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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65G
管理番号 1166230
審判番号 無効2006-80017  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-02-08 
確定日 2007-09-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3637820号発明「移動体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3637820号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3637820号に係る発明についての出願は、平成11年9月28日に出願され、平成17年1月21日に特許の設定登録がなされたものである。
(2)これに対して、平成18年2月8日付けで請求人中西金属工業株式会社より本件無効審判の請求がなされ、平成18年4月28日付けで被請求人より答弁書及び訂正請求書が提出された。
(3)その後、平成18年9月1日に口頭審理が実施され、被請求人は平成18年9月1日付け口頭審理陳述要領書の記載のとおり陳述した。
(4)さらに、請求人から平成18年9月8日付けで上申書が提出された。

2.請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において「特許第3637820号の請求項1、2及び3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、その理由として概ね次の(1)のように主張するとともに、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証と「フレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結する縦方向軸の端部に被案内装置を連結する構成」の周知例として甲第4号証ないし甲第9号証を提出した。

(1)本件の請求項1ないし請求項3に係る特許発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)証拠方法
甲第1号証特開平7-25441号公報
甲第2号証特開平4-212668号公報
甲第3号証実願昭58-44548号(実開昭59-149558号)のマイクロフィルム
甲第4号証 特開昭61-166768号公報
甲第5号証 特公昭54-33432号公報
甲第6号証 特開昭55-52805号公報
甲第7号証 西独国特許出願公開第3922084号明細書
甲第8号証 特開平3-216465号公報
甲第9号証 特開平8-3826号公報

3.被請求人の主張の概要
(1)被請求人は、平成18年4月28日付け訂正請求書において明細書の訂正を請求した上で、平成18年4月28日付け答弁書において、訂正された本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明について、『「本件特許発明は、本件特許出願前に当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである」を認めることはできない。』と主張した。

(2)被請求人は、平成18年4月28日付け答弁書及び平成18年9月1日付け口頭審理陳述要領書において、概ね以下の(i)ないし(iv)のように主張した。

(i)『甲第1号証に記載の発明では、その端部に被案内装置30の連結を行うための“連結用軸としての構成部材”として、縦ピン23とは全くその役目や使用目的が相違する「上下方向ピン33」を別途に設ける必要・・・があることから、本件特許発明の効果である「これにより、フレーム体間や被案内装置の連結を、連結用軸の使用数を少なくして行うことができ、移動体は、構造を簡単かつコンパクトにして提供できる。」(本件特許公報第7頁段落[0039]参照。)を奏し得ないことは明白である。』(口頭審理陳述要領書第6頁第6行ないし同頁第13行)

(ii)『甲第2号証に記載の発明では、その第3頁第4欄第10行?12行に、「軸帯板13は、ねじボルト3を介して連結部材1にまたは自在継手4に中間で保持されている。」と記載されているのみであって、このような記載内容や図2?図4、図7?図8をもってしては、連結部材1または自在継手4に挿通されるねじボルト3の端部に軸帯板13を連結する構成が開示されているとは言えても、到底、軸帯板13を該ねじボルト3の端部に上下方向で相対回動自在に連結している構成が開示されているとは言えない。したがって、このような開示内容に止まる証拠(=甲第2号証)をもっては、訂正後の本件特許発明の構成要件Cの進歩性を否定することはできないものと思量される。』(口頭審理陳述要領書第6頁第24行ないし第7頁第4行)

(iii)『引用発明(当審注、甲第1号証)における「上下方向ピン33」と「縦ピン23」とは、それぞれの果たす役目や使用目的が明確に振り分けられていることから、引用発明における「縦ピン23」はその端部に被案内装置を連結することを全く意図せず、またこのような想定もしていないことが窺われ、引用発明と甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明との組合わせの阻害要因は純然と存在している。』(答弁書第10頁第21行ないし同頁第26行)
『甲第1号証に記載の発明において、中間部フレーム体13の前後端に一体化した端部材16に回動自在に取り付けた「上下方向ピン33」は、被搬送物29の全荷重を受け止める被案内装置30,30をその端部に設けるために必要な“連結用軸”としての役目や使用目的を果たす構成部材ということができる。
・・・甲第1号証における被案内装置30が設けられる構成部材を「上下方向ピン33」から「縦ピン23」に置き換えることを容易とする審判請求人の主張(=審判請求書第14頁第3行?第15行を参照。)は、当該「上下方向ピン33」が果たす役目やその使用目的を全く無視したものであり、失当であると言わざるを得ない。』(口頭審理陳述要領書第7頁第17行ないし同頁第27行)

(iv)『甲第1号証記載の発明においては、フレーム体12と連結装置20を繋ぐ縦ピン23とは離れた位置にある上下方向ピン33の真下に被案内装置30が設けられており、即ち、フレーム体の回動軸心と被案内装置の回動軸心が異なっている。これに対して、本件発明では、フレーム体13と連結装置20を繋ぐ縦方向軸21の真下に被案内装置30が設けられており、即ち、フレーム体の回動軸心と被案内装置の回動軸心が同一であり、両者はこの点で相違している。
このような相違点により、・・・・本件発明では、移動体が左右のカーブ経路部に差し掛かった時に、フレーム体はお互いに縦方向軸を回動中心にして折れ曲がるが、その際、フレーム体の回動軸心と被案内装置の回動軸心が同一であることから、フレーム体はレールから離れることなくこのレールに沿って円滑にガイドされることになり、本件特許公報第7頁の段落[0039]に記載の格別な効果、即ち「また左右のカーブ経路部では、各フレーム体を平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動でき、その際に屈曲は、縦方向軸の周りに相対回動することで自動的にかつ確実に行うことができる。」及び「また被案内装置は、縦方向軸を介して回動することで、レールの左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。」を奏する。』(口頭審理陳述要領書第8頁第12行ないし同頁第28行)

4.被請求人の主張に対する請求人の主張概要
請求人は、平成18年9月8日付けの上申書において、概ね以下の(i)ないし(iv)のように主張するとともに、甲第10号証 西独国特許第19517832号明細書を本件特許出願時における周知技術の証拠方法として提出した。

(i)『甲第2号証及び甲第3号証には、「フレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結する縦方向軸の端部に被案内装置を連結する構成」が開示されており、該構成は、本件発明のように、引用発明に対して連結用軸の使用数が少なくなった構成である。』(上申書第8頁第1行ないし同頁第4行)

(ii)『フレーム体の回動中心と被案内装置の回動中心が同一である構成は、甲第2号証(図2、図7及び図8参照)、甲第3号証(図6及び図7参照)・・・等に開示されている。
したがって、被請求人が「本件発明では、移動体が左右のカーブ経路の差し掛かった時に、フレーム体はお互いに縦方向軸を回動中心として折れ曲がるが、その際、フレーム体の回動軸心と被案内装置の回動軸心が同一であることから、フレーム体は、レールから離れることなくこのレールに沿って円滑にガイドされる」・・・という作用は本件特許出願前に周知である。』(上申書第8頁第21行ないし第9頁第2行)

