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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20051439 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1165470
審判番号 不服2005-1648  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-31 
確定日 2007-10-10 
事件の表示 特願2001-180747「シアナートエステル含有絶縁組成物、これから製造した絶縁フィルム及び絶縁フィルムを備える多層印刷回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月27日出願公開、特開2002-338786〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年6月14日(優先権主張 平成13年5月15日 韓国(KR))の特許出願であって、平成16年2月17日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月21日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成16年10月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月31日に拒絶査定に対する審判請求書が提出され、平成17年3月2日に審判請求書の手続補正書(方式)および手続補正書が提出され、平成17年8月3日付けで前置報告がなされたものである。

第2.平成17年3月2日付け手続補正について
平成17年3月2日付け手続補正について、以下のとおり決定する。

[1].補正却下の決定の結論
平成17年3月2日付け手続補正を却下する。

[2].理由
[2]-1.本件手続補正の内容および補正の適否について
平成17年3月2日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正および発明の詳細な説明についての補正を含むものである。
その特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項1の
「【請求項1】エポキシ樹脂 1?75重量%と、下記化学式1?5:
【化1】


(上記式においてnは1ないし5の整数である)
【化2】


(上記式においてnは1ないし5の整数である。)
【化3】


【化4】


【化5】


のいずれかのシアナートエステル系樹脂の少なくとも2つの混合物1?60重量%と、硫酸バリウム, チタン酸バリウム, 酸化珪素粉末,無定形シリカ, 滑石, 粘土及びマイカ粉末から選択する充填剤9?20重量%と、硬化剤及び金属触媒とを含む絶縁組成物。」を、
「【請求項1】エポキシ樹脂 1?75重量%と、下記化学式1?5:
【化1】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である)
【化2】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である。)
【化3】(式省略)
【化4】(式省略)
【化5】(式省略)
のいずれかのシアナートエステル系樹脂の少なくとも2つの混合物1?60重量%と、硫酸バリウム, チタン酸バリウム, 酸化珪素粉末,無定形シリカ, 滑石, 粘土及びマイカ粉末から選択する充填剤9?20重量%と、硬化剤及び金属触媒とを含み、前記エポキシ樹脂の一部がNBR改質エポキシ樹脂である絶縁組成物。」と補正するものである。
この補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「エポキシ樹脂」について、「エポキシ樹脂の一部がNBR改質エポキシ樹脂である」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
また、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正である。
したがって、この補正は、特許法第17条の2第3項および第4項第2号の規定に適合する。
さらに、発明の詳細な説明についての補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正であり、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

[2]-2.独立特許要件について
上記のように、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する事項を目的とするものであるから、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて以下検討する。

[2]-2-1.補正発明
本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】エポキシ樹脂 1?75重量%と、下記化学式1?5:
【化1】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である)
【化2】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である。)
【化3】(式省略)
【化4】(式省略)
【化5】(式省略)
のいずれかのシアナートエステル系樹脂の少なくとも2つの混合物1?60重量%と、硫酸バリウム, チタン酸バリウム, 酸化珪素粉末,無定形シリカ, 滑石, 粘土及びマイカ粉末から選択する充填剤9?20重量%と、硬化剤及び金属触媒とを含み、前記エポキシ樹脂の一部がNBR改質エポキシ樹脂である絶縁組成物。」

[2]-2-2.引用文献の記載事項
原審の拒絶理由で引用された引用文献1(特開2000-239496号公報)、同引用文献2(特開平8-208808号公報)、同引用文献3(特開平6-248074号公報)には次の事項が記載されている。


