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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B65D
管理番号 1165607
判定請求番号 判定2007-600048  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2007-11-30 
種別 判定 
判定請求日 2007-05-31 
確定日 2007-10-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第3737091号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「記録媒体用ディスク収納ケース」は、特許第3737091号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 【1】請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、別紙イ号図面及び説明書に示すCD/DVD用ケースは、特許第3737091号発明(以下、「本件特許発明」という)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

【2】本件特許発明
本件特許発明は、その明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められる。
「1.CD等のディスク状媒体を収納するボトムと、該ボトムを閉蓋するカバー体とから矩形状に構成された記録媒体用ディスク収納ケースにおいて、2.前記カバー体は、矩形の主面を構成する上壁を有し、
3.該上壁の前方及び後方を開放して前方及び後方を除く両側に左右側壁を有し、
4.前記開放後方側には、左右側壁より低い高さ位置で前方へ延長した舌片状の断面逆L字状に後方保持用タブを上下に2個形成し、
5.該後方保持用タブと対向する開放前方側には、前記後方保持用タブと同様に左右側壁より低い高さ位置に、中央に指挿入開放部を設けるように舌片状の断面逆L字状に前方保持用タブを上下に2個形成して、
6.右又は左綴じの縦折り方向に弾性及び復元力を持つ冊子体を保持する構成となっていることを特徴とする
7.記録媒体用ディスク収納ケース。」
なお、「1」ないし「7」は、分説のために便宜上付した記号である。
【3】イ号物件
まず、イ号物件の左右側壁についてみると、「イ号図面」(甲第2号証)の【図1】【図6】及び【図7】から、「側壁延長部M」より低い高さの「左右側壁2、2」が形成されているものと認められる。
したがって、請求人が提出した平成19年5月31日付判定請求書第3頁の「(4)イ号物件の説明」の記載、「イ号図面」(甲第2号証)、「イ号説明書」(甲第3号証)及び平成19年9月5日付弁駁書第1?2頁「イ号物件の構成要件(D)及び(E)について」の記載によれば、イ号物件は、次のとおりのものと認められる。
「A.CD等のディスク状媒体を収納するボトムと、該ボトムを閉蓋するカバー体とから矩形状に構成された記録媒体用ディスク収納ケースにおいて、
B.前記カバー体は、矩形の主面を構成する上壁1を有し、
C.該上壁1の前方に前壁6及び後方に後壁3を設けて両側に左右側壁2、2を有し、
D.前記後方側には、側壁延長部Mより低い高さの左右側壁2、2より高い高さで後壁3を形成し、該後壁3の上縁に前記左右側壁と2、2と略同位置に舌片状の後方保持用タブ4を上下に2個形成し、
E.該後方保持用タブ4と対向する前方側には、前記後壁と同様に、側壁延長部Mより低い高さの左右側壁2、2より高い高さで中央に切り欠き部(7)を設けて上下に前壁6を形成し、該前壁6の上縁に前記左右側壁と2、2と略同位置に舌片状の前方保持用タブ8をそれぞれ形成している
F.CD/DVD用ケース。」
なお、「A」ないし「F」は、分説のために便宜上付した記号である。
【4】当審の判断
1.本件特許発明とイ号物件との対比
本件特許発明とイ号物件を対比すると、イ号物件の構成Aは本件特許発明の構成要件1を充足し、イ号物件の構成Bは本件特許発明の構成要件2を充足し、イ号物件の構成Fは本件特許発明の構成要件7を充足するものと認められるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件1、2、7を充足するといえ、この点については、当事者間に争いはない。(判定請求書3頁24行?28行、9頁20?25行及び答弁書2頁4行?6行参照)
また、イ号物件には後方保持用タブ4と前方保持用タブ8の具体的な高さは明確に記載されていないものの、右又は左綴じの縦折り方向に弾性及び復元力を持つ冊子体を保持し得るものであることは明らかである。
よって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件6「右又は左綴じの縦折り方向に弾性及び復元力を持つ冊子体を保持する構成となっている」を充足するといえる。
したがって、両者は、次の点において相違する。
相違点1
本件特許発明においては、「前方及び後方を開放して」いるのに対して、イ号物件においては、「前方に前壁6及び後方に後壁3を設けて」いる点。 相違点2
本件特許発明においては、「左右側壁より低い高さ位置で前方へ延長した断面逆L字状に後方保持用タブを形成し、左右側壁より低い高さ位置に、断面逆L字状に前方保持用タブを形成して、」いるのに対して、イ号物件においては、「側壁延長部Mより低い高さの左右側壁2、2より高い高さで後壁3を形成し、該後壁3の上縁に前記左右側壁と2、2と略同位置に後方保持用タブ4を形成し、側壁延長部Mより低い高さの左右側壁2、2より高い高さで上下に前壁6を形成し、該前壁6の上縁に前記左右側壁と2、2と略同位置に前方保持用タブ8をそれぞれ形成して、」いる点。
よって、イ号物件の構成は、文言上、本件特許発明の構成要件を充足しないことは明らかである。

