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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166378
審判番号 不服2004-351  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2007-10-15 
事件の表示 平成11年特許願第360125号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月26日出願公開、特開2001-170254〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年12月20日の出願であって、平成15年7月30日付けの拒絶理由通知に対し、同年9月24日付けで手続補正がされたが、同年11月19日付けで拒絶の査定がされ、これに対し、平成16年1月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年1月30日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成16年1月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年1月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。

「周囲に複数の図柄を表示した複数の回転リールと、前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備え、
複数の前記回転リールが停止した状態で、正面側に表示される複数の図柄が所定の方向の有効な入賞ライン上に揃うことを条件に遊技者に利益を付与するようにした遊技機において、
前記回転リールは、
周囲に複数の図柄を表示して、有効入賞ライン上に入賞図柄が揃うことによって、入賞確定を表示するための複数個の入賞図柄決定用回転リールと、
前記入賞ラインを決定するためのライン決定用回転リールとを備え、
前記制御装置は、前記ライン決定用回転リールの停止図柄に基づいて前記入賞ラインを決定するためのライン決定リール回転制御手段を備え、
前記入賞ラインは、予め決定されている直線状の固定入賞ラインと、前記固定入賞ライン以外に新たに追加される一以上の折れ線状の追加入賞ラインとを備え、
前記ライン決定用回転リールの周囲には、前記追加入賞ラインを視覚的に示す図柄が表示され、
前記追加入賞ラインは、前記ライン決定リール回転制御手段によって、前記ライン決定用回転リールの停止図柄に基づいて決定されるようにしていることを特徴とする遊技機。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「固定入賞ライン」について「直線状の」との限定を付加し、同じく「追加入賞ライン」について「折れ線上の」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭62-233183号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「(a)円周面に異種の絵柄が適数個表示された3本の絵柄リールと、
(b)円周面に入賞ラインを指示するマークが適数個表示されたライン指示リールと、
(c)前記各絵柄リールおよびライン指示リールにそれぞれ設けられた回転駆動装置と、
(d)前記回転駆動装置に人為的操作により起動信号を与える入力手段と、
(e)前記回転駆動手段のそれぞれに人為的操作により個別に停止信号を与える停止手段と、
(f)回転を停止したときの前記各絵柄リールおよびライン指示リールの停止位置を検出する位置検出手段と、
(g)前記位置検出手段の検知信号により入賞ラインを決定する入賞ライン決定手段と、
(h)前記位置検出手段の検知信号により各絵柄リールの停止時における絵柄を判定する停止絵柄判定手段と、
(i)前記入賞ライン決定手段で決定された入賞ラインと前記停止絵柄判定手段で判定された絵柄の配列を照合し、入賞が否かを判定する入賞判定手段と
を備える回胴式遊戯機。」(特許請求の範囲第1項)

イ.「第2図において、(A)はスロットマシンであり、本体(20)の正面上部には正面パネル(21)が取りつけられている。正面パネル(21)には4個のリール窓(22)が設けられており、そこから遊戯者が絵柄リール(1)、(2)、(3)およびライン指示リール(4)の3行分の絵柄とマークが肉眼で見通せるようになっている。」(第4頁左下欄第7行乃至第13行)

ウ.「リールドラム(1a)、(2a)、(3a)、(4a)は枠体(1c)、(2c)、(3c)、(4c)に回転自在に支持されており、その支軸(図示されていない)には回転駆動手段を構成するステッピングモータ(5)、(6)、(7)、(8)が取りつけられている。」(第4頁右下欄第18行乃至第5頁左上欄第3行)

エ.「第4図において、(30)はスロットマシン(A)の全体をコントロールするマイクロコンピュータであつて、各種の演算、処理を行い、入力信号と出力信号の処理を行うCPU(中央処理装置)、制御プログラムや絵柄リール(1)、(2)、(3)およびライン指示リール(4)の回転停止位置についての絵柄やマークなどのデータを記憶しておくROM(Read Only Memory)、その他ゲームの進行に必要なデータを一時記憶しておくRAM(Random Access Memory)、入力ポート(36)および出力ポート(35)、(37)などから構成されている。出力ポート(35)には駆動回路(38)を介してステッピングモータ(5)、(6)、(7)、(8)が接続されており、CPUからパルス状の駆動信号が送られている間、駆動回路(38)から電気信号が送られステッピングモータ(5)、(6)、(7)、(8)が回転するようになっている。」(第5頁左上欄第16行乃至右上欄第12行)

