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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166300
審判番号 不服2004-752  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-08 
確定日 2007-10-18 
事件の表示 特願2000-119745「遊技部品」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月30日出願公開、特開2001-300048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年4月20日の特許出願であって、平成15年12月1日付けの拒絶査定に対して平成16同年1月8日に審判請求がなされたものであり、その請求項1ないし10に係る発明は、平成15年10月14日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。(以下、「本願発明」という。)

「相手側部材に形成された取付孔に相手側部材の前側から裏側に挿入される本体部と、本体部の一端部の全周に本体部の取付孔への挿入方向と交差する外側に突出したフランジとを備えた遊技部品において、本体部が相手側部材における取付孔まわりの厚さよりも大きな寸法に形成されたフランジからの奥行きを有し、本体部が相手側部材の前側から取付孔に挿入された場合、フランジが相手側部材の前面に接触し、本体部の下部が取付孔に接触し、本体部の上部と取付孔との間に隙間が形成され、この隙間における本体部の取付孔に対向する部分と相手側部材より裏側に突出した部分とにわたり弾性変形可能な凸部が設けられる一方、本体部が相手側部材の取付孔に挿入される以前における本体部の下面から凸部の上面までの縦方向寸法は取付孔の縦方向寸法よりも大きく形成されており、本体部が取付孔に挿入された場合、凸部の本体部と取付孔との間に存在する部分が取付孔の壁面より受ける押圧力で撓み、当該凸部の相手側部材より裏面側に突出した部分が弾性的に復元して取付孔周りの相手側部材の裏面の側に突出する膨出部を形成し、フランジと膨出部とが相手側部材を前後で挟み付ける形態となって、遊技部品が相手側部材に取付けられることを特徴とする遊技部品。」

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、下記の各刊行物にはそれぞれ次の発明が記載されている。

引用刊行物
1.特開2000-70452号公報
2.特開平10-99492号公報

(1)特開2000-70452号公報
特開2000-70452号公報(以下、「引用例1」という。)には、「盤面部品の取付構造」に関して、以下の記載がある。
1-a 「本発明は、入賞装置や風車等の盤面部品を遊技盤面に取り付けるための盤面部品の取付構造に関するものである。」(段落【0001】)
1-b「・・・本発明の第1実施の形態として入賞装置13の取付構造について説明する。該入賞装置13は、・・・遊技盤4面に密着する取付基板16の中央に横長の開口17が形成され、該開口17に前面側へ開閉自在に回動する開閉板18が装着されている。・・・
前記取付基板16の裏面には前記開口17を囲うように箱枠状の枠体20が形成されている。該枠体20は、合成樹脂材によって形成され、取付基板16の裏面に突設される横長環状のリブ21と、前面が開放すると共に前端外周縁が前記リブ21に合致する箱体22とからなる。・・・
前記取付基板16の裏面にはリブ21の内周縁に沿って所定位置に後方へ突出する保持突起23が複数設けられている。該各保持突起23は大径部23aと小径部23bとからなり、後端面に螺子孔24が穿設されている。一方、前記箱体22の後壁22aに前記各保持突起23に対応位置して螺子挿通孔25,25…が設けられ、後側から各螺子挿通孔25を介して各螺子孔24にビス26を螺合することにより箱体22が固着される。」(段落【0011】-【0013】)
1-c「しかして、前記各保持突起23の小径部23bに、後記する取付孔36内の段差部37の角に係合する係合部材27が設けられる。該係合部材27は、遊技盤4より柔らかい素材、例えばゴムが使用され、側断面が三角形になるよう前側面と後側面とが対称をなす円錐形状に形成され、中央に前記小径部23bが挿通される通孔28が貫設されている。この際、前記前側面が前記段差部37の角に係合する案内傾斜面27aとなる。・・・そして、前記小径部23bに嵌合した状態ではその一部が前記枠体20すなわち箱体22の周壁に設けた欠切き29に臨み、その外側面より外方へ張り出すようになっている。・・・」(段落【0014】)
1-d「一方、前記遊技盤4に、前記入賞装置13の枠体20の外径サイズより一回り大きい取付孔36が貫設されている。該取付孔36の内周壁面36aには、その奥側に前記各係合部材27,27…に対応位置させ一部拡径する所要深さの段差部37,37…が複数形成されている。」(段落【0016】)
1-e「次に、入賞装置13の取付手順を説明する。入賞装置13を・・・遊技盤4の前側に配置し、枠体20を取付孔36へ嵌入させる。枠体20が取付孔36へ押し込まれると、各係合部材27が内周壁面36aに押されて収縮し、・・・各係合部材27が各段差部37に至り形状復元してそれらの後方へ傾斜する各案内傾斜面27aが各段差部37の角に係合する。・・・このように入賞装置13は取付孔36に押し込むのみで容易に取り付けられる。この際、各係合部材27の復元弾性力によって入賞装置13には大きな抜去力が与えられ、遊技盤4の厚み寸法に誤差が有ったり、各段差部37の位置にズレが生じていても、弾性変形することによりこれら寸法誤差が吸収されるので、入賞装置13が外れにくくしっかりと固定され、しかもガタつくこともない。」(段落【0017】)

