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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1166306 |
審判番号 | 不服2004-8918 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-30 |
確定日 | 2007-10-18 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 28497号「ディスク回転制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月27日出願公開、特開平11-232772〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成10年2月10日の出願であって、その請求項1乃至2に係る発明は、平成19年5月10日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 線速度一定で記録されたディスクに対してデータの再生を行なうためのディスク回転制御装置であって、 前記ディスクを回転駆動するスピンドルモータの所定回転角毎に回転パルスを発生させ、該回転パルスに基づいて、所定の基準クロックに対する該回転パルスの周波数誤差及び位相差情報を含む第1の誤差情報を検出する第1の誤差検出手段と、 前記ディスクの再生信号に含まれる同期信号を検出し、該同期信号に基づいて、該同期信号の周波数誤差及び位相差情報を含む第2の誤差情報を検出する第2の誤差検出手段と、 前記同期信号が所定間隔で検出されているか否かを判定する同期信号評価手段と、 所定周期のクロックをカウントし、且つ、前記同期信号評価手段において前記同期信号が所定間隔で検出されていると判定されている間、前記同期信号が検出される前記所定間隔で前記カウントがリセットされることによって、前記同期信号が所定間隔で検出されない期間を計測する計測手段と、 該計測手段による計測値と所定値とを比較する比較器と、 前記第1及び第2の誤差情報を含む複数誤差情報から、択一的に選ばれる選択誤差情報を選択する誤差情報選択手段と、 該選択誤差情報に基づいて、誤差が減少する方向に前記スピンドルモータを回転駆動するモータ駆動手段と を有し、 前記誤差情報選択手段が、前記第2の誤差情報を選択しているとき、前記計測値が前記所定値以上になった段階で前記第1の誤差情報を選択するように構成したことを特徴とするディスク回転制御装置。」 2.引用例 (1)引用例1 これに対して、当審からの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特公平5-6751号公報(以下、「引用例1」という。)には、ディスク再生装置の回転制御装置に関して、図面とともに、以下の技術事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。以下同様。)。 (ア) 「従来例の構成とその問題点 ビデオ信号やデジタルオーデイオ信号等の情報信号を高密度記録したビデオデイスク、デジタルオーデイオデイスクがすでに実用化されている。 これらの高密度記録デイスクにおいては、記録容量を大きくするために定線速度記録されているものが多い。定線速度再生を行うためにはデイスクの回転速度を、デイスクの内周部を再生するときは速く、外周部を再生するときは遅くなるように制御する必要がある。このような制御の方式としては従来より種々提案されているが、最も代表的な例として、デイスクの再生信号に含まれる同期信号(ビデオ信号の場合には水平同期信号)を抽出し、その周波数が一定となるようにモータの回転速度を制御するものがあげられる。」(1頁左欄27行?右欄13行) (イ) 「すなわち、上記従来例においては、モータの回転速度を表わす信号として、情報信号中に含まれる同期信号(例えば水平同期信号)を用いているため、情報信号が正しく読取られていなければ制御動作が成立しない。