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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1165488
審判番号 不服2002-22848  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-27 
確定日 2007-10-11 
事件の表示 平成5年特許願第301976号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成7年6月13日出願公開、特開平7-148324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年12月1日に出願したものであって、平成14年8月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成14年9月19日付けで手続補正がなされたが、平成14年10月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年11月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成14年12月26日付けで手続補正がなされ、その後当審において、平成19年5月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成19年7月17日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年7月17日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の記載のとおりのものである。
「時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個も検出しないとレベルを段階的に下降させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始し、時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個検出するとレベルを段階的に上昇させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始して次の遊技球の検出に備えるレベル決定装置と、
前記レベル決定装置で決定されたレベルを視覚的に表示するレベル表示装置とを備え、
前記レベル表示装置で表示されたレベルが所定のレベルに達した場合、遊技者に特別の利益を与えるように構成し、
所定の条件が成立すると前記所定期間の長さを変更することを特徴とする弾球遊技機。」

3.引用例に記載の発明
(1)引用例1に記載の発明
当審における平成19年5月11日付けで通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前である平成5年6月29日に頒布された特開平5-161742号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

記載事項1;「本発明は、可動部材によってその内部に形成された入賞空間と遊技盤の遊技領域との連通/遮断が行われる変動入賞装置が設置された遊技機に関し、特に、内部に流入した遊技球を一時的に貯留するための貯留部が形成された変動入賞装置を具えた遊技機に関する。」(段落0001)

記載事項2;「より具体的には、第2実施例の役物制御装置1600は補助変動装置制御部1600I,判定用球数調整部1600II,大当り制御部1600III、ロボット腕制御部1600IV、及び当り発生確率調整部1600Vよりなり、このうち補助変動装置制御部1600Iは、特定ゲート7を通過した遊技球の数を計数する通過球数計数手段1601,計数された値を表す信号を受けて補助図柄表示装置(第2実施例ではゲート通過数表示器として用いられる)52にてその値を表示させる球数表示手段1603,計数された数値が所定の値(所定個数の通過を表す)となっているか否かを判断する通過球数判定手段1602,この判断の結果に応じて、即ち計数値が上記所定の値に達したときに発生される上記判定手段1602からのオン信号に基づいて可動部材51,51を所定時間に亘って駆動する入賞装置制御手段1604,その駆動時間をカウントするタイマ1606,上記制御手段1604からの信号に基づいて可動部材51,51の動作中にその開放状態を示すべく開放表示器53,53を点滅させる開放表示制御手段605とを具ている。」(段落0120)

記載事項3;「…判定用球数調整部1600IIは、…遊技中の実際のベース値を算出するベース演算手段1612,キー挿入スイッチSW14からの信号及び図24に示す設定スイッチSW12の操作に応じて目標べース値を変更するベース値変更手段1613,上記算出された実際のベース値と目標ベース値との差異を判定するベース値比較判定手段1614,該判定手段1614による判定結果に基づいて、前述の特定ゲートを通過する遊技球球数の所定の値を予め設定された複数の値(例えば「3」,「6」,「10」)から選択する判定用球数変更手段1615を具ている。」(段落0121)

前記摘示の記載によれば、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「特定ゲート7を通過した遊技球の数を計数する通過球数計数手段1601と、
計数された値を表す信号を受けて補助図柄表示装置52にてその値を表示させる球数表示手段1603と、
計数された数値が所定の値となっているか否かを判断し、その判断の結果に応じて、可動部材51を所定時間に亘って駆動する入賞装置制御手段1604と、
算出された実際のベース値と目標ベース値との差異を判定するベース値比較判定手段1614による判定結果に基づいて、前記特定ゲート7を通過する遊技球球数の所定の値を予め設定された複数の値から選択する判定用球数変更手段1615とを備えた遊技機。」

(2)引用例2に記載の発明
当審における平成19年5月11日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開昭62-281986号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