上記の記載より、引用例1(特開2000-70452号公報)には次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。
「入賞装置13は、遊技盤4面に密着する取付基板16の中央に横長の開口17が形成され、取付基板16の裏面には前記開口17を囲うように箱枠状の枠体20が形成されており、該枠体20は、合成樹脂材によって形成され、取付基板16の裏面に突設される横長環状のリブ21と、前面が開放すると共に前端外周縁が前記リブ21に合致する箱体22とからなり、前記取付基板16の裏面にはリブ21の内周縁に沿って所定位置に後方へ突出する保持突起23が複数設けられ、各保持突起23は大径部23aと小径部23bとからなり、後端面に螺子孔24が穿設され、一方、前記箱体22の後壁22aに前記各保持突起23に対応位置して螺子挿通孔25,25…が設けられ、後側から各螺子挿通孔25を介して各螺子孔24にビス26を螺合することにより箱体22が固着され、前記各保持突起23の小径部23bに、取付孔36内の段差部37の角に係合する係合部材27が設けられ、該係合部材27は、遊技盤4より柔らかい素材、例えばゴムが使用され、側断面が三角形になるよう前側面と後側面とが対称をなす円錐形状に形成され、中央に前記小径部23bが挿通される通孔28が貫設されており、前記前側面が前記段差部37の角に係合する案内傾斜面27aとなり、前記小径部23bに嵌合した状態ではその一部が前記枠体20すなわち箱体22の周壁に設けた欠切き29に臨み、その外側面より外方へ張り出すようになっており、前記遊技盤4に、前記入賞装置13の枠体20の外径サイズより一回り大きい取付孔36が貫設され、該取付孔36の内周壁面36aには、その奥側に前記各係合部材27,27…に対応位置させ一部拡径する所要深さの段差部37,37…が複数形成され、入賞装置13の取付手順は、入賞装置13を遊技盤4の前側に配置し、枠体20を取付孔36へ嵌入させ、枠体20が取付孔36へ押し込まれると、各係合部材27が内周壁面36aに押されて収縮し、各係合部材27が各段差部37に至り形状復元してそれらの後方へ傾斜する各案内傾斜面27aが各段差部37の角に係合するものであり、このように入賞装置13は取付孔36に押し込むのみで容易に取り付けられ、この際、各係合部材27の復元弾性力によって入賞装置13には大きな抜去力が与えられ、遊技盤4の厚み寸法に誤差が有ったり、各段差部37の位置にズレが生じていても、弾性変形することによりこれら寸法誤差が吸収されるので、入賞装置13が外れにくくしっかりと固定され、しかもガタつくこともない、盤面部品の取付構造。」

