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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E01C
管理番号 1165605
判定請求番号 判定2007-600009  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2007-11-30 
種別 判定 
判定請求日 2007-02-02 
確定日 2007-09-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第2623490号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号工法説明書及びイ号工法図面に示す「オーバーレイ工法」は、特許第2623490号特許の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求人である株式会社グラウンドデザイン研究所は、判定請求書のイ号工法説明書及びイ号工法図面に示す「オーバーレイ工法」(以下「イ号工法」という)が、特許第2623490号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しないとの判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件特許第2623490号の発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると次のとおりである。
A マンホール枠を含む舗装のオーバーレイ工法において、
B (a)マンホール枠蓋表面が剥離材で被覆されると共に舗装表面に剥離材表面も含めてオーバーレイが施工される工程、
C (b)マンホール枠周囲の舗装がオーバーレイ上から筒状に切断されると共に切断舗装版及びマンホール枠が撤去される工程、
D (c)マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築されると共に据え付け基礎上にマンホール枠がその上面をオーバーレイ表面の高さに合わせて設置される工程、及び
E (d)マンホール枠周囲の空洞部に舗装材がオーバーレイ表面の高さまで打設される工程からなる
F オーバーレイ工法。

第3 イ号工法
請求人が提出した判定請求書中のイ号工法の構成要件の分説、及び、判定請求書に添付して提出したイ号工法説明書並びにイ号工法図面(別添参照)によれば、イ号工法は、次のとおり特定される。
【イ号工法】
A-イ マンホール枠1を含む舗装4のオーバーレイ工法において、
B-イ マンホール枠蓋2表面に舗装4表面を含めてオーバーレイ5が直接施工される工程、
C-イ マンホール枠1周囲の舗装4がオーバーレイ5上から円環状であって切断面が円弧状に切断されると共に切断舗装版7及びマンホール枠1が機械的に及び手作業により撤去される工程、
D-イ マンホール基壁6上にマンホール枠1の据え付けのための3本のアンカーボルト11を直立状に設けると共に、各アンカーボルト11に螺合した支持具12によってマンホール枠1がその上面をオーバーレイ5表面の高さに合わせて設置される工程、及び
E-イ マンホール基壁6上面とマンホール枠1下面との間の開放部を内側から閉塞材6’により閉塞した状態でマンホール枠1周囲の空洞部に舗装材10が充填され、前記舗装材10の上に表層材13がオーバーレイ5表面の高さまで打設されるとともに前記閉塞材6’が除去される工程からなる
F-イ オーバーレイ工法。

第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、判定請求書3頁下から2行?7頁14行において、概略次の理由によりイ号工法は、本件特許発明の技術的範囲に属しない旨主張している。
(A)本件特許発明の構成要件Aと、イ号工法の構成A-イとは、同一であると認める。
(B)本件特許発明の構成要件Bと、イ号工法の構成B-イとを比較すると、本件特許発明の構成要件Bでは、マンホール枠蓋表面を剥離材で被覆し、その後オーバーレイを、舗装表面及びマンホール表面の剥離材表面を含めて施工するのであるが、イ号工法の構成B-イでは、マンホール枠蓋2表面を剥離材で被覆しないで、舗装4表面及びマンホール枠蓋2表面に直接オーバーレイ5を施工するのであり、この点において相違する。
(C)本件特許発明の構成要件Cと、イ号工法の構成C-イとは、舗装の切断、切断舗装版及びマンホール枠の撤去という概念では共通するかもしれないが、本件特許発明の構成要件Cは、実施例の説明によれば、マンホール枠周囲の舗装を単に円筒状にマンホール基礎上面の深さまで切断し、切断舗装版及びマンホール枠の撤去が全て機械的手段であって、切断された形態のままで撤去されるのであるのに対して、イ号工法の構成C-イでは、舗装4を円環状であって切断面が円弧状にマンホール基壁6まで切断するもので、切断舗装版7及びマンホール枠1の撤去が機械的手段と手作業である点で相違する。
また、効果の点においても本件特許発明とイ号工法とには著しい差がある。
(D)本件特許発明の構成要件Dと、イ号工法の構成D-イとを比較すると、本件特許発明の構成要件Dでは、マンホール基壁上に据え付け基礎が構築されてその上面にマンホール枠が設置されるので、マンホール枠の上面とオーバーレイ表面の高さを合わせるのが据え付け基礎の高さによるものであるのに対して、イ号工法の構成D-イでは、マンホール基壁6上に3本のアンカーボルト11が直立状に設けられ、そのアンカーボルト11に螺合した支持具12により調整された高さによってマンホール枠1がオーバーレイ5表面の高さ合わせて設置される点で相違する。
(E)本件特許発明の構成要件Eと、イ号工法の構成E-イとを比較すると、本件特許発明の構成要件Eでは、マンホール枠周囲の空洞部に舗装材を単に打設するだけであるが、イ号工法の構成E-イでは、開放部を閉塞材6’で閉塞して舗装材を打設し、舗装材の打設後に閉塞材6’を除去する必要があるので、この点において本件特許発明の構成要件Eと明らかに相違する。
(F)本件特許発明の構成要件Fとイ号工法の構成F-イとは、いずれもオーバーレイ工法であるから同一と認める。
以上のとおり、本件特許発明とイ号工法とは、構成要件Bと構成B-イ、構成要件Cと構成C-イ、構成要件Dと構成D-イ、構成要件Eと構成E-イにおいて顕著な相違があり、作用効果において著しく相違するものである。

