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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01P
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01P
管理番号 1166392
審判番号 不服2005-10550  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-08 
確定日 2007-10-15 
事件の表示 特願2002-103364「ピエゾ抵抗型3軸加速度センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月15日出願公開、特開2003-294781〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年4月5日の出願であって、平成17年5月12日付(発送日同年5月20日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年6月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付の手続補正書によって明細書を補正対象とする補正がなされたものである。

第2 平成17年6月8日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】 加速度をピエゾ抵抗体で検出する3軸加速度センサであって、そのピエゾ抵抗体は両端を外枠部と質量部に接続された可撓部上に配されており、X軸およびY軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、各々の軸に対応する可撓部の長手方向と平行で、Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、Z軸に対応する可撓部の長手方向と角度を有していることを特徴とするピエゾ抵抗型3軸加速度センサ。
【請求項2】 Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向と、Z軸に対応する可撓部の長手方向のなす角度が、10度以上30度以下あるいは65度以上90度以下であることを特徴とする請求項1に記載のピエゾ抵抗型3軸加速度センサ。」
から
「 【請求項1】 加速度をピエゾ抵抗体で検出する3軸加速度センサであって、そのピエゾ抵抗体は両端を外枠部と質量部に接続された可撓部上に配されており、X軸およびY軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、各々の軸に対応する可撓部の長手方向と平行で、Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、Z軸に対応する可撓部の長手方向と、10度以上30度以下あるいは65度以上90度以下の角度を有していることを特徴とするピエゾ抵抗型3軸加速度センサ。」
と補正された。(なお、下線は、補正箇所を示すため、請求人が付したものである。)

2.補正の適否
上記の補正内容は、(1)請求項1に係る発明特定事項である、Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向と、Z軸に対応する可撓部の長手方向との間の「角度」について、「10度以上30度以下あるいは65度以上90度以下」との限定、すなわち、補正前の請求項2に係る発明の特定事項を付加する補正事項と、(2)補正前の請求項2を削除する補正事項とである。
上記補正事項(1)は、平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を、(2)は同条同項第1号の請求項の削除を、それぞれ目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.刊行物記載の発明・事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の平成3年1月8日に頒布された刊行物である特開平3-2535号公報(以下「刊行物1という」)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本発明は抵抗素子を用いたセンサの製造方法、特に半導体基板上に形成された抵抗素子に対して加えられる機械的変形を、電気抵抗の変化として検出するセンサの製造方法に関する。」(第2頁右下欄第9?13行)
(イ)「〔実施例〕
以下本発明を図示する実施例に基づいて説明する。
センサの構造
はじめに、本発明の対象となる抵抗素子を用いたセンサの構造を簡単に説明する。第1図は加速度センサの一例を示す構造断面図である。このセンサの中枢ユニットとなるのは、半導体ペレット10である。この半導体ペレット10の上面図を第2図に示す。第1図の中央部分に示されている半導体ペレット10の断面は、第2図をX軸に沿って切断した断面に相当する。この半導体ペレット10は、内側から外側に向かって順に、作用部11、可撓部12、固定部13の3つの領域に分けられる。第2図に破線で示されているように、可撓部12の下面には、環状に溝が形成されている。この溝によって、可撓部12は肉厚が薄くなり、可撓性をもつことになる。したがって、固定部13を固定したまま作用部11に力を作用させると、可撓部12が撓んで機械的変形が生じる。可撓部12の上面には、第2図に示すように、抵抗素子Rx1?Rx4,Ry1?Ry4,Rz1?Rz4が所定の向きに形成されている。
第1図に示すように、作用部11の下方には重錘体20が接合されており、固定部13の下方には台座30が接合されている。台座30の底面はパッケージ40の内側底面に接合されており、半導体ペレット10および重錘体20はこの台座30によって支持される。重錘体20は内部で宙吊りの状態となっている。・・・
このセンサに加速度が加わると、重錘体20に外力が作用することになる。この外力は作用部11に伝達され、可撓部12に機械的変形が生じる。これによって、抵抗素子の電気抵抗に変化が生じ、この変化はボンディングワイヤ15およびリード42を介して外部に取り出すことができる。作用部11に加わった力のX方向成分は抵抗素子Rx1?Rx4の電気抵抗の変化により、Y方向成分は抵抗素子Ry1?Ry4の電気抵抗の変化により、Z方向成分は抵抗素子Rz1?Rz4の電気抵抗の変化により、それぞれ検出される。」(第4頁右上欄第10行?同頁右下欄第16行)
(ウ)「半導体ウエハ100の上面に、複数の抵抗素子Rを形成する場合、第14図に示すようなマスク700を用意しておくと便利である。図で破線は半導体ウエハ100の肉厚が薄い部分に対応する領域を示し、添字を付加した記号Rで示す部分は、各抵抗素子Rを形成するためにマスクに開けられた窓部である。このマスク700の特徴は、Z軸方向の力を検出するための抵抗素子が2とおり形成できる点である。すなわち、Rz1?Rz4の第1の組と、Rz1′?Rz4′の第2の組と、の両方が形成できる。いずれの組を用いるかは、用いる半導体ウエハ100の面方位によって決めることになる。マスク700はシリコンの面方位(110)のウエハと(100)のウエハとの両方に適したマスクパターンである。面方位(110)のウエハの場合は第1の組、面方位(100)のウエハの場合は第2の組を用いるのがよい。これはどの方向に抵抗素子を配したら応力に対する検出感度が良好になるかという条件が、用いるウエハの面方位によって異なるためである。したがって、第2図に示した抵抗素子の配列は一列であり、実際には用いるウエハの面方位により最適な配列をとることになる。」(第8頁左上欄第6行?同頁右上欄第8行)
(エ)「また、可撓部を形成する手段としては、溝を設ける方法だけでなく貫通孔を設ける方法を用いてもよい。要するに部分的に除去する加工によって可撓性を生じさせることができればどのような方法を用いてもよい。第15図に貫通孔を設ける方法によって可撓部を形成した実施例を示す。この半導体ペレット10′には、4か所に方形の貫通孔16が設けられており、これによって架橋部17が形成される。この架橋部17は可撓性をもつことになり、ここに抵抗素子が形成される。」(第8頁右上欄第20行?同頁左下欄第9行)
(オ)図面の第15図には、架橋部17の上面に、抵抗素子Rx1?Rx4およびRy1?Ry4が各軸に対応する架橋部17の長手方向と平行であり、抵抗素子Rz1?Rz4が抵抗素子Rx1?Rx4と同じ架橋部17に形成されており、抵抗素子Rz1?Rz4が同架橋部17の長手方向と平行ではない角度を有していることが示されている。

