ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
不服20056282 | 審決 | 特許 |
不服200627219 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C07D |
---|---|
管理番号 | 1166295 |
審判番号 | 不服2004-3557 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-23 |
確定日 | 2007-10-11 |
事件の表示 | 平成10年特許願第549679号「免疫調節薬としてのグリーンポルフィリン」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月26日国際公開、WO98/52608、平成12年12月19日国内公表、特表2000-516964〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年5月15日(パリ条約による優先権主張1997年5月16日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年9月30日付けで特許請求の範囲について補正され、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年2月23日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年3月24日付けで特許請求の範囲について補正がされたものである。 2.平成16年3月24日付け手続補正についての補正却下の決定 平成16年3月24日付け手続補正を却下する。 【理由】 (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項7は、以下のとおりに補正された。 【請求項7】(本件補正後) 以下の工程: 前記抗原に対する前記免疫応答を調節するために有効である量のグリーンポルフィリンを、このような調節を要する被検体に投与する工程、 該投与は、該抗原に対する該抗原特異的免疫応答が継続する間、行われる工程、 および 免疫調節に効果のある十分な時間、周囲光未満の光中で該被検体を維持するが、該被検体の細胞の生存率を保持する工程、 を包含する方法を用いて抗原特異的免疫応答を調節するための薬学的組成物であって、 ここで、該周囲光未満の光が、10J/cm2未満であるか、または 該周囲光未満の光が、500μW/cm2未満の強度で適用される、薬学的組成物。 これに対して、本件補正前の特許請求の範囲の請求項9は次のとおりである。 【請求項9】(本件補正前) 前記有効量のグリーンポルフィリンの投与後、前記周囲光未満の光が、前記被検体における紅斑を誘導するために要する光の全エネルギーの4分の1未満であるか、または 該周囲光未満の光が10J/cm2未満であるか、または 該周囲光未満の光が500μW/cm2未満の強度で適用される、 請求項8に記載の薬学的組成物。 なお、請求項9で引用する薬学的組成物は、以下のものである。 【請求項8】(本件補正前) 以下の工程: 前記抗原に対する前記免疫応答を調節するために有効である量のグリーンポルフィリンを、このような調節を要する被検体に投与する工程、 該投与は、該抗原に対する該抗原特異的免疫応答が継続する間、行われる工程、 および 免疫調節に効果のある十分な時間、周囲光未満の光中で該被検体を維持するが、該被検体の細胞の生存率を保持する工程、 を包含する方法を用いて抗原特異的免疫応答を調節するための薬学的組成物。 そうすると、本件補正は、補正前の請求項9に記載される「前記周囲光未満の光が、前記被検体における紅斑を誘導するために要する光の全エネルギーの4分の1未満である」との択一的記載を削除するものであるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の上記請求項7に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 (2)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され本願優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな国際公開第96/22090号パンフレット(以下、「引用例1」という。)には以下のとおりの記載がある。 なお、以下のア?エとして示す摘記事項は、引用例1(英文)の該当箇所の翻訳文である。(上記国際公開に対応する特表平10-512268号公報参照。) ア. 「抗原特異的免疫応答の調節が必要な患者に、抗原に対する該免疫応答を調節するために有効量な量のグリーンポルフィリンを、該グリーンポルフィリンに吸収される照射の非存在下において、該抗原に対する抗原特異的免疫応答が進行している間に投与することよりなる、抗原特異的免疫応答の調節方法。」