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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1166381
審判番号 不服2004-7969  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-19 
確定日 2007-10-15 
事件の表示 平成 7年特許願第207719号「携帯通信端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月 7日出願公開、特開平 9- 34621〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年7月21日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年7月10日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認める。

【請求項1】
複数の数字キーの各々に複数の文字が割り当てられ、ユーザが当該数字キーを所定回数押下することによって当該数字キーに割り当てられた上記複数の文字の中から選択される所定の入力文字を入力するための第1の入力手段と、
上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字及び複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字を表示する表示手段と、
選択機能を備えた回転操作部と確定機能を備えた押下操作部とを有し、上記回転操作部によって上記表示手段に表示されている上記登録文字の選択と上記入力文字の挿入箇所の選択を行い、上記押下操作部によって当該挿入箇所の確定とを行うための第2の入力手段と、
電子メールの作成時、上記第2の入力手段を介して上記表示手段に表示された上記登録文字の中から上記入力文字を挿入する上記挿入箇所の選択と確定を行い、当該確定された当該挿入箇所に対し上記第1の入力手段を介して任意の上記入力文字を挿入して送信文を作成する制御手段と
を具えることを特徴とする携帯通信端末装置。

2.刊行物の記載
(1-1)刊行物1記載発明
本願出願前に頒布され、平成19年4月27日付けの当審の拒絶理由通知書に引用された特開平4-236541号公報(平成4年8月25日出願公開、以下、「刊行物1」という。)には、電子メール配送システムの無線系の携帯端末に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。

【0009】
【実施例】以下、本発明を図示の一実施例により具体的に説明する。図1は本発明実施例の電子メール配送システムの概要を示す図、図2は本発明実施例の送受信機能を備えた携帯端末の構成を示すブロック図である。
【0010】図1において、11(11a,11b,…)は後に詳細に説明する無線通信によるデータ送受信機と電子手帳とを一体化した無線系の携帯端末、12は所定の地域に設けられる複数の無線通信の基地局13(13a,13b,…)と該基地局13に有線で接続され交換機能等を有する中央基地局14とから構成されるテレターミナルシステム、15は上記中央基地局14と接続される付加価値通信網(VAN)、16は公衆回線網、17は上記通信回線網15,16とホストコンピュータ18とを接続するゲートウエイプロセッサー(GWP)、19はメッセージを配信蓄積するためのメイルボックス、20は公衆回線網16に接続される事務所等に配置される有線系の端末である。…(中略)…
【0011】図2において、データ送受信機能を有する無線系の携帯端末11は、携帯に便利な大きさで無線通信の送受信機部分と電子手帳部分とが一体化されており、アンテナ21と、送受信部22と、データ制御部23と、データ編集部24と、入力部25と、記憶部26と、表示部27等とから構成されている。上記送受信部22は、基地局13と無線通信によりデータ送受信を行うテレターミナル・モデムとしての機能を備える部分である。上記データ制御部23は、電子手帳としての中央処理装置を含み、着信メッセージやメイルボックス19の検索、あるいは各種データの制御、演算等を行う部分であり、検索項目としては、日時、主題、発信者名等である。上記データ編集部24は、発信文書としてのメッセージを編集する機能を備える部分であり、このメッセージにはテキスト情報及びイメージ情報を含み、また発信メッセージに対する応答有無の設定ができる。上記入力部25は、発信メッセージや配信設定のためのデータ及び、通常の電子手帳としての機能を達成するのに必要なデータ等を入力するために必要な各種のキーを含む部分である。上記記憶部26は、各種プログラム、一時的なデータ、あるいはメッセージ等を記憶するROM、RAM等からなる記憶装置部分である。上記表示部27は、各種のテキスト情報やイメージ情報を表示するための液晶表示等を含む部分である。
【0012】次に上記電子メール配送システムの動作をフローチャートにより具体的に説明する。図3乃至図6は本発明実施例の処理動作を示し、図3は送信側のフローチャート、図4及び図5は受信側のフローチャート、図6は配信蓄積部のフローチャートである。
【0013】送信側では、図3において、送信する一定のメッセージを入力部25で入力し、データ編集部24で所定の送信文書の編集を行う(ステップST1)。このメッセージは、漢字等を含むテキスト情報、あるいは地図等を表示したイメージ情報である。次に、送信先を特定するに必要な設定を行って(ステップST2)から、送受信部22で基地局13に向けて送信する(ステップST3)。