引用文献1:特開2000-239496号公報
(1-1)
「【請求項1】 (A)1分子中に2個以上のシアナト基を含有するシアネート類化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化促進剤を主成分として含む樹脂組成物において、エポキシ樹脂が式(1)で表されるジシクロペンタジエン骨格を含有するジシクロペンタジエン-フェノール重付加物から誘導されるエポキシ樹脂であり、硬化促進剤として、1分子中に2個以上のシアナト基を含有するシアネート類化合物の硬化反応を促進させる触媒機能を有する化合物とエポキシ樹脂の硬化反応をそれぞれ促進させる触媒機能を有する化合物とを併用してなるシアネート・エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(ただし、式中nは0または正の整数を表す)
【請求項2】 1分子中に2個以上のシアナト基を含有するシアネート類化合物の硬化反応を促進させる触媒機能を有する化合物が有機金属塩または有機金属錯体であり、エポキシ樹脂の硬化反応をそれぞれ促進させる触媒機能を有する化合物がイミダゾール類化合物である請求項1に記載のシアネート・エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】 有機金属塩または有機金属錯体が、鉄、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、スズの有機金属塩または有機金属錯体である請求項2に記載のシアネート・エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】 (A)1分子中に2個以上のシアナト基を含有するシアネート類化合物100重量部に対して(B)エポキシ樹脂を50?250重量部、(C)硬化促進剤を0.1?5重量部含む請求項1?3のいずれかに記載のシアネート・エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲請求項1?4)
(1-2)
「【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐熱性、接着性等の特性を損なうことなく、ガラス転移温度が高く、優れた誘電特性と低い吸水率を有するシアネート・エポキシ樹脂組成物並びにそれを用いたプリプレグ、金属箔張り積層板及び印刷配線板を提供することを目的とした。」(段落【0010】)
(1-3)
「【発明の実施の形態】本発明のシアネート・エポキシ樹脂組成物に用いる(A)1分子中に2個以上のシアナト基を含有するシアネート類化合物は、下記式(2)で表される化合物がある。2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアネートフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアネートフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。」(段落【0012】)
(1-4)
「本発明のシアネート・エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて充填剤及びその他の添加剤を配合することができる。充填剤としては、通常、無機充填剤が好適に用いられ、具体的には溶融シリカ、ガラス、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、窒化珪素、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、チタン酸カリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなどが、粉末又は球形化したビーズとして用いられる。また、ウィスカ-、単結晶繊維、ガラス繊維、無機系及び有機系の中空フィラ-なども配合することができる。これらの配合量は、樹脂固形分100重量部に対して、5?30重量部配合することが好ましい。5重量部未満では充填材の配合効果が得られず、30重量部を超えると充填材の沈降や凝集が起こる傾向がある。」(段落【0028】)

引用文献2:特開平8-208808号公報
(2-1)
「【請求項1】(A) 一般式(1)
【化1】


(R1 ?R6 は夫々独立して水素原子、メチル基、CF3 基、ハロゲン原子のいずれかを表わす。)で表わされるシアネートエステル類、
一般式(2)
【化2】


(R1 ?R3 は、独立して水素原子、メチル基、ハロゲン基を示し、n は0?6の整数を表わす。)で表わされるポリシアネートエステル類、
4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニルシアネート、
それらシアネートエステル化合物のシアネート基が0-50%重合したシアネートエステル樹脂、およびそれらの1種以上の組合せから選択された少なくとも1種のシアネートエステル化合物、
(B) エポキシ樹脂、
(C) 硬化触媒、
からなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
・・・
【請求項5】 硬化触媒(C)が一般式(10)
Y-Z ・・・・(10)
(Yは Mn2+、Mn3+、Co2+、Co3+、Cu2+、 Zn2+、Ni2+、Al3+、Fe3+の各金属イオンを表わす。Zはナフテン酸、オクチル酸、アセチルアセトネート等の有機アニオンを表わす。]で表わされる金属塩および金属錯体、フェノール類、3級アミン類、及びこれらの1種以上の組合せから選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】 (A)成分100重量部に対して(B)成分が 0?400重量部、(C)成分が 0?10重量部であることを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】 請求項1?6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いて製造されることを特徴とする銅張積層板。
【請求項8】 請求項1?6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いて製造されることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
【請求項9】 請求項1?6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いて製造されることを特徴とするTABフイルムキャリアテープ。」(特許請求の範囲)
(2-2)
「【産業上の利用分野】本発明は、フレキシブル銅張積層板およびTABフイルムキャリアテープ用接着剤、さらには、銅張積層板用の硬化性樹脂組成物に関するものである。より詳細には、本発明は、ジシアネートエステル化合物及びその誘導体を主成分とし、場合によってはエポキシ樹脂および硬化剤、硬化触媒を含む硬化性樹脂組成物に関する。」(段落【0001】)
(2-3)
「本発明のような上記用途に適する樹脂組成物には高度の耐熱性と可撓性がまず要求される。これらについては先に述べた公知文献にその詳細が開示されている。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主体に硬化剤にジシアンジアミドを使用したものを挙げることができる。また、可撓性を付与するため熱可塑性樹脂も併用される場合があり、例えば反応性液状ゴム(両末端にカルボキシル基などの反応基をを導入した液状アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム)などが併用される。
【発明が解決しようとする課題】これら可撓性付与剤を使用すれば、ポリイミドフイルムや銅箔との接着性は大幅に改善されるが、使用する量が増すに従い著しく耐熱性を損なう。・・・」(段落【0005】?【0006】)
(2-4)
「本発明による硬化性樹脂組成物は実質的に混合物である。従って、工業的製造は比較的容易であり、適当な加熱装置の付いた撹拌機を用いて製造することができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて種々の安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、難燃剤、顔料、増量剤等の添加剤を加えても良い。」(段落【0031】)
(2-5)
「(実施例1)撹拌装置の付いた反応容器の中に、下記一般式(4) のシアネートエステル樹脂(フェノールノボッラクポリシアネート、nは約1.0)55重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量は189)45重量部、メチルエチルケトン 33.33重量部、オクチル酸マンガンのミネラルスピリット溶液(マンガンイオン含量8%)0.018重量部、2-メチルイミダゾール0.012重量部を投入し、環流冷却しながら80℃、1時間撹拌し、樹脂組成物を得た。」(段落【0032】)

