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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60L |
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管理番号 | 1166257 |
審判番号 | 不服2006-8213 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-27 |
確定日 | 2007-10-18 |
事件の表示 | 特願2001-354668「車両駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月 6日出願公開、特開2003-164014〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年11月20日の出願であって、平成18年3月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同年5月25日付で手続補正がなされたものである。 2.平成18年5月25日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年5月25日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「車両駆動用の複数のモータをケース外の同じ側に備え、 前記複数のモータの回転出力を受ける各メインシャフトと、このメインシャフトの回転を減速する減速機構と、この減速機構による回転出力により駆動される出力軸と前記出力軸に備えられた出力ギアをケース内に備え、 前記出力軸は、前記メインシャフトよりも下方で、且つケースからモータが配置される側に延びて被駆動部材に接続され、 前記減速機構を構成するギアのうち前記出力ギヤのみが、その一部を前記ケース内に収容された潤滑油に没入されるとともに、前記出力ギアが前記減速機構を構成するギアのうちで最も周速度が低い、ことを特徴とする車両駆動装置。」 と補正された。 上記補正は、実質的に、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「出力ギヤ」について「減速機構を構成するギアのうち出力ギヤのみが、その一部をケース内に収容された潤滑油に没入されるとともに、前記出力ギアが前記減速機構を構成するギアのうちで最も周速度が低い」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 なお、上記記載中「ギア」は、明細書の記載からみて「ギヤ」の誤記と認められるので、以下「ギア」は「ギヤ」と認定して検討する。 (2)引用文献 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-245106号公報(以下「引用文献1」という。)には、「減速機付き電動機」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「【0004】この電動機本体1の回転出力を減速する減速機6は、複数の減速歯車7?12の噛み合わせよりなる減速歯車機構13により構成されている。始端の減速歯車7は、電動機本体1の回転軸4の外周に取付けられている。末端の減速歯車12は減速出力軸14の外周に取付けられている。……」 ・「【0005】このような減速歯車機構13や回転変位センサ15を収容する減速機ケース16は、1対の分割ケース17,18として2分割されて形成されている。……」 また、図2には、電動機本体1を分割ケース17外の側部に備え、減速出力軸14は電動機本体1の回転軸4よりも下方で、且つ、分割ケース17から電動機本体1が配置される側に延びている構成が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「電動機本体を分割ケース外に備え、 前記電動機本体の回転軸と、この回転軸の回転出力を減速する減速機と、この減速機の減速出力軸とを減速機ケース内に収容し、 前記減速出力軸は、前記電動機本体の回転軸よりも下方で、且つ分割ケースから電動機本体が配置される側に延びている減速機付き電動機。」 (2-2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-19979号(実開昭58-124663号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、第1図と共に次の事項が記載されている。 ・「1.モータ、減速ギヤ、及び、エンジンのリングギヤを回転させる、ピニオンクラッチより成る、減速ギヤ付きスターターにおいて、動力を発生する、モータを、減速ギヤの大歯車の周囲に複数個配設したことを特徴とするスタータ。」(実用新案登録請求の範囲) ・「本考案によれば、小形で、同一のモータの、個数を変えることにより、スタータの出力性能を変化出来る為、多種の要求性能に適合した、スタータを提供出来、さらに、本モータは、スタータ生産数に比べ、2倍以上の生産数となる為、容易に量産効果を得ることが出来る効果がある。」(明細書3頁1?6行) また、第1図には、複数のモータ1をケース外の同じ側に備えた構成が示されている。 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「電動機本体」はその作用・機能からみて、前者の「モータ」に相当し、以下同様に「回転軸」は「回転出力を受けるメインシャフト」に、「回転出力を減速する減速機」は「回転出力を受けるメインシャフトの回転を減速する減速機構」に、「減速機の減速出力軸」は「減速機構による回転出力により駆動される出力軸」に、「分割ケース」及び「減速機ケース」は「ケース」に、「収容し」は「備え」に、「電動機本体の回転軸」は「メインシャフト」に、それぞれ相当する。 