以上の記載によると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されている。

携帯に便利な大きさで無線通信の送受信機部分と電子手帳部分とが一体化されており、アンテナ21と、送受信部22と、データ制御部23と、データ編集部24と、入力部25と、記憶部26と、表示部27等とから構成されている電子メール配送システムの無線系の携帯端末11において、
上記送受信部22は、基地局13と無線通信によりデータ送受信を行うテレターミナル・モデムとしての機能を備える部分であり、
上記データ制御部23は、電子手帳としての中央処理装置を含み、着信メッセージやメイルボックス19の検索、あるいは各種データの制御、演算等を行う部分であり、検索項目としては、日時、主題、発信者名等であり、
上記データ編集部24は、発信文書としてのメッセージを編集する機能を備える部分であり、このメッセージにはテキスト情報及びイメージ情報を含み、また発信メッセージに対する応答有無の設定ができ、
上記入力部25は、発信メッセージや配信設定のためのデータ及び、通常の電子手帳としての機能を達成するのに必要なデータ等を入力するために必要な各種のキーを含む部分であり、
上記記憶部26は、各種プログラム、一時的なデータ、あるいはメッセージ等を記憶するROM、RAM等からなる記憶装置部分であり、
上記表示部27は、各種のテキスト情報やイメージ情報を表示するための液晶表示等を含む部分であり、
送信側では、送信する一定のメッセージを入力部25で入力し、データ編集部24で所定の送信文書の編集を行い(ステップST1)、次に、送信先を特定するに必要な設定を行って(ステップST2)から、送受信部22で基地局13に向けて送信する(ステップST3)電子メール配送システムの無線系の携帯端末11。

(1-2)刊行物2記載発明
本願出願前に頒布され、上記拒絶理由通知書に引用された特開平4-328673号公報(平成4年11月17日出願公開、以下、「刊行物2」という。)には、複数の文例に対応する文書ファイルとファイル検索用のディレクトリや検索プログラム等から成る文書作成支援システムに関し、図面とともに、次の事項が記載されている。

【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、予め準備された複数の文例を選択し、この選択された文例に対して修正等を施しながら最終的な文書を作成するような文書作成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に冠婚葬祭用の手紙文やビジネス文、あるいはスピーチ原稿等の文書は、定型部分が多く、目的に応じて予め準備された文例を加工することで、誰でもが容易にある程度の品質の文書を作成することができる。このことを考慮して、いわゆるワードプロセッサ等の文書作成装置において、用途等に応じて分類された複数の文例を予め用意しておき、目的に応じて文例を検索して呼び出し、この呼び出された文例に対して、必要事項の記入や不要部分の削除、書換え、追加等の修正を施して、最終的な文書を作成するような機能を持たせることが試みられている。
【0003】具体的には、上記複数の文例をそれぞれ個別に文書ファイル(文例ファイル)としてファイル化してフロッピィディスク等に記録しておき、これらのファイルを管理するためにいわゆるディレクトリを形成してこれもフロッピィディスク等の所定領域に記録しておく。このディレクトリは、書籍の目次に相当するものであり、必要に応じて大項目、中項目、小項目等のように階層化して検索を容易化している。これはいわゆる木(ツリー)構造の階層化ディレクトリと称されるものである。このような複数の文例に対応する文書ファイルとファイル検索用のディレクトリや検索プログラム等から成る文書作成支援システムが、例えばフロッピィディスク等に記録された形態で供給されている。