(iii)『本件発明の構成において、横方向ピン26を設ける理由は、例えば被搬送物の重量が大きい場合において、その荷重を分散するためにトロリ本体31の前後に被支持ローラ33,33を設ける構成が一般的に採用され(・・・なお、例えば参考資料7(当審注、甲第10号証)の図1には、被案内装置の前後に1個、2個及び4個の被支持ローラを設ける構成が開示されており、・・・被案内装置の前後に単又は複数の被支持ローラを設ける構成は周知である。)、該被支持ローラ33,33はレール3に嵌合して支持案内されるため・・・、フレーム体12,13,14等からなる移動体10を上下方向へのカーブ経路に沿って円滑に移動させるために必要だから・・・であり、このような移動体10の構成において横方向ピン26を設けることは設計事項に過ぎないものである(例えば、参考資料7(当審注、甲第10号証)の図1における前後2個及び4個の被支持ローラが設けられた被案内装置にも前記のとおり横方向ピンが設けられている。)。・・・
甲第1号証にも、本件発明における横方向ピン26と同様の機能を有する左右方向ピン34が開示されている。すなわち、甲第1号証には、大きな被搬送物29を被搬送物支持部25により支持して左右や上下のカーブ経路に沿って移動する可動体10の開示があり・・・、該可動体10は、トロリ本体35の前後に被支持ローラ36,36が設けられ、該被支持ローラ36,36はレール3に嵌合して支持案内されるため・・・、フレーム体12,13,14等からなる移動体10(当審注、「可動体10」の誤記)を上下方向へのカーブ経路に沿って円滑に移動させるための左右方向ピン34が設けられている・・・
よって、本件発明における横方向ピン26の「被案内装置は、横方向ピンを介して回動することで、レールの上下方向の変位、変形に対して向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。」・・・という効果は、本件発明の格別な効果(予期し得ない効果)でなない(当審注、「ではない」の誤記)。』(上申書第9頁第14行ないし第10頁第23行。)

5.訂正の適否
(1)訂正の内容
被請求人が求めている訂正の内容は、平成18年4月28日付け訂正請求書において「特許第3637820号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求める。」(以下、当該明細書を、「特許明細書」といい、当該訂正明細書を、「訂正明細書」という。)というもので、その訂正の内容は、以下の(i)ないし(iv)のとおりである。

(i)訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、この縦方向軸の端部に被案内装置を相対回動自在に連結したことを特徴とする移動体。」を、
「複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結し、この縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴とする移動体。」
と訂正する。

(ii)訂正事項2
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された
「縦方向軸の端部と被案内装置との連結を、縦方向軸の端部を貫通する横方向ピンを介して行うことを特徴とする請求項1記載の移動体。」
を削除する。

(iii)訂正事項3
特許明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された
「連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴とする請求項1または2記載の移動体。」
を削除する。

(iv)訂正事項4
特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書における[0004]、[0005]、[0006]、[0007]、[0008]、[0039]、[0040]を以下のように訂正する。
<1>発明の詳細な説明[0004]の
「【発明が解決しようとする課題】
しかし上記した従来の構成によると、連結装置には横ピンと縦ピンが必要であり、被案内装置には上下方向ピンと左右方向ピンが必要であるなど、多数のピン連結が行われることで、構造が複雑になるなどの問題がある。
そこで本発明のうち請求項1記載の発明は、フレーム体間や被案内装置の連結を、簡単かつコンパクトに行える移動体を提供することを目的としたものである。」を
「【発明が解決しようとする課題】
しかし上記した従来の構成によると、連結装置には横ピンと縦ピンが必要であり、被案内装置には上下方向ピンと左右方向ピンが必要であるなど、多数のピン連結が行われることで、構造が複雑になるなどの問題がある。
そこで本発明は、フレーム体間や被案内装置の連結を、簡単かつコンパクトに行える移動体を提供することを目的としたものである。」と訂正する。
<2>発明の詳細な説明[0005]の
「【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の移動体は、複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、この縦方向軸の端部に被案内装置を相対回動自在に連結したことを特徴としたものである。」を
「【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明の移動体は、複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結し、この縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴としたものである。」と訂正する。
<3> 発明の詳細な説明[0006]の
「したがって請求項1の発明によると、一定経路における直線状経路部では、移動体を、その本体、すなわち各フレーム体を平面視ならびに側面視で直線状姿勢として移動し得る。また左右のカーブ経路部では、各フレーム体を平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動し得る。その際に屈曲は、縦方向軸の周りに相対回動することで行える。また被案内装置は、縦方向軸を介して回動することで、レールの左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動し得る。」を
「したがって本発明によると、一定経路における直線状経路部では、移動体を、その本体、すなわち各フレーム体を平面視ならびに側面視で直線状姿勢として移動し得る。また左右のカーブ経路部では、各フレーム体を平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動し得る。その際に屈曲は、縦方向軸の周りに相対回動することで行える。また被案内装置は、縦方向軸を介して回動することで、レールの左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動し得る。」と訂正する。
<4> 発明の詳細な説明[0007]の
「また本発明の請求項2記載の移動体は、上記した請求項1記載の構成において、縦方向軸の端部と被案内装置との連結を、縦方向軸の端部を貫通する横方向ピンを介して行うことを特徴としたものである。
したがって請求項2の発明によると、被案内装置は、横方向ピンを介して回動することで、レールの上下方向の変位、変形に対して向きを自動的に変更しながら円滑に移動し得る。」を
「また本発明の移動体は、縦方向軸の端部と被案内装置との連結を、縦方向軸の端部を貫通する横方向ピンを介して行うことを特徴としたものである。
したがって本発明によると、被案内装置は、横方向ピンを介して回動することで、レールの上下方向の変位、変形に対して向きを自動的に変更しながら円滑に移動し得る。」と訂正する。
<5> 発明の詳細な説明[0008]の
「そして本発明の請求項3記載の移動体は、上記した請求項1または2記載の構成において、連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴としたものである。
したがって請求項3の発明によると、一定経路における上下のカーブ経路部では、各フレーム体を、平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動し得る。その際に屈曲は、横方向軸の周りで相対回動することで行える。」を
「そして本発明の移動体の連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴としたものである。
したがって本発明によると、一定経路における上下のカーブ経路部では、各フレーム体を、平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動し得る。その際に屈曲は、横方向軸の周りで相対回動することで行える。」と訂正する。
<6> 発明の詳細な説明[0039]の
「【発明の効果】
上記した本発明の請求項1によると、一定経路における直線状経路部では、移動体を、その本体、すなわち各フレーム体を平面視ならびに側面視で直線状姿勢として移動できる。また左右のカーブ経路部では、各フレーム体を平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動でき、その際に屈曲は、縦方向軸の周りに相対回動することで自動的にかつ確実に行うことができる。また被案内装置は、縦方向軸を介して回動することで、レールの左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。これにより、フレーム体間や被案内装置の連結を、連結用軸の使用数を少なくして行うことができ、移動体は、構造を簡単かつコンパクトにして提供できる。」を
「【発明の効果】
上記した本発明によると、一定経路における直線状経路部では、移動体を、その本体、すなわち各フレーム体を平面視ならびに側面視で直線状姿勢として移動できる。また左右のカーブ経路部では、各フレーム体を平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動でき、その際に屈曲は、縦方向軸の周りに相対回動することで自動的にかつ確実に行うことができる。また被案内装置は、縦方向軸を介して回動することで、レールの左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。これにより、フレーム体間や被案内装置の連結を、連結用軸の使用数を少なくして行うことができ、移動体は、構造を簡単かつコンパクトにして提供できる。」と訂正する。
<7> 発明の詳細な説明[0040]の
「また上記した本発明の請求項2 によると、被案内装置は、横方向ピンを介して回動することで、レールの上下方向の変位、変形に対して向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。
そして上記した本発明の請求項3によると、一定経路における上下のカーブ経路部では、各フレーム体を、平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動でき、その際に屈曲は、横方向軸の周りで相対回動することで自動的にかつ確実に行うことができる。」を
「また上記した本発明によると、被案内装置は、横方向ピンを介して回動することで、レールの上下方向の変位、変形に対して向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。
そして上記した本発明によると、一定経路における上下のカーブ経路部では、各フレーム体を、平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動でき、その際に屈曲は、横方向軸の周りで相対回動することで自動的にかつ確実に行うことができる。」と訂正する。

