ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1166382 |
審判番号 | 不服2004-11783 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-10 |
確定日 | 2007-10-15 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第350902号「相対時間による派生シナリオ起動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月 8日出願公開、特開平 9-173638〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年12月25日の出願であって、平成16年1月28日付けの原審における拒絶理由通知に対し、同年4月5日付けの意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年4月22日付で拒絶査定がなされたところ、前記拒絶査定を不服として、同年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月9日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年7月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成16年7月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] 2.1 補正の内容及び補正の目的について 平成16年7月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、平成16年4月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「旧請求項1」という。)の 「家庭用テレビゲーム機本体または外部記憶装置に備えられた時計機能を用いて、前記時計の刻む時間経過に基づいて、ゲームストーリーに意外性や現実感をもたせるためにゲーム機の時計機能を用いて背景や環境を設定したり、乱数で難易度を変えるなどの派生シナリオを発生させるゲームにおいて、 時間経過で変化する派生シナリオを複数用意し、前記各派生シナリオの起動順序を決め、前記各派生シナリオの起動時間間隔を相対的な時間で関連付けた、相対時間と前記各派生シナリオとの対応テーブルを用意し、前記対応テーブルにより相対時間で定義しておいた派生シナリオを最初に起動する派生シナリオの実時間をもとにした相対的な時間で起動させることを特徴とした派生シナリオ起動方法。」 から、 「ロールプレーイングゲームなどのストーリーをもったゲームを実行する家庭用テレビゲーム機本体または外部記憶装置に備えられた時計機能を用いて、前記時計の刻む時間経過に基づいて、前記ストーリーに意外性や現実感をもたせるためにゲーム機の時計機能を用いて背景や環境を設定したり、乱数で難易度を変えるなどの前記ストーリーに対する派生シナリオを発生させるゲームにおいて、 時間経過で変化する事象を起こす派生シナリオを複数用意し、前記各派生シナリオの起動順序を決め、前記各派生シナリオの起動時間間隔を相対的な時間で関連付けた、相対時間と前記各派生シナリオとの対応テーブルを用意し、前記対応テーブルにより相対時間で定義しておいた派生シナリオを最初に起動する派生シナリオの実時間をもとにした相対的な時間で起動させることを特徴とした派生シナリオ起動方法。」 と補正された。 旧請求項1に係る上記本件補正は、旧請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「家庭用テレビゲーム機本体」という事項について、「ロールプレーイングゲームなどのストーリーをもったゲームを実行する」という限定を付加して減縮し、「ゲームストーリー」という事項について、「前記ストーリー」と不明りような記載を明りようにし、「派生シナリオを発生させる」という事項について、「前記ストーリーに対する」という限定を付加して減縮するとともに、「時間経過で変化する派生シナリオ」という事項について、「時間経過で変化する事象を起こす派生シナリオ」と限定して減縮するものであるので、旧請求項1に係る上記本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮及び同法第17条の2第4項第4号に掲げられた明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そこで、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮及び同法第17条の2第4項第4号に掲げられた明りようでない記載の釈明を目的として補正された本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.2 引用例及びその記載事項 2.2.1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平6-277365号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・記載事項1 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はゲームプログラムの実行方法及びゲーム装置に関する。