【0011】
【実施例】図1は本発明に係る文書作成装置の一実施例の概略的なハードウェア構成を示している。この図1において、メインのCPU(中央処理ユニット)11にはサブCPU12が接続され、このサブCPU12によりキーボード13からのキー入力や、ブザ14のブザ音発生等の制御を行わせている。メインCPU11のバスラインには、RAM(ランダムアクセスメモリ)15、プログラムROM(リードオンリメモリ)16、活字フォントROM17、辞書ROM18、SIO(シリアルインターフェース)19、拡張コネクタ20、LCD(液晶表示装置)コントローラ21等が接続されている。LCDコントローラ21は、V(ビデオ)RAM22との間で表示用データを読み書きしながら2次元画面表示手段であるLCD23の表示を制御する。メインCPU11のバスラインには、タイミングジェネレータやアドレスデコーダ等の機能を有するゲートアレイ24が接続され、このゲートアレイ24からのタイミング信号やアドレス信号がLCDコントローラ21、LCD23、VRAM22等に送られており、スキャナコネクタ25がこのゲートアレイ24に接続されている。またメインCPU11のバスラインには、ディスクコントローラ26が接続され、このディスクコントローラ26はS(スタティック)RAM27との間でデータを読み書きしながらフロッピィディスク装置28との間でデータ転送を行っている。さらに、メインCPU11のバスラインには、バッファ29を介してプリンタコネクタ30が接続され、またカードコネクタ31が接続されている。
【0012】ここで、上記フロッピィディスク装置28に装着されるフロッピィディスクとして、前述したような文書作成支援システム用ディスクが用意されており、このディスクには、冠婚葬祭用の手紙文やビジネス文等の複数の文例が文書ファイル化されて記録されている。また、これらの複数の文書ファイルの検索を容易化するために、階層化ディレクトリや検索プログラム等が該文書作成支援システム用ディスクに記録されている。本発明実施例においては、上記階層化ディレクトリとして、一の階層の1つの節に対して上の階層の複数の節からの枝を認める構造とし、1つの例文に対して複数のパスを設定し得るようにしている。

【0015】図4では上記選択された中項目「結婚」の内のさらに細かい項目(小項目)が記載された小項目メニュー38が表示されている。このメニュー38内の小項目の具体例としては「婚約の通知」、「結婚式のご案内」、「披露宴の招待状」等が挙げられており、図4では「披露宴の招待状」の小項目39が仮選択されて反転表示されている。この状態でYESキー(エンターキー)を押すと、図5に示すように、選択項目「披露宴の招待状」に対応する具体的な文例が読み出されて表示される。

【0021】再び図5に戻って、この図5の画面40は2次元表示手段、例えば上記図1のLCD(液晶表示装置)23等の表示画面を示している。この表示画面40上で、上記選択された文例が本文ウィンドウ41内に表示されており、この文例を修正する際には、所定のフレーズと呼ばれる文字列をまとめて修正の単位としている。一般的に、ひとつの意味のある文字列のまとまりがフレーズとされ、本文ウィンドウ41内で反転表示された部分42は注目フレーズと称される。この反転表示位置は、上下左右のカーソルキー操作により移動させることができ、修正したいフレーズを反転表示させて(上記注目フレーズにして)編集を行う。画面40内の本文ウィンドウ41の左上方位置には上記パス(選択経路)が表示される。本文ウィンドウ41の下方位置には、文例や現在の状態に関連する各種情報が表示される。

【0025】次に図10において、文中に□が記載された文字列(上記フレーズ)は、□の部分が未確定であり文字を入力する必要がある。この未確定部分を含むフレーズを反転表示させて上述したような注目フレーズ42とし、YESキーを押すと上述したように候補ウィンドウ43が開き、さらにYESキーを押すとその候補フレーズが確定し、図11に示すような文字入力ウィンドウ45が現れる。この文字入力ウィンドウ45では、注目フレーズ42内の文字入力箇所(図示の例では3箇所)毎にそれぞれ1行ずつに分かれて文字入力マーク46が表示され、これらの文字入力マーク46の位置にのみ文字入力が可能である。現在文字入力が行われる位置のマーク46(図11では最下行のマーク46p)は、周期的にあるいは断続的に反転表示(いわゆるブリンク表示)され、この現在の文字入力位置は上下カーソルキーを操作することで切換変更することができる。