(2)訂正の適否についての判断
上記訂正事項について、訂正の適否について検討する。
(i)訂正事項1について
まず、訂正事項1の訂正の目的の適否について検討する。
訂正事項1は、「前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結」を「前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結」に限定し、「この縦方向軸の端部に被案内装置を相対回動自在に連結した」を「この縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結した」と限定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

次に、訂正事項1の新規事項の有無、拡張・変更の存否について検討する。
「前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結」の記載は、訂正請求前の特許請求の範囲の請求項3の記載に基づくものであり、「この縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結した」の記載は、訂正請求前の特許請求の範囲の請求項2の記載及び特許明細書の段落0007の記載に基づくものである。よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ii)訂正事項2及び3について
訂正事項2は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、訂正事項3は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除するものである。よって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(iii)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1ないし3に伴って発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明と認められ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

6.本件特許発明に対する判断
(1)本件特許発明
本件訂正が認められたことにより、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結し、この縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴とする移動体。」

(2)引用文献1記載の発明
(i)請求人が甲第1号証として提出し、本件特許に係わる出願前に日本国内又は外国おいて頒布された刊行物である特開平7-25441号公報(平成7年1月27日公開。以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】 レールに支持案内されて一定経路上を移動自在な可動体の本体を、連結装置を介して相対回動自在に連結した複数のフレーム体により形成するとともに、これらフレーム体の側面を受動面に形成し、各フレーム体のうち少なくとも一つのフレーム体に、被搬送物支持部と、レールに支持案内される一対の被案内装置とを設けるととも、残りのフレーム体は遊端側に被案内装置を設け、前記一定経路中に、前記受動面に当接自在な送りローラを有する送り装置を設けたことを特徴とする可動体使用の搬送設備。」(特許請求の範囲 請求項1)

イ.「【0008】本発明の目的とするところは、可動体の本体を細長くコンパクトに形成し得、しかもカーブ経路部を有する一定経路でも、可動体群の密状(列車状)の移動を円滑に確実にかつ安定して行える可動体使用の搬送設備を提供する点にある。」(段落0008)

ウ.「【0016】
【実施例】以下に本発明の第一の実施例を図1?図9に基づいて説明する。図1?図5、図9において、床1側からの機枠2に、チャンネル状のレール3が、その開放部を相対向して左右一対に配設してあり、そしてレール3の開放部側の縁部には、その上下面に四角棒状のガイド部材4が固定してある。前記レール3により一定経路5を形成するものであり、ここで一定経路5は平面視において、平行した一対の直線状経路部5aと、これら直線状経路部5aの始終端間を接続したカーブ経路部5bとにより無端状に形成されている。
【0017】両レール3に支持案内されて一定経路5上を移動自在な可動体10が設けられる。この可動体10は、その本体11を三本(複数)のフレーム体12,13,14により形成している。ここで各フレーム体12,13,14は、四角筒状体(四角棒状体)により形成され、それぞれ左右一対の両側面を受動面15に形成している。そして前部フレーム体12と中間部フレーム体13との間、ならびに中間部フレーム体13と後部フレーム体14間を、連結装置20を介して相対回動自在に連結している。
【0018】すなわち連結装置20は、中間部フレーム体13の前後端に一体化した端部材16と、前後のフレーム体12,14の相対向端との間に設けられるもので、前記端部材16に左右方向の横ピン21を介して上下揺動自在に取り付けた連結体22を設けるとともに、この連結体22を、前後のフレーム体12,14の相対向端に縦ピン23を介して左右揺動自在に連結したところの、トラニオン形式が採用されている。
【0019】前記フレーム体12,13,14のうち少なくとも一つのフレーム体、この実施例では中間部フレーム体13に、被搬送物支持部25と、レール3に支持案内される前後一対の被案内装置30とを設けるととも、残りのフレーム体、この実施例における前後のフレーム体12,14には、遊端側に被案内装置31,32を設けている。
【0020】前記被搬送物支持部25は、前記端部材16の上部に前後方向の継手ピン26を介して連結したブラケット27と、前後のブラケット27間に設けた支持フレーム28とからなる。この支持フレーム28は、ブラケット27上に取り付けた左右方向材28Aと、両左右方向材28Aの外端間を連結する前後方向材28Bとにより、平面視で四角枠状に形成され、そして支持フレーム28上に、被搬送物29の支持具(図示せず)が配設される。【0021】各被案内装置30,31,32は同様な構成であって、中間部フレーム体13の前後端部に設けた前記端部材16や、前後のフレーム体12,14の遊端部に設けた端部材17,18に回動自在に取り付けた上下方向ピン33と、この上下方向ピン33の下端に左右方向ピン34を介して回動自在に連結したトロリ本体35と、このトロリ本体35の両側にそれぞれ前後一対に取り付けられかつ前記レール3に嵌合して支持案内される被支持ローラ36と、前記トロリ本体35の上下にそれぞれ前後一対に取り付けられかつ前記ガイド部材4に当接して案内される被ガイドローラ37とにより、トロリ形式に構成されている。」(段落0016ないし0021)

エ.「【0030】このような移動の際に各被案内装置30,31,32は、各被支持ローラ36を介してレール3に支持案内され、そして各被ガイドローラ37が上下に振り分けたガイド部材4に当接することで、ガタ付きのない案内と可動体10の横倒れ阻止とが行われる。」(段落0030)

オ.「【0037】上述した一定経路5上での列車状の後押し移動において、直線状経路部5aでは、各可動体10の本体11、すなわち各フレーム体12,13,14が平面視ならびに側面視で直線状姿勢になることから、当接部39に対して当接部38が真後ろから当接する状態になり、その後押し移動は円滑に確実に行える。
【0038】またカーブ経路部5bでは、各フレーム体12,13,14は、平面視において連結装置20の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で後押し移動されることになる。これにより、平面視において、先行可動体10の後部フレーム体14と後続可動体10の前部フレーム体12とが成す相対角度Θが鈍角となり、当接部39に対して当接部38が鈍角で当接することになって、その後押し移動は円滑に確実に行える。なお屈曲は、連結装置20において、縦ピン23の周りで相対回動することで行われる。」(段落0037ないし0038)

カ.「【0043】上記実施例では、床1側を走行自在な可動体10を示したが、これは天井側に配設したレールに支持案内されて移動自在な可動体であってもよい。図10は本発明の第二の実施例を示す。すなわち一定経路5中に、側面視において上方(または下方)へのカーブ経路部5bを形成したもので、この場合も側面視において、先行可動体10の後部フレーム体14と後続可動体10の前部フレーム体12とが成す相対角度Θが鈍角となり、当接部39に対して当接部38が鈍角で当接することになって、その後押し移動は円滑に確実に行える。なお屈曲は、連結装置20において、横ピン21の周りで相対回動することで行われる。」(段落0043)

(ii)ここで、上記記載事項ア.ないしカ.及び図1ないし14から、次のことがわかる。
両レール3に支持案内されて一定経路5上を移動自在な可動体10が設けられる。この可動体10は、その本体11を三本(複数)のフレーム体12,13,14により形成している。フレーム体12,13,14のうち少なくとも一つのフレーム体、第一の実施例では中間部フレーム体13に、被搬送物支持部25と、レール3に支持案内される前後一対の被案内装置30とを設けるととも、残りのフレーム体、この実施例における前後のフレーム体12,14には、遊端側に被案内装置31,32を設けている。前部フレーム体12と中間部フレーム体13との間、ならびに中間部フレーム体13と後部フレーム体14間を、連結装置20を介して相対回動自在に連結している。連結装置20は、中間部フレーム体13の前後端に一体化した端部材16と、前後のフレーム体12,14の相対向端との間に設けられるもので、前記端部材16に左右方向の横ピン21を介して上下揺動自在に取り付けた連結体22を設けるとともに、この連結体22を、前後のフレーム体12,14の相対向端に縦ピン23を介して左右揺動自在に連結したところの、トラニオン形式が採用されている。各被案内装置30,31,32は同様な構成であって、中間部フレーム体13の前後端部に設けた前記端部材16や、前後のフレーム体12,14の遊端部に設けた端部材17,18に回動自在に取り付けた上下方向ピン33と、この上下方向ピン33の下端に左右方向ピン34を介して回動自在に連結したトロリ本体35と、このトロリ本体35の両側にそれぞれ前後一対に取り付けられかつ前記レール3に嵌合して支持案内される被支持ローラ36と、前記トロリ本体35の上下にそれぞれ前後一対に取り付けられかつ前記ガイド部材4に当接して案内される被ガイドローラ37とにより、トロリ形式に構成されている。トロリ本体は、上下方向ピン33の下端に左右方向ピン34を介して回動自在に連結したから、被案内装置30,31は、上下方向で相対回動自在に連結されているといえる。

