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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B22C
管理番号 1166391
審判番号 不服2005-5864  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-05 
確定日 2007-10-15 
事件の表示 特願2000-270619「鋳鋼用塗型」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月19日出願公開、特開2002- 79351〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年9月6日の出願であって、平成16年11月30日付けで拒絶の理由が通知され、平成17年2月2日に意見書が提出さ、平成17年2月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされた。その後、当審において平成19年1月22日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年3月29日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成19年3月29日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】 マグネシアを基材としてこれにクロマイトを、該マグネシア及びクロマイトの総量に対する比率で5?40重量%配合したものを骨材とし、アルコール系溶剤を含んだ鋳鋼用塗型。」(以下、「本願発明1」という。)

III.刊行物とその記載事項
これに対して、当審において平成19年1月22日付で通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平8-267175号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開平4-371348号公報(以下、「刊行物2」という。)、特公昭57-59012号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)刊行物1:特開平8-267175号公報
(1a)「【0002】
【従来の技術】高マンガン鋳鋼、ステンレス鋳鋼等鋳造の際、鋳造品表面に塩基性酸化被膜を形成するもの、また鋳造用鋳型としてクロマイト砂、オリビン砂等の塩基性の砂を用いるものの製造において鋳型の表面に塗布する塗型材としては従来酸化マグネシウムMgOを主骨材とする塗型材が利用されている。
【0003】これは、塗型材と反応する対象である、溶湯の酸化物及び砂が塩基性である場合、塗型材の骨材も一般的に用いられる中性のジルコン,アルミナ,ムライト等よりも塩基性の酸化マグネシウムの方が対反応性に優れる為である。」
(1b)「【0004】そして、酸化マグネシウムMgOを主骨材とする塗型材は、溶剤としてアルコール系溶剤が用いられている。」

(2)刊行物2:特開平4-371348号公報
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジルコンフラワー、シリカフラワー、黒鉛、酸化マグネシウム、クロマイトフラワー、セリサイト(絹雲母)などの耐火物を選択的に配合した基剤に、粘結剤としてメラミン樹脂、無機分散剤として含水珪酸マグネシウム、有機分散剤としてナフタリンスルフォン酸ソーダ縮合物、浸透剤として非イオン系界面活性剤とブチルセロソルブアルコールなどの混合液を配合したことを特徴とする鋳物用塗型剤。」
(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋳物の鋳型造型後に鋳型の溶湯鋳込み面に塗布する鋳物用塗型剤に関するものである。」
(2c)「【0008】
【作用】本発明の鋳物用塗型剤は、基剤となる耐火物としてジルコンフラワー、シリカフラワー、黒鉛、酸化マグネシウム、クロマイトフラワー、セリサイトなどを選択的に配合し、この基剤に、塗型剤管理の容易性、塗型剤性状の安定化、作業性、鋳物の品質などの観点から、無機分散剤、有機分散剤、無機および有機粘結剤、界面活性剤、防腐剤、溶媒などを配合している。」
(2d)「【0009】本発明の鋳物用塗型剤の作用を詳述すると、耐火物としてジルコンフラワー、シリカフラワー、黒鉛、酸化マグネシウム、クロマイトフラワー、セリサイトなどを選択的に配合することにより、耐火物の粒度体形の調整を容易にし、この粒度体形の調整の容易な耐火物と非イオン系界面活性剤入りブチルセロソルブ混合液の作用によって、高密度で均一な浸透層と塗型層が形成され、焼着防止と塗型剤剥離防止効果が得られる。」

(3)刊行物3:特公昭57-59012号公報
(3a)「1 鋳鉄鋳物に用いる黒鉛系水性塗型であつて、黒鉛100重量部、クロマイト粉末10?25重量部、ベントナイト2?10重量部、水100?140重量部から成ることを特徴とする鋳鉄鋳物用塗型剤」(特許請求の範囲)
(3b)「本発明は、鋳鉄鋳物鋳造に当つて用いる塗型剤、特に黒鉛系水性塗型剤の新しいタイプの提供に関する。」(1頁左欄19?21行)
(3c)「・・・本発明においてはクロマイト粉末の物理的性質である処の、その融点が1780°?1900℃という高融点による高い熱伝導度、更にはPH7.0?9.5というような高い塩基性を利用し、これらの特性によつて溶湯の浸透をより確実かつ強力に防止できるようにし、同時に焼着、目ざしの発生をも効果的に防止できるようにしたものである。」(1頁右欄21?28行)
(3d)「・・・高融点のクロマイト粉末が有効にプラスされることになり、焼着や目ざしの発生しない塗型が容易にかつ確実に得られるのであり、又塗型膜厚の大を必要としないのである。」(2頁右欄9?13行)

IV.当審の判断
1.刊行物1記載の発明
塗型材は鋳型に塗布されることにより塗型として用いられるものであり、上記摘記事項(1b)には、アルコール系溶剤を含有させることが記載されているから、上記摘記事項(1a)、(1b)を総合すると、刊行物1には、

「高マンガン鋳鋼、ステンレス鋳鋼鋳造に用いられる、酸化マグネシウムを主骨材とし、アルコール系溶剤を含んだ塗型。」(以下、「刊行物1記載発明」という。)