【0030】以上のような文字入力ウィンドウ45を用いた入力・編集作業を行わせることにより、日付、個人名、商品名、住所等の個別事項を書き込むような定型文入力作業を和文ワードプロセッサ機能に切り換えることなく行え、便利である。これは、和文ワードプロセッサ機能への切換動作はプログラムの読み込み等のために待ち時間を要し、また、和文ワードプロセッサ機能に切り換わった状態では文章全体を容易に書き換えできるため上記個別事項を書き込む際に他の部分も書き換えてしまう危険性があることを考慮すると、上記文字入力ウィンドウ45を用いることにより、プログラム切換等の煩雑な手間を要することなく個別事項の書込が簡単に行え、しかも必要な部分(残したい部分)は書き換えられることがなく保護される。従って、誰でもが容易に間違いなく定型文入力が行える。

以上の記載によると、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2記載発明」という。)が記載されている。

メインのCPU(中央処理ユニット)11にはサブCPU12が接続され、このサブCPU12によりキーボード13からのキー入力や、ブザ14のブザ音発生等の制御を行わせ、メインCPU11のバスラインには、RAM(ランダムアクセスメモリ)15、プログラムROM(リードオンリメモリ)16、活字フォントROM17、辞書ROM18、SIO(シリアルインターフェース)19、拡張コネクタ20、LCD(液晶表示装置)コントローラ21、ディスクコントローラ26が接続され、LCDコントローラ21は、V(ビデオ)RAM22との間で表示用データを読み書きしながら2次元画面表示手段であるLCD23の表示を制御し、ディスクコントローラ26はS(スタティック)RAM27との間でデータを読み書きしながらフロッピィディスク装置28との間でデータ転送を行っている文書作成支援システムにおいて、
フロッピィディスク装置28に装着されるフロッピィディスクとして、複数の文例に対応する文書ファイルとファイル検索用のディレクトリや検索プログラム等から成り、フロッピィディスク等に記録された文書作成支援システムディスクが用意されており、このディスクには、冠婚葬祭用の手紙文やビジネス文等の複数の文例が文書ファイル化されて記録され、
「結婚」の中項目が選択されて、上記選択された中項目「結婚」の内のさらに細かい項目(小項目)が記載された小項目メニュー38が表示され、このメニュー38内の小項目の具体例としては「婚約の通知」、「結婚式のご案内」、「披露宴の招待状」等が挙げられており、「披露宴の招待状」の小項目39が仮選択されて反転表示されている状態でYESキー(エンターキー)を押すと、選択項目「披露宴の招待状」に対応する具体的な文例が読み出されて表示され、
上記選択された文例が本文ウィンドウ41内に表示されており、この文例を修正する際には、所定のフレーズと呼ばれる文字列をまとめて修正の単位として、本文ウィンドウ41内で反転表示された部分42は注目フレーズと称され、この反転表示位置は、上下左右のカーソルキー操作により移動させることができ、
文中に□が記載された文字列(上記フレーズ)は、□の部分が未確定であり文字を入力する必要があり、この未確定部分を含むフレーズを反転表示させて上述したような注目フレーズ42とし、YESキーを押すと、文字入力ウィンドウ45が現れ、この文字入力ウィンドウ45では、注目フレーズ42内の文字入力箇所毎にそれぞれ1行ずつに分かれて文字入力マーク46が表示され、これらの文字入力マーク46の位置にのみ文字入力が可能であり、現在文字入力が行われる位置のマーク46は、周期的にあるいは断続的に反転表示(いわゆるブリンク表示)され、この現在の文字入力位置は上下カーソルキーを操作することで切換変更することができ、
以上のような文字入力ウィンドウ45を用いた入力・編集作業を行わせることにより、個別事項の書込が簡単に行え、しかも必要な部分(残したい部分)は書き換えられることがなく保護され、誰でもが容易に間違いなく定型文入力が行える文書作成支援システム。

(1-3)刊行物3の記載
本願出願前に頒布され、上記拒絶理由通知書に引用された特開平6-90200号公報(平成6年3月29日出願公開、以下、「刊行物3」という。)には、携帯用無線電話機に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。

【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無線通話機能、電子手帳機能等が具備されてなる携帯用無線電話機に係わり、特に収納折畳み用のヒンジ部に、収納折畳み制御機構や、各種機能選択用の機能選択ダイヤルが縦方向に回動自在として具備されるなど、使用状態での片手操作が容易とされた携帯用無線電話機に関するものである。