(2)特開平10-99492号公報
特開平10-99492号公報(以下、「引用例2」という。)には、「遊技機部品取付構造」に関して、以下の記載がある。
2-a「ランプ風車1は、風車支持部2と、風車部7と、を備えており、風車支持部2が、遊技盤面板31へ取り付けられる構造となっている。風車支持部2には、四つのスリット4で4等分に分割した円筒形状の側壁板3がある。側壁板3には、外周のスリット4の両脇に当たる部分へ同一高さに形成した複数の逆止爪17が、最下段に形成され、突っ張り部15が、上位三段に形成されている。側壁板3の外径D1は、取付孔32の内径D2より小さく、逆止爪17の先端径D4は、取付孔32の内径D2よりも大きく、突っ張り部15の先端径D3は、取付孔32の内径D2より僅かに大きく形成されている。」(第1頁【解決手段】、図1)
2-b「本発明は遊技機へ遊技機部品を取り付けるための遊技機部品取付構造に関するものである。」(段落【0001】)
2-c「・・・風車支持部の上板部5の底部と逆止爪17の上面側17bとの間の長さL1は、遊技盤面板の厚みの長さL2に対して僅かに短く形成されている。」(段落【0022】)
2-d「ランプ風車1を遊技盤面板31へ取り付けるには、まず、取付孔32の中心と風車支持部2の中心とを合わせる。そして、ランプ風車1の上板部5の辺りを押すようにして、取付孔32へ上板部5の底部が遊技盤面板31に達するまで押し込み取り付ける。このとき、側壁板3の逆止爪17と突っ張り部15とが、取付孔32の縁部に押し付けられる。よって、側壁板3は、弾性変形して半径方向へたわむので強く押し込まなくても取り付けられる。また、逆止爪17は、弾性変形するのであるが、テーパ面17aを形成してあるから、弾性変形を助け、取付方向へ進みやすくなっている。突っ張り部15も第1テーパ面15aが形成してあるから、取付方向へ進みやすくなっている。・・・
そして、ランプ風車1を取り付け終ると、逆止爪17は、遊技盤面板31を通り抜けるため、弾性復帰して常時の形状に戻る。また、側壁板3も弾性復帰するので、常時の形状に戻ろうとする。しかし、突っ張り部15が取付孔32へ押し付けられたままとなり、その圧力により側壁板3は、半径方向へたわむ。そして、ランプ風車1は、側壁板3がたわむことにより芯出しされるので、芯出しする必要がない。また、ランプ風車1は、風車支持部2が、遊技盤面板31の厚みよりも長いので、突っ張り部15が取付孔32の内径全面へ偏りなく押し付けられるから半径方向へずれたり、揺れたりすることもなく、遊技盤面板31へ固定した状態の安定性もよい。さらに、上板部5の底部と逆止爪17の上面側17bとの間に遊技盤面板31を挟み込む。すなわち、上板部5の底部と逆止爪17の上面側17bとの間の長さL1は、遊技盤面板31の厚みの長さL2よりも僅かに短いので、十分に長手方向に対する固定がなされるため、長手方向へずれたり、揺れたりすることもない。しかも、上板部5は、皿を伏せた形状に形成されているので、弾性変形してたわむことで、遊技盤面板31をしっかりと挟み込むことができる。」(段落【0025】【0026】)

上記の記載より、引用例2(特開平10-99492号公報)には次の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。
「ランプ風車1は、風車支持部2と、風車部7と、を備え、風車支持部2が、遊技盤面板31へ取り付けられる構造となっており、風車支持部2には、四つのスリット4で4等分に分割した円筒形状の側壁板3があり、側壁板3には、外周のスリット4の両脇に当たる部分へ同一高さに形成した複数の逆止爪17が最下段に形成され、突っ張り部15が上位三段に形成されており、側壁板3の外径D1は、取付孔32の内径D2より小さく、逆止爪17の先端径D4は、取付孔32の内径D2よりも大きく、突っ張り部15の先端径D3は、取付孔32の内径D2より僅かに大きく形成され、風車支持部の上板部5の底部と逆止爪17の上面側17bとの間の長さL1は、遊技盤面板の厚みの長さL2に対して僅かに短く形成されており、ランプ風車1を遊技盤面板31へ取り付けるには、ランプ風車1の上板部5の辺りを押すようにして、取付孔32へ上板部5の底部が遊技盤面板31に達するまで押し込み取り付けるものであり、このとき、側壁板3の逆止爪17と突っ張り部15とが、取付孔32の縁部に押し付けられ、側壁板3は、弾性変形して半径方向へたわみ、逆止爪17は、テーパ面17aを形成してあるから、弾性変形を助け、ランプ風車1を取り付け終ると、逆止爪17は、遊技盤面板31を通り抜けるため、弾性復帰して常時の形状に戻り、また、ランプ風車1は、風車支持部2が、遊技盤面板31の厚みよりも長いので、突っ張り部15が取付孔32の内径全面へ偏りなく押し付けられるから半径方向へずれたり、揺れたりすることもなく、遊技盤面板31へ固定した状態の安定性もよく、さらに、上板部5の底部と逆止爪17の上面側17bとの間の長さL1は、遊技盤面板31の厚みの長さL2よりも僅かに短いので、上板部5の底部と逆止爪17の上面側17bとの間に遊技盤面板31を挟み込み、十分に長手方向に対する固定がなされる、遊技機部品取付構造。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比すると、両者はともに「取付孔」を備え、引用発明1における「盤面部品」は本願発明における「遊技部品」に対応しており、同様に、「取付孔へ嵌入」は「取付孔に挿入」に、「形状復元」は「弾性的に復元」に、それぞれ対応しており、さらに引用発明1について次のことがいえる。