特に本発明は時間経過によりゲームの内容に変化を与えるゲームプログラムの実行方法及びゲーム装置に関する。」 ・記載事項2 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、時間経過とともに特に実際のゲームを実行している時間はもとよりゲームを実行しない時間をも経過時間として考慮し、ゲームの内容に変化を与え得るゲームプログラムの実行方法並びにその方法を実現するゲーム装置を提供することを目的とする。」 ・記載事項3 「【0012】 【実施例】図1は本発明の実施例ブロックダイヤグラムである。図において1は、ゲーム装置本体であり、2はゲームカートリッジである。ゲーム装置本体1はBUSに接続される複数の装置要素を有する。即ちCPU10、RAM11、画像処理回路12、音声処理回路13及びシークエンスカウンタ14がBUSに接続されている。」 ・記載事項4 「【0014】ゲームカートリッジ2は、コネクタによってゲーム装置本体1と接続及び切り離しが可能にされている。ゲームカートリッジ2内には同様にBUSが備えられ、ゲームプログラムを固定的に記憶するROM20とバッファメモリ21が備えられ、更に本発明によって備えられる時計機能回路22がBUSに接続されている。」 ・記載事項5 「【0021】かかる観点から本発明は、時間経過とともにゲームプログラムの内容を変化させ容易にプレーヤの興味を失わせないようなゲームプログラムを実行させるものである。」 ・記載事項6 「【0023】図2において本発明のゲームプログラムがスタートし(ステップS1)、時間経過が測定される(ステップS2)。同時にゲームプログラムの内容に基づき乱数が発生される(ステップS3)。ここで時間経過の判定とは先にゲームを終了し、再度ゲームを実行するまでの時間を求めるものである。」 ・記載事項7 「【0025】一方、乱数発生(ステップS3)は、ROM20に備えられるゲームプログラムによって適宜発生される乱数であって、例えば数値1から0までの10個の数字のうちの任意の一つをランダムに発生することを意味する。次いでこれら時間経過の測定並びに発生された乱数からサブルーチンSRが選択される(ステップS4)。 【0026】即ちゲームスタート直後であれば、時間経過は0に近いので発生される乱数に係わらず魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11が選択される。このサブルーチンSR11により所定の魚の大きさに設定され、次いで鑑賞魚飼育プログラムが実行される(ステップS5)。」 ・記載事項8 「【0027】このように鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)の内容は、例えば図3(1)と図3(2)との比較において理解されるように、水槽内の魚の位置が種々変化されることによりあたかも疑似的な水槽において魚の飼育過程において魚が遊泳する状態を表現することが出来る。 【0028】又、魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11によって決められる大きさ、例えば図3(1)に示すような魚の大きさによって鑑賞魚飼育プログラムが実行される(ステップS5)。そしてこの鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)が一巡完了すると再び動作フローはスタート位置に戻る。」 ・記載事項9 「【0029】次に再び時間経過が前記したと同様に測定される(ステップS2)。ここで時間経過測定は、鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)が一回終了する毎にCPU10の制御によってゲーム装置本体1内のRAM11に数値が一づつ加算される。 【0030】従ってこのRAM11に記憶されている数値を検知することによって鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)が何回繰り返されたかが判断される。 【0031】この鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)は1回の実行に対し所定の時間が必要である。従ってこの鑑賞魚飼育プログラムの実行の繰り返し回数からもゲームが行われている時間が相対的に判断できる。」 ・記載事項10 「【0032】サブルーチン選択(ステップS4)において所定の時間経過即ち、RAM11に記憶されている鑑賞魚飼育プログラムの実行回数に基づき、順次大きな魚の形で表示すべく魚の大きさ設定のためのサブルーチンSR12・・・SR1nが選択される。」 ・記載事項11 「【0036】このように実際の鑑賞魚の飼育において時間とともに魚が飼育によって大きくなり、且つ時として卵を産んだり卵から魚が産まれる等の変化があり、これと同様な状態をゲームプログラムによって表すことが可能である。」 ・記載事項12 「【0037】本発明の実施例においては上記の如くプレーヤの現実の生活時間に同期させてゲームプログラムを実行させるべく図1に示すようにゲームカートリッジに時計機能回路22を備えている。」 ・記載事項13 「【0044】尚、このようにゲームカートリッジ2が所定の本体装置1から切り離され他の本体装置に接続される場合の他、特定の本体装置1と半固定的に一体で使用される場合には必ずしもゲームカートリッジ2内に時計機能回路22を設ける必要はない。かかる場合は本体装置1に例えばシークェンスカウンタ14を備え、これにより時間経過を求めることが可能である。」 ・記載事項14 「【0045】以上実施例に従って本発明を説明したが本発明は実施例の水槽内で魚を育てるゲームに限定されるものではなく、例えば登場キャラクタが時間とともに経過するようなゲームプログラムにも適用が可能である。」 【0046】又、地形が時間とともに変化したり、潮が満ちたり引いたりするような変化を与えるようなプログラムにも適用が可能である。更に本発明はかかるプログラムに限定されるものではなく本発明思想と同一であるものは本発明の保護範囲に含まれるものである。」 以上の記載事項1乃至記載事項14及び図面の記載によれば、引用例1には次のとおりの発明が記載されていると認められる。 「水槽内で魚を育てるゲームを実行するゲーム装置本体1またはカートリッジ2に備えられた時計機能回路22を用いて、前記時計機能回路22の刻む経過時間に基づいて、実際のゲームを実行している時間はもとよりゲームを実行しない時間をも経過時間として考慮し、ゲームの内容に変化を与え得るゲームプログラムの実行方法において、 順次大きな魚の形で表示すべく魚の大きさ設定のためのサブルーチンSR11・・・SR1nを用意し、ゲームプログラムがスタートし(ステップS1)、時間経過が測定され(ステップS2)、ゲームスタート直後であれば、時間経過は0に近いので発生される乱数に係わらず魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11が選択され、魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11によって決められる魚の大きさによって鑑賞魚飼育プログラムが実行され(ステップS5)、そしてこの鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)が一巡完了すると再び動作フローはスタート位置に戻り、鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)が一回終了する毎にCPU10の制御によってゲーム装置本体1内のRAM11に数値が一づつ加算され、この鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)は1回の実行に対し所定の時間が必要であり、この鑑賞魚飼育プログラムの実行の繰り返し回数からもゲームが行われている時間が相対的に判断でき、サブルーチン選択(ステップS4)において所定の時間経過即ち、RAM11に記憶されている鑑賞魚飼育プログラムの実行回数に基づき、順次大きな魚の形で表示すべく魚の大きさ設定のためのサブルーチンSR12・・・SR1nが選択されるゲームプログラムの実行方法。」(以下、「引用発明」という。) 2.2.2 本願の出願前に頒布された刊行物である、特公平7-98106号公報(以下、「周知例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・記載事項1 「(発明が解決しようとする問題点) 従来のゲームは上記のようにして進行していくので、ゲームのストーリはプログラムされた通りに進行する。また、ゲーム中の変化(難易度)は主として乱数により決定される。そして、該乱数により決定されるゲームの変化は、キャラクタの動きの変化や攻撃力の変化に限定されるものであった。 したがって、ゲームを反復して行うことによるプレーヤの習熱の結果、興味の根源である意外性が薄れるという問題があった。また、ゲーム中の主人公はプレーヤの力量と無関係に動くため、該主人公はプレーヤの分身となりえない。したがって、プレーヤが主人公になりきってプレイすることができず、プレーの楽しみの深さに限界があるという問題があった。 