【0007】
【実施例】以下、本発明を図1から図8により説明する。先ず本発明による電話機の使用状態での外観について説明すれば、図1はその一例での外観斜視状態を示したものである。図示のように…(中略)…機能選択操作用のダイヤル8や、回動操作用機構およびプッシュボタン9が具備せしめられるものとなっている。更に、操作部4には情報の記憶/検索や入出力操作用のセットボタン11や通話開始用の発信(再発信)ボタン12、テンキー部13、通話終了用等の終了ボタン14が具備された上、その先端部にはマイクロフォン10が内蔵されるようになっている。

【0009】図3は無線通話状態にある電話機本体を外面(背面)側よりみた使用斜視状態を示したものである。図示のように、レシーバ6に耳が当てられ、マイクロフォン10には口を接近させた状態での電話機を、電話機を把持している片手の背後よりみた状態として示したものである。図示のように、人指指bはジョイント部3の一端部より離され、その人指指bによりダイヤル8が操作されているが、このことは、ダイヤル8は内面側からは親指aによって、その外面側からは人指指bによって操作可能であることを示唆したものとなっている。したがって、ダイヤル8が非無線通話状態では各種機能(具体的には、送信/受信、電話番号、シークレット、入力、出力、記憶、計算、時刻、リモコン、スケジュール、コール(呼出し)、クリヤー、カレンダー、辞書、地図、文字、数字等)を選択するためのものとして、また、無線通話状態では受信音声音量調整用として機能すべく、縦方向に回動自在として、且つ内外両面からダイヤル操作可としてジョイント部3に具備されている場合には、無線通話状態での受信音声の音量調整が通話を中断することなく行い得るものである。

【0017】最後に、ダイヤル8によるカーソル位置制御について説明すれば、図8はその際でのダイヤル操作方法を示したものである。図示のように、ジョイント部3に具備されているダイヤル8は液晶表示7画面上での着目表示位置、即ち、カーソル37位置を更新するのに用いられており、その更新の際には、親指aがダイヤル8上の任意位置jに接触せしめられた状態で、親指aがA矢視の左右方向か、B矢視の上下方向に任意に操作されるものとなっている。即ち、ダイヤル8が自由状態にある場合には、ダイヤル8は左右方向にそれぞれ同一大きさのクリアランス36b,36aを維持して安定しているが、A矢視方向への親指aによる操作は、それらクリアランス36a,36bの大きさを変更するもので、この変更はジョイスティック29内のセンサによって感知されることで、例えばダイヤル8が右方向へ操作されれば、液晶表示画面7上でカーソル37は右方向位置に移動されるものである。親指aをダイヤル8より開放すれば、ダイヤル8は自動的に中央位置に復元されるものである。また、ダイヤル8の親指aによる上下方向操作はダイヤル8を上下方向に回転せしめるが、その際での回転方向および回転量はジョイスティック29内のボリューム、あるいははセンサによって感知されることで、カーソル37は液晶表示画面7上で上下方向に移動可とされているものである。
【0018】したがって、例えば液晶表示画面7上に必要な文字や数字、記号等を全て表示せしめた状態で、カーソル37を所望の位置に順次移動せしめるようにすれば、移動位置での文字等が入力対象として順次選択された上、入力処理され得るものである。また、例えばカーソル37を所望文字位置に移動させた状態で、操作部4上でセットボタン11が操作される場合には、液晶表示画面7上段には、例えば氏名および電話番号の部分覧が表示され得るものである。これまでにあっては、専ら必要回数に亘るテンキー操作によって所望の文字列等が組立てられる、といった具合に、煩雑、且つ複雑で、しかも操作回数が多いキー処理が要されていたが、以上の如くに表示処理等が行われる場合は、そのような不具合は軽減化され得るものである。

【0019】
【発明の効果】以上、説明したように、請求項1?8による場合には、それ自体が片手で把持されつつ、しかもその手の指で、特に無線通話を行う上で必要とされる各種操作が容易に行われ得るものとなっている。