(i) 引用発明1は、「入賞装置13を遊技盤4の前側に配置し、枠体20を取付孔36へ嵌入させ」(摘示1-e)るもので、上記「入賞装置13」は、その機能に照らすと本願発明における「本体部」に対応するものであり、「入賞装置13」が「前側」から裏側に「嵌入」(本願発明における「挿入」に対応する。)される「遊技盤4」は本願発明における「相手側部材」に対応するものである。
そうすると、引用発明1は、本願発明を特定する「相手側部材に形成された取付孔に相手側部材の前側から裏側に挿入される本体部」の事項に対応する構成を備えている。

(ii) 引用発明1における「盤面部品」(「遊技部品」)に含まれる「入賞装置13」(「本体部」)は、「遊技盤4面に密着する取付基板16」(摘示1-b)を備えており、引用例1の図2ないし5からも明らかなように、該「取付基板16」は、「入賞装置13」の一端部の全周に設けられているとともに、「入賞装置13」の「取付孔」への「嵌入」(「挿入」)方向と交差する外側に突出して設けられており、その機能に照らすと、本願発明における「フランジ」に対応するものである。
そうすると、引用発明1は、本願発明を特定する「本体部の一端部の全周に本体部の取付孔への挿入方向と交差する外側に突出したフランジとを備えた遊技部品」の事項に対応する構成を備えている。

(iii) 引用発明1における「入賞装置13」を構成する「枠体20」は、「取付基板16の裏面に突設される横長環状のリブ21と、前面が開放すると共に前端外周縁が前記リブ21に合致する箱体22とからな」(摘示1-b)るものであり、引用例1の図5等からも明らかなように、上記「取付基板16」(「フランジ」)から上記「箱体22」までの奥行きは、「遊技盤4」(「相手側部材」)に「貫設され」た「取付孔36」(摘示1-d)まわりの厚さよりも大きな寸法に形成されている。
そうすると、引用発明1は、本願発明を特定する「本体部が相手側部材における取付孔まわりの厚さよりも大きな寸法に形成されたフランジからの奥行きを有し」の事項に対応する構成を備えている。

(iv) 上記(ii)に記載したように、引用発明1における「入賞装置13」は「取付基板16」(「フランジ」)を備えており、「入賞装置13」(「本体部」)が「遊技盤4」(「相手側部材」)の前側から「取付孔36」に「嵌入」(「挿入」)された場合、「取付基板16」(「フランジ」)が「遊技盤4面」に「密着する」(摘示1-b)ことで、「遊技盤4」(「相手側部材」)の前面に接触するものである。
そうすると、引用発明1は、本願発明を特定する「本体部が相手側部材の前側から取付孔に挿入された場合、フランジが相手側部材の前面に接触し」の事項に対応する構成を備えている。