本発明は、前記した問題に鑑みてなされたものであり、ゲームの背景を季節に応じて変化させることにより、プレーヤに常に意外性を与え、かつより深い楽しみを与えるテレビゲーム装置を提供するにある。」(公報第4欄第7行?第24行) ・記載事項2 「(問題点を解決するための手段および作用) 本発明は、少なくとも操作部とディスプレイを有するテレビゲーム装置において、カレンダタイマと、季節データを含む環境データ群を保持する手段と、ゲームのストーリに関するプログラムを保持する手段と、前記環境データ群に関連する背景画面データ群を保持する手段と、前記カレンダタイマから得られた時間情報に基づいて前記環境データ群の中から該時間情報に適合した環境データを選択する手段とを具備し、該手段によって選択された環境データをもとにして、前記背景画面を選択するようにした点に特徴がある。 本発明は、上記の構成により、次のような作用が行われる。 プレーヤがゲームを行った季節に応じて、その季節に合った背面画面がゲームの各シーン毎に選択される。この季節はプレーヤが月/日のデータをインプットすることにより任意に決定できるので、プレーヤが居る地方の実際の季節と整合させることができる。例えば、北海道であれば、春の始まりを5月1日に設定でき、東京であれば、4月1日に設定することができる。 本発明によれば、以上のように、ゲームの内容とプレーヤを実生活との関連が深くなるので、プレーヤはゲームにより深く没頭することができる。」(公報第4欄第25行?第47行) 以上の記載事項1及び記載事項2並びに図面の記載によれば、周知例には次のとおりの事項が記載されていると認められる。 「プレーヤに常に意外性を与え、ゲームの内容とプレーヤの実生活との関連が深くなるように、テレビゲーム装置のカレンダタイマから得られた時間情報に基づいて環境データ群の中から該時間情報に適合した環境データを選択するとともに、選択された環境データをもとにして、前記背景画面を選択したり、主として乱数によりゲーム中の変化(難易度)を決定するなどのゲームのストーリを変化させるゲーム。」 2.3 対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 ・対応関係1 引用発明の「ゲーム装置本体1」は、本願補正発明の「家庭用テレビゲーム機本体」に相当し、以下同様に、「カートリッジ2」は「外部記憶装置」に、「時計機能回路22」は「時計機能」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「水槽内で魚を育てるゲーム」と、本願補正発明の「ロールプレーイングゲームなどのストーリーをもったゲーム」とは、「ゲーム」である点において共通する。 ・対応関係2 記載事項7乃至記載事項10より、複数の「サブルーチンSR11・・・SR1n」が用意されており、「魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11によって決められる大きさ、例えば図3(1)に示すような魚の大きさによって鑑賞魚飼育プログラムが実行される(ステップS5)」のように、サブルーチンSR11は、本願補正発明の派生シナリオと同様に、鑑賞魚飼育プログラムに対して派生するものであるから、引用発明の「サブルーチンSR11・・・SR1n」のそれぞれは、本願補正発明の「派生シナリオ」に相当するといえる。 そして、引用発明の「サブルーチンSR11・・・SR1n」のそれぞれは、所定の時間経過に基づき順次選択されるものであるから、引用発明の「前記時計機能回路22の刻む経過時間に基づいて、実際のゲームを実行している時間はもとよりゲームを実行しない時間をも経過時間として考慮し、ゲームの内容に変化を与え得るゲームプログラム」は、「前記時計の刻む時間経過に基づいて、派生シナリオを発生させるゲーム」である点で、本願補正発明と共通する。 さらに、引用発明の「ゲームプログラムの実行方法」は、「サブルーチンSR11・・・SR1n」を順次選択し実行するものであるから、本願補正発明の「派生シナリオ起動方法」に相当するといえる。 ・対応関係3 記載事項7及び記載事項10より、「サブルーチンSR11・・・SR1n」は、所定の時間経過に基づき順次選択されるものである。そして、各サブルーチンは、飼育される魚を、順次大きな魚の形で表示するためのサブルーチンであることから、各サブルーチンは、本願補正発明と同様に「時間経過で変化する事象を起こす」ものといえる。また、各サブルーチンは、順次大きな魚の形で表示するためのサブルーチンであることから、本願補正発明と同様に起動順序が決められていることも明らかである。 してみれば、引用発明の「順次大きな魚の形で表示すべく魚の大きさ設定のためのサブルーチンSR11・・・SR1nを用意し、」は、本願補正発明の「時間経過で変化する事象を起こす派生シナリオを複数用意し、前記各派生シナリオの起動順序を決め、」に相当するといえる。 ・対応関係4 記載事項4、及び、記載事項7乃至記載事項10より、引用発明は、「時間経過とともに特に実際のゲームを実行している時間はもとよりゲームを実行しない時間をも経過時間として考慮し、ゲームの内容に変化を与え得る」ものであり、そのために「サブルーチンSR11・・・SR1n」が用意され、少なくとも実際のゲームを実行している時間には、「所定の時間経過即ち、RAM11に記憶されている鑑賞魚飼育プログラムの実行回数に基づき、順次大きな魚の形で表示すべく魚の大きさ設定のためのサブルーチンSR12・・・SR1nが選択される」のであるから、引用発明においても、所定の時間経過(鑑賞魚飼育プログラムの実行回数)とサブルーチンSR11・・・SR1nが、何らかの形で対応づけられて予め記憶されていることは明らかであるから、本願補正発明と引用発明とは、「前記各派生シナリオの起動時間間隔を相対的な時間で関連付けて用意」する点で共通する。 ・対応関係5 記載事項7乃至10より、引用発明では、「ゲームプログラムがスタートし(ステップS1)」、まず「魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11が選択され」るのであるから、引用発明の「魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11」は、本願補正発明の「最初に起動する派生シナリオ」に相当するといえる。 そして、引用発明では、「魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11が選択され」た後、魚の大きさ設定1のサブルーチンSR11によって決められる魚の大きさによって鑑賞魚飼育プログラムの実行が繰り返され、鑑賞魚飼育プログラムの実行回数、即ち、経過時間がステップS2で判定され、所定の時間経過に基づき、順次大きな魚の形で表示すべく魚の大きさ設定のためのサブルーチンSR12・・・SR1nが選択されるのであるから、引用発明の、「鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)が一巡完了すると再び動作フローはスタート位置に戻り、鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)が一回終了する毎にCPU10の制御によってゲーム装置本体1内のRAM11に数値が一づつ加算され、この鑑賞魚飼育プログラム実行(ステップS5)は1回の実行に対し所定の時間が必要であり、この鑑賞魚飼育プログラムの実行の繰り返し回数からもゲームが行われている時間が相対的に判断でき、サブルーチン選択(ステップS4)において所定の時間経過即ち、RAM11に記憶されている鑑賞魚飼育プログラムの実行回数に基づき、順次大きな魚の形で表示すべく魚の大きさ設定のためのサブルーチンSR12・・・SR1nが選択される」は、本願補正発明の「相対時間で定義しておいた派生シナリオを最初に起動する派生シナリオの実時間をもとにした相対的な時間で起動させる」に相当するといえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「ゲームを実行する家庭用テレビゲーム機本体または外部記憶装置に備えられた時計機能を用いて、前記時計の刻む時間経過に基づいて、派生シナリオを発生させるゲームにおいて、 時間経過で変化する事象を起こす派生シナリオを複数用意し、前記各派生シナリオの起動順序を決め、前記各派生シナリオの起動時間間隔を相対的な時間で関連付けて用意し、相対時間で定義しておいた派生シナリオを最初に起動する派生シナリオの実時間をもとにした相対的な時間で起動させる派生シナリオ起動方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 ゲームについて、本願補正発明では、「ロールプレーイングゲームなどのストーリーをもったゲーム」であるのに対し、引用発明では、「水槽内で魚を育てるゲーム」である点。 相違点2 派生シナリオについて、本願補正発明では、「前記ストーリーに意外性や現実感をもたせるためにゲーム機の時計機能を用いて背景や環境を設定したり、乱数で難易度を変えるなどの前記ストーリーに対する」ものであるのに対し、引用発明では、「魚の大きさ設定のため」のものである点。 相違点3 各派生シナリオの起動時間間隔を相対的な時間で関連付けて用意するに際し、本願補正発明では、相対時間と前記各派生シナリオとの対応テーブルを用いるのに対し、引用発明では、どのように用意されているのか明らかでない点。 2.4 当審の判断 上記相違点1乃至相違点3について検討する。 ・相違点1について 引用例1には、記載事項14のとおり、「本発明は実施例の水槽内で魚を育てるゲームに限定されるものではなく、例えば登場キャラクタが時間とともに経過するようなゲームプログラムにも適用が可能である。」、「又、地形が時間とともに変化したり、潮が満ちたり引いたりするような変化を与えるようなプログラムにも適用が可能である。」