したがつて、例えばデイスクの欠陥によつて情報信号が欠落した場合や、ランダムアクセス動作のために光学ピツクアツプ3のトラツキングサーボを遮断した場合には、モータ2の回転速度の制御は不可能となるため、回転速度が大きく乱され、回復に時間を要する結果になる。 発明の目的 本発明のデイスク再生装置の回転制御装置は、上記のような従来例に見られる、情報信号が欠落した場合やトラツキングサーボを遮断した場合の回転速度の大きな変動を防止し、映像や音声の乱れを防止することを目的とするものである。」(2頁左欄10?26行) (ウ) 「発明の構成 本発明のデイスク再生装置の回転制御装置は、モータと、周波数発電機と、上記周波数発電機の出力に位相同期した信号を発生するフエーズロツクドループ回路(以下PLL回路と略称する)と、上記PLL回路の制御ループを開いて保持状態とする前値保持回路と、上記PLL回路の出力信号と上記周波数発電機の出力信号とを位相比較して上記モータの回転速度を制御するサーボ回路とから構成されるものであつて、デイスクに記録された情報信号に含まれる同期信号が正しく再生されている期間中は同期信号と基準信号とを位相比較することによつてデイスクの回転速度を制御し、かつ、その期間中の周波数発電機の出力信号と周波数の等しい信号をPLL回路によつて作り、正しい回転速度をPLL回路のフライホイール効果によつて記憶しておくものである。 デイスクの欠陥による情報信号の欠落が発生した場合や、ランダムアクセス動作のためにピツクアツプのトラツキングサーボを遮断した場合には、上記のPLL回路の、周波数発電機の出力信号への追従動作を停止して前値保持動作に切換え、直前の回転速度を記憶しているPLL回路の出力信号を基準周波数として、モータの回転速度を制御するよう構成されている。」(2頁左欄27行?右欄7行) (エ) 「第2図は本発明の一実施例のデイスク再生装置を示す略構成図であつて、映像信号を高密度記録した光学式ビデオデイスクを再生するものである。第1図の従来例と同様に、ビデオデイスク1はモータ2によつて回転駆動され、光学ピツクアツプ3によつて情報信号を読取られる。モータ2の回転速度は、前記従来例と同様に、同期分離回路7によつて抽出された水平同期信号と、基準信号源8の安定な基準信号とを位相比較器9によつて位相比較し、その出力として得られる位相誤差信号を、ループスイツチ11および駆動回路10を介してモータ2へ帰還することによつて制御される。この制御ループはループスイツチ11によつて開閉可能であり、ループスイツチ11は同期信号検出回路12の出力信号で制御されており、水平同期信号が正しく検出されている期間のみ、上述の水平同期信号によるサーボループが閉じるように動作する。 モータ2には同軸に周波数発電機13が設けられており、回転速度に比例した周波数の信号を発生する。周波数発電機13の出力信号は、位相比較器14、サンプルホールド回路15および電圧制御発振器16によつて構成されるPLL回路の基準信号として入力されており、モータ2の回転速度の変化に対して刻々変化する周波数発電機13の出力周波数に追従した周波数の信号を発振している。 前述の同期信号検出回路12の出力信号は前述のループスイツチ11の他に、サンプルホールド回路15にも加えられており、水平同期信号が正しく検出されている期間のみ、電圧制御発振器16の周波数を周波数発電機13の周波数に追従させ、水平同期信号が検出されないときはサンプルホールド回路15を前値保持状態として、直前の周波数を保持記憶させる。そして、位相比較器14の出力である誤差信号を、ループスイツチ11、駆動回路10を介してモータ2へ帰還し、モータの回転速度を、水平同期信号が正しく検出されていた期間と同じ速度に保持するように制御するものである。 上記の同期信号検出回路12は、デイスクの情報信号の欠落時や、ランダムアクセスに伴うトラツキングサーボループの遮断時に動作し、モータの回転制御ループを切換えることによつて回転速度を保持し、回転速度の大幅な変化による映像や音声の乱れを防止し、情報信号が復帰した後の回転速度の再同期に要する時間を短縮できるものである。 