(クレーム1) イ. 「グリーンポルフィリンは自らが吸収する輻射の非存在下で効果を発揮する。この文言は、目標に対して意図的な輻射はなされないことを意味する。最小量のバックグランドの光はなお存在してもよい。前記背景技術の項で述べたように、グリーンポルフィリンは光力学的治療プロトコールで広く用いられてきた。これらのプロトコールでは・・・グリーンポルフィリン化合物が吸収する波長を含む光で意図的に照射される。グリーンポルフィリンによるこれらの波長の吸収は周囲の物質が害を受ける様な方法で分子の励起を引き起こす。・・・本発明の方法においては励起を生じさせるための照射はプロトコールには含まれていない。しかしながら、全ての光を治療される患者から遮断する必要はない。このようにして、ここで用いられている“グリーンポルフィリンが吸収する輻射の非存在下”という文言は、暗黒ではなくむしろ典型的な周囲環境を意味する。すなわち、グリーンポルフィリンの既知の光力学的効果は本発明の方法で用いられないことを単に意味する。」 (4頁16行?5頁6行) ウ. 「本発明のグリーンポルフィリンは小分子の薬に一般に便利な方法で製剤化され、投与することができ、そのような方法は例えば・・・で説明されている技術で知られている。製剤組成物は、免疫調節するのに・・・有効な量のグリーンポルフィリンを含有するであろう。」(10頁2行?10行) エ. 遅効型過敏症(DTH)実験モデルにおいて、リポソーム形態のBPD-MA調製物を静脈注射でマウスに投与したところ、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)に対する応答を抑制したこと(例2)、皮膚同種移植拒絶アッセイにおいて、リポソーム形態のBPD-MA調製物を静脈注射でマウスに投与したところ、照射を受けないBPDは同種移植の拒絶を抑えたこと(例4)、DMSO中で再構成された種々のBPD類縁体(アナログ)をマウスに24時間で投与したところ、直接光の非存在下で、モノBPD類縁体(アナログ)が局所投与されたハプテンDNFBにより惹起される遅効型過敏症(DTH)の応答を強く阻害したこと(例7)が記載されている。 (3)対比・判断 引用例1には、抗原特異的免疫応答を調節するために、有効量のグリーンポルフィリンを調節が必要な患者(「被検体」に相当。)に投与することが記載され(摘記事項ア)、かかる投与は、グリーンポルフィリンに吸収される照射の非存在下で抗原特異的免疫応答が進行している間に行うこと(摘記事項ア)、更にグリーンポルフィリンを製剤組成物とすること(摘記事項ウ)が記載されている。 以上の記載事項によると、引用例1には、 「グリーンポルフィリンに吸収される照射の非存在下において、 以下の工程: 抗原に対する免疫応答を調節するために有効である量のグリーンポルフィリンを、このような調節を要する被検体に投与する工程、 該投与は、該抗原に対する該抗原特異的免疫応答が継続する間、行われる工程、 を包含する方法を用いて抗原特異的免疫応答を調節するための薬学的組成物」の発明が記載されていると認められる。 そこで、本願補正発明(なお、冒頭の「前記抗原」、「前記応答」は、請求項1の記載からみて、「抗原」、「応答」を指すものと解釈した。)(前者)とこの引用例1に記載された発明(後者)を対比すると、両者は 「以下の工程: 抗原に対する免疫応答を調節するために有効である量のグリーンポルフィリンを、このような調節を要する被検体に投与する工程、 該投与は、該抗原に対する該抗原特異的免疫応答が継続する間、行われる工程、 を包含する方法を用いて抗原特異的免疫応答を調節するための薬学的組成物」で一致し、前者が「免疫調節に効果のある十分な時間、周囲光未満の光中で該被検体を維持するが、該被検体の細胞の生存率を保持する工程」を含み、周囲光未満の光を「10J/cm2未満であるか、または該周囲光未満の光が、500μW/cm2未満の強度」のものと規定しているのに対して、後者では、「グリーンポルフィリンに吸収される照射の非存在下」と規定するに止まる点で相違している。 (相違点について) 「グリーンポルフィリンに吸収される照射の非存在下」の意味するところについて、引用例1には、「目標に対して意図的な輻射はなされないことを意味する」、「最小量のバックグランドの光はなお存在してもよい」、「全ての光を治療される患者から遮断する必要はない」、「暗黒ではなくむしろ典型的な周囲環境を意味する」、「既知の光力学的効果は本発明の方法で用いられないことを単に意味する」との説明が付され(摘記事項イ)、それを具体化した実験例で「照射を受けない」、「直接光の非存在下」の文言があることからすると(摘記事項エ)、引用例1に記載の発明で排除されているのは、光力学的治療効果を与える程の意図的な光照射や全ての光が遮断された暗黒条件であることは明らかである。 