が記載されていると言える。

2.本願発明1と刊行物1記載発明との対比
刊行物1記載発明における「高マンガン鋳鋼、ステンレス鋳鋼」、「酸化マグネシウム」は、本願発明1の「鋳鋼」、「マグネシア」にそれぞれ相当するから、両者は、「マグネシアを基材として配合したものを骨材とし、アルコール系溶剤を含んだ鋳鋼用塗型」の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点:本願発明1が骨材としてマグネシアに加えてクロマイトを、マグネシア及びクロマイトの総量に対する比率で5?40重量%配合しているのに対して、刊行物1記載発明では、クロマイトが配合されていない点。

3.相違点についての判断
以下、上記相違点について検討する。
刊行物2には、塗型の骨材として、酸化マグネシウム(本願発明1の「マグネシア」に相当)、クロマイトフラワー(本願発明1の「クロマイト」に相当)を含む、ジルコンフラワー、黒鉛等、種々の耐火物を挙げ、これらを選択的に複数混合して骨材として用いることにより、高密度で均一な浸透層と塗型層が形成され、焼着防止と塗型材剥離防止効果が得られることが記載されており、選択肢として、本願発明の「マグネシア」と「クロマイト」と組み合わせて塗型の骨材として用い得ることが記載されている。
さらに、刊行物3には、塗型の骨材として、主たる骨材である黒鉛にクロマイトを添加して用いることが記載され、クロマイトは高い熱伝導度、高い塩基性を示すことから、クロマイトを骨材に添加することにより、溶湯の浸透をより確実に防止でき、焼着、目ざしの発生を効果的に防止できることが記載されている。
これらの記載によれば、高密度で均一な塗型を形成するために、選択肢として「マグネシア」と「クロマイト」の組み合わせが示唆され、主骨材にクロマイトを添加することにより、焼着等の防止が図り得ることが記載されているのであるから、刊行物1記載発明の塗型の骨材として、主骨材であるマグネシアに加えてクロマイトをさらに添加することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
そして、クロマイトの添加量を5?40重量%と限定することは、実験等を行うことにより、必要とする耐焼着性等が発揮される最適値を見いだしたにすぎないものであり、また、刊行物3におけるクロマイトの添加量を重量部から重量%に換算すると、黒鉛とクロマイトの総量に対する比率で、9?20重量%となり、本願発明1における、骨材中のクロマイト含有量と重複しているものであるから、本願発明1の5?40重量%との限定に、格別顕著な臨界的意義があるものとも認められず、当該限定は当業者が適宜なし得たものと認められる。
そして、本願発明1による効果も、刊行物1乃至3の記載から当業者が予期し得る程度のものにすぎず、格別顕著なものとは認められない。
したがって、本願発明1は、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は平成19年3月29日提出の意見書において、「・・・本願発明では、マグネシアを基材としてそこにクロマイトを所定量添加混合し、マグネシアの持つ優れた耐焼着性と、クロマイトの持つ優れたガス欠陥抑制機能との両特性を塗型に付与し得たものであり、この点に本願発明の技術的な意義、特徴が存している。」(2頁19?21行)、「・・・本願発明に従って、マグネシア基材に対しクロマイトを配合することで、単に2種類のものを組み合わせた場合に予想される効果に比べて大なる効果が得られ、特にクロマイトを5?40重量%の範囲内で添加することで、両者の組合せによる最大の効果が得られる。
本願発明はこうした知見の下に、マグネシアに対するクロマイトの配合量の規定を必須の構成として含んでいるもので、こうしたクロマイトの配合量の範囲限定及びそれによる顕著な効果についても刊行物2には何等開示はされていない。
・・・こうしたマグネシアとクロマイトとの組合せによる効果を含む本願発明の特有の効果は当業者が予想できるものではなく、このような知見に基いて完成された本願発明は刊行物2に記載のものとは明らかに異なったものであると思料する。」(3頁32?44行)旨主張する。
しかしながら、ガス欠陥を抑制すること、耐焼着性を向上させることは、塗型において求められる本願出願前に周知の課題であって(この点、要すれば、刊行物1【0009】、刊行物2【0005】、刊行物3、第2欄21?28行、等の記載参照。)、それらの課題を両立させようとすることは当業者が当然試みる事項である。さらに、本願発明1においては、「クロマイトを、該マグネシア及びクロマイトの総量に対する比率で5?40重量%配合」すると限定するが、出願当初の明細書の【表3】に記載される実施例によれば、例えば、マグネシア95%、クロマイト5%においては、ガス欠陥発生面積率が35%、また、マグネシア60%、クロマイト40%においては焼着率が20%と、そのガス欠陥発生面積率、焼着率が顕著ではない値も含んでいるものであり、本願発明1が格別顕著な技術的意義、特徴を有するものとも認められない。
以上のとおりであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

V.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-06 
結審通知日 2007-08-14 
審決日 2007-08-28 
出願番号 特願2000-270619(P2000-270619)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大畑 通隆  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 前田 仁志
市川 裕司
発明の名称 鋳鋼用塗型  
代理人 吉田 和夫  

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