上述の実施例においては、ビデオデイスク再生装置への応用例を述べたが、デイジタルオーデイオデイスク再生装置にも応用可能であり、デイスクへの記録方式も光学式である必要はなく、また定線速度方式であつても定角速度方式であつてもそのまま応用できる」(2頁右欄13行?3頁左欄22行) (オ)第2図を参酌すると、位相比較器14は、サンプルホールド回路15の出力により制御されるVCO(電圧制御発振器)16の出力と、周波数発電機13の出力とを位相比較するものであることが読み取れる。 上記摘記事項及び図面の記載を参酌すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認める。 「情報信号を定線速度記録されたビデオデイスク1を再生するデイスク再生装置の回転制御装置において、 ビデオデイスク1はモータ2によつて回転駆動され、 モータ2の回転速度は、同期分離回路7によつて抽出された水平同期信号と、基準信号源8の安定な基準信号とを位相比較器9によつて位相比較し、その出力として得られる位相誤差信号を、ループスイツチ11および駆動回路10を介してモータ2へ帰還することによつて制御され、 この制御ループはループスイツチ11によつて開閉可能であり、ループスイツチ11は同期信号検出回路12の出力信号で制御されており、水平同期信号が正しく検出されている期間のみ、上述の水平同期信号によるサーボループが閉じるように動作し、 モータ2には同軸に周波数発電機13が設けられており、回転速度に比例した周波数の信号を発生し、 周波数発電機13の出力信号は、位相比較器14、サンプルホールド回路15および電圧制御発振器16によつて構成されるPLL回路の基準信号として入力されており、モータ2の回転速度の変化に対して刻々変化する周波数発電機13の出力周波数に追従した周波数の信号を発振し、 同期信号検出回路12の出力信号は前述のループスイツチ11の他に、サンプルホールド回路15にも加えられており、水平同期信号が正しく検出されている期間のみ、電圧制御発振器16の周波数を周波数発電機13の周波数に追従させ、水平同期信号が検出されないときはサンプルホールド回路15を前値保持状態として、直前の周波数を保持記憶させ、 前記PLL回路の出力信号と上記周波数発電機の出力信号とを位相比較器14によって位相比較し、その出力によって上記モータの回転速度を制御するサーボ回路を有し、 同期信号検出回路12は、デイスクの情報信号の欠落時や、ランダムアクセスに伴うトラツキングサーボループの遮断時に動作し、ループスイッチ11によりモータの回転制御ループを切換え、デイスクに記録された情報信号に含まれる同期信号が正しく再生されている期間中のみ、上述の水平同期信号によるサーボループが閉じるように動作し、 デイスクの欠陥による情報信号の欠落が発生した場合や、ランダムアクセス動作のためにピックアップのトラッキングサーボを遮断した場合には、位相比較器14の出力である誤差信号を、ループスイッチ11、駆動回路10を介してモータ2へ帰還し、モータの回転速度を、水平同期信号が正しく検出されていた期間と同じ速度に保持するように制御する デイスク再生装置の回転制御装置。」 (2)引用例2 また、当審からの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-113868号公報(以下、「引用例2」という。)には、サーボコントロール回路に関して、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 (カ) 「第2図は従来の光学式ディスクの再生装置のサーボコントロール回路を示すブロック構成図であり、光ピックアップのサーボ回路等は省略して示されている。 図において、1は光学式ディスク、2はディスクモータ、3はレーザビームの焦点をディスクlの情報面に合わせ、記録された信号を読み取る光ピックアップである。この光ピックアップ3で読み取った信号は、増巾器11で必要とされるレベルまで増巾され、復調及び誤り訂正符号等の復号回路9に入力される。該復調回路9には、ディスク1から読み取った信号よりクロック成分を抽出する位相同期回路が含まれている。また13はメモリ(RAM)であり、ディスク1から読み取ったジッタと呼ばれる信号のゆらぎを吸収し、復号する。4はディジタルサーボ信号発生回路であり、基準周波数発生回路10の出力と、ディスク1から読み取られた信号とを比較し、その周波数差及び位相差に相当するディジタル信号を生成する。