(v) 引用発明1における「入賞装置13の取付」は、「各係合部材27」が「取付孔36」の「内周壁面36aに押されて収縮」し、「各段差部37に至り形状復元し」て「各段差部37の角に係合」し、「各係合部材27の復元弾性力によって入賞装置13には大きな抜去力が与えられ」るとともに「入賞装置13が外れにくくしっかりと固定され、しかもガタつくこともない」(摘示1-e)ものである。
さらに引用例1の特に図4及び5を参照して、上記「入賞装置13」の下部に配された「係合部材27」と、「取付孔36」との関係をみると、上記「係合部材27」が「取付孔36」の「内周壁面36aに押されて収縮」し、「係合部材27」の弾性反発力によって、「入賞装置13」は「取付孔36」の上方壁面に押しつけられて上部が「取付孔36」に接触し、「入賞装置13」の下部と「取付孔36」との間に隙間が形成され、この隙間における「入賞装置13」の「取付孔36」に対向する部分と「遊技盤4」の「段差部37」とにわたり弾性変形可能な上記「係合部材27」が設けられるものであり、該「係合部材27」は「入賞装置13」より「取付孔36」に向かって突出しており、その機能に照らすと、本願発明における「凸部」に対応するものといえる。また、上記「段差部37」は、垂直面を備えることで「遊技盤4」の「取付孔36」に「段差」を形成し、「係合部材27」は上記した隙間における「入賞装置13」の「取付孔36」に対向する部分と「遊技盤4」の「段差部37」の垂直面側に突出した部分とにわたり設けられるものということができる。
以上をまとめると、引用発明1は、「(入賞装置13が遊技盤4の前側から取付孔に嵌入された場合)入賞装置13(「本体部」)の上下方向における一方が取付孔36に接触し、入賞装置13(「本体部」)の上下方向における他方と取付孔36との間に隙間が形成され、この隙間における入賞装置13(「本体部」)の「取付孔36」に対向する部分と遊技盤4(「相手側部材」)の垂直面側に突出した部分とにわたり弾性変形可能な係合部材27(本願発明における「凸部」に対応する。)が設けられる」ものであるということができる。
一方、本願発明は、「(本体部が相手側部材の前側から取付孔に挿入された場合)本体部の下部が取付孔に接触し、本体部の上部と取付孔との間に隙間が形成され、この隙間における本体部の取付孔に対向する部分と相手側部材より裏側に突出した部分とにわたり弾性変形可能な凸部が設けられる」ものであり、「(本体部が相手側部材の前側から取付孔に挿入された場合)本体部の上下方向における一方が取付孔に接触し、本体部の上下方向における他方と取付孔との間に隙間が形成され」るものであると包括的に表現することができるとともに、「凸部」が「相手側部材より裏側に突出した部分」は、「相手側部材」の「裏側」は事実上垂直面を形成していることから、上記「凸部」は、上記「隙間」における「本体部」の「取付孔に対向する部分」と「相手側部材」の垂直面側に突出した部分とにわたり設けられるものであるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、「(本体部が相手側部材の前側から取付孔に挿入された場合)本体部の上下方向における一方が取付孔に接触し、本体部の上下方向における他方と取付孔との間に隙間が形成され、この隙間における本体部の取付孔に対向する部分と相手側部材の垂直面側に突出した部分とにわたり弾性変形可能な凸部が設けられる」点で共通しているといえる。

(vi) 引用発明1における「入賞装置13」の縦方向寸法は、「係合部材27」の下面から「入賞装置13」の上面までの寸法であり、該「入賞装置13」を「遊技盤4」の「取付孔36へ嵌入させ」ると、「各係合部材27が内周壁面36aに押されて収縮」(摘示1-e)することから、「入賞装置13」が「遊技盤4」の「取付孔36」に「嵌入」される以前における「係合部材27」の下面から「入賞装置13」の上面までの縦方向寸法は「取付孔36」の縦方向寸法よりも大きく形成されており、これを、「入賞装置13(「本体部」)が遊技盤4(「相手側部材」)の取付孔36に嵌入(「挿入」)される以前における入賞装置13(「本体部」)の上下方向における上記取付孔に接触する面から係合部材27(「凸部」)の上下方向における先端面までの縦方向寸法は取付孔36の縦方向寸法よりも大きく形成されて」いると包括的に表現することができる。
一方、本願発明は、「本体部が相手側部材の取付孔に挿入される以前における本体部の下面から凸部の上面までの縦方向寸法は取付孔の縦方向寸法よりも大きく形成されて」いるものであり、「本体部が相手側部材の取付孔に挿入される以前における本体部の上下方向における上記取付孔に接触する面から凸部の上下方向の先端面までの縦方向寸法は取付孔の縦方向寸法よりも大きく形成されて」いると包括的に表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、「本体部が相手側部材の取付孔に挿入される以前における本体部の上下方向における上記取付孔に接触する面から凸部の上下方向における先端面までの縦方向寸法は取付孔の縦方向寸法よりも大きく形成されて」いる点で共通しているといえる。