(iii)引用文献1記載の発明
上記記載事項(ii)より、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「複数の被案内装置30,31,32を介してレールに支持案内されることで一定経路5上を移動自在であるとともに、被搬送物支持部25を有する可動体10であって、この可動体10の本体を、連結装置20を介して連結した複数本のフレーム体12,13,14により形成し、前記連結装置は、縦ピン23を介してフレーム体間を左右揺動自在に連結するとともに、横ピン21を介してフレーム体間を上下揺動自在に連結し、フレーム体12,13,14の端部と一体化した端部材16,17,18に上下方向ピン33を回動自在に設け、被案内装置30,31,32を該上下方向ピン33の下端に左右方向ピン34を介して上下方向で相対回動自在に連結した可動体。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

(3)引用文献2記載の発明
(i)請求人が甲第2号証として提出し、本件特許に係わる出願前に日本国内又は外国おいて頒布された刊行物である特開平4-212668号公報(平成4年8月4日公開。以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】 走行ロールで懸垂されて走行軌道(12)に沿って走行可能な複数の荷重担持体(2)を有し、これらの荷重担持体は連結されて、引っ張り操作でも押し操作でも駆動可能な三次元に運動可能な一つの列になるようになっている搬送装置において、荷重担持体(2)の結合は弾性的な連結部材(1)により確実嵌め合い結合でおよび非確実結合で行われることを特徴とする搬送装置。」(特許請求の範囲、請求項1)

イ.「【産業上の利用分野】本発明は、走行ロールで懸垂されて走行軌道に沿って走行可能な複数の荷重担持体を有し、これらの荷重担持体は連結されて、引っ張り操作でも押し操作でも駆動可能な三次元に運動可能な一つの列になるようになっている搬送装置に関する。」(段落0001)

ウ.「【0016】図1は、搬送装置の原理的な作用方式を概略図で示す。個々の搬送担持体2が弾性的な連結部材1を介して連結されて任意の長さの一つの列になっている。この搬送列は、ロール10、11を介して案内レール12に沿って走行可能である。荷重担持体2も連結部材1も同時に駆動レールとして役立つ。駆動装置23は周知のように形成されているので、ここでは別々の詳細な図示はしなかった。これに加えて、簡単にしか説明しないが、レール軌道12に対し平行に駆動レール(ここでは搬送担持体2と連結部材1からなる)の高さにこれに対し両側に、モータMを介して駆動される二つの駆動輪24、25が設けられ、これらの駆動輪は自己の軸心を中心とする回転により駆動レールそれ自体を搬送する。
走行ロール10、11は、それらの軸18、19で軸帯板13に固定されている。軸帯板13は、ねじボルト3を介して連結部材1にまたは自在継手4に中間で保持されている。走行レール12は、周知のように(同様に図示省略)ホール天井に固定される。」(段落0016)

エ.「【0017】荷重担持体2は、薄肉の長方形管からなるのが好ましく、この長方形管は長手方向に貫通する長孔20を有する。荷重担持体2の端部には、側方のフライス加工部15、16が設けられており、これらのフライス加工部は長孔20に対して90°だけずらされた側縁に配置されている。長孔20に対し対称に担持体2に貫通孔21が形成され、これらの貫通孔はフライス加工部15、16のなお前に空間を置いて終わっている(図2参照)。
【0018】エラストマーからなる連結部材1は、二部分からなる横断面を有し、その際端部1aは担持体部片2の内径Iに適合されている。中央部分1bは担持部材2の外形Aに対応する。それぞれ、連結部材1の全長の四分の一は、端部1aでいっそう小さい直径Iに形成されている。端部1aには、長手方向延長に対して垂直に貫通孔22が配置され、これらの貫通孔は担持部材2の孔21と一致するようにすることができる。連結部材1は、担持部材2の中へ孔21、22が互いに整合するまで差し込まれる。連結部材1の外径がその端部1aで担持部材2の内径Iに対応するので、連結部材1が担持部材2に確実な嵌め合い結合で保持される。孔21、22を一致させると、連結部材1の孔22より直径の大きいスリーブまたはボルト14が打ち込まれ、その結果ここでさらに生ずる確実嵌め合い結合と並んで、担持部材2と連結部材1の間に非確実結合も存在する。これに部分的に変化をつけるには、貼り付けにより非確実結合を達成することができる。担持部材2の長孔20は、ここでは詳細に述べられてない搬送品担持体3を受け入れるのに役立ち、この搬送品担持体はねじ7を介して搬送担持体2とねじで締めつけ可能である。長孔の構造的特徴により、個々の搬送品担持体3を互いに限定された間隔にもたらすことができる。この間隔は簡単に製造可能なゲージにより維持するかまたは調整できるので、その都度限定された移送点に正しく合わせることが問題なく可能である。その他、きちんとした調整後、個々の搬送品担持体3の間の間隔が常に同じであることが確保される。」(段落0017ないし0018)

オ.「【0020】エラストマーを用いる代わりに、図6と図7に示したように自在継手4を用いることができる。三つの部品からなる自在継手4は、同一の個々の部材4a、4cと中間部材4bとからなる。端部材4a、4cは二分割された横断面を有し、その際比較的小さな横断面40の外側輪郭が担持部材2の内径Iに適合され、かつ比較的大きな横断面41のその外端部が丸みをつけられている。長手方向中央で外端部41がフライス加工され、それにより二つの側板41a、41bが生じ、これらの側板はそれらの間にヒンジ部材4bを受け入れる。ヒンジ部材4bは、90°だけずらされているがほかの点では同じに形成された二つの端部42、43を有する。これらの丸みをつけられた端部42、43は、内側部材40のフライス加工部に適合されている。互いに一致させることができる側板41a、41bおよび端部41、41の貫通孔26、27は、部材4a、4b、4cを互いに継手結合するのに役立つ。そのような自在継手4は一般に知られており、かつ当業者にはなおさらに続く説明を必要としない。自在継手4の内側部材40は、側板41b、41aから出発して長手方向に中央孔44を有し、これらの中央孔はこれに対し垂直に走る貫通孔22のなお前で終わっている。これらの孔44には、それぞれ圧縮ばね5a、5cが導かれており、これらの圧縮ばねは一端で孔の底部に支持されかつその他端で球またはボルト6a、6cに支持されている。組み立てられた状態(図7)では、ボルトが、圧縮ばね5a、5cと反対側のその端部でヒンジ部材4bの端部42、43に支持される。これにより、自在継手4に絶対的に遊びのないことが実現される。それにより、自在継手も連結部材として個々の担持部材の間に挿入することができる。有利な仕方では、担持部材2は、連結部材1または4の中央部分のほぼ三倍の長さである。担持部材2が短く設計されればされるほど、もちろん全体の列の可撓性もそれだけいっそう高い。
【0021】自在継手4の磨耗をできるだけ小さくするために、内側部材4bの丸みをつけられた端部42、43に、球またはボルト6a、6cが滑って走り始めることができる耐磨耗性の材料、例えば金属のカバー17を設けることができる。同様に、内側部材4bを中央でフライス加工し、そしてそのように形成された溝29に硬化した円板28を挿入することができる(図7左側:金属カバー17、右側:円板28参照)。圧縮ばね5a、5cを適当に選択することにより、自在継手4の遊びを有効に排除するために一方ではばね力が充分に大きいが、他方ではしかし搬送列の方向変化後妨げられずに出発位置に滑って戻れないようにする摩擦力が生ずるほど高くないように配慮される。」(段落0020ないし0021)