上記摘記事項事項(イ)における「このセンサに加速度が加わると、重錘体20に外力が作用することになる。この外力は作用部11に伝達され、可撓部12に機械的変形が生じる。これによって、抵抗素子の電気抵抗に変化が生じ、この変化はボンディングワイヤ15およびリード42を介して外部に取り出すことができる。」記載の記載からみて、刊行物1に示される抵抗素子を用いたセンサは加速度を検出するものを含むことが読み取れる。
また、上記摘記事項(エ)における「第15図に貫通孔を設ける方法によって可撓部を形成した実施例を示す。」の記載、及び、(イ)における「半導体ペレット10は、内側から外側に向かって順に、作用部11、可撓部12、固定部13の3つの領域に分けられる。・・・作用部11の下方には重錘体20が接合されており、・・・このセンサに加速度が加わると、重錘体20に外力が作用することになる。この外力は作用部11に伝達され、可撓部12に機械的変形が生じる。」の記載からみて、第15図に示される実施例において、架橋部17は一端が固定部に、他端が重錘に接続されていることが読み取れる。
したがって刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

<刊行物1記載の発明>
「加速度を半導体基板上に形成された抵抗素子で検出する3軸加速度センサであって、その半導体基板上に形成された抵抗素子は両端を固定部と重錘に接続された架橋部17上に配されており、X方向成分を検出する抵抗素子Rx1?Rx4及びY方向成分を検出する抵抗素子Ry1?Ry4の長手方向は、各々の軸に対応する架橋部17の長手方向と平行で、Z方向成分を検出する抵抗素子Rz1?Rz4の長手方向は、Z方向に対応する架橋部17の長手方向と、平行ではない角度を有している3軸加速度センサ。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の平成7年7月28日に頒布された刊行物である特開平7-191053号公報(以下「刊行物2という」)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、X,YおよびZ軸の3軸方向にそれぞれ作用する加速度を検出するための加速度センサに関する。」(段落【0001】)
(イ)「【0008】・・・X軸、Y軸とZ軸との間に感度の差が生じるという問題がある。・・・【0010】この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、・・・軸間の感度差を軽減することができ、・・・ができる加速度センサを提供することを目的とする。」(段落【0008】、【0010】)

上記摘記事項(ア)?(イ)からみて、刊行物2には、次の事項が記載されているものと認める。
「3軸方向にそれぞれ作用する加速度を検出するための加速度センサにおいて、X軸、Y軸とZ軸との間に生じる感度の差を軽減するという技術課題が存在すること。」

