は、上記各一致点で一致し、上記相違点1ないし5に加えて、次の点で相違する。
<相違点7>
本件発明4は、竿掛けアームに突接して設けられる第一のアーム枢着軸並びに第二のアーム枢着軸には合成樹脂等からなる軸キャップを被覆せしめアーム固定具のアーム挟持部並びにスライド柱に設けられた摺動溝内部を移動する際に金属音の発生を防止し、該軸キャップ厚さ大きさを調整することで内部公差を吸収して竿掛けアームの横揺れを軽減しているのに対して、甲第2号証記載の発明1、2は、そのような発明特定事項を備えていない点。

相違点1ないし5については、上記「4(2)ア(ア)ないし(エ)」及び「4(2)イ」で述べたとおりである。
相違点7について以下に検討する。
甲第2号証には、「蓋具17は、支柱2の一部であり、上方の一部及び前方が開口しており、相対向する内面には、略扇状に内方に突出するストッパー18・18を設けると共に、その前端上部に、さらに内方に突出する受止突起20・20を設けて、ガイド部10を設けてある。このガイド部10は、腕杆3の突条部27が摺接するので、合成樹脂製の案内カバー30が取り付けてある。」(上記「4(1)ア(オ)」参照)、「さらに、案内突起29は、表面に合成樹脂を被覆して固定してもよいし、回動可能なように取り付けてもよい。」(上記「4(1)ア(キ)」参照)が記載されており、この記載からみて、甲第2号証には、突条部が摺接するガイド部10に合成樹脂製の案内カバー30を取り付けること、案内突起の表面に合成樹脂を被覆することが記載されているといえる。そして、突条部が摺接するガイド部10に合成樹脂製の案内カバー30を取り付ける技術的意義は、金属音の発生防止、ガタの発生防止にあることは明らかであり、また、合成樹脂を被覆する手段として、合成樹脂からなるキャップを被覆することも常套手段である。
そうすると、金属音の発生を防止するために、また、内部公差を吸収して竿掛けアームの横揺れを軽減するために、第一のアーム枢着軸並びに第二のアーム枢着軸には合成樹脂等からなる軸キャップを被覆せしめ、本件発明4の上記相違点7に係る発明特定事項とすることは、甲第2号証記載の発明1、2及び上記甲第2号証の記載事項から当業者が容易に想到し得たことである。

また、上記相違点1ないし5、7によって本件発明4が奏する作用、効果は、甲第2号証記載の発明1、2,甲第5号証記載の発明、及び甲第7号証に記載された発明から予測される範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、本件発明4は、甲第2号証記載の発明1、甲第5号証記載の発明、及び上記甲第2号証の記載事項、又は甲第2号証記載の発明2、甲第7号証に記載された発明、及び上記甲第2号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1又は本件発明2又は本件発明4に、スライド柱を支持内挿した支柱固定具をバルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定するための取付ボルトは合成樹脂等により成形されるカバー材にてカバーされ取付ボルトがむき出しにならず、また指等の係止部を作らないことを付加するものである。
そこで、本件発明5と甲第2号証記載の発明1、2と比較すると、両者は、上記各一致点で一致し、上記相違点1ないし5、7に加えて、次の点で相違する。
<相違点8>
本件発明5は、スライド柱を支持内挿した支柱固定具をバルコニー手摺を構成するコンクリート立ち上がり壁等に固定するための取付ボルトは合成樹脂等により成形されるカバー材にてカバーされ取付ボルトがむき出しにならず、また指等の係止部を作らないのに対して、甲第2号証記載の発明1、2はそのような発明特定事項を備えていない点。

相違点1ないし5、7については、上記「4(2)ア(ア)ないし(エ)」、「4(2)イ」及び「4(2)エ」で述べたとおりである。
相違点8について以下に検討する。
甲第8号証、甲第10号証には、ボルトをキャップで覆う発明が記載されており(上記「4(2)オ」、「4(2)キ(ア)」参照)、また、甲第10号証には、キャップを合成樹脂製とすることが記載されている(「4(2)キ(イ)」参照)。
そうすると、ボルトを合成樹脂製のキャップで覆い、本件発明5の相違点8に係る発明特定事項とすることは、甲第2号証記載の発明1、2及び甲第8号証、甲第10号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たことである。

また、上記相違点1ないし5、7、8によって本件発明5が奏する作用、効果は、甲第2号証記載の発明1、2、甲第5号証記載の発明、甲第7号証に記載された発明、上記甲第2号証の記載事項、及び甲第8号証、甲第10号証に記載された発明から予測される範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、本件発明5は、甲第2号証記載の発明1、甲第5号証記載の発明、及び甲第8号証、甲第10号証に記載された発明、又は甲第2号証記載の発明2、甲第7号証に記載された発明、及び甲第8号証、甲第10号証に記載された発明、又は甲第2号証記載の発明1、甲第5号証記載の発明、上記甲第2号証の記載事項、及び甲第8号証、甲第10号証に記載された発明、又は甲第2号証記載の発明2、甲第7号証に記載された発明、上記甲第2号証の記載事項、及び甲第8号証、甲第10号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当するから、他の無効理由を検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2007-08-31 
出願番号 特願2003-294818(P2003-294818)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (D06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保 克彦  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 中島 成
増沢 誠一
登録日 2006-07-14 
登録番号 特許第3828882号(P3828882)
発明の名称 物干し竿支持装置  
代理人 畠山 隆  
代理人 佐野 忠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