カ.「【図6】搬送装置の一実施例の平面図である。
【図7】図6による線D-Dに沿った断面図である。
【図8】図6による線E-Eに沿った断面図である。」(第4頁右欄第31行乃至同欄第33行)

キ.図6には、26で示されるコの字型の部材があり、この26で示される部材とコの字の先端部分の間にある部材とを貫いて、一点鎖線が記載され、さらにこの一点鎖線の両側に点線が記載されている。

ク.第7図には、紙面上側を上、紙面右側を右として上下左右を定めると、4a及び41a,41bで示される逆コの字型の部材が左斜め下方向の斜線でハッチングされて示されている。この逆コの字型の部材に挟まれるように43で示される部材が右斜め下方向の斜線で示されている。そして、9で示される部材が上記4a及び41a,41bで示される部材と43で示される部材を貫通するように記載されている。

ケ.図7には、4bで示される右斜め下方向の斜線でハッチングされている部材の内側に、左斜め下方向の斜線でハッチングされる円形の部材(以下、この円形の部材を「横軸」という。)が記載されている。4bで示される部材の紙面右側は、半円形の形状をし、この半円形の形状の部分に隣接して4cで示される部材がある。

コ.図8には、紙面上側を上、紙面右側を右として上下左右を定めると41aで示される部材と41bで示される部材との間に43で示される部材が記載され、これら41a,41b及び43で示される部材を貫通するように9で示される部材が記載されている。この9で示される部材の紙面上側に8で示される部材を挟んで13で示される部材が記載されている。

(ii)ここで、上記記載事項ア.ないしコ.及び図6ないし8から、次のことがわかる。
まず、上記記載事項ウ.に記載された「ねじボルト3」は、「ねじボルト9」である(平成18年9月1日付け 口頭審理調書参照)。
搬送装置は、走行ロール10,11で懸垂されて走行軌道に沿って走行可能な複数の荷重担持体を有し、これらの荷重担持体は連結されている。
個々の搬送担持体2が連結部材1を介して連結されて任意の長さの一つの列になっている。この搬送列は、走行ロール10、11を介して案内レール12に沿って走行可能である。したがって、搬送列は、案内レール12に支持案内されることで一定経路上を移動自在であるといえる。
また、連結部材1として自在継手4を用いることができる。
走行ロール10、11は、それらの軸18、19で軸帯板13に固定されている。そして、走行ロール10、11は、案内レール12に沿って走行可能であるから、走行ロール10、11は、回転可能に軸帯板13に固定されているといえる。
走行ロール10、11及び軸帯板13とは被案内装置を構成し、この被案内装置は複数あるといえる。
軸帯板13は、ねじボルト9を介して自在継手4に中間で保持されている。
担持部材2の長孔20は、搬送品担持体3を受け入れるのに役立ち、この搬送品担持体はねじ7を介して搬送担持体2とねじで締めつけ可能である。
三つの部品からなる自在継手4は、同一の個々の部材4a、4cと中間部材4bとからなる。端部材4a、4cは二分割された横断面を有し、その際比較的小さな横断面40の外側輪郭が担持部材2の内径Iに適合され、かつ比較的大きな横断面41のその外端部が丸みをつけられている。長手方向中央で外端部41がフライス加工され、それにより二つの側板41a、41bが生じ、これらの側板はそれらの間にヒンジ部材4bを受け入れる。ヒンジ部材4bは、90°だけずらされているがほかの点では同じに形成された二つの端部42、43を有する。これらの丸みをつけられた端部42、43は、内側部材40のフライス加工部に適合されている。互いに一致させることができる側板41a、41bおよび端部41、41の貫通孔26、27は、部材4a、4b、4cを互いに継手結合するのに役立つ。
上記記載事項ウ及びオ、カ、ク、コより、自在継手を構成するヒンジ部材4bと4aは、ねじボルト9により左右方向(走行レールに沿った搬送装置の走行方向を基準とする。)で相対回動自在に連結されているといえる。さらに軸帯板13は、ねじボルト9に連結されているといえる。
さらに、上記記載事項オ及びカ、キ、ケより、ヒンジ部材4bと4cは横軸により上下方向(走行レールに沿った搬送装置の走行方向を基準とする。)に相対回動自在に連結されているといえる。

(iii)引用文献2記載の発明
上記記載事項(ii)より、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。
「複数の軸帯板13と走行ロール10,11を介して案内レール12に沿って走行可能であるとともに、搬送品担持体3を有する搬送装置であって、この搬送装置の搬送列を自在継手4を介して連結した複数本の搬送担持体2により形成し、前記自在継手4は、ねじボルト9を介して搬送担持体2間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横軸を介して搬送担持体2間を上下方向で相対回動自在に連結し、このねじボルト9の端部に軸帯板13を連結した搬送装置。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

(4)本件特許発明に対する判断
(i)対比
本件特許発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明における「被搬送物支持部25」、「可動体10」、「左右揺動自在」、「横ピン21」、「上下揺動自在」「左右方向ピン34」は、それぞれ本件特許発明における「被搬送物の支持部」、「移動体」、「左右方向で相対回動自在」、「横方向軸」、「上下方向で相対回動自在」「横方向ピン」に相当する。また、引用文献1記載の発明における「縦ピン23」は、フレーム体間を左右揺動自在に連結する縦ピンである限りにおいて、本件特許発明における「縦方向軸」に相当する。
したがって、本件特許発明と引用文献1記載の発明は、
「複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦ピンを介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結した移動体。」
である点で一致し、次の点で相違している。

相違点
本件特許発明においては、「縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結した」のに対し、引用文献1記載の発明では、「フレーム体12,13,14の端部と一体化した端部材16,17,18に上下方向ピン33を回動自在に設け、被案内装置30,31,32を該上下方向ピン33の下端に左右方向ピン34を介して上下方向で相対回動自在に連結した」点。
要するに、本件特許発明においては、縦方向軸がフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結する縦方向軸に被案内装置が連結されているのに対し、引用文献1記載の発明では、縦ピンがフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結し、縦ピンとは異なる上下方向ピンに被案内装置が連結されている点で異なる。さらに、本件特許発明は、被案内装置を縦方向軸の端部に連結するための横方向ピンが縦方向軸端部を貫通しているのに対し、引用文献1記載の発明では、被案内装置を上下方向ピンの下端に連結するための左右方向ピンが上下方向ピン端部を貫通しているか否か不明な点で異なる。