引用文献3:特開平6-248074号公報
(3-1)
「【請求項1】 (a)一般式(1)で示されるシアネートエステル化合物及び/又はそのプレポリマー100重量部、(b)一般式(2)で示されるフェノール化合物50?200重量部、(c)臭素含有量30wt%以上の臭素化エポキシ樹脂50?200重量部からなる低誘電率熱硬化性樹脂組成物。
【化1】(式省略)」(特許請求の範囲)
(3-2)
「【産業上の利用分野】本発明は、低誘電率、低誘電正接で、金属への接着性に優れた高耐熱性でかつ難燃性を有する熱硬化性樹脂組成物に関するものであり、積層板、金属箔張積層板等に好適に使用されるものである。」(段落【0001】)
(3-3)
「本発明において用いられるシアネートエステル化合物は一般式(1)で示されるものであれば特に限定されるものではないが、具体例を示すと、1,3-ジシアナートベンゼン、1,4-ジシアナートベンゼン、1,3,5-トリシアナートベンゼン、1,8-又は2,6-又は2,7-ジシアナートナフタレン、4,4'-ジシアナートビフェニル、ビス(4-シアナートフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(4-シアナートフェニル)スルホン、トリス(4-シアナートフェニル)ホスファイト、1,1-ビス(4-シアナートフェニル)エタン、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。」(段落【0007】)
(3-4)
段落【0018】の表1には、実施例4は、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパンとビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタンを、それぞれを50重量部ずつ使用するものであり、また、実施例6には、上記のシアネートエステル化合物を、それぞれ30重量部と70重量部使用することが記載されている。

[2]-2-3.補正発明と引用文献2に記載された発明との対比、判断

(1)引用文献2に記載された発明
引用文献2には、その特許請求の範囲請求項1、5、6の記載からみて(摘示記載(2-1))、
「(A) 一般式(1)
【化1】(式省略)
(R1 ?R6 は夫々独立して水素原子、メチル基、CF3 基、ハロゲン原子のいずれかを表わす。)で表わされるシアネートエステル類、
一般式(2)
【化2】(式省略)
(R1 ?R3 は、独立して水素原子、メチル基、ハロゲン基を示し、n は0?6の整数を表わす。)で表わされるポリシアネートエステル類、
4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニルシアネート、
それらシアネートエステル化合物のシアネート基が0-50%重合したシアネートエステル樹脂、およびそれらの1種以上の組合せから選択された少なくとも1種のシアネートエステル化合物100重量部、
(B) エポキシ樹脂0?400重量部、
(C) 一般式(10)
Y-Z ・・・・(10)
(Yは Mn2+、Mn3+、Co2+、Co3+、Cu2+、 Zn2+、Ni2+、Al3+、Fe3+の各金属イオンを表わす。Zはナフテン酸、オクチル酸、アセチルアセトネート等の有機アニオンを表わす。](ここで]は、)の誤記と認められる。)で表わされる金属塩および金属錯体、フェノール類、3級アミン類、及びこれらの1種以上の組合せから選択された少なくとも1種の化合物である硬化触媒0?10重量部、
からなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。」の発明(以下、「引用文献2発明」という。)が記載されている。