ここで生成されたディジタルサーボ信号は、パルス巾変調(以下PWMと記す)回路5により、モータ2の駆動に適した波形に変換され、モータドライバ12を通してディスクモータ2の回転を制御し、ディスク1の回転を信号の再生に必要な速度に制御する。 一方、16は上記ディジタルサーボ信号発生回路4の出力データを複数回、例えば1024回平均化する平均値回路である。該平均値回路16の出力は、ディスクlからの読み取り信号が欠落した場合に、PWM回路5の入力部に設けられたスイッチ7によりディジタルサーボ信号に換えてPWM回路5の入力となる。6はディスク1からの読み取り信号の欠落を検出する検波回路、14はディスクの回転開始、停止、その他を制御するマイクロコンピュータ、15は本装置により再生されたデータの出力端子である。 次に動作について説明する。 ディスク1から光ピックアップ3で読み取られた信号は、増巾器11で増巾され、復調、復号回路9に入力される。復調された信号と、基準周波数発生回路10の出力信号をディジタルサーボ信号発生回路4で比較し、その周波数差及び位相差に相当するディジタルデータを生成する。該ディジタルサーボ信号はPWM回路5に入力され、モータ駆動に適した波形に変換され、モータドライバ12を通して、ディスクモータ2を制御してディスクモータサーボループを構成する。」(1頁右下欄16行?2頁左下欄2行) (3)引用例3 また、当審からの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-187031号公報(以下、「引用例3」という。)には、光ディスク記録装置のレーザ変調回路に関して、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 (キ) 「従来の光ディスク記録装置のスピンドルモータのサーボ回路の例を第3図(b)に示す。 光ピックアップの半径方向位置はリニアスケール2で計測され計測値がマイクロコンピュータ1に入力される。 マイクロコンピュータ1は光ピックアップの線速度に対応する周波数fsの基準クロックを出力する。 スピンドルモータ7の回転数に比例するフリークエンシイジェネレータ8のパルス(周波数f1)が増幅器9を介してサーボアンプ回路3に加えられ、基準クロックの周波数および位相と比較される。サーボアンプ回路3の出力である位相エラー信号と速度エラー信号が加算器4で加算され、位相補償回路5で位相調整された後、スピンドル駆動回路6に入力されてスピンドル駆動回路6の出力が制御される。 スピンドル駆動回路6により駆動されるスピンドルモータ7は上記フィードバックループによりフリークエンシイジェネレータ8のパルスの周波数および位相が基準信号の周波数および位相と一致するように制御される。」(2頁左上欄2行?右上欄3行) (4)引用例4 また、当審からの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特公平7-19431号公報(以下、「引用例4」という。)には、光ディスク記録再生装置に関して、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 (ク) 「以下、再生信号状態判定回路21のより具体的な構成を説明する。本実施例では、再生信号に基づくCLV制御を行っている際に同期状態に異常が生じてフレーム同期信号が連続的に欠落した場合、又は光ヘッド4が情報の未記録領域に差し掛かってフレーム同期信号が連続的に欠落した場合にこれを検出し、再生時におけるCLV制御を事前記録情報に基づく制御に切り替えるようになっている。 すなわち、第6図に示すように、再生信号状態判定回路21はカウンタ22、比較器23及び基準値供給回路24を備え、上記の再生信号処理回路16からカウンタ22のリセット端子に所定のタイミングでフレーム同期信号を検出した旨を示す同期信号検出パルスが供給される一方、カウンタ22のクロック端子に所定のタイミングでフレーム同期信号が欠落した旨を示す同期信号欠落パルスが供給される。これにより、同期信号欠落パルスの供給回数がカウンタ22により計数される一方、同期信号検出パルスが供給されるとカウンタ22がリセットされるようになっている。 