(ii)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2記載の発明における「軸帯板13と該軸帯板13に固定される走行ロール10,11」、「案内レール12に沿って走行可能である」、「搬送品担持体3」、「搬送装置」、「搬送列」、「自在継手4」、「搬送担持体2」、「ねじボルト9」、「横軸」は、それぞれ本件特許発明の「被案内装置」、「レールに支持案内されることで一定経路上を移動自在である」、「被搬送物の支持部」、「移動体」、「本体」、「連結装置」、「フレーム体」、「縦方向軸」、「横方向軸」に相当する。また、引用文献2記載の発明における軸帯板は本件特許発明の被案内装置の一部に相当するから、「部材9の端部に軸帯板13を連結した」は、本件特許発明の「縦方向軸の端部に被案内装置を連結した」に相当する。
したがって、引用文献2には、「複数の被案内装置を介して、レールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結すると共に、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結し、この縦方向軸の端部に被案内装置を連結した移動体。」という発明が示されている。すなわち引用文献2記載の発明は、フレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結する縦方向軸の端部に被案内装置を連結している。
また、被案内装置を上下方向ピンに貫通させた左右方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に被案内装置を連結することは、当業者が適宜なしえた設計的事項である。
よって、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の発明は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結した移動体として技術分野が同一であるとともに、引用文献1記載の発明は、「被案内装置の連結を行うための連結用軸としての構成部材」と「フレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結する構成部材」とを備え、引用文献2記載の発明においては、「被案内装置の連結を行うための連結用軸としての構成部材」と「フレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結する構成部材」とを共用するものであるから、引用文献2記載の発明を引用文献1記載の発明に適用し、上記相違点に係る本件特許発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到しうる程度のことと認められる。(上記3.(2)(iii)の主張参照。)

上記3.(2)(i)に記載した被請求人主張の本件特許発明の効果は、引用文献2記載の発明の構成である「連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結」することから得られる引用文献2記載の発明に内在する効果である。同様に、上記3.(2)(iv)に記載した被請求人主張の本件特許発明の効果は、引用文献2記載の発明の「縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結すると共に、・・・この縦方向軸の端部に被案内装置を連結」することから得られる効果にすぎない。

また、上記3.(2)(ii)に記載した被請求人主張の点については、請求人が主張(上記4.被請求人の主張に対する請求人の主張概要(iii)参照。)するように引用文献1には、「被案内装置30,31,32を該上下方向ピン33の下端に左右方向ピン34を介して上下方向で相対回動自在に連結した」構成が記載されているし、またそもそも周知技術にすぎないものである。