との記載があり、他の種類のゲームにも適用可能であることが示唆されており、具体的に「登場キャラクタが時間とともに経過するようなゲームプログラム」に適用可能であることが開示されている。 そして、家庭用テレビゲーム機の技術分野において、「登場キャラクタが時間とともに経過するようなゲームプログラム」として、「ロールプレーイングゲームなどのストーリーをもったゲーム」は、例を挙げるまでもなく周知のゲームであるから、引用発明において、「水槽内で魚を育てるゲーム」を、「ロールプレーイングゲームなどのストーリーをもったゲーム」に変更して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ・相違点2について 家庭用テレビゲーム機の技術分野において、周知例に記載された事項の如くの、「プレーヤに常に意外性を与え、ゲームの内容とプレーヤの実生活との関連が深くなるように、テレビゲーム装置のカレンダタイマから得られた時間情報に基づいて環境データ群の中から該時間情報に適合した環境データを選択するとともに、選択された環境データをもとにして、前記背景画面を選択したり、主として乱数によりゲーム中の変化(難易度)を決定するなどのゲームのストーリを変化させるゲーム。」、すなわち、本願補正発明の「前記ストーリーに意外性や現実感をもたせるためにゲーム機の時計機能を用いて背景や環境を設定したり、乱数で難易度を変えるなどの前記ストーリーに対する派生シナリオを発生させるゲーム」に対応するゲームは、周知のゲームであり、引用発明において、上記周知のゲームを採用して、派生シナリオを、「前記ストーリーに意外性や現実感をもたせるためにゲーム機の時計機能を用いて背景や環境を設定したり、乱数で難易度を変えるなどの前記ストーリーに対する」派生シナリオに変更して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ・相違点3について 家庭用テレビゲーム機の技術分野において、ゲームに必要な複数の情報を関連付けて用意するに際し、対応テーブルを用いてそれらを用意することは、例えば、特開平7-313734号公報(段落【0004】の記載等参照。)に記載されるように周知技術であり、引用発明において、各派生シナリオの起動時間間隔を相対的な時間で関連付けて用意するに際し、上記周知技術を採用して、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2.5 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 3.1 本願発明 上記2.に前述した理由により、平成16年7月9日付けの手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき本願発明は、平成16年4月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「家庭用テレビゲーム機本体または外部記憶装置に備えられた時計機能を用いて、前記時計の刻む時間経過に基づいて、ゲームストーリーに意外性や現実感をもたせるためにゲーム機の時計機能を用いて背景や環境を設定したり、乱数で難易度を変えるなどの派生シナリオを発生させるゲームにおいて、 時間経過で変化する派生シナリオを複数用意し、前記各派生シナリオの起動順序を決め、前記各派生シナリオの起動時間間隔を相対的な時間で関連付けた、相対時間と前記各派生シナリオとの対応テーブルを用意し、前記対応テーブルにより相対時間で定義しておいた派生シナリオを最初に起動する派生シナリオの実時間をもとにした相対的な時間で起動させることを特徴とした派生シナリオ起動方法。」(以下、「本願発明」という。) 3.2 引用例及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平6-277365号公報の記載事項は、「2.2 引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。 3.3 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から「2.1 補正の内容及び補正の目的について」に記載した限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、「2.4 当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-03 |
結審通知日 | 2007-08-14 |
審決日 | 2007-08-27 |
出願番号 | 特願平7-350902 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
森口 良子 植野 孝郎 |
発明の名称 | 相対時間による派生シナリオ起動方法 |
代理人 | 豊田 正雄 |