(2)対比
引用文献2発明の一般式(1)シアネートエステル化合物は、補正発明の化学式3?5のシアナートエステル系樹脂に、同(2)のシアネートエステル化合物は、補正発明の化学式1?5のシアナートエステル系樹脂に相当し、その硬化触媒(C)は、補正発明における硬化剤及び金属触媒に相当するものである。
また、エポキシ樹脂とシアネートエステル化合物の配合割合も、補正発明と重複一致することは明らかである。
また、引用文献2発明の硬化性樹脂組成物は、銅張積層板、フレキシブル銅張積層板、TABフイルムキャリアテープ等に用いられるものであるから(摘示記載(2-1)、(2-2))、絶縁組成物であることは明らかである。
そうすると、両者は、
「エポキシ樹脂 1?75重量%と、下記化学式1?5:
【化1】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である)
【化2】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である。)
【化3】(式省略)
【化4】(式省略)
【化5】(式省略)
のいずれかのシアナートエステル系樹脂1?60重量%と、硬化剤及び金属触媒とを含む絶縁組成物。」点で一致し、以下の点で相違するものと認める。

相違点1:補正発明では、シアナートエステル系樹脂を少なくとも2つの混合物としているのに対し、引用文献2発明では、かかる限定はなされていない点。

相違点2:補正発明では、さらに、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化珪素粉末、無定形シリカ、滑石、粘土及びマイカ粉末から選択する充填剤を9?20重量%含むのに対し、引用文献2発明では、かかる限定はなされていない点。

相違点3:補正発明では、前記エポキシ樹脂の一部がNBR改質エポキシ樹脂であるとするのに対し、引用文献2発明では、かかる限定はなされていない点。

(3)相違点に対する判断
相違点1について
引用文献2には、シアナートエステル化合物を少なくとも2つの混合物とすることについて明記されてはいないが、引用文献2発明の「それらの1種以上の組合せから選択された少なくとも1種のシアネートエステル化合物」との事項は、混合物を示唆するものといえる。
また、引用文献3には、引用文献2発明と同様なシアネートエステル化合物を含む硬化性樹脂組成物(摘示記載(3-1)?(3-3))において、シアネートエステル化合物を2種の混合物とすることが具体的に記載されている(摘示記載(3-4))ように、かかる硬化性樹脂組成物においてシアネートエステル化合物を2種の混合物とすること自体は通常行われている事項である。
そうであるから、引用文献2発明においても、シアネートエステル化合物を少なくとも2つの混合物とすることは当業者が適宜なし得るものに過ぎず、そのことによる作用効果も格別顕著とはいえない。

なお、審判請求人は、補正された審判請求書において、シアネートエステル系樹脂PT-30とBA-230Sを併用したものが、PT-30のみのものに比べて耐熱性が向上すると主張しているが、シアネートエステル系樹脂とされるPT-30及びBA-230Sはその化合物が不明であるから、それが補正発明における化学式1?5のいずれのものに相当するのかは全く不明であり、補正発明における化学式1?5の少なくとも2つの混合物が耐熱性向上効果を奏することを裏付けるものと認めることはできない。

相違点2について
引用文献1には、引用文献2発明と軌を一にするシアネート・エポキシ樹脂組成物(摘示記載(1-1)?(1-3))において、無機充填剤を必要に応じて配合できること、その配合量は樹脂固形分100重量部に対して5?30重量部であることが記載されており、その充填剤として具体的に溶融シリカが挙げられている(摘示記載(1-4))。
したがって、引用文献2発明に、シリカ等の無機充填剤を添加することは当業者が適宜行う事項にすぎない。
さらに、補正発明における充填剤の量範囲は、引用文献1に記載された範囲と重複するものであり、通常の充填剤の量範囲に過ぎないものと認められ、その最適範囲を決定することは当業者であれば容易になし得るものである。
そして、補正発明において、特定の充填剤を、9?20重量%配合することにより、格別な効果を奏するものとも認められない。