2.均等の判断
最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡、民集52巻1号113頁)は、特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中に、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という)と異なる部分が存在する場合であっても、以下の対象製品等は、特許請求の範囲に記載された製品等と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であるとしている。
(1)相違部分が、特許発明の本質的な部分でない。
(2)相違部分を対象製品等の対応部分と置き換えても、特許発明の目的を達することでき、同一の作用効果を奏する。
(3)対象製品等の製造時に、異なる部分を置換することを、当業者が容易に想到できる。
(4)対象製品等が、出願時における公知技術と同一又は当業者が容易に推考することができたものではない。
(5)対象製品等が特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない。
(以下、上記(1)ないし(5)の要件を均等の要件(1)ないし(5)という。)
そこで、本件において、上記相違点1及び2が、上記均等の要件(1)ないし(5)を満たすことにより、イ号装置が本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、その技術的範囲に属するか否かについて、次に検討する。

相違点1について
審査の過程において、平成17年6月1日付けで拒絶理由の通知を受けた請求人である本件特許発明の出願人は、平成17年8月1日付け手続補正書により、特許請求の範囲に記載された「該上壁の周囲の前方を除く三方に左右側壁、後壁を有し、」を「上壁の前方及び後方を開放して前方及び後方を除く両側に左右側壁を有し、」とする補正を行い、その結果、「前方及び後方を開放して」いない「記録媒体用ディスク収納ケース」は、本件特許発明の技術的範囲には含まれないものとなった。
これに対し、イ号物件は、「上壁1の前方に前壁6及び後方に後壁3を設けて」いるものであり、「前方及び後方を開放して」いない。
そうすると、イ号物件は、本件特許発明の出願手続において、本件特許発明から意識的に除外されたものに当たるので、イ号物件は、均等の要件(5)を満たさないものとするのが相当である。
したがって、相違点1により、均等の要件(5)を満足しないから、他の要件については検討するまでもなく、均等なものとはいえない。