(vii) 上記(v)に記載したように、引用発明1は、「入賞装置13」が取付孔に「嵌入」された場合、「係合部材27」の「入賞装置13」と取付孔との間に存在する部分が「取付孔36」の「内周壁面36a」より受ける押圧力で「収縮し」、当該「係合部材27」の「遊技盤4」の「段差部37」側に突出した部分が形状復元して、実質的に「取付孔36」周りの「入賞装置13」の「段差部37」に突出する膨出部を形成するものであり、上記「段差部37」は、垂直面を備えることで「遊技盤4」の「取付孔36」に「段差」を形成するものである。そして、「係合部材27」の復元弾性力によって「入賞装置13」には「大きな抜去力が与えられる」(摘示1-e)ことから、「入賞装置13」の前面に設けられた「取付基板16」と上記膨出部とが「入賞装置13」を前後で挟み付ける形態となって、「盤面部品」である「入賞装置13」が「遊技盤4」に取付けられるものである。
以上をまとめると、引用発明1は、「入賞装置13」(「本体部」)が取付孔に「嵌入」(「挿入」)された場合、「係合部材27」(「凸部」)の「入賞装置13」(「本体部」)と取付孔との間に存在する部分が取付孔の「内周壁面36a」(「壁面」)より受ける押圧力で「収縮し」(「撓み」)、当該「係合部材27」(「凸部」)の「遊技盤4」(「相手側部材」)の垂直面側に突出した部分が弾性的に復元して取付孔周りの「遊技盤4」(「相手側部材」)の垂直面の側に突出する膨出部を形成し、「取付基板16」(「フランジ」)と膨出部とが「遊技盤4」(「相手側部材」)を前後で挟み付ける形態となって、「盤面部品」(「遊技部品」)が「遊技盤4」(「相手側部材」)に取付けられる「盤面部品」(「遊技部品」)であるといえる。
一方、本願発明は、「本体部が取付孔に挿入された場合、凸部の本体部と取付孔との間に存在する部分が取付孔の壁面より受ける押圧力で撓み、当該凸部の相手側部材より裏面側に突出した部分が弾性的に復元して取付孔周りの相手側部材の裏面の側に突出する膨出部を形成し、フランジと膨出部とが相手側部材を前後で挟み付ける形態となって、遊技部品が相手側部材に取付けられる遊技部品」であり、上記(v)に記載したように、「相手側部材」の「裏側」は事実上垂直面を形成しており、「相手側部材より裏側に突出した部分」に設けられた「凸部」は、「凸部の相手側部材の垂直面側に突出した部分」と表現することができるとともに、「取付孔周りの相手側部材の裏面の側に突出する膨出部」は「取付孔周りの相手側部材の垂直面の側に突出する膨出部」と表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、「本体部が取付孔に挿入された場合、凸部の本体部と取付孔との間に存在する部分が取付孔の壁面より受ける押圧力で撓み、当該凸部の相手側部材の垂直面側に突出した部分が弾性的に復元して取付孔周りの相手側部材の垂直面の側に突出する膨出部を形成し、フランジと膨出部とが相手側部材を前後で挟み付ける形態となって、遊技部品が相手側部材に取付けられる遊技部品」である点で共通しているといえる。