相違点3について
引用文献2には、従来例として、エポキシ樹脂に、可撓性付与剤として、反応性液状ゴム(両末端にカルボキシル基などの反応基をを導入した液状アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム)などを併用することが記載されている(摘示記載(2-3))。当該エポキシ樹脂に反応性液状ゴム(両末端にカルボキシル基などの反応基をを導入した液状アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム)を併用して得られたエポキシ樹脂は、補正発明のNBR改質エポキシ樹脂に相当するものといえる。
[なお、このことは、本願出願時の公知文献である特開昭62-70476号公報の第2頁右下欄10行?第3頁左上欄に、「NBRエポキシとは、1分子中に2?3個のカルボキシル基を含む分子量数千の液状ポリブタジエンアクリロニトリル共重合体(B.F.Goodrich社製のCTBNや日本ゼオン社のDION液状NBR)を、過剰量の汎用エポキシとともに加熱混合し、触媒を加えるなどの反応操作によりカルボキシル基とグリシジル基をエステル基で結合し、NBRの骨格にグリシジルエーテル基をカルボキシル基の数だけ導入したプレポリマーをさす。製造の過程から明らかなように、NBRエポキシは汎用エポキシとの混合物として得られ、仕込の液状NBRの重量に、付加した汎用エポキシの重量を加えた重量がNBRエポキシの重量となる。1例をあげると、DGEBA(ビスフエノールAのジグリシジルエーテル)とCTBN1300×15を加熱混合して作ると、約60%がNBRエポキシで、残り約40%がDGEBA(ビスフエノールAのジグリシジルエーテル)である。NBRエポキシでは1種でもよいし、2種以上の混合物でもよい。
NBRエポキシが5重量部未満では剥離強度が十分には得られず、20重量部超では半田耐熱が不十分となる。10重量部?15重量部のときに最も良い接着性能が得られる。」と記載されており、引用文献2に記載されたエポキシ樹脂に両末端にカルボキシル基などの反応基をを導入した液状アクリルニトリルブタジエン共重合ゴムを併用して得られたエポキシ樹脂が、補正発明のNBR改質エポキシ樹脂に相当するものといえることは明らかである。]

さらに、引用文献2には、「可撓性付与剤(両末端にカルボキシル基などの反応基をを導入した液状アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム)を使用することにより接着性が大幅に改善されるが、使用する量が増すに従い著しく耐熱性を損なう」旨が記載されている(摘示記載(2-3))。
そうであれば、接着性の改善を目的として、引用文献2発明のエポキシ樹脂として、NBR改質エポキシ樹脂の使用を試み、その際に接着性と耐熱性とのバランスを考慮して、その添加量をエポキシ樹脂の一部とすることは当業者が適宜行う事項である。また、そのことによる作用効果も予測し得るところであって格別なものということはできない。

(4)まとめ
上記のとおり、上記相違点1?3に格別なものはなく、それらの組合せにおいて格別な効果を奏しているものともいえないものであるから、補正発明は、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[2]-3.結び
よって、この補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反し、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本件審判請求について

[1].本願発明
上記のとおり、平成17年3月2日付けの手続補正は却下されたので、本願請求項1?6に係る発明は、平成16年5月21日付け手続補正によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】エポキシ樹脂 1?75重量%と、下記化学式1?5:
【化1】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である)
【化2】(式省略)
(上記式においてnは1ないし5の整数である。)
【化3】(式省略)
【化4】(式省略)
【化5】(式省略)
のいずれかのシアナートエステル系樹脂の少なくとも2つの混合物1?60重量%と、硫酸バリウム, チタン酸バリウム, 酸化珪素粉末,無定形シリカ, 滑石, 粘土及びマイカ粉末から選択する充填剤9?20重量%と、硬化剤及び金属触媒とを含む絶縁組成物。」

[2].原査定の理由の概要

原査定の理由は、本願請求項1?6に係る発明は本出願前に頒布された引用文献1、2又は3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

[3].引用文献の記載事項

上記第2.[2]-2-2.に記載のとおり。

[4].対比・判断

本願発明は、上記補正発明における、前記エポキシ樹脂の一部がNBR改質エポキシ樹脂であるとする限定のないものであるから、引用文献2に記載された発明とは、上記に記載される相違点1、2において相違するものといえる。
しかるに、補正発明との対比・判断で示したとおり、相違点1、2は当業者が容易になし得る事項であって、格別なものはないから、本願発明も、補正発明と同様の理由により、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえるものである。

[5].結び

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、請求項2?6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-09 
結審通知日 2007-05-15 
審決日 2007-05-30 
出願番号 特願2001-180747(P2001-180747)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
P 1 8・ 575- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加賀 直人  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 宮坂 初男
渡辺 陽子
発明の名称 シアナートエステル含有絶縁組成物、これから製造した絶縁フィルム及び絶縁フィルムを備える多層印刷回路基板  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
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