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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
管理番号 1165492
審判番号 不服2004-12018  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-10 
確定日 2007-10-11 
事件の表示 平成 6年特許願第246843号「治療装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月 2日出願公開、特開平 8- 84740号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年9月16日の出願であって、平成16年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成16年7月9日付けで手続補正がなされ、平成19年2月8日付けで当審において最後の拒絶理由が通知され、平成19年4月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年4月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年4月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年4月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「磁気共鳴診断装置によって収集された被検体内の画像情報に基づいて、前記被検体内の治療対象部位を認識し、治療用エネルギー照射手段から治療用エネルギーを該治療対象部位に照射して治療を行う治療装置において、
前記被検体内の画像情報の空間周波数データを収集する手段と、
前記空間周波数データより時間的に隣接する画像間のインパルス応答を求め、これらインパルスのピーク点から前記患者の動きを検出する手段と、
この手段により検出された動きに従い前記治療用エネルギー照射手段による前記治療用エネルギーの照射位置を変更する手段とを具備することを特徴とする治療装置。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された「患者の動きを検出する手段」が「空間周波数データ」より求めているのが、補正前には「インパルス応答または相互相関関数」であったものを「インパルス応答」のみに限定するものであり、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
当審における拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-105851号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、超音波を用いて治療目標の位置を検出し、さらに治療目標が移動した場合でも治療目標の位置をリアルタイムで検出して焦点位置を追従するように制御可能とする結石破砕装置を提供することを目的とする。また、本発明は、構成されているピエゾ素子数に対して少ない駆動回路で焦点位置の電子制御を可能とする超音波治療装置を提供することを目的とする。」(段落【0014】)
(イ)「【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の課題を解決するために、複数のピエゾ素子から発生する衝撃波を被検体内の被照射物に照射して破砕治療する超音波治療装置において、前記被検体内における被照射物近傍の複数の領域に探査用超音波を照射して、その反射波を受信する手段と、この手段により受信された複数の反射波に基づいて反射強度分布の重心位置を算出し、被照射物の位置情報を検出する手段と、この手段により検出された位置情報に基づいて前記複数のピエゾ素子の焦点位置を制御する手段とからなる超音波治療装置を提供する。
また、複数のピエゾ素子から発生する衝撃波を被検体内の被照射物に照射して破砕治療する超音波治療装置において、前記被検体の所望位置のプレーン投射画像を取得するX線撮像手段と、このX線撮像手段によって得られたプレーン投射画像に基づいて超音波断層面を決定し、この超音波断層面に対応する超音波断層像を取得する超音波画像撮像手段と、この超音波画像撮像手段によって得られた超音波断層像に基づいて被照射物の位置情報を算出する位置情報算出手段と、この位置情報算出手段によって得られた位置情報に基づいて前記各ピエゾ素子印加タイミングを制御するタイミング制御手段とからなる超音波治療装置を提供する。」(段落【0015】、【0016】)
(ウ)「【作用】本発明によれば、その位置に焦点を合わせて強力超音波を照射することで被検体の移動に追従し、常に焦点に被検体が存在することになり、被検体以外の組織への誤照射を低減できる。また従来のように、対象が焦点から移動した場合にでも照射しなくなることがなく治療効率を向上させることができる。
また、X線画像診断装置と超音波診断装置の併用又は超音波診断装置単独での使用で、超音波Bモード上に結石を描出する。」(段落【0020】、【0021】)
(エ)「また、前回の位置検出で得られた位置座標と今回得られた座標との差をとることで、前回と今回の送信間の移動ベクトルが得られる(S8 )。それを送信間の時間Δtで割ることで結石の移動速度ベクトルが得られる(S9)。これらは、結石情報として超音波画像診断装置10で得られた像をDSC11で重ね合わされCRT12上に表示される。これらの情報に基づいて、ライトペン、キーボード等で、或いはフィードバックループで次の強力超音波の照射焦点位置を決める(S10)。そして、その位置に向けて制御回路5で遅延回路4a,4b,…を受信時と同様にコントロールし、電源3から高電圧を各ピエゾ素子に供給し強力な治療用の強力超音波を照射する(S11)。」(段落【0032】)
(カ)「また上記実施例では治療部位の位置確認に超音波診断装置を用いたが、これ以外にもX-CTやMRIのように治療部位を3次元的に決定できる手段であればかまわない。」(段落【0079】)
(キ)上記記載事項(カ)に記載されているように、治療部位の位置確認にMRIを用いた場合には、MRIによって収集された被検体内の画像情報に基づいて被検体内の治療部位の位置確認を行うことになることは自明な事項である。