2.被請求人の主張
被請求人は、判定答弁書において、次のように主張している。
(1)イ号工法の構成A-イ及び構成F-イが、本件特許発明の構成要件A及びFを充足する。
(2)舗装表面にオーバーレイを施工する場合、舗装の全表面にタックコートが散布される。イ号工法において、現実に実施可能な技術とするためには、オーバーレイ施工時にタックコートがマンホール蓋の表面に付着しないように、蓋の表面をマスキングすることが必要であり、請求人の特定するイ号工法の構成B-イは非常識な技術であって実施されるはずはない。
そうすると、施工を予定しているイ号工法は、実際に実施されるときには、蓋の表面を被覆材により被覆するものであって、本件特許発明の構成要件Bを充足することは明らかである。
(3)本件特許発明の構成要件Cは、舗装を「筒状に切断」するものであって「円筒状」に限定されておらず、「切断面が円弧状」のものが含まれる。
また、切断舗装版及びマンホール枠の切断手段及び撤去手段は限定されていない。
したがって、構成要件Cは、イ号工法の構成C-イにおける「マンホール枠1周囲の舗装4がオーバーレイ5上から円環状であって切断面が円弧状に切断される」、「切断舗装版7及びマンホール枠1が機械的に及び手作業により撤去される」を含むものであり、イ号工法の構成C-イは本件特許発明の構成要件Cを充足する。
(4)イ号工法の構成D-イは、3本のアンカーボルトと支持具によって据え付け基礎を構成するものであり、本件特許発明の構成要件Dを充足する。
(5)イ号工法の構成E-イは、閉塞材6’の助けを借りるものであるとしても、マンホール周囲に「空洞部」が存在しその空洞部に舗装材10を充填し、舗装材10と表層材13の2層構造の舗装材がオーバーレイ5表面の高さまで打設されるものであるから、本件特許発明の構成要件Eを充足する。
(6)したがって、イ号工法は本件特許発明の技術的範囲に属する。

第5 対比・判断
判定被請求人は、イ号工法の構成B-イの「マンホール枠蓋2表面にオーバーレイ5が直接施工される」のは非常識であり、施工を予定しているイ号工法は蓋の表面を被覆材により被覆するものである旨主張するが、判定請求人は、「マンホール枠蓋2表面にオーバーレイ5が直接施工される」工法についての判定を求めるものであるから、制度の趣旨に鑑み、請求人の特定したイ号工法について、以下、対比・判断する。

(1)イ号工法の構成A-イ及びF-イは、本件特許発明の構成要件A及びFを充足している。

(2)イ号工法の構成B-イと、本件特許発明の構成要件Bとを対比する。
本件特許発明の構成要件Bは、「マンホール枠蓋表面が剥離材で被覆される」ものであるところ、イ号工法の構成B-イは、マンホール枠蓋表面にオーバーレイが直接施工されるもので、蓋表面が剥離材で被覆されないものであるから、本件特許発明の構成要件Bを充足していない。