以上の事項より、本願発明と引用発明1とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
相手側部材に形成された取付孔に相手側部材の前側から裏側に挿入される本体部と、本体部の一端部の全周に本体部の取付孔への挿入方向と交差する外側に突出したフランジとを備えた遊技部品において、本体部が相手側部材における取付孔まわりの厚さよりも大きな寸法に形成されたフランジからの奥行きを有し、本体部が相手側部材の前側から取付孔に挿入された場合、フランジが相手側部材の前面に接触し、本体部の上下方向における一方が取付孔に接触し、本体部の上下方向における他方と取付孔との間に隙間が形成され、この隙間における本体部の取付孔に対向する部分と相手側部材の垂直面側に突出した部分とにわたり弾性変形可能な凸部が設けられる一方、本体部が相手側部材の取付孔に挿入される以前における本体部の上下方向における上記取付孔に接触する面から凸部の上下方向における先端面までの縦方向寸法は取付孔の縦方向寸法よりも大きく形成されており、本体部が取付孔に挿入された場合、凸部の本体部と取付孔との間に存在する部分が取付孔の壁面より受ける押圧力で撓み、当該凸部の相手側部材の垂直面側に突出した部分が弾性的に復元して取付孔周りの相手側部材の垂直面の側に突出する膨出部を形成し、フランジと膨出部とが相手側部材を前後で挟み付ける形態となって、遊技部品が相手側部材に取付けられる遊技部品、である点。

相違点;
(A) (A-1) 本体部の上下方向における一方が取付孔に接触し、本体部の上下方向における他方と取付孔との間に隙間が形成される、本体部と取付孔との接触の関係が、本願発明においては、本体部の下部が取付孔に接触し、本体部の上部と取付孔との間に隙間が形成されるものであるのに対して、引用発明1においては、入賞装置(本体部)の上部が取付孔に接触し、入賞装置(本体部)の下部と取付孔との間に隙間が形成されるものであり、
(A-2) 本体部が相手側部材の取付孔に挿入される以前における本体部の上下方向における取付孔に接触する面から凸部の上下方向における先端面までの縦方向寸法が、本願発明においては、本体部の下面から凸部の上面までの縦方向寸法であるのに対して、引用発明1においては、係合部材(凸部)の下面から入賞装置(本体部)の上面までの縦方向寸法である点。

(B) 相手側部材の垂直面が、本願発明においては相手側部材の裏面であるのに対して、引用発明1においては遊技盤(相手側部材)の取付孔に設けた段差部である点。

上記の相違点について検討する。
相違点(A)について
相違点(A-1)をさらにみると、遊技盤などの相手側部材に形成された取付孔に、フランジを備えた入賞装置などの本体部を、相手側部材の前側から裏側に挿入して、本体部を相手側部材に取付ける遊技部品において、本願発明は、本体部の下部が取付孔に接触し、本体部の上部と取付孔との間に隙間が形成されるものであるのに対して、引用発明1は、本体部の上部が取付孔に接触し、本体部の下部と取付孔との間に隙間が形成されるものであり、本体部の上下方向における取付孔への接触と隙間の形成との関係が互いに逆の関係にある点で両者は相違するものである。
そこで検討するに、遊技盤などの相手側部材に形成された取付孔に、フランジを備えた入賞装置などの本体部を、相手側部材の前側から裏側に挿入して、本体部を相手側部材に取付ける遊技部品において、本体部の下部を取付孔に接触させ、本体部の上部と取付孔との間に隙間を形成して両者の位置決めをした上で、ねじ止め等の固着手段により本体部を相手側部材に固定することは、例えば下記に参考例として示すように当業者にとって自明な技術手段である。
そして、当該技術手段を熟知した当業者が引用発明1に接したとき、本体部と取付孔との接触と隙間の形成による両者の関係を、互いに逆の関係に改変することは通常試みることである。そうすると、引用発明1は、「入賞装置」(「本体部」)の下部が「取付孔」に接触し、「入賞装置」(「本体部」)の上部と「取付孔」との間に隙間が形成されることとなるから、相違点(A-1)は単なる設計の変更にすぎない。
また、相違点(A-2)をさらにみると、引用発明1における「本体部」(「入賞装置」)が「相手側部材」(「遊技盤4」)の取付孔に挿入される以前における縦方向寸法は、上記したように、「本体部」(「入賞装置」)の上下方向における取付孔に接触する面から凸部(「係合部材」)の上下方向における先端面までと規定され、本願発明における縦方向寸法と実体的な差異はない。しかし、相違点(A-1)の検討において記載したように、本願発明と引用発明1とは本体部の上下方向における取付孔への接触と隙間の形成との関係が互いに逆の関係にあるために、縦方向寸法の規定の仕方に表現上の差が生じている。そして上記したように、本体部と取付孔との接触と隙間の形成による両者の関係を、互いに逆の関係に改変することは通常試みることであり、上記した相違点(A-1)に係る設計の変更に伴って、引用発明1において、「係合部材」(「凸部」)の下面から「入賞装置」(「本体部」)の上面までと規定されていた縦方向寸法は、必然的に、「入賞装置」(「本体部」)の下面から「係合部材」(「凸部」)の上面までと規定されることとなるから、相違点(A-2)も単なる設計の変更にすぎない。