上記記載事項及び自明な事項を総合すると、引用例には、
「MRIによって収集された被検体内の画像情報に基づいて被検体内の治療部位の位置確認を行い、複数のピエゾ素子から発生する衝撃波を被照射物に照射して破砕治療する超音波治療装置において、
前回の位置検出で得られた位置座標と今回得られた座標との差をとることで移動ベクトルや移動速度ベクトル等の位置情報を検出する手段と
この手段により検出された位置情報に基づいて複数のピエゾ素子の焦点位置を制御する手段とからなる超音波治療装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
後者の「MRI」が、その機能・構造からみて前者の「磁気共鳴診断装置」に相当し、以下同様に、「治療部位」及び「被照射物」が「治療対象部位」に、「治療部位の位置確認を行い」が「治療対象部位を認識し」に、「複数のピエゾ素子」が「治療用エネルギー照射手段」に、「衝撃波」が「治療用エネルギー」に、「破砕治療する超音波治療装置」が「治療を行う治療装置」に、「複数のピエゾ素子の焦点位置を制御する手段」が「前記治療用エネルギー照射手段による前記治療用エネルギーの照射位置を変更する手段」に、それぞれ相当している。
また、後者の「前回の位置検出で得られた位置座標と今回得られた座標との差をとることで移動ベクトルや移動速度ベクトル等の位置情報を検出する手段」において、前回の位置検出で得られた位置座標と今回得られた座標との差が生じるのは、被照射物である被検体内の治療部位が動いたことによるものであることは明らかであるから、後者の「前回の位置検出で得られた位置座標と今回得られた座標との差をとることで移動ベクトルや移動速度ベクトル等の位置情報を検出する手段」は、患者の動きを検出しているといえ、前者の「前記空間周波数データより時間的に隣接する画像間のインパルス応答を求め、これらインパルスのピーク点から前記患者の動きを検出する手段」とは「時間的に隣接する画像から患者の動きを検出する手段」である点で共通しているといえる。
また、後者の「MRI」は被検体内の画像情報を収集しているのであるから、前者の「被検体内の画像情報の空間周波数データを収集する手段」に相当する構成を具備していることは明らかなことである。

したがって、両者は、
「磁気共鳴診断装置によって収集された被検体内の画像情報に基づいて、前記被検体内の治療対象部位を認識し、治療用エネルギー照射手段から治療用エネルギーを該治療対象部位に照射して治療を行う治療装置において、
前記被検体内の画像情報の空間周波数データを収集する手段と、
時間的に隣接する画像から患者の動きを検出する手段と、
この手段により検出された動きに従い前記治療用エネルギー照射手段による前記治療用エネルギーの照射位置を変更する手段とを具備する治療装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:時間的に隣接する画像から患者の動きを検出する手段が、前者では、前記空間周波数データより時間的に隣接する画像間のインパルス応答を求め、これらインパルスのピーク点から前記患者の動きを検出する手段であるのに対し、後者では、そのような構成となっていない点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
画像処理の分野で、時間的に隣接する画像間のインパルス応答を求めることにより物体等の動きを検出することは、例えば、特開平6-119450号公報、特開平4-11471号公報、特表昭64-500238号公報等にも記載されているように周知技術(必要であれば、本願の明細書の段落【0014】も参照)であり、これを用いて上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、本願発明の効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年7月9日付け手続補正で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「磁気共鳴診断装置によって収集された被検体内の画像情報に基づいて、前記被検体内の治療対象部位を認識し、治療用エネルギー照射手段から治療用エネルギーを該治療対象部位に照射して治療を行う治療装置において、
前記被検体内の画像情報の空間周波数データを収集する手段と、
前記空間周波数データより時間的に隣接する画像間のインパルス応答または相互相関関数を求め、これらインパルス応答または相互相関関数のピーク点から前記患者の動きを検出する手段と、
この手段により検出された動きに従い前記治療用エネルギー照射手段による前記治療用エネルギーの照射位置を変更する手段とを具備することを特徴とする治療装置。」

(1)引用例
当審における拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明の「患者の動きを検出する手段」が「空間周波数データ」より求めているのが、「インパルス応答」のみに限定されていたものを「インパルス応答または相互相関関数」とするものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに「患者の動きを検出する手段」が「空間周波数データ」より求めているのが、「インパルス応答」のみに限定されていた本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」で検討したように、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-26 
結審通知日 2007-07-31 
審決日 2007-08-27 
出願番号 特願平6-246843
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A61F)
P 1 8・ 121- WZ (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小菅 一弘安井 寿儀  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 北村 英隆
中田 誠二郎
発明の名称 治療装置  
代理人 鈴江 武彦  

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