3.本願発明と刊行物1記載発明との対比
本願発明と刊行物1記載発明とを対比すると、刊行物1記載発明の「電子メール配送システムの無線系の携帯端末11」は、本願発明の「携帯通信端末装置」に相当する。
また、刊行物1記載発明において、入力部25は、発信メッセージや配信設定のためのデータ及び、通常の電子手帳としての機能を達成するのに必要なデータ等を入力するために必要な各種のキーを含む部分であるから、刊行物1記載発明の「入力部25」と本願発明の「複数の数字キーの各々に複数の文字が割り当てられ、ユーザが当該数字キーを所定回数押下することによって当該数字キーに割り当てられた上記複数の文字の中から選択される所定の入力文字を入力するための第1の入力手段」とは、いずれも、「所定の入力文字を入力するための第1の入力手段」である点で一致する。
また、刊行物1記載発明において、表示部27は、各種のテキスト情報やイメージ情報を表示するための液晶表示等を含む部分であるから、刊行物1記載発明の「表示部27」と本願発明の「上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字及び複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字を表示する表示手段」とは、いずれも、「上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字を表示する表示手段」である点で一致する。
また、刊行物1記載発明は、送信側では、送信する一定のメッセージを入力部25で入力し、データ編集部24で所定の送信文書の編集を行い(ステップST1)、次に、送信先を特定するに必要な設定を行って(ステップST2)から、送受信部22で基地局13に向けて送信する(ステップST3)電子メール配送システムの無線系の携帯端末11であるから、刊行物1記載発明の「データ編集部24」と本願発明の「電子メールの作成時、上記第2の入力手段を介して上記表示手段に表示された上記登録文字の中から上記入力文字を挿入する上記挿入箇所の選択と確定を行い、当該確定された当該挿入箇所に対し上記第1の入力手段を介して任意の上記入力文字を挿入して送信文を作成する制御手段」とは、いずれも、「電子メールの作成時、送信文を作成する制御手段」である点で一致する。
したがって、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
「所定の入力文字を入力するための第1の入力手段と、
上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字を表示する表示手段と、
電子メールの作成時、送信文を作成する制御手段と
を具える携帯通信端末装置。」である点。

[相違点]
本願発明では、
複数の数字キーの各々に複数の文字が割り当てられ、ユーザが当該数字キーを所定回数押下することによって当該数字キーに割り当てられた上記複数の文字の中から選択される所定の入力文字を入力するための第1の入力手段と、
上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字及び複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字を表示する表示手段と、
選択機能を備えた回転操作部と確定機能を備えた押下操作部とを有し、上記回転操作部によって上記表示手段に表示されている上記登録文字の選択と上記入力文字の挿入箇所の選択を行い、上記押下操作部によって当該挿入箇所の確定とを行うための第2の入力手段と、
電子メールの作成時、上記第2の入力手段を介して上記表示手段に表示された上記登録文字の中から上記入力文字を挿入する上記挿入箇所の選択と確定を行い、当該確定された当該挿入箇所に対し上記第1の入力手段を介して任意の上記入力文字を挿入して送信文を作成する制御手段と
を具えるのに対して、
刊行物1記載発明では、「第2の入力手段」を具えておらず、「所定の入力文字を入力するための第1の入力手段」が複数の数字キーの各々に複数の文字が割り当てられ、ユーザが当該数字キーを所定回数押下することによって当該数字キーに割り当てられた上記複数の文字の中から選択されるものでなく、「表示手段」が複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字を表示するものでなく、「制御手段」が、上記第2の入力手段を介して上記表示手段に表示された上記登録文字の中から上記入力文字を挿入する上記挿入箇所の選択と確定を行い、当該確定された当該挿入箇所に対し上記第1の入力手段を介して任意の上記入力文字を挿入して送信文を作成するものでない点。