オ.「さてライン指示リール(4)のマーク(M)について、第5?15図に基づき説明する。ライン指示リール(4)上のマーク自体は、入賞ラインを遊戯者に知らせることができるものであればどのようなものでもよく、たとえば矢印、横棒、丸印その他適宜の図形、記号が用いられる。」(第6頁左上欄第16行乃至右上欄第1行)

カ.「さらに以上のほかに、たとえば中央の入賞ライン(I)は常時入賞ラインとして固定し、入賞ラインがゼロの状態を避けるようにしてもよい。」(第7頁左上欄第17行乃至第19行)

キ.「つぎに本発明の入賞ライン決定手段(31)、停止絵柄判定手段(32)および入賞判定手段(33)を説明する。それらの各手段は、いずれも第4図に示されるマイクロコンピュータ(30)で構成されている。……入賞ラインの決定はつぎのようにして行われる。CPUは位置検出センサ(18)からとり込まれたリセット信号を基準とし、ライン指示リール(4)が停止するまでの駆動信号のパルス数をカウントし、そのカウント数にあらかじめ対応づけた番地のコードをROMから呼び出す。CPUはそのコードにより、どの入賞ラインが指定されているかを判定する。」(第7頁右上欄第8行乃至左下欄第5行)

ク.第11図の記載から、中央の入賞ライン(I)は、直線状であるものと認められる。

前記摘示の記載、認定事項及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「円周面に絵柄が適数個表示された3本の絵柄リール(1)、(2)、(3)と、円周面に入賞ラインを指示するマークが適数個表示されたライン指示リール(4)と、これらに取りつけられたステッピングモータ(5)、(6)、(7)、(8)に駆動信号を送るマイクロコンピュータ(30)とを備え、
入賞ラインと各絵柄リールの停止時における絵柄の配列を照合し、入賞か否かを判定するスロットマシン(A)において、
円周面に絵柄が適数個表示され、停止時における絵柄の配列を入賞ラインと照合し、入賞か否かを判定するための、3本の絵柄リール(1)、(2)、(3)と、
入賞ラインを決定するためのライン指示リール(4)とを備え、
前記マイクロコンピュータ(30)は、前記ライン指示リール(4)の停止位置を検出した検知信号により入賞ラインを決定し、
直線状の中央の入賞ライン(I)は常時入賞ラインとして固定し、入賞ラインがゼロの状態を避けるようにし、
ライン指示リール(4)の円周面には、入賞ラインを遊戯者に知らせる矢印が表示され、
前記入賞ラインは、前記マイクロコンピュータ(30)によって、前記ライン指示リール(4)の停止位置を検出した検知信号により決定される
スロットマシン。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「スロットマシン」は本願補正発明の「遊技機」に相当する。

また、引用発明の「絵柄リール(1)、(2)、(3)」は本願補正発明の「入賞図柄決定用回転リール」に、「ライン指示リール(4)」は「ライン決定用回転リール」に、それぞれ相当するとともに、「絵柄リール(1)、(2)、(3)」及び「ライン指示リール(4)」は、「複数の回転リール」に相当するといえる。

そして、引用発明の「スロットマシン」は、入賞ラインと各絵柄リールの停止時における絵柄の配列を照合し、入賞か否かを判定するものであるから、「複数の前記回転リールが停止した状態で、正面側に表示される複数の図柄が所定の方向の有効な入賞ライン上に揃うことを条件に遊技者に利益を付与するようにした」ものであるといえる。

さらに、引用発明の「マイクロコンピュータ(30)」は、制御装置の一種であり、絵柄リールやライン指示リールのステッピングモータに駆動信号を送るものであるから、本願補正発明の「回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置」に相当する。その上、ライン指示リールの停止位置を検出した検知信号により入賞ラインを決定する機能を有するのであるから、「前記入賞ラインを決定するためのライン決定リール回転制御手段」を備えているといえる。

それから、引用発明は、入賞ラインを決定するに際し、「直線状の入賞ライン(I)は常時入賞ラインとして固定し、入賞ラインがゼロの状態を避けるようにし」ているから、引用発明の「入賞ライン」は、「予め決定されている直線状の固定入賞ラインを備える」ことはもちろん、マイクロコンピュータによって決定される入賞ラインも存在するから、「前記固定入賞ライン以外に新たに追加される追加入賞ラインを備える」ものであるといえる。

