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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H |
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管理番号 | 1165468 |
審判番号 | 不服2005-1042 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-17 |
確定日 | 2007-10-10 |
事件の表示 | 特願2000-620218「風力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月30日国際公開,WO00/71856,平成15年 1月 7日国内公表,特表2003-500575〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は,2000年5月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年5月20日,独国)を国際出願日とする出願であって,平成16年10月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成17年1月17日に審判請求がなされたものであり,その請求項1に係る発明は,平成16年7月6日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「塔頭部を有する風力装置において、 塔内部と、該風力装置の塔頭部を受けとめるのに適した連結部材を受けとめるためのフランジとを含んでいる、塔頭部を支持する塔と、 フランジから1.0mと7.0mとの間の間隔を隔てたところで塔内部に配置され、実質的に、塔内部の内壁に接続されたディスクを形成しているリング状隔壁とが設けられていることを特徴とする風力装置。」(以下「本願発明」という。) 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である,特開昭58-91378号公報(以下,「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。 「従来のプロペラ形風力発電装置は第1図で示すように変化する風向きに対して追従しなければならないため、ナセル1の内部に発電装置を配置してこのナセルを回転台2を介して静止体である塔3で支承する構造になつている。 そしてプロペラ4の回転軸5により増速歯車装置6を介してほぼ同一軸線上に配置した発電機7を駆動するので発電機7は横軸形となつている。従つて発電機7もナセル1と共に風向きにより回転する。そこで発電機7が発生する電力を回転部から静止部に導通させるため塔3の内部にスリツプリング8を備えている。」(1頁左下欄16行?同右下欄7行) 該記載及び第1図からみて,引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。 「塔3と,この塔3の頂部に回転台2を介して装着したプロペラ付ナセル1と,このナセル1の内部にプロペラ4の回転動力を伝達機構を介して電力に変換する発電機とを備えるとともに,発電機7が発生する電力を回転部から静止部に導通させるため塔3の内部にスリツプリング8を備えた風力発電装置」(以下,「引用発明」という。) 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると,その構造および機能からみて,引用発明の「プロペラ付ナセル1」,「回転台2」および「風力発電装置」は,それぞれ,本願発明の「塔頭部」,「連結部材」および「風力装置」に相当している。そして,引用発明において,「回転台2」を受け止める手段が存在することは明らかである。また,「塔3の内部にスリツプリング8を備え」ていることからみて,引用発明においても,「塔3」は塔内部を有しているといえる。 してみると,両者は, 「塔頭部を有する風力装置において, 塔内部と,該風力装置の塔頭部を受けとめるのに適した連結部材を受けとめるための手段とを含んでいる,塔頭部を支持する塔が設けられている風力装置。」 の点で一致し,下記の点で相違している。 (相違点1)本願発明では,連結部材を受けとめるための手段がフランジであるのに対し,引用発明では,フランジであるかどうか不明である点。 (相違点2)本願発明では,フランジから1.0mと7.0mとの間の間隔を隔てたところで塔内部に配置され,実質的に,塔内部の内壁に接続されたディスクを形成しているリング状隔壁が設けられているのに対し,引用発明では,そのようになっていない点。 先ず,相違点1について検討すると, フランジにより,風力装置の塔頭部を受けとめるのに適した連結部材を受けとめることは,本願優先日周知の技術事項である。 例えば,原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-138673号(実開昭62-47780号)のマイクロフィルムの明細書第4頁第17?20行には,「第1図は本考案による機械式旋回制限装置を備えた風車の上部を示す側面図で、図中1はナセル、2は支持筒、3はナセル旋回座用ベアリングで、ナセル1と支持筒2の間に設置されている。」と記載され,第1図には,支持筒2の頂部にはフランジが形成され,その上にナセル旋回座用ベアリング3を設けることが明示されている。(必要ならば,特開昭60-56181号公報の第3図,あるいは,実願平2-7494号(実開平3-99875号)のマイクロフィルムの第2図(a)も参照されたし。) してみると,引用発明において,塔の頂部のフランジにより「回転台2」を受け止めるようにすることは,上記周知の技術事項に基づき,当業者ならば適宜なし得る設計的事項に過ぎない。 次に,相違点2について検討すると, そもそも,本願発明や引用発明の「塔」と同一の技術分野に属する,一般の塔状構造物の補強手段として,塔内部の内壁にリング状の隔壁等を設けることは,本願優先日周知の技術事項である。 例えば,原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-25411号(実開昭58-128264号)のマイクロフィルムの明細書第2頁第13?19行には「この本体の長手方向に沿つて複数の節状補強材4が配置されこれら補強材4が配置されこれら補強材は本体の中空部内に挿入されている。節状補強材4は、例えば本体1と同一材質の補強材およびマトリックスからなるもので、第3図に示す如く予め円板状4a、円環状4b、円錐状4c、放射状4dに成形しておく。」,また,同書第3頁第13行?同第4頁第2行には「このようにして節状補強材4を固着した中空円筒状FRP製ポールは,曲げ荷重に対して楕円状に変形して破壊することがないので,同一厚さの節状補強材4がないものに比較して,耐力は数十パーセント増強されるのである。 なお,節状補強材による補強効果は,外径に対し厚さが薄い程,効果が大きいものであるので,FRPに限らず鋼管等厚さが薄い材質のものは同様の効果があり,本考案の技術的範囲に属するものとする。」と記載されている。(必要ならば,実願昭52-8612号(実開昭53-104039号)のマイクロフィルムの「補強リング」に関する記載および第1図も参照されたし。) そして,上記周知例の記載事項から明らかなように,外径に対し厚さが薄い塔状構造物において外力により円形断面が楕円状に変形し易いことは,当業者ならば十分予測し得る事項であり,本願明細書に記載された課題は,風力装置の塔に特有のものとはいえず,上記周知の技術事項を引用発明に適用することに十分な動機付けがあるといえる。 また,隔壁の位置は,塔の高さや隔壁の寸法(径,厚み等)及び強度,塔頭部の重量等を考慮して適宜設定されるものであり,本願明細書の段落【0015】の記載および図3?10を参酌しても,フランジから1.0mと7.0mとの間の間隔を隔てたところに配置することによって顕著な効果があるとも,また,その上下数値に臨界的意義があるともいえない。 してみると,上記周知の技術事項を,引用発明の「塔3」の補強手段として採用して,相違点2に係る本願発明のように構成することは,当業者が容易に想到することに過ぎないといわざるを得ない。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明および周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-01 |
結審通知日 | 2007-05-08 |
審決日 | 2007-05-28 |
出願番号 | 特願2000-620218(P2000-620218) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
西田 秀彦 砂川 充 |
発明の名称 | 風力装置 |
代理人 | 石野 正弘 |
代理人 | 河宮 治 |
代理人 | 青山 葆 |