記載事項4;「1人または複数のプレーヤーにより操作される複数個の入力スイッチと、各入力スイッチに対応した音声を録音し、再生指令に応じて録音内容を再生する録音再生手段と、各入力スイッチに対応して設けられた複数個の点灯表示手段と、前記入力スイッチからの信号が入力される一方、前記録音再生手段および前記点灯表示手段の動作を制御する信号を出力する制御手段とを備え、該制御手段は、前記録音再生手段から音声を再生すると同時に前記点灯表示手段のいずれかを点灯させ、その音声と点灯とが一致した入力スイッチをプレーヤーが操作した場合にそのプレーヤーの得点とするように構成されていることを特徴とする音声ゲーム装置。」(特許請求の範囲)

記載事項5;「まず、プレーヤーの持ち点を10に設定する。これは、後述のようにプレーヤーが1回失敗する毎に1ずつ減算し、10回失敗した時ゲームを終了するためである。次に、このゲームでは、得点に関係なく1回音声を発生する毎に所定時間(例えば10msec)ずつ点灯および発音時間を短縮することでゲームを次第に難しくするため、点灯および発音の移動時間すなわち次のカラーキーを点灯し且つ次の音声を発生するまでの時間間隔を変更する処理を行なう。そして、ゲーム終了とならない限り、録音されている4種類の音声(例えば各カラーキーの名称)を上記処理で設定した時間間隔でランダムに発生すると共に、同じタイミングで各カラーキーのライトをランダムに点灯する。この点灯および発音動作は、第9図に示すように、CPU15で発生する0?nの乱数に基づいて実行される。」(第4ページ左下欄第1-17行)

記載事項6;「上記の点灯および発音動作中に、プレーヤーが音声と点灯が一致したカラーキーを押すと得点1となる。例えば、「ブルー」と発音された時に青色のカラーキー7Bが点灯した場合、このキーを押すと得点が1点与えられる。これに対し、音声と点灯が一致しないカラーキーを押した場合、または一致したにもかかわらずそのカラーキーを押さなかった場合には、それまでの得点から1点減らす。同時に上述の持ち点すなわち失敗許容数から1を減算する。」(第5ページ右上欄第7-16行)

前記摘示の記載によれば、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「プレーヤーにより操作される複数個の入力スイッチと、各入力スイッチに対応した音声を録音し、再生指令に応じて録音内容を再生する録音再生手段と、各入力スイッチに対応して設けられた複数個の点灯表示手段と、前記入力スイッチからの信号が入力される一方、前記録音再生手段および前記点灯表示手段の動作を制御する信号を出力する制御手段とを備え、該制御手段は、前記録音再生手段から音声を再生すると同時に前記点灯表示手段のいずれかを点灯させ、
上記の点灯および発音動作中に、プレーヤーが音声と点灯が一致したにもかかわらずそのカラーキーを押さなかった場合には、それまでの得点から1点減らし、上記の点灯および発音動作中に、プレーヤーが音声と点灯が一致したカラーキーを押すと得点1となり、
得点に関係なく1回音声を発生する毎に所定時間ずつ点灯および発音時間を短縮することでゲームを次第に難しくするため、点灯および発音の移動時間すなわち次のカラーキーを点灯し且つ次の音声を発生するまでの時間間隔を変更する処理を行なうゲーム装置。」