そして、カウンタ22の値が比較器23にて基準値供給回路24から供給される基準値と比較され、カウンタ22の値が基準値供給回路24からの基準値を超えた場合、換言すれば、フレーム同期信号の欠落が所定回数以上連続して生じた場合、再生信号に基づくCLV制御中に信号の記録済部分で同期異常が生じているか、又は未記録部に差し掛かってフレーム同期信号が検出されない状態であるとみなして、比較器23から切替器15にCLV制御切替信号が出力され、再生時であっても事前記録情報によるCLV制御に切り替えられるように構成されている。」(3頁右欄41行?4頁左欄19行) 3.対比 本願発明と、引用例1発明とを対比する。 (i)引用例1発明の「情報信号を定線速度記録されたビデオデイスク1を再生するデイスク再生装置の回転制御装置」は、本願発明の「線速度一定で記録されたディスクに対してデータの再生を行なうためのディスク回転制御装置」に相当する。 (ii)引用例1発明の「モータ2には同軸に周波数発電機13が設けられており、回転速度に比例した周波数の信号を発生し」は、周波数発電機に関する具体的な構成についての記載はないが、「回転速度に比例した周波数の信号を発生し」の記載より、モータの1回転中に信号を出力することで回転速度に比例した周波数の信号を発生するものであることは自明であり、実質的に、本願発明の「ディスクを回転駆動するスピンドルモータの所定回転角毎に回転パルスを発生させ」る機能を有するものである。 また、引用例1発明の「PLL回路の出力信号と上記周波数発電機の出力信号とを位相比較器14によって位相比較し、その出力によって上記モータの回転速度を制御するサーボ回路」の「位相比較」された出力は、本願発明の「該回転パルスに基づいて、所定の基準クロックに対する該回転パルスの位相差情報を含む第1の誤差情報」に相当し、「位相比較器14」は、本願発明の「第1の誤差検出手段」にそれぞれ相当する。 (iii)引用例1発明の「同期分離回路7によつて抽出された水平同期信号と、基準信号源8の安定な基準信号とを位相比較器9によつて位相比較し、その出力として得られる位相誤差信号」は、本願発明の「前記ディスクの再生信号に含まれる同期信号」「に基づいて」検出される、「該同期信号の位相差情報を含む第1の誤差信号」に相当し、引用例1の「同期分離回路7」、「位相誤差信号」を検出する「位相比較器9」は、本願発明の「同期信号を検出」し、「位相差情報を含む第2の誤差情報を検出する第2の誤差検出手段」に相当する。 (iv)引用例1発明の「同期信号検出回路12」は、「デイスクの情報信号の欠落時や、ランダムアクセスに伴うトラツキングサーボループの遮断時に動作」、すなわち「水平同期信号が正しく検出されている期間」は信号を出力しないものであるから、同期信号が正しく検出されているか否かを評価する手段であるといえ、本願発明の「同期信号評価手段」に相当する。 (v)引用例1発明の「同期信号検出回路12は、デイスクの情報信号の欠落時や、ランダムアクセスに伴うトラツキングサーボループの遮断時に動作し、ループスイッチ11によりモータの回転制御ループを切換え、デイスクに記録された情報信号に含まれる同期信号が正しく再生されている期間中のみ、上述の水平同期信号によるサーボループが閉じるように動作し、 デイスクの欠陥による情報信号の欠落が発生した場合や、ランダムアクセス動作のためにピックアップのトラッキングサーボを遮断した場合には、位相比較器14の出力である誤差信号を、ループスイッチ11、駆動回路10を介してモータ2へ帰還し、モータの回転速度を、水平同期信号が正しく検出されていた期間と同じ速度に保持するように制御」する動作は、上記「水平同期信号によるサーボループ」は、「同期分離回路7によつて抽出された水平同期信号と、基準信号源8の安定な基準信号とを位相比較器9によつて位相比較し、その出力として得られる位相誤差信号を、ループスイツチ11および駆動回路10を介してモータ2へ帰還する」制御ループで、該制御ループの「位相比較器9」によって出力される「位相誤差信号」は、上記(iii)で判断したとおり、本願発明の「第2の誤差情報」に相当し、「位相比較器14の出力である誤差信号」は、上記(ii)で判断したとおり、本願発明の「第1の誤差情報」に相当するため、上記「位相誤差信号」、「誤差信号」は、本願発明の「第1及び第2の誤差情報を含む複数誤差情報」に相当する。 