相違点2について
審査の過程において、平成17年6月1日付けで拒絶理由の通知を受けた請求人である本件特許発明の出願人は、平成17年8月1日付け手続補正書により、特許請求の範囲に記載された「該後壁には、前方へ延長した舌片状の後方保持用タブを上下に複数個形成し、」及び「該後方保持用タブと対向する開放前方側には、前記後方保持用タブと同一又は異なる高さで、舌片状の前方保持用タブを断面逆L字状に上下に複数個形成して」をそれぞれ「前記開放後方側には、左右側壁より低い高さ位置で前方へ延長した舌片状の断面逆L字状に後方保持用タブを上下に2個形成し、」及び「該後方保持用タブと対向する開放前方側には、前記後方保持用タブと同様に左右側壁より低い高さ位置に、中央に指挿入開放部を設けるように舌片状の断面逆L字状に前方保持用タブを上下に2個形成して、」とする補正を行い、その結果、「左右側壁より低い高さ位置」でない「後方保持用タブ」及び「前方保持用タブ」は、本件特許発明の技術的範囲には含まれないものとなった。
これに対し、イ号物件は、「左右側壁と略同位置」の「後方保持用タブ」及び「前方保持用タブ」であり、「左右側壁より低い高さ位置」でない「後方保持用タブ」及び「前方保持用タブ」といえる。
請求人は、「イ号物件の左右側壁2,2は通常の側壁より1/2程度低く形成されたものであり、通常高さの側壁であればイ号物件の後方保持用タブ4及び前方保持用タブ8は左右側壁より低い高さ位置に相当するものである。」旨主張する。(弁駁書1頁下から6行?3頁10行参照)
しかし、イ号物件の左右側壁2、2は、側壁延長部Mよりは低い高さであることは、イ号図面から明らかであるものの、請求人が主張する「通常の」側壁自体が具体的にどのような高さであるのか明確でないから、通常の側壁より1/2程度低く形成されたとされる左右側壁2、2の高さも明確でない。
仮に請求人が主張するとおり、イ号物件において、左右の側壁2、2が通常の側壁より1/2程度の低く形成され、結果として、イ号物件の後方保持用タブ4及び前方保持用タブ8が、本件特許発明の後方保持用タブ及び前方保持用タブと同等の高さにあるものとしても、これを達成する具体的構造が、イ号物件においては、後壁3の上縁及び前壁6の上縁に形成されたものであり、一方、本件特許発明においては、カバー体の矩形の主面を構成する上壁の開放後方側及び前方開放側に形成されたものであって、イ号物件と本件特許発明とは、後方保持用タブ及び前方保持用タブの高さを設定するために講じた技術的手段及び具体的構造がまったく異なるものであり、かつ、上記「相違点1について」で検討したとおり、イ号物件において、後方保持用タブ4及び前方保持用タブ8が形成される後壁3、前壁6自体が意識的に除外されているのであるから、請求人の上記主張は採用できない。
そうすると、イ号物件は、本件特許発明の出願手続において、本件特許発明から意識的に除外されたものに当たるので、イ号物件は、相違点2により、均等の要件(5)を満たさないものとするのが相当である。
したがって、相違点2については、均等の要件(5)を満足しないから、他の要件については検討するまでもなく、均等なものとはいえない。

3.イ号物件の容易想到性
請求人は「本件特許発明の特徴は、開放前方側に中央に指挿入開放部を設けるように舌片状の前方保持用タブおよび後方開放側に舌片状の後方保持用タブを形成したものであり、この点を記載ないし示唆されている文献等は存在しない。したがって、 イ号物件は公知文献より容易に推考し得たものではない」旨主張する。(判定請求書1頁下から5行?5頁4行参照)
そこで、念のため、イ号物件が均等の要件(4)を満たすか否か検討する。
「舌片状の前方保持用タブおよび後方開放側に舌片状の後方保持用タブを形成した」点は、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2001-097471号公報、特開平10-053291号公報、実願昭63-087125号(実開平02-008793号)のマイクロフィルム、特開2001-247185号公報にそれぞれ記載されており、また、「開放前方側に中央に指挿入開放部を設ける」点は、特開平10-053291号公報に記載されている。
そして、左右側壁、前方保持用タブ及び後方保持用タブの高さは、ケース、冊子体、媒体等の厚みに応じて、適宜選択し得るものであるから、イ号物件は、上述した公知文献を適宜組み合わせることにより当業者が容易に発明し得たものである。
したがって、イ号物件が、「公知文献より容易に推考し得たものではない」という請求人の主張は採用しない。
よって、イ号物件は、均等の要件(4)を満足しないから、均等なものとはいえない。

4.利用発明
請求人は、「イ号物件、・・本件特許発明の構成、作用効果を実質的に利用しているものである。したがってイ号図面並びにその説明書に示すCD/DVD用ケースは特許第3737091の「利用発明」に相当する。」と主張する。(弁駁書3頁下から5行?4頁2行参照)
しかし、イ号物件における構成は、本件特許発明における構成要件を充足するものではないことは既に述べたとおりであるから、イ号物件が、本件特許発明の利用発明に当たるという請求人の主張は採用しない。

【5】むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
 
別掲
 
判定日 2007-10-10 
出願番号 特願2003-184388(P2003-184388)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直阿部 利英  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 田中 玲子
関口 勇
登録日 2005-11-04 
登録番号 特許第3737091号(P3737091)
発明の名称 記録媒体用ディスク収納ケース  
代理人 熊谷 繁  
代理人 野口 繁雄  

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