そうすると、「グリーンポルフィリンに吸収される照射の非存在下」の条件は、「周囲光中」に限定されず、衣服等により周囲光が一部遮蔽された条件、所謂「周囲光未満の光中」をも指すものと当業者は理解するから、引用例1に記載の発明において、「周囲光未満の光中」を採用し、かかる条件の下で薬理効果(免疫調節効果)を奏するに「十分な時間」維持する工程を設けることは、当業者が容易に想到することである。 そして、本願補正発明は、「周囲光未満の光」を更に「10J/cm2未満」又は「500μW/cm2未満」の強度のものに規定するものであるが、これらの光強度は、一般の室内光源(LED、蛍光ランプ、白熱灯、蛍光灯等)でも得られるものであるから(特表平5-506210号公報の9頁左下欄下から1行?右下欄8行、特開2001-25511号公報の4頁段落【0011】?【0012】を参照のこと。)、上記数値範囲は、「周囲光未満の光中」で普通に採り得る強度範囲を示したものと認められ、当該数値範囲を規定することが当業者に格別工夫を要するものとみることはできない。 一方、「グリーンポルフィリンに吸収される照射の非存在下」では、「周囲の物質が害を受ける」「光力学的効果」は得られないのであるから(摘記事項イ)、「該被検体の細胞の生存率を保持する」なる規定を行うことも当業者ならば容易になし得ることである。 また、本願明細書の実施例4及び5並びに図4?7等を参酌しても、「周囲光未満の光中」及び「10J/cm2未満」又は「500μW/cm2未満」の強度を採用したことによる効果を格別と評価することはできない。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (4)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、上記補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年3月24日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?16に係る発明は、平成15年9月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 【請求項9】 前記有効量のグリーンポルフィリンの投与後、前記周囲光未満の光が、前記被検体における紅斑を誘導するために要する光の全エネルギーの4分の1未満であるか、または 該周囲光未満の光が10J/cm2未満であるか、または 該周囲光未満の光が500μW/cm2未満の強度で適用される、 請求項8に記載の薬学的組成物。 なお、請求項9で引用する薬学的組成物は、以下のものである。 【請求項8】 以下の工程: 前記抗原に対する前記免疫応答を調節するために有効である量のグリーンポルフィリンを、このような調節を要する被検体に投与する工程、 該投与は、該抗原に対する該抗原特異的免疫応答が継続する間、行われる工程、 および 免疫調節に効果のある十分な時間、周囲光未満の光中で該被検体を維持するが、該被検体の細胞の生存率を保持する工程、 を包含する方法を用いて抗原特異的免疫応答を調節するための薬学的組成物。 (1)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及びその記載事項は、2.(2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明に「前記周囲光未満の光が、前記被検体における紅斑を誘導するために要する光の全エネルギーの4分の1未満である」との選択肢を追加したものであるが、この選択肢に代わるものとして、本願補正発明と同じく「該周囲光未満の光が10J/cm2未満であるか、または該周囲光未満の光が500μW/cm2未満の強度で適用される」との構成を含むものである。 そして、本願補正発明は、前記2.(3)に記載したとおり、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-16 |
結審通知日 | 2007-05-17 |
審決日 | 2007-06-01 |
出願番号 | 特願平10-549679 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C07D)
P 1 8・ 575- Z (C07D) P 1 8・ 121- Z (C07D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内藤 伸一 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
福井 悟 川上 美秀 |
発明の名称 | 免疫調節薬としてのグリーンポルフィリン |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 安村 高明 |