4.相違点の検討
刊行物2記載発明の「キーボード13」は、本願発明の「文字列を入力するための第1の入力手段」に相当する。
また、刊行物2記載発明において、フロッピィディスク等に記録された文書作成支援システムディスクが用意されており、このディスクには、冠婚葬祭用の手紙文やビジネス文等の複数の文例が文書ファイル化されて記録されるから、刊行物2記載発明の「冠婚葬祭用の手紙文やビジネス文等の複数の文例」が、本願発明の「複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字」に対応する。
また、刊行物2記載発明の「本文ウィンドウ41内で反転表示された部分42は注目フレーズと称され、この反転表示位置は、上下左右のカーソルキー操作により移動させること」、「現在文字入力が行われる位置のマーク46は、周期的にあるいは断続的に反転表示(いわゆるブリンク表示)され、この現在の文字入力位置は上下カーソルキーを操作することで切換変更すること」、「上下左右のカーソルキー」が、それぞれ、本願発明の「上記表示手段に表示されている上記登録文字の選択」、「上記入力文字の挿入箇所の選択、当該挿入箇所の確定」、「上記表示手段に表示されている上記登録文字の選択と上記入力文字の挿入箇所の選択を行い、当該挿入箇所の確定とを行うための第2の入力手段」に対応するから、刊行物2記載発明において、上記第2の入力手段を介して上記表示手段に表示された上記登録文字の中から上記入力文字を挿入する上記挿入箇所の選択と確定を行い、当該確定された当該挿入箇所に対し上記第1の入力手段を介して任意の上記入力文字を挿入して文を作成する制御手段を具えることは明らかである。
また、刊行物2記載発明において、選択された文例が本文ウィンドウ41内に表示され、「2次元画面表示手段であるLCD23」に、本文ウィンドウ41と文字入力が可能な文字入力ウィンドウ45が表示されるから、刊行物2記載発明の「2次元画面表示手段であるLCD23」が、本願発明の「上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字及び複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字を表示する表示手段」に対応する。
したがって、刊行物2記載発明は、本願発明の用語で表現すると、次の発明と認められる。

所定の入力文字を入力するための第1の入力手段と、
上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字及び複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字を表示する表示手段と、
カーソル位置の選択を行うことによって、上記表示手段に表示されている上記登録文字の選択と上記入力文字の挿入箇所の選択を行い、当該挿入箇所の確定とを行うための第2の入力手段と、
上記第2の入力手段を介して上記表示手段に表示された上記登録文字の中から上記入力文字を挿入する上記挿入箇所の選択と確定を行い、当該確定された当該挿入箇所に対し上記第1の入力手段を介して任意の上記入力文字を挿入して文を作成する制御手段と
を具える文書作成支援システム。