また、引用例1発明の「ループスイッチ11」は、モータ2の回転制御ループを切り換える手段で、上記「位相誤差信号」、「誤差信号」を切換えて駆動回路10を介してモータ2を制御するためのものであるから、本願発明の「第1及び第2の誤差情報を含む複数誤差情報から択一的に選ばれる選択誤差情報を選択する誤差情報選択手段」に相当する。 そして、上記「水平同期信号によるサーボループ」、及び「位相比較器14の出力である誤差信号を、ループスイッチ11、駆動回路10を介してモータ2へ帰還し、モータの回転速度を、水平同期信号が正しく検出されていた期間と同じ速度に保持するように制御」する「サーボ回路」は、それぞれ誤差信号が減少する方向にモータの回転を制御するもので、本願発明の「該選択誤差情報に基づいて、誤差が減少する方向に前記スピンドルモータを回転駆動するモータ駆動手段」に相当する。 そうすると、本願発明と引用例1発明とは、次の点で一致する。 [一致点] 「線速度一定で記録されたディスクに対してデータの再生を行なうためのディスク回転制御装置であって、 前記ディスクを回転駆動するスピンドルモータの所定回転角毎に回転パルスを発生させ、該回転パルスに基づいて、所定の基準クロックに対する該回転パルスの位相差情報を含む第1の誤差情報を検出する第1の誤差検出手段と、 前記ディスクの再生信号に含まれる同期信号を検出し、該同期信号に基づいて、該同期信号の位相差情報を含む第2の誤差情報を検出する第2の誤差検出手段と、 同期信号評価手段と、 前記第1及び第2の誤差情報を含む複数誤差情報から、択一的に選ばれる選択誤差情報を選択する誤差情報選択手段と、 該選択誤差情報に基づいて、誤差が減少する方向に前記スピンドルモータを回転駆動するモータ駆動手段と を有するディスク回転制御装置。」 そして、次の各点で相違する。 [相違点] 相違点(イ) 本願発明の「第1誤差検出手段」が、基準クロックに対する該回転パルスの周波数誤差も検出するのに対し、引用例1発明の「位相比較器14」は、周波数誤差を検出する点が明確ではない点。 相違点(ロ) 本願発明の「第2誤差検出手段」が「同期信号の周波数誤差」も検出するのに対し、引用例1発明の「位相比較器9」は、周波数誤差を検出する点が明確ではない点。 相違点(ハ) 本願発明の「同期信号評価手段」は、「同期信号が所定間隔で検出されているか否かを判定する」のに対し、引用例1発明の「同期信号検出回路12」は、「同期信号が正しく検出されている」ことのみ記載されている点。 相違点(ニ) 本願発明が、「所定周期のクロックをカウントし、且つ、前記同期信号評価手段において前記同期信号が所定間隔で検出されていると判定されている間、前記同期信号が検出される前記所定間隔で前記カウントがリセットされることによって、前記同期信号が所定間隔で検出されない期間を計測する計測手段と、 該計測手段による計測値と所定値とを比較する比較器」を備えるのに対し、引用例1発明は、このような構成がない点。 相違点(ホ) 本願発明が、「誤差情報選択手段が、前記第2の誤差情報を選択しているとき、前記計測値が前記所定値以上になった段階で前記第1の誤差情報を選択する」のに対し、引用例1発明は、上記相違点(ニ)のような構成を備えていないため、制御ループを切り換えるためのパラメータが異なる点。 4.当審の判断 そこで、上記各相違点について検討する。 相違点(イ)(ロ)について ディスクに記録された同期信号を用いてスピンドルモータの回転速度を制御する際に、同期信号と、基準となる信号の位相差及び周波数差を用いること、ならびに、モータの回転速度を検出してモータの回転速度を制御する際に、基準となる信号と回転速度検出信号との位相差及び周波数差を用いて制御することは、それぞれ上記引用例2、3に記載されるよう周知であり、引用例1発明において、上記周知の技術を採用し、位相差に加えて周波数差を用いてモータの回転を制御することは、単なる周知技術の付加により、当業者が適宜なし得たことである。 