4.対比
本件補正発明1と刊行物1記載の発明を対比する。
その技術的意義からみて、後者の「半導体基板上に形成された抵抗素子」、「固定部」、「重錘」、「架橋部17」、「X方向成分を検出する抵抗素子」、「Y方向成分を検出する抵抗素子」、「Z方向成分を検出する抵抗素子」は、前者の「ピエゾ抵抗体」、「外枠部」、「質量部」、「可撓部」、「X軸用ピエゾ抵抗体」、「Y軸用ピエゾ抵抗体」、「Z軸用ピエゾ抵抗体」にそれぞれに相当する。
また、後者の「Z方向成分を検出する抵抗素子Rz1?Rz4の長手方向は、Z方向に対応する架橋部17の長手方向と、平行ではない角度を有している」ことは、前者の「Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、Z軸に対応する可撓部の長手方向と、10度以上30度以下あるいは65度以上90度以下の角度を有している」ことと、「Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、Z軸に対応する可撓部の長手方向と、平行ではない角度を有している」限りにおいて一致している。
そうすると、両者は次の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「加速度をピエゾ抵抗体で検出する3軸加速度センサであって、そのピエゾ抵抗体は両端を外枠部と質量部に接続された可撓部上に配されており、X軸およびY軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、各々の軸に対応する可撓部の長手方向と平行で、Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、Z軸に対応する可撓部の長手方向と、平行ではない角度を有していることを特徴とするピエゾ抵抗型3軸加速度センサ。」
<相違点>
本件補正発明1においては、Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向と、Z軸に対応する可撓部の長手方向との平行ではない角度が「10度以上30度以下あるいは65度以上90度以下」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては、その角度の数値について特定されていない点。

5.判断
半導体面上に形成されるピエゾ抵抗素子の加速度検出感度は、半導体面上で形成されるピエゾ抵抗素子の方向によって変化することは周知である(例えば、特開平7-202221号公報の段落【0017】、【0027】?【0028】、図面図2、図3、あるいは、特開平6-174571号公報の図面図5を参照)。一方、刊行物1記載の発明においては、Z方向成分を検出する抵抗素子Rz1?Rz4の長手方向は、Z方向に対応する架橋部17の長手方向と、平行ではない角度を有している。してみれば、刊行物1記載の発明における抵抗素子Rz1?Rz4の検出感度と、これら抵抗素子Rz1?Rz4の形成されている架橋部17と同じ架橋部17に形成されている抵抗素子Rx1?Rx4の検出感度とは異なっているものと解される。そうすると、上記の刊行物2に記載の事項「3軸方向にそれぞれ作用する加速度を検出するための加速度センサにおいて、X軸、Y軸とZ軸との間に生じる感度の差を軽減するという技術課題が存在すること。」を勘案して、刊行物1記載の発明において、Z方向成分を検出する抵抗素子について所望の感度を得るため、架橋部17に対する形成角度を適宜選択して上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易に成し得たものといえる。

<補正発明1の作用効果について>
そして、本件補正発明1の作用効果は、刊行物1に記載の発明、刊行物2に記載の事項及び上記周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、本件補正発明1は刊行物1記載の発明、刊行物2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1.本願発明
平成17年6月8日付手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし2に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び平成17年1月20日付手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
<本願発明1>
「 【請求項1】 加速度をピエゾ抵抗体で検出する3軸加速度センサであって、そのピエゾ抵抗体は両端を外枠部と質量部に接続された可撓部上に配されており、X軸およびY軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、各々の軸に対応する可撓部の長手方向と平行で、Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向は、Z軸に対応する可撓部の長手方向と角度を有していることを特徴とするピエゾ抵抗型3軸加速度センサ。」

2.刊行物記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び同刊行物に記載された発明・事項は、前記、「第2 3.(1)ないし(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、前記第2で検討した本願補正発明1の発明特定事項である、Z軸用ピエゾ抵抗体の長手方向と、Z軸に対応する可撓部の長手方向との間の「角度」について、「10度以上30度以下あるいは65度以上90度以下」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明1が前記「第2 5.」に記載したとおり、前記刊行物1記載の発明、刊行物2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明1も同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明が特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-20 
結審通知日 2007-08-24 
審決日 2007-09-04 
出願番号 特願2002-103364(P2002-103364)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01P)
P 1 8・ 121- Z (G01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 上原 徹
居島 一仁
発明の名称 ピエゾ抵抗型3軸加速度センサ  

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