そうすると、刊行物1記載発明において、電子メールの作成のために、刊行物2記載発明の「文書作成支援システム」を用いて、「表示部27」(本願発明の「表示手段」に相当)を、上記第1の入力手段によつて入力した上記入力文字及び複数の定型文として記憶手段に予め登録されている所定の登録文字を表示するようにし、上記表示手段に表示されている上記登録文字の選択と上記入力文字の挿入箇所の選択を行い、当該挿入箇所の確定とを行うための第2の入力手段を付加し、「データ編集部24」(本願発明の「制御手段」に相当)を、上記第2の入力手段を介して上記表示手段に表示された上記登録文字の中から上記入力文字を挿入する上記挿入箇所の選択と確定を行い、当該確定された当該挿入箇所に対し上記第1の入力手段を介して任意の上記入力文字を挿入して送信文を作成するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
その際、刊行物3、特開平7-65551号公報(段落【0025】の「回動操作及び押圧操作が可能とされた操作手段(ジョグダイヤル)を設けることにより…(中略)…操作は簡易化される。」、段落【0128】の「ジョグダイヤル43を5クリック分(例えば1/6回転)だけ回動させた場合は、…(中略)…1クリック毎に『1』から『5』まで進み…(中略)…表示部31におけるミュージックカレンダーは図15(a)→(b)→(c)→(d)のように変化することになる。」参照)、特開平6-350869号公報(段落【0011】の「シャトルダイヤル21を所要の角度に回転してメニューの「TV」表示にカーソルを移動し、エンター操作(シャトルダイヤル21を押下)する」参照)等により、カーソル位置制御の操作が簡易な入力手段として、選択機能を備えた回転操作部と確定機能を備えた押下操作部とを有し、上記回転操作部によってカーソル位置の選択を行うための入力手段は周知であるから、カーソル位置の選択を行う第2の入力手段として、上記周知のカーソル位置制御の操作が簡易な、選択機能を備えた回転操作部と確定機能を備えた押下操作部とを有する入力手段を採用し、本願発明のようにすることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
また、特開平6-348383号公報(段落【0002】?【0003】の「図4は、従来の例えば携帯電話機として用いられた文字入力装置の表示操作部の一例を示す平面図であり、図において、41は携帯電話機、42は液晶表示装置等の表示器、43はキーパッドである。…(中略)…ダイヤルキー43i?43tは、英字モード、カナモード、数字モードの少なくとも2以上のモードに属する数字又は文字をそれぞれ入力できるテンキー43i?43q,43s及びカーソルの移動、文字の確定等に用いる*キー43r、#キー43tからなる。…(中略)…例えば、カナ入力モードを選択した場合には、1キー43iには「ア行」の5文字が、2キー43jには「カ行」の5文字が割り当てられており、以下順に3キー43kに「サ行」、4キー43lに「タ行」、5キー43mに「ナ行」、6キー43nに「ハ行」、7キー43oに「マ行」、8キー43pに「ヤ行」、9キー43qに「ラ行」、0キー43sに「ワ行」の文字が割り当てられ、各キー毎に押圧操作回数に応じて各行の文字がアイウエオ順に表示器42上に表示される。」参照)、特開昭64-41356号公報(第1頁左下欄第6行?第2頁左上欄10行の「データを入力するキーと、キー入力されたデータを表示するディスプレイと、この入力データを記憶するメモリとを備えた電話機に前記キーからデータを入力するデータ入力方式において…(中略)…アルファベットまたはカナの選択は、前記テンキーを複数回押下してこのテンキーに刻印されている複数のアルファベットまたはカナを順に前記ディスプレイに表示させ、入力したいアルファベットまたはカナが前記ディスプレイに表示されたときに前記第6のキーを押下してカーソルを右へ移動させて次のデータ入力位置を指示することにより行うことを特徴とするデータ記憶機能付電話機におけるデータ入力方式。」、第4頁左上欄第12行?同欄17行の「本発明は、数字を入力してダイヤル操作を行うためのテンキーを、数字入力と共に文字入力にも使用することにより、簡単な覚書または電話帳機能のための参考データを経済的に電話機に入力して内蔵できるという効果がある。」参照)等により、数字を入力してダイヤル操作を行うためのテンキーを、数字入力と共に文字入力にも使用する入力手段として、複数の数字キーの各々に複数の文字が割り当てられ、ユーザが当該数字キーを所定回数押下することによって当該数字キーに割り当てられた上記複数の文字の中から選択される所定の入力文字を入力するための入力手段は周知であるから、刊行物1記載発明において、テンキーを、数字入力と共に文字入力にも使用するために、所定の入力文字を入力するための第1の入力手段として、上記周知の複数の数字キーの各々に複数の文字が割り当てられた入力手段を採用し、本願発明のようにすることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

また、請求人は、本願発明の格別な作用効果について、平成19年7月10日付け意見書において、次のように主張している。

「これに対して本願発明では、第1の特徴点乃至第4の特徴点により『複数の数字キーの各々に複数の文字が割り当てられた第1の入力手段及び選択機能を備えた回転操作部と確定機能を備えた押下操作部とを組み合わせて操作することによって、予め登録された登録文字の選択と挿入位置とを確定し、新たに選択された入力文字を迅速かつ簡単に入力でき電子メールの送信文を作成できる』という格別な作用効果を奏するという特徴がある。」(第5頁第27行?同頁32行)

しかし、すでに述べたように、本願発明の「選択機能を備えた回転操作部と確定機能を備えた押下操作部」はカーソル位置制御の操作が簡易な入力手段として周知であるから、刊行物1記載発明において、電子メールの作成時、送信文を作成するために必要な「カーソル位置の選択を行う第2の入力手段」として用いることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎず、予め登録された登録文字の選択と挿入位置とを確定し、新たに選択された入力文字を迅速かつ簡単にできるという作用効果は、刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記各周知技術から、予測される程度のものにすぎない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-07 
結審通知日 2007-08-10 
審決日 2007-08-30 
出願番号 特願平7-207719
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 田中 友章
重田 尚郎
発明の名称 携帯通信端末装置  
代理人 田辺 恵基  

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