相違点(B)について
相違点(B)をさらにみると、本願発明も、引用発明1も、本体部が取付孔に挿入された場合、弾性変形可能な凸部の、本体部と取付孔との間に存在して取付孔の壁面より受ける押圧力で撓んでいた部分が、相手側部材の垂直面に至り、弾性的に復元して取付孔周りの相手側部材の垂直面の側に突出する膨出部を形成し、フランジと膨出部とが相手側部材を前後で挟み付ける形態となるのであるが、本願発明においては、上記「垂直面」が相手側部材の裏面であり、「凸部」は相手側部材の裏面に至って弾性的に復元して膨出部を形成し、膨出部が相手側部材の裏面に当接し、フランジと協同して相手側部材を前後で挟み付けるものであるのに対して、引用発明1においては、上記「垂直面」が「入賞装置13」(「本体部」)の「取付孔36」に設けた「段差部37」であり、「係合部材27」(「凸部」)は「遊技盤4」(「相手側部材」)の「取付孔36」内部の「段差部37」に至って弾性的に復元して膨出部を形成し、膨出部が上記「段差部37」に当接し、「取付基板16」(「フランジ」)と協同して「遊技盤4」(「相手側部材」)を前後で挟み付けるものである。
そこで検討するに、引用発明2は、相手側部材である「遊技盤面板31」に形成された「取付孔32」に、「上板部5」を備えた本体部である「ランプ風車1」を、該「遊技盤面板31」の前側から裏側に挿入して取付ける遊技部品において、「ランプ風車1」が「取付孔32」に挿入された場合、「ランプ風車1」の「風車支持部2」を構成する円筒形状の「側壁板3」に設けた「突っ張り部15」が「取付孔32」の縁部に押し付けられ、「側壁板3」が弾性変形して半径方向へ撓み、弾性変形することで「遊技盤面板31」を通り抜けた「逆止爪17」は弾性復帰して常時の形状に戻り、「フランジ」である「上板部5」と協同して「遊技盤面板31」を挟み込むものである。
すなわち、弾性変形及び復帰が可能な上記「逆止爪17」は、相手側部材である「遊技盤面板31」の「垂直面」を構成する裏面に当接することで、「取付基板16」(「フランジ」)と協同して「遊技盤4」(「相手側部材」)を前後で挟み付けるものであるから、同引用発明2は相違点(B)に係る構成を開示しており、引用発明1も、引用発明2も、本願発明と同様に本体部が前後で弾性的に挟み付けられて相手側部材に取付けられる遊技部品に関する発明である点で共通している。
そうすると、引用発明1に、引用発明2が開示する上記の技術事項を適用し、「垂直面」を構成する「遊技盤4」(相手側部材)の裏面側において「係合部材27」(凸部)を弾性的に復元させて、取付孔周りの「遊技盤4」(相手側部材)の裏面の側に突出する膨出部を形成し、「取付基板16」(「フランジ」)と膨出部とが「遊技盤4」(相手側部材)を前後で挟み付ける形態とすることは、当業者にとって容易なことである。

そして、相違点(A)及び(B)に係る発明特定事項を備えた本願発明の効果も、引用発明1及び引用発明2が本来奏する効果から当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到することができたものである。

【参考例】
参考例1:特開平1-244775号公報
(第5頁右下欄第4-11行、第3-5図)

参考例2:実願昭62-62780号(実開昭63-172475号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
(第6頁第3行-第7頁第2行、第1-2図)

参考例3:特開平10-165586号公報
(段落【0015】【0016】、図9)

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって本願の他の請求項に係る発明について論じるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-24 
結審通知日 2007-07-31 
審決日 2007-09-03 
出願番号 特願2000-119745(P2000-119745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 渡部 葉子
中槙 利明
発明の名称 遊技部品  
代理人 宮園 純一  

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