また、後者において「減速出力軸」が被駆動部材に接続されることは自明である。 また、後者の「減速機付き電動機」は、何らかの負荷を駆動することは明らかであるから、前者の「車両駆動装置」とは、「負荷駆動装置」との概念で共通する。 したがって両者は、 [一致点] 「モータをケース外に備え、 前記モータの回転出力を受けるメインシャフトと、このメインシャフトの回転を減速する減速機構と、この減速機構による回転出力により駆動される出力軸と前記出力軸に備えられた出力ギヤをケース内に備え、 前記出力軸は、前記メインシャフトよりも下方で、且つケースからモータが配置される側に延びて被駆動部材に接続される負荷駆動装置。」である点で一致し、 [相違点] (イ)本件補正発明では、モータが、「複数のモータ」からなり、ケース外の「同じ側」に備えられているのに対して、引用発明では、モータが1つである点、 (ロ)本件補正発明では、「減速機構を構成するギヤのうち出力ギヤのみが、その一部をケース内に収容された潤滑油に没入されるとともに、前記出力ギアが前記減速機構を構成するギヤのうちで最も周速度が低い」としているのに対して、引用発明では、その様な特定がされていない点、及び、 (ハ)駆動される負荷が、本件補正発明では、「車両」であるのに対し、引用発明では、かかる特定がなされていない点で相違している。 (4)相違点に対する判断 相違点(イ)について 被駆動部材を駆動するモータを複数のモータで構成すると共に、これら複数のモータをケース外の同じ側に備えた発明が引用文献2に記載されている。 引用文献2に記載された発明は、減速機構を介して負荷を駆動する装置において、必要に応じて単一の小型のモータを複数個流用出来るようにした点で本件補正発明と同様の効果を奏するものであるから、引用発明において、モータを複数とすると共にケースの同じ側に備えることにより相違点(イ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者に容易である。 相違点(ロ)について 車両駆動装置の減速機構において、出力軸が入力軸よりも下方であって、減速機構を構成するギヤのうち出力ギヤのみがその一部をケース内に収容された潤滑油に没入されるとともに、前記出力ギアが前記減速機構を構成するギヤのうちで最も周速度が低いものとする技術は例えば、実願昭59-71707号(実開昭60-182560号)のマイクロフィルムに記載されているように周知技術である。 したがって、引用発明において相違点(ロ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者に容易である。 相違点(ハ)について 電動機の駆動対象は、必要に応じて適宜選定し得る事項と認められる。 したがって、引用発明の負荷を車両とすることで相違点(ハ)に係る本件補正発明の構成とすることも任意である。 また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2に記載された発明、及び上記周知技術から予測しうる程度のものと認められる。 したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成18年5月25日付の手続補正は上記のとおり却下され、また、平成17年12月26日付の手続補正は平成18年3月24日付の補正の却下の決定により却下されているので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年3月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「車両駆動用の複数のモータをケース外の同じ側に備え、 前記複数のモータの回転出力を受ける各メインシャフトと、このメインシャフトの回転を減速する減速機構と、この減速機構による回転出力により駆動される出力軸とをケース内に備え、 前記出力軸は、前記メインシャフトよりも下方で、且つケースからモータが配置される側に延びて被駆動部材に接続され、 前記出力軸に備えられ前記減速機構を構成する出力ギヤの少なくとも一部が、前記ケース内に収容された潤滑油に没入することを特徴とする車両駆動装置。」 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記したとおりであって、前記2.で検討した本件補正発明から「出力ギヤ」について「減速機構を構成するギヤのうち前記出力ギヤのみが、その一部を前記ケース内に収容された潤滑油に没入されるとともに、前記出力ギヤが前記減速機構を構成するギヤのうちで最も周速度が低い」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.(3)」で挙げた相違点のうち、(イ)及び(ハ)のみとなる。 したがって、前記「2.(4)」での検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-14 |
結審通知日 | 2007-08-21 |
審決日 | 2007-09-03 |
出願番号 | 特願2001-354668(P2001-354668) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60L)
P 1 8・ 121- Z (B60L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 安池 一貴、長馬 望 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 田中 秀夫 |
発明の名称 | 車両駆動装置 |
代理人 | 石田 純 |
代理人 | 吉田 研二 |