4.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「遊技機」は本願発明の「弾球遊技機」に相当し、引用発明1について以下のa?cがいえる。
a.引用発明1の「特定ゲート7を通過した遊技球の数を計数する通過球数計数手段1601と、計数された値を表す信号を受けて補助図柄表示装置52にてその値を表示させる球数表示手段1603」は、「その値を表示させる」ために、何等かの決定装置を備えることは明らかであり、また、計数された値を表す信号を受けて補助図柄表示装置52に表示させる「その値」は、本願発明の遊技球の検出に基づく「レベル」と、「表示情報」という概念で共通するから、本願発明の「時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個も検出しないとレベルを段階的に下降させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始し、時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個検出するとレベルを段階的に上昇させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始して次の遊技球の検出に備えるレベル決定装置」と、「遊技球の検出に基づき表示情報を決定する決定装置と、前記決定装置で決定された表示情報を視覚的に表示する表示装置」で共通するものである。
b.引用発明1の「計数された数値が所定の値となっているか否かを判断し、その判断の結果に応じて、可動部材51を所定時間に亘って駆動する入賞装置制御手段1604」は、本願発明の「レベル表示装置で表示されたレベルが所定レベルに達した場合に、遊技者に特別の利益を与えるように構成」した点と、「表示装置で表示された表示情報が所定値に達した場合に、遊技者に特別の利益を与えるように構成」した点で共通するものである。
c.引用発明1の「算出された実際のベース値と目標ベース値との差異を判定するベース値比較判定手段1614による判定結果に基づいて、前記特定ゲート7を通過する遊技球球数の所定の値を予め設定された複数の値から選択する判定用球数変更手段1615」は、「特定ゲート7を通過する遊技球球数の所定の値を予め設定された複数の値」が、本願発明の「所定期間の長さ」と、「所定条件の成立に関する前提条件」という概念で共通するから、本願発明の「所定の条件が成立すると前記所定期間の長さを変更する」点と、「所定の条件が成立すると所定条件の成立に関する前提条件を変更する」点で共通するものである。

そうすると両者は、「遊技球の検出に基づき表示情報を決定する決定装置と、
前記決定装置で決定された情報を視覚的に表示する表示装置とを備え、
前記表示装置で表示された表示情報が所定値に達した場合に、遊技者に特別の利益を与えるように構成し、
所定の条件が成立すると所定条件の成立に関する前提条件を変更する弾球遊技機。」で一致し、以下の点で相違するものである。

相違点1;決定装置で決定された表示情報を視覚的に表示する表示装置について、本願発明は、レベルを表示するのに対して、引用発明1は、値を表示する点。

相違点2;遊技球の検出に基づき表示情報を決定する決定装置について、本願発明は、「時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個も検出しないとレベルを段階的に下降させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始し、時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個検出するとレベルを段階的に上昇させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始して次の遊技球の検出に備える」のに対して、引用発明1は、特定ゲート7を通過した遊技球の数を計数する点。
また、変更される所定条件の成立に関する前提条件について、本願発明は、「所定期間の長さ」であるのに対して、引用発明1は、「特定ゲート7を通過する遊技球球数の所定の値」である点。

5.判断
(1)相違点1について
回数等の情報を視覚的に表示するに際して、レベルにより表示することは、例えば、特公平4-19870号公報の第4欄第20-25行、特開平2-98383号公報の第4ページ左上欄第9-15行等に記載されるように周知技術であり、そのような周知技術を参酌して、引用発明1における表示手段をレベルによる表示とすることは、当業者が適宜成し得る程度のことである。