以上のように、本件特許発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、しかも、本件特許発明は、全体としてみても引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
移動体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結し、この縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば被搬送物を支持した状態で一定経路上を移動される移動体、詳しくは複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の移動体としては、たとえば特開平7-25441号公報に見られる構成が提供されている。すなわち、レールに支持案内されて一定経路上を移動自在な移動体(可動体)の本体は、連結装置を介して相対回動自在に連結された三本のフレーム体により形成されている。そしてフレーム体は、一定経路の方向に長い四角状体からなるとともに、その側面が受動面に形成されている。また連結装置としては、中間部フレーム体の前後端に左右方向の横ピンを介して連結体が上下揺動自在に取り付けられるとともに、これら連結体が、前後のフレーム体に縦ピンを介して左右揺動自在に連結されたところの、トラニオン形式が採用されている。
【0003】
前記中間部フレーム体には、被搬送物支持部と、レールに支持案内される被案内装置とが設けられ、また前後端の両フレーム体には、レールに支持案内される被案内装置が設けられている。その際に被案内装置は、対応するフレーム体に設けた端部材に回動自在に取り付けた上下方向ピンと、この上下方向ピンの下端に左右方向ピンを介して回動自在に連結したトロリ本体と、このトロリ本体取り付けられた被支持ローラ、ならびに被ガイドローラとにより、トロリ形式に構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記した従来の構成によると、連結装置には横ピンと縦ピンが必要であり、被案内装置には上下方向ピンと左右方向ピンが必要であるなど、多数のピン連結が行われることで、構造が複雑になるなどの問題がある。
そこで本発明は、フレーム体間や被案内装置の連結を、簡単かつコンパクトに行える移動体を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明の移動体は、複数の被案内装置を介してレールに支持案内されることで一定経路上を移動自在であるとともに、被搬送物の支持部を有する移動体であって、この移動体の本体を、連結装置を介して連結した複数本のフレーム体により形成し、前記連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結し、この縦方向軸の端部に被案内装置を該端部を貫通する横方向ピンを介して上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴としたものである。
【0006】
したがって本発明によると、一定経路における直線状経路部では、移動体を、その本体、すなわち各フレーム体を平面視ならびに側面視で直線状姿勢として移動し得る。また左右のカーブ経路部では、各フレーム体を平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動し得る。その際に屈曲は、縦方向軸の周りに相対回動することで行える。また被案内装置は、縦方向軸を介して回動することで、レールの左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動し得る。
【0007】
また本発明の移動体は、縦方向軸の端部と被案内装置との連結を、縦方向軸の端部を貫通する横方向ピンを介して行うことを特徴としたものである。
したがって本発明によると、被案内装置は、横方向ピンを介して回動することで、レールの上下方向の変位、変形に対して向きを自動的に変更しながら円滑に移動し得る。
【0008】
そして本発明の移動体の連結装置は、縦方向軸を介してフレーム体間を左右方向で相対回動自在に連結するとともに、横方向軸を介してフレーム体間を上下方向で相対回動自在に連結したことを特徴としたものである。
したがって本発明によると、一定経路における上下のカーブ経路部では、各フレーム体を、平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動し得る。その際に屈曲は、横方向軸の周りで相対回動することで行える。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、床側走行形式に採用した状態として図に基づいて説明する。
図1?図6において、床1側からの機枠2に、チャンネル状のレール3が、その開放部を相対向して左右一対に配設してあり、そしてレール3の開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することでガイド部3aが形成されている。前記レール3により一定経路5を形成するものであり、ここで一定経路5は平面視において、たとえば平行した一対の直線状経路部5aと、これら直線状経路部5aの始終端間を接続したカーブ経路部5bとにより無端状に形成されている。
【0010】
両レール3に支持案内されて一定経路5上を移動自在な移動体10が設けられる。この移動体10は、その本体11が三本(複数本)のフレーム体12,13,14により形成されている。ここで各フレーム体12,13,14は、一定経路5の方向に長い四角筒状体(四角棒状体)12A,13A,14Aと、これら四角筒状体12A,13A,14Aの前端に一体化された前端部材12B,13B,14Bと、後端に一体化された後端部材12C,13C,14Cとにより形成されている。
【0011】
そして少なくとも一側面、すなわち、たとえば無端状経路における内側に向いた側面が受動面15に形成されている。なお、本体11の前面と後面、すなわち前端部材12Bの前面(遊端部分)と、後端部材14Cの後面(遊端部分)とは、当接部16,17に形成されている。
そして前部フレーム体12と中間部フレーム体13との間、ならびに中間部フレーム体13と後部フレーム体14との間が、それぞれ連結装置20を介して左右方向ならびに上下方向に相対回動自在に連結されている。ここで両連結装置20は、前部フレーム体12の後端部材12Cと中間部フレーム体13の前端部材13Bとの間、ならびに中間部フレーム体13の後端部材13Cと後部フレーム体14の前端部材14Bとの間に設けられている。
【0012】
すなわち連結装置20としては、前記中間部フレーム体13の前端部材13Bや後端部材13Cに縦方向軸21を介して連結体22が左右方向に相対回動自在に連結されるとともに、この連結体22が前部フレーム体12の後端部材12Cや後部フレーム体14の前端部材14Bに横方向軸23を介して上下方向に相対回動自在に連結されたところの、トラニオン形式が採用されている。
【0013】
前記移動体10は、複数の被案内装置30を介してレール3に支持案内されることで、一定経路5上を移動自在に構成されている。その際に、各被案内装置30は同様なトロリ形式に構成されている。すなわち、トロリ本体31は、左右一対の板体31Aと、これら板体31Aの上部間に嵌め込み状に固定された前後一対のC型体31Bとにより構成され、ここでC型体31Bは前や後に開放される状態で配設されている。
【0014】
そして板体31Aの下部間には前後一対の横ピン32が貫通して固定され、これら横ピン32の両突出部分に、前記レール3に嵌合して支持案内される被支持ローラ33が遊転自在に取り付けられている。また両C型体31Bにはそれぞれ縦ピン34が貫通して固定され、これら縦ピン34の中間部分、すなわちC型体31Bの中の部分に、前記ガイド部3aに当接して案内される被ガイドローラ35が遊転自在に取り付けられている。
【0015】
これにより各被案内装置30は、そのトロリ本体31の両側にそれぞれ前後一対の被支持ローラ33が設けられるとともに、その上部に前後一対の被ガイドローラ35が設けられて構成されている。
そして被案内装置30は、両縦方向軸21、ならびに前端部材12Bや後端部材14Cに設けられた縦方向軸24の端部に相対回動自在に連結されている。すなわち、縦方向軸21,24は、両板体31A間でかつ両C型体31B間に挿入され、そして両板体31A間に通される横方向ピン26が各縦方向軸21,24の端部に貫通されている。これにより縦方向軸21,24の端部と被案内装置30との連結が、縦方向軸21,24の端部を貫通する横方向ピン26を介して行われる。
【0016】
前記移動体10には被搬送物の支持部40が設けられている。すなわち、前記フレーム体12,13,14のうち中間部フレーム体13には、被搬送物の支持部40が設けられている。この支持部40は、前記中間部フレーム体13と前端部材13Bまたは後端部材13Cとの上面間から立設された前後一対の縦材41と、これら縦材41の上面間に設けらた前後材42と、この前後材42の前後端面にそれぞれ固定された左右材43と、これら左右材43上に設けられた被搬送物の支持具(図示せず。)などにより構成されている。
【0017】
前記支持部40の部分には遊転輪(ガイドローラ)45が取り付けられている。すなわち、縦材41の左右側面からブラケット46が連設され、これらブラケット46から左右外方へ突設された軸47に前記遊転輪45が取り付けられている。そして、前記遊転輪45を下方から支持案内する一対のガイドレール7が、前記一定経路5に沿って配設されている。
【0018】
なおガイドレール7は一定経路5の全長に沿って設けてもよく、また主として被搬送物を支持して作業を行う直線状経路部5aにのみ設けてもよい。さらにガイドレール7の部分にはカバー体8が設けられており、ここでカバー体8により遊転輪45を下方から支持案内する形式であってもよい。そして遊転輪45は、図2に示される4輪形式のほか、1輪形式、片持ち状の2輪形式、3輪形式、4輪以上の複数輪形式などであってもよい。
【0019】
両直線状経路部5aの所定箇所には、前記受動面15に作用して移動体10に走行力を付与する送り装置50が設けられている。この送り装置50は図3、図7、図8に示すように、そのベース枠51が片側のレール3の外面に取り付けられ、そしてベース枠51からのブラケット52には縦軸53が回転自在に支持されている。この縦軸53にはリンク体54が取り付けられるとともに、このリンク体54の遊端には支持部材55が設けられている。
【0020】
そして支持部材55の下面側には、回転駆動装置の一例である減速機付きのインダクションモータ56が配設され、このインダクションモータ56から上方に取り出された出力軸57には、たとえば外周部分がウレタン製の送りローラ58が固定されている。なおインダクションモータ56は、前記送りローラ58に送り回転力Aを付与するように構成されている。
【0021】
前記縦軸53を中にして前記レール3とは反対側において、前記ベース枠51と支持部材55との間には、ボルト・ナット形式で調整自在な揺動規制具59が貫通されて配設され、さらにベース枠51と支持部材55との間には、ボルトに外嵌されて圧縮ばね60が配設されている。なお送りローラ58の非作用箇所部分はカバー体61により覆われている。以上の51?61などにより送り装置50の一例が構成される。
【0022】
したがって送り装置50は、圧縮ばね60の弾性反発力により支持部材55やリンク体54を縦軸心62の周りで内側へ揺動させ、以て送りローラ58を受動面15に対して当接させる方向に付勢し得る。その際に、最大の接近位置は揺動規制具59により規制される。
なお、直線状経路部5aの前記送り装置50の下手には、前記受動面15に作用して移動体10に制動力を付与する制動装置65が設けられる。この制動装置65は前記送り装置50と同様の構造であって、前記本体11における受動面15に対して側方から当接自在で、かつたとえばウレタン製の制動ローラ66と、この制動ローラ66に連動しかつ制動ローラ66に送り回転力Bを付与する回転駆動装置67などから構成される。なお回転駆動装置67はトルクモータなどからなり、その送り回転力Bは前記インダクションモータ56の送り回転力Aよりも小に、すなわちA>Bに設定されている。
【0023】
したがって直線状経路部5aにおいては、送り装置50と制動装置65との間において、複数台の移動体10が、その前後端間に隙間を生じめることなく、すなわち前後の当接部16,17を相当接させた状態で、密に後押し状態で整列されて走行するように構成されている。