加えて、引用発明は、「ライン指示リール(4)の円周面には、入賞ラインを遊戯者に知らせる矢印が表示され」るのであり、ここで、矢印はマイクロコンピュータによって決定される入賞ラインを視覚的に示す図柄の一種であるから、「前記ライン決定用回転リールの周囲には、前記追加入賞ラインを視覚的に示す図柄が表示され」るものであるといえる。

そうすると、本願補正発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致並びに相違するものと認められる。

一致点
「周囲に複数の図柄を表示した複数の回転リールと、前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備え、
複数の前記回転リールが停止した状態で、正面側に表示される複数の図柄が所定の方向の有効な入賞ライン上に揃うことを条件に遊技者に利益を付与するようにした遊技機において、
前記回転リールは、
周囲に複数の図柄を表示して、有効入賞ライン上に入賞図柄が揃うことによって、入賞確定を表示するための複数個の入賞図柄決定用回転リールと、
前記入賞ラインを決定するためのライン決定用回転リールとを備え、
前記制御装置は、前記入賞ラインを決定するためのライン決定リール回転制御手段を備え、
前記入賞ラインは、予め決定されている直線状の固定入賞ラインと、前記固定入賞ライン以外に新たに追加される一以上の追加入賞ラインとを備え、
前記ライン決定用回転リールの周囲には、前記追加入賞ラインを視覚的に示す図柄が表示され、
前記追加入賞ラインは、前記ライン決定リール回転制御手段によって、決定されるようにしている遊技機。」
である点。

相違点1
追加入賞ラインが、本願発明では、前記ライン決定用回転リールの停止図柄に基づいて決定されるのに対し、引用発明では、前記ライン指示リール(4)の停止位置を検出した検知信号により決定される点。

相違点2
追加入賞ラインが、本願補正発明では、折れ線状であるのに対し、引用発明では、折れ線状ではない点。

4.判断
相違点1について
引用発明では、ライン指示リールの停止図柄は、ライン指示リールの停止位置によって一意に定まるものであるから、ライン指示リールの停止位置を検出した検知信号によって追加入賞ラインを決定する代わりに、ライン指示リールの停止図柄によって追加入賞ラインを決定するようになすことは、当業者が容易に想到できたものである。

相違点2について
折れ線状の入賞ラインは、例えば実公平6-5824号公報、特開平11-70209号公報、登録実用新案第3060159号公報に記載されているように、周知技術である。したがって、引用発明の追加入賞ラインとして、折れ線状の入賞ラインを採用することは、当業者が容易に想到できたものである。

そして本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成16年1月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年9月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「周囲に複数の図柄を表示した複数の回転リールと、前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備え、
複数の前記回転リールが停止した状態で、正面側に表示される複数の図柄が所定の方向の有効な入賞ライン上に揃うことを条件に遊技者に利益を付与するようにした遊技機において、
前記回転リールは、
周囲に複数の図柄を表示して、有効入賞ライン上に入賞図柄が揃うことによって、入賞確定を表示するための複数個の入賞図柄決定用回転リールと、
前記入賞ラインを決定するためのライン決定用回転リールとを備え、
前記制御装置は、前記ライン決定用回転リールの停止図柄に基づいて前記入賞ラインを決定するためのライン決定リール回転制御手段を備え、
前記入賞ラインは、予め決定されている固定入賞ラインと、前記固定入賞ライン以外に新たに追加される一以上の追加入賞ラインとを備え、
前記ライン決定用回転リールの周囲には、前記追加入賞ラインを視覚的に示す図柄が表示され、
前記追加入賞ラインは、前記ライン決定リール回転制御手段によって、前記ライン決定用回転リールの停止図柄に基づいて決定されるようにしていることを特徴とする遊技機。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由において引用された引用例である特開昭62-233183号公報は、前記「第2[理由]2.」において引用した引用例と同一文献であって、該引用例の摘記事項及び該摘記事項に基づいて認定される引用発明は、前記したとおりのものである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「固定入賞ライン」の限定事項である「直線状の」との構成、及び「追加入賞ライン」の限定事項である「折れ線状の」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
本件補正は却下されるべきもので、本願発明が特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2007-08-15 
結審通知日 2007-08-16 
審決日 2007-08-28 
出願番号 特願平11-360125
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 太田 恒明
小田倉 直人
発明の名称 遊技機  
代理人 黒田 博道  

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