(2)相違点2について
本願発明と対比して、引用発明2について以下のa?fがいえる。
a.引用発明2の「点灯および発音動作中」は、タイマー等の時間カウンタによりゲーム時間が管理されるものであることは、技術常識に照らして、明らかなことであるから、「時間カウンタに基づく所定期間内に」ということができる。
b.引用発明2の「プレーヤーが音声と点灯が一致したにもかかわらずそのカラーキーを押さなかった場合には、それまでの得点から1点減ら」す点は、本願発明の「ゲートを通過する遊技球を1個も検出しないとレベルを段階的に下降させる」点と、「所定の単位遊技を達成しないと得点を段階的に減らす」点で共通するものといえる。
c.引用発明2の「プレーヤーが音声と点灯が一致したカラーキーを押すと得点1とな」る点は、本願発明の「ゲートを通過する遊技球を1個検出するとレベルを段階的に上昇させる」点と、「所定の単位遊技を達成すると得点を段階的に増やす」点で共通するものといえる。
d.引用例2の第8図のフローチャートには、「キー入力?」のステップでYESの場合に「正解?」のステップに移行し、該ステップでYESの場合に「得点+1」され、NOの場合に「持ち点-1」され(記載事項6によれば、同時にそれまでの得点から1減らす)、いずれの場合にも、特段の待ち時間なく「点灯及び発音の移動時間間隔の変更」のステップに移行して次のゲームを実行することが記載されており、前述したように、引用発明2は時間カウンタによりゲーム時間を管理するものであるから、引用発明2は、得点から1点減らす場合、得点1となる場合、いずれの場合にも、特段の待ち時間なく次のゲームを実行するもの、即ち、「時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始して次の」ゲームに備えるものといえる。
e.引用発明2の「得点に関係なく1回音声を発生する毎に所定時間ずつ点灯および発音時間を短縮することでゲームを次第に難しくするため、点灯および発音の移動時間すなわち次のカラーキーを点灯し且つ次の音声を発生するまでの時間間隔を変更する処理を行なう」点は、「1回音声を発生する毎に」が「所定の条件が成立すると」ということができるから、「所定の条件が成立すると所定期間の長さを変更する」ものといえる。
f.以上のa?eを勘案すると、引用発明2は、「時間カウンタに基づく所定期間内に所定の単位遊技を達成しないと得点を段階的に減らすと共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始し、時間カウンタに基づく所定期間内に所定の単位遊技を達成すると得点を段階的に増やすと共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始して次のゲームに備え、所定の条件が成立すると所定期間の長さを変更するゲーム装置。」ということができる。
ところで、弾球遊技機において遊技者に利益を付与するためのプロセスをどのようなものとするかは、当業者が適宜に設定し得る事項であり、その設定に際して、弾球遊技機分野はもとより、一般的なゲーム装置分野の発明、さらには、遊びやスポーツ等の決め事や常識を参酌することは、当業者にとって格別なことではなく、弾球遊技機である引用発明2に、一般的なゲーム装置である引用発明2を適用することは当業者が容易に想到できることである。
そして、上記fに記載した引用発明2の「所定の単位遊技を達成しないと」を「ゲートを通過する遊技球を1個も検出しないと」にすることは、適用に際して当然というべきであり、「所定の単位遊技を達成すると」を「ゲートを通過する遊技球を1個検出すると」に、「ゲームに備える」を「遊技球の検出に備える」にすることも同様であり、相違点1について検討したことを踏まえれば、「得点」を「レベル」に、「減らす」を「下降させる」に、「増やす」を「上昇させる」にすることも、当然というべきである。
そうすると、引用発明1に引用発明2を適用して、引用発明1の遊技球の検出に基づき表示情報を決定する決定装置を、「時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個も検出しないとレベルを段階的に下降させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始し、時間カウンタに基づく所定期間内にゲートを通過する遊技球を1個検出するとレベルを段階的に上昇させると共に前記時間カウンタを初期化した後前記時間カウンタに基づく所定期間の計測を開始して次の遊技球の検出に備える」決定装置とするとともに、変更される所定条件の成立に関する前提条件を、「所定期間の長さ」として、相違点2に係る構成にすることは、当業者が容易に想到できることである。

(3)作用効果について
本願発明の「遊技者は現在の遊技状態を認識することができ、「当たり」を狙う期待感による楽しみを特別の利益が与えられるまでの過程にもたらすことができる」との作用効果も、引用発明1、2及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-10 
結審通知日 2007-08-14 
審決日 2007-08-27 
出願番号 特願平5-301976
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進太田 恒明  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 渡部 葉子
土屋 保光
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 岡田 英彦  
代理人 福田 鉄男  
代理人 中村 敦子  

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