前記送り装置50の少し上手には送り込み装置68が設けられ、そして前記制動装置65の少し下手には送り出し装置69が設けられている。ここで送り込み装置68や送り出し装置69としては、前記送り装置50と同様な構造のものが採用される。なお、各装置50,65,68,69の配置パターンは種々変更されるものであり、また制動装置65と送り込み装置68と送り出し装置69は、その一部あるいは全部を省略してもよい。
【0024】
以下に、上記した実施の形態における作用を説明する。
図6に示されるように、直線状経路部5aの始端側部分において、送り込み装置68の送り回転力によって送り装置50の部分に送り込まれてきた移動体10は、この送り装置50の送り回転力Aによって走行力が付与される。
すなわち、図8の仮想線イに示されるように、圧縮ばね60の弾性力により内側に突出されている送りローラ58は、送り込まれてきた移動体10の受動面15に当接されることで、図8の実線に示されるように、圧縮ばね60の弾性力に抗して後退された状態で受動面15に圧接されることになる。
【0025】
このとき送りローラ58はインダクションモータ56によって回転駆動されており、したがって強制回転されている送りローラ58を受動面15に圧接させることで、その送りの回転力Aにより移動体10に走行力を与えることになる。
その際に直線状経路部5a上に密な列車状で位置している移動体10群の最後尾の移動体10における後端部の当接部17に、この送り込まれた移動体10の前端部の当接部16が当接され、以て直線状経路部5a上で密な列車状で位置している移動体10群は、送り装置50の送り回転力Aによって所望の速度で走行され、図2に示されるように、直線状経路部5aに密な列車状で位置している移動体10群を後押し走行させることになる。
【0026】
このようにして直線状経路部5a上で移動され、そして終端側に達した移動体10に対して制動装置65によって制動が付与されている。すなわち制動装置65では、送り装置50と同様の作用によって受動面15に圧接させている制動ローラ66が強制回転され、その送り回転力Bによって、移動体10に対して制動力が付与されている。
【0027】
ここで制動ローラ66の送り回転力Bに対して送り装置50側の送り回転力Aが大であることから、その差に相応して、制動装置65に対応した移動体10は制動作用を受けた状態で走行されることになる。したがって直線状経路部5aにおいては、送り装置50から制動装置65の間で、複数台の移動体10が、その前後端間に隙間を生じめることなく密に後押し状態で整列されて走行されることになる。
【0028】
このように直線状経路部5a上で移動体10群が間欠的にまたは連続的に走行されている間に、あるいは間欠停止している間に、床1上の作業者や本体11上に乗り移った作業者が、支持部40に支持されている被搬送物に対して各種の作業を遂行する。
そして制動装置65の部分から押し出され状に走行される移動体10は、送り出し装置69によってカーブ経路部5bへ送り出され、そして適宜の送り手段によってカーブ経路部5bで走行されたのち、次の直線状経路部5aにおける送り込み装置68の部分に達することで、循環走行される。なお、制動装置65の部分から押し出されたのち次の直線状経路部5aにおける送り込み装置68の部分に達するまでの間に、作業済みの被搬送物が支持部40から降ろされるとともに、支持部40に新たな被搬送物が積込まれる。
【0029】
このような移動(走行)の際に各被案内装置30は、各被支持ローラ33を介してレール3に支持案内され、そして各被ガイドローラ35がガイド部3aに当接して案内される。これにより移動体10の移動は、ガタ付いたり横倒れしたりすることなく安定して行われ、以て被搬送物に対する各種作業や被搬送物の積み降ろしは、常に正確に行える。
【0030】
上述した送り装置50による移動体10の移動は、その送りローラ58を、前部フレーム体12の受動面15から中間部フレーム体13の受動面15、ならびに後部フレーム体14の受動面15へと順次作用させることで行われる。さらに連結装置20における連結体22の側面も受動面として送りローラ58が作用される。
【0031】
その際に、送りローラ58が前部フレーム体12に作用しているとき、中間部フレーム体13と後部フレーム体14は連結装置20を介して引っ張り移動され、また中間部フレーム体13に作用しているとき、前部フレーム体12は連結装置20を介して押し移動されるとともに後部フレーム体14は連結装置20を介して引っ張り移動され、さらに後部フレーム体14に作用しているとき、中間部フレーム体13と前部フレーム体12は連結装置20を介して押し移動されることになる。
【0032】
上述した一定経路5上での列車状の後押し移動において、直線状経路部5aでは図2に示されるように、各移動体10の本体11、すなわち各フレーム体12,13,14が平面視ならびに側面視で直線状姿勢になることから、当接部17に対して当接部16が真後ろから当接する状態になり、その後押し移動は円滑に確実に行える。
【0033】
また、左右のカーブ経路部5bでは図9に示されるように、各フレーム体12,13,14は、平面視において連結装置20の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で後押し移動されることになる。これにより、平面視において、先行移動体10の後部フレーム体14と後続移動体10の前部フレーム体12とが成す相対角度Θが鈍角となり、当接部17に対して当接部16が鈍角で当接することになって、その後押し移動は円滑に確実に行える。
【0034】
なお屈曲は、連結装置20において、縦方向軸21の周りで相対回動することで行われる。また被案内装置30は、縦方向軸21,24を介して回動されることで、レール3の左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動される。
図10に示されるように、一定経路5中に、側面視において上方(または下方)へのカーブ経路部5bを形成されている場合も、側面視において、先行移動体10の後部フレーム体14と後続移動体10の前部フレーム体12とが成す相対角度Θが鈍角となり、当接部17に対して当接部16が鈍角で当接することになって、その後押し移動は円滑に確実に行える。
【0035】
なお屈曲は、連結装置20において、横方向軸23の周りで相対回動することで行われる。また被案内装置30は、横方向ピン26を介して回動されることで、レール3の上下方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動される。
上記した実施の形態では、本体11の一側面が受動面15に形成され、この受動面15に作用される送り装置50が設けられた形式が示されているが、これは本体11の他側面に作用される受けローラを設けて、本体11を両側から挟みつけて強い摩擦力を得、以て充分な走行力を与え得る形式であってもよい。さらに挟みつける形式は、制動装置65や送り込み装置68や送り出し装置69にも採用し得る。その際に他側面に作用される受けローラは、強制駆動形式や遊転形式のいずれであってもよい。
【0036】
上記した実施の形態では、移動体10の本体11として、三本のフレーム体12,13,14からなる形式を示したが、これは前部フレーム体12の前方や後方、後部フレーム体14の前方や後方に単数または複数のフレーム体を連結した三本以上の形式や、中間部フレーム体13を複数本とした三本以上の形式などであってもよい。またフレーム体12,13,14のうちいずれかを省略した二本形式であってもよい。
【0037】
上記した実施の形態では、連結装置20として、中間部フレーム体13側に縦方向軸21を設けるとともに前後のフレーム体12,14側に横方向軸23を設けた形式を示したが、これは中間部フレーム体13側に横方向軸を設けるとともに前後のフレーム体12,14側に縦方向軸を設けた形式などであってもよい。上記した実施の形態では、床1側からの機枠2にレール3を配設しているが、これは床面下のピット内にレール3を配設した構成であってもよい。これによると、移動体10を含めた全体の高さを低く形成できる。またレール3は、チェーンなどメンテナンスを必要とする部分がないので、床面1a下のピット内配設は何ら支障なく行える。
【0038】
上記した実施の形態では、床1側を走行自在な移動体10を示したが、これは天井側に配設したレールに支持案内されて移動自在な移動体であってもよい。
上記した実施の形態では、送り装置50から制動装置65の間で、複数台の移動体10が、その前後端間に隙間を生じめることなく密に後押し状態で整列されて走行される駆動形式とされているが、これは前後端間に隙間を生じる状態で移動体10が走行駆動される形式であってもよい。そして送り手段としては、駆動チェーンと係脱構造との組み合せ形式などを採用し得る。
【0039】
【発明の効果】
上記した本発明によると、一定経路における直線状経路部では、移動体を、その本体、すなわち各フレーム体を平面視ならびに側面視で直線状姿勢として移動できる。また左右のカーブ経路部では、各フレーム体を平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動でき、その際に屈曲は、縦方向軸の周りに相対回動することで自動的にかつ確実に行うことができる。また被案内装置は、縦方向軸を介して回動することで、レールの左右方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。これにより、フレーム体間や被案内装置の連結を、連結用軸の使用数を少なくして行うことができ、移動体は、構造を簡単かつコンパクトにして提供できる。
【0040】
また上記した本発明によると、被案内装置は、横方向ピンを介して回動することで、レールの上下方向の変位、変形に対して向きを自動的に変更しながら円滑に移動できる。
そして上記した本発明によると、一定経路における上下のカーブ経路部では、各フレーム体を、平面視において連結装置の部分でカーブに沿って屈折した姿勢で移動でき、その際に屈曲は、横方向軸の周りで相対回動することで自動的にかつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、移動体の側面図である。
【図2】同移動体の直線状経路部での平面図である。
【図3】同移動体の正面図である。
【図4】同移動体の要部の側面図である。
【図5】同移動体の要部の平面図である。
【図6】同移動体を使用した搬送設備の概略平面図である。
【図7】同移動体を使用した搬送設備における送り装置部分の側面図である。
【図8】同移動体を使用した搬送設備における送り装置部分の平面図である。
【図9】同移動体の左右のカーブ経路部での平面図である。
【図10】同移動体の上下のカーブ経路部での側面図である。
【符号の説明】
1 床
3 レール
5 一定経路
5a 直線状経路部
5b カーブ経路部
7 ガイドレール
10 移動体
11 本体
12 前部フレーム体
13 中間部フレーム体
14 後部フレーム体
15 受動面
16 当接部
17 当接部
20 連結装置
21 縦方向軸
22 連結体
23 横方向軸
24 縦方向軸
26 横方向ピン
30 被案内装置
31 トロリ本体
33 被支持ローラ
35 被ガイドローラ
40 支持部
45 遊転輪(ガイドローラ)
50 送り装置
58 送りローラ
60 圧縮ばね
65 制動装置
66 制動ローラ
67 回転駆動装置
68 送り込み装置
69 送り出し装置
A 送り回転力
B 送り回転力
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-11-10 
結審通知日 2006-11-15 
審決日 2006-12-05 
出願番号 特願平11-273497
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B65G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 寺川 ゆりか  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 関 義彦
長馬 望
登録日 2005-01-21 
登録番号 特許第3637820号(P3637820)
発明の名称 移動体  
代理人 関口 久由  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 森岡 則夫  
代理人 森本 義弘  
代理人 柳野 隆生  
代理人 原田 洋平  
代理人 笹原 敏司  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 笹原 敏司  
代理人 森本 義弘  
代理人 原田 洋平  

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