(3)イ号工法の構成C-イと、本件特許発明の構成要件Cを対比する。
本件特許発明の構成要件Cは、「マンホール枠周囲の舗装がオーバーレイ上から筒状に切断される」工程と「切断舗装版及びマンホール枠が撤去される」工程からなる。
本件特許明細書には、構成要件Cの「筒状に切断」について次のように記載されている。
「次に、工程(b)?(d)において、マンホール枠周囲の舗装を四角形に切断する旧来の舗装工法、或は特公昭61-25844号公報や特公昭61-33938号公報に開示されるように、マンホール枠周囲の舗装を円形状に切断する改良された舗装工法等に従って、マンホール枠周囲の舗装の筒状切断、切断舗装版及びマンホール枠の撤去、マンホール基壁上へのマンホール枠の据え付け基礎の構築、据え付け基礎上へのマンホール枠の設置及びマンホール枠周囲の空洞部への舗装材の打設が順次行われる。」(段落【0006】)
「マンホール枠周囲の舗装の切断等に際して、切断手段に特別の制限はない。円筒状切断の場合に、例えば特公昭61-52283号公報に開示されるような円筒状ビットを備えた路面円形切断機を好適に利用でき、またオーバーレイ上から切断中心を特定するために、金属探知機等の公知の探知手段を使用して内部のマンホール枠蓋の位置を確認してもよい。」(段落【0007】)
これらの記載によれば、「筒状」とは、マンホール枠周囲の舗装の切断形状を指すと認められるが、この形状は、マンホール枠を囲むものであれば角形でも円形でもよいものであり、円筒形に限られないことは明らかである。
さらに、本件特許明細書に例示された特公昭61-25844号公報には、円盤状切断機を傾斜させることによりマンホール枠周囲の舗装を円錐状に切断する工法が開示されており(特許請求の範囲第2項、2頁3欄17?21行参照)、「筒状」には、垂直に切断することだけでなく、円錐状や円弧状に切断することも含まれていることは明らかである。
また、本件特許明細書には、構成要件Cの「切断舗装版及びマンホール枠の撤去」について次のように記載されている。
「マンホール枠周囲の切断舗装版は、ブレーカーを使用する破砕により撤去されてもよいが、作業性の向上や騒音振動の防止等の観点から特公昭61-33938号公報に開示されるようにマンホール枠に付着したままで撤去されることが好ましい。切断舗装版及びマンホール枠を一体的に撤去するために、例えば実開昭59-156942号公報や実開昭59-193679号公報に開示されるように、マンホール枠とマンホール基壁との間にマンホール枠内部から放射状に拡縮するくさび体やアームを挿入するようにしたマンホール枠引き上げ機やマンホール枠剥離機等を必要に応じて利用できる。」(段落【0007】)
この記載によれば、切断舗装版の撤去は、破砕して撤去しても、マンホール枠と一体に撤去してもよいものであり、撤去手段を問わないことは明らかである。
さらに、マンホール枠周囲の切断舗装版を切断後破砕して撤去してもよいものであるから、据え付け基礎が構築される限り、切断の深さを問わないことも明らかである。
そして、イ号工法の構成C-イは、「マンホール枠1周囲の舗装4がオーバーレイ5上から円環状であって切断面が円弧状に切断される」と共に「切断舗装版7及びマンホール枠1が撤去される」ものであるから、本件特許発明の構成要件Cを充足している。

(4)イ号工法の構成D-イと、本件特許発明の構成要件Dを対比する。
本件特許発明の構成要件Dに関して、本件特許明細書には次のように記載されている。
「工程(c)において、マンホール枠は先に施工されたオーバーレイの表面の高さに合わせて設置されることになり、これは、高さ調節済みのマンホール枠の上面の高さに合わせてオーバーレイが施工される従来の技術と逆の手順となる。」(段落【0006】)、
「さらに、図1(c)に示すように、マンホール基壁6上に厚い粗調整材と薄い微調整材との組み合わせからなるマンホール枠1の据え付け基礎9が所要高さに構築されると共に据え付け基礎9上にマンホール枠1がその上面をオーバーレイ5表面の高さに合わせて設置され、」(段落【0009】)。
これらの記載によれば、構成要件Dにおける「マンホール枠の据え付け基礎」は、マンホール基壁上に設けられ、マンホール枠を据え付ける際の支持部を形成し、マンホール枠の上面をオーバーレイ表面の高さに合わせるものであり、このような機能を有するものであれば、どのような構造のものでもよいことは明らかである。
そして、イ号工法の構成D-イの「マンホール枠1の据え付けのための3本のアンカーボルト11」は、マンホール基壁6上にマンホール枠1を据え付けるために直立状に取り付けられるものであり、「各アンカーボルト11に螺合した支持具12」とともにマンホール枠1の高さを調整して支持するものであるから、該3本のアンカーボルト11と支持具12は「マンホール枠の据え付け用の基礎」に相当する。
そうすると、イ号工法の構成D-イは、マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築されると共に据え付け基礎上にマンホール枠がその上面をオーバーレイ表面の高さに合わせて設置される工程を有しているから本件特許発明の構成要件Dを充足している。

(5)イ号工法の構成E-イと、本件特許発明の構成要件Eを対比する。
イ号工法の構成E-イは、「マンホール枠1周囲の空洞部に舗装材10が充填され、前記舗装材10の上に表層材13がオーバーレイ5表面の高さまで打設される」工程を有している。ここで、舗装材10も表層材13も舗装用材料であって、本件特許発明の「舗装材」に相当するから、イ号工法の構成E-イは本件特許発明の構成要件Eを充足している。
請求人は、イ号工法の構成E-イは、アンカーボルト周囲の開放部を閉塞材6’で閉塞してから舗装材を打設し、舗装材の打設後に閉塞材6’を除去する必要があるので、本件特許発明の構成要件Eと相違する旨主張するが、閉塞材6’を使用するものであるとしても、マンホール枠周囲の空洞部に舗装材10を充填し、舗装材10の上に表層材13がオーバーレイ5表面の高さまで打設されるとのイ号工法の構成E-イが、「マンホール枠周囲の空洞部に舗装材がオーバーレイ表面の高さまで打設される工程」を具備していることに変わりはない。

(6)したがって、イ号工法は、本件特許発明の構成要件Bを充足していないから、本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、イ号工法は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
 
別掲

 
判定日 2007-09-14 
出願番号 特願平3-359361
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (E01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 小山 清二
伊波 猛
登録日 1997-04-11 
登録番号 特許第2623490号(P2623490)
発明の名称 オーバーレイ工法  
代理人 福田 伸一  
代理人 高垣 泰志  
代理人 福田 賢三  
代理人 中野 収二  
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