相違点(ハ)(ニ)について 上記引用例4の「所定のタイミングで」「同期信号を検出した旨を示す同期信号検出パルスを供給する」「再生信号処理回路16」は本願発明の「同期信号が所定間隔で検出されているか否かを判定する同期信号評価手段」に相当し、「カウンタ22のクロック端子に所定のタイミングでフレーム同期信号が欠落した旨を示す同期信号欠落パルスが供給され」「同期信号欠落パルスの供給回数、すなわち、同期信号が欠落している期間がカウンタ22により計数される一方、同期信号検出パルスが供給されるとカウンタ22はリセットされ」「カウンタ22の値が比較器23にて基準値供給回路24から供給される基準値と比較され、カウンタ22の値が基準値供給回路24からの基準値を超えた場合、換言すれば、フレーム同期信号の欠落が所定回数以上連続して生じた場合、再生信号に基づくCLV制御中に信号の記録済部分で同期異常が生じているか、又は未記録部に差し掛かってフレーム同期信号が検出されない状態であるとみなして」は、本願発明の「所定周期のクロックをカウントし、且つ、前記同期信号評価手段において前記同期信号が所定間隔で検出されていると判定されている間、前記同期信号が検出される前記所定間隔で前記カウントがリセットされることによって、前記同期信号が所定間隔で検出されない期間を計測する計測手段」及び「該計測手段による計測値と所定値とを比較する比較器」に相当する。 そうすると、引用例4には、上記相違点(ハ)(ニ)の構成が記載されているといえ、引用例1発明において、同期信号が正確に再生されているか否かを、上記引用例4に記載された、上記相違点(ハ)(ニ)の構成をもって置き換えることは、当業者が容易に想到し得たものである。 また、上記相違点(ハ)(ニ)の構成とすることで、「同期信号が欠落している期間」が「基準値を超えた場合」、同期信号によるモータ制御から、回転数を検出してのモータ制御に切り換えること、すなわち相違点(ホ)の構成は、当業者が当然に行うことである。 そして、上記各相違点についての判断を総合しても本願発明の奏する効果は引用例1乃至4から当業者が充分に予想可能なものであって、格別のものとは言えない。 したがって、本願発明は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、請求人は、平成19年5月10日付け意見書において、 「一方、引用文献1では、周波数検出器の出力周波数に対し、速度制御と位相制御を行い、再生信号が読めなければ位相制御をはずす構成となっており、これは本願請求項1の発明におけるCAV制御とCLV制御とを切替える構成と全く異なるものであります。」 と主張するが、引用例1には、上記「2.(1)」で引用例1発明として認定したとおり、 「同期信号検出回路12は、デイスクの情報信号の欠落時や、ランダムアクセスに伴うトラツキングサーボループの遮断時に動作し、ループスイッチ11によりモータの回転制御ループを切換え、デイスクに記録された情報信号に含まれる同期信号が正しく再生されている期間中のみ、上述の水平同期信号によるサーボループが閉じるように動作し、 デイスクの欠陥による情報信号の欠落が発生した場合や、ランダムアクセス動作のためにピックアップのトラッキングサーボを遮断した場合には、位相比較器14の出力である誤差信号を、ループスイッチ11、駆動回路10を介してモータ2へ帰還し、モータの回転速度を、水平同期信号が正しく検出されていた期間と同じ速度に保持するように制御する」発明が記載され、請求人が主張するように、単に「位相制御をはずす」制御のみを行うものではないため、請求人の上記主張は採用し得ない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-17 |
結審通知日 | 2007-08-21 |
審決日 | 2007-09-04 |
出願番号 | 特願平10-28497 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
江畠 博 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 吉村 伊佐雄 |
発明の名称 | ディスク回転制御装置 |
代理人 | 山形 洋一 |
代理人 | 前田 実 |