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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1166414
審判番号 不服2004-26704  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-28 
確定日 2007-10-19 
事件の表示 平成 7年特許願第 76625号「回転軸用のエンコーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月20日出願公開、特開平 8- 50039〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年3月31日(パリ条約による優先権主張1994年3月31日、米国)の出願であって、平成16年9月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成16年12月28日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
[1]補正の内容
本件補正の内容は、次のとおりである。
イ.特許請求の範囲を次のように補正する。
「【請求項1】 回転軸用のエンコーダにおいて、
(a)第1の発光ダイオードと第2の発光ダイオードとを有する放射源が設けられており、前記発光ダイオードがそれぞれ、第1の高い束密度放射パターンと第2の高い束密度放射パターンとを形成するようになっており、前記第1及び第2の放射パターンが前記回転軸と軸方向で整列しており、
(b)放射検出器が設けられており、該放射検出器が、第1のフォトダイオードチャネルと第2のフォトダイオードチャネルとを有しており、前記第1のチャネルが実質的に前記第1のパターンのみを検出し、前記第2のチャネルが実質的に前記第2のパターンのみを検出するようになっており、前記チャネルが、前記第1のチャネルの出力信号が前記第2のチャネルの出力信号と位相が異なっておりこれにより直角信号が出力されるように形成されており、
(c)放射源と放射検出器との間に配置された放射モジュレータが備えられ、前記の放射源、放射検出器、放射モジュレータが直接相互に整列されていることを特徴とする、回転軸用のエンコーダ。
【請求項2】 放射源と、放射検出器と、放射モジュレータとが、1つの基準部材に対して整列させられている、請求項1記載のエンコーダ。
【請求項3】 放射源と、放射検出器と、放射モジュレータとが、長手方向整列ツールに対して整列させられている、請求項1記載のエンコーダ。
【請求項4】 放射モジュレータが、回転軸に機械的に結合されており、放射源と、放射検出器とが、互いに機械的に結合されており、前記結合が、1つの基準部材に対する放射源と、放射モジュレータと、放射検出器との位置を固定させるようになっている、請求項1記載のエンコーダ。
【請求項5】 回転軸用のエンコーダにおいて、
(a)第1の発光ダイオードと第2の発光ダイオードとを含む放射源が設けられており、前記発光ダイオードがそれぞれ、第1の高い束密度放射パターンと第2の高い束密度放射パターンとを形成するようになっており、前記第1及び第2の放射パターンが、前記回転軸に対して軸方向で整列させられており、
(b)放射検出器が設けられており、該放射検出器が、第1のフォトダイオードチャネルと第2のフォトダイオードチャネルとを有しており、前記第1のフォトダイオードチャネルが、実質的に前記第1のパターンのみを検出し、前記第2のチャネルが、実質的に前記第2のパターンのみを検出するようになっており、前記第1及び第2のチャネルが、第1のチャネルの出力信号が第2のチャネルのチャネルとは位相が異なるようにかつ直角信号が出力されるように構成されており、
(c)放射源と放射検出器との間に配置されておりかつ回転軸に連結された放射モジュレータが設けられており、放射源と検出器とが、これらの間に軸に関して実質的に軸方向の整列が存在するようにかつ放射源と、放射検出器と、放射モジュレータとが、軸に関して互いに実質的に半径方向で整列しているように、結合されていることを特徴とする、回転軸用のエンコーダ。
【請求項6】 放射源が、放射エミッタと、回転軸を収容しかつ放射エミッタを保持するように構成された第1のブロックとを含んでおり、放射検出器が、放射センサと、回転軸を収容しかつ放射センサを保持するように構成された第2のブロックとを含んでいる、請求項5記載のエンコーダ。
【請求項7】 それぞれのブロックが通路を有しており、該通路が、個々のシャフト通路の軸線を実質的に回転軸の軸線と一致させて維持するように回転軸を収容するように形成されている、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項8】 それぞれのブロックが通路を有しており、該通路が、該通路内にブッシュを定置に保持するように形成されており、該ブッシュが、個々のシャフト通路の軸線を実質的に回転軸の軸線と一致させて維持するように回転軸を収容するように構成されている、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項9】 放射モジュレータがエンコーダディスクを含んでおり、該エンコーダディスクが回転軸を収容しかつ定置に保持するように形成された中央通路を有しており、これにより、ディスクがシャフトと同期的に回転し、ディスクの中心軸線が実質的に回転シャフトの軸線と一致するようになっている、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項10】 取付けブロックが、放射エミッタと放射センサとを各ブロック上の対応位置に保持しており、これにより、エミッタとセンサとが直接に相互整列させられるようになっている、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項11】 取付けブロックが、放射エミッタと放射センサとを各ブロック上の対応位置に保持しており、これにより、エミッタとセンサとが回転軸の軸線に対して整列させられるようになっている、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項12】 取付けブロックが、これらのブロックの相互の結合が可能となるように、対応するピンと穴とを有している、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項13】 取付けブロックが、ブロックの相互結合を確実に維持する手段を有している、請求項12記載のエンコーダ。
【請求項14】 取付けブロックが、回転軸の軸線に対するエミッタと、センサと、モジュレータとの回転位置を整列かつ固定するために互いに結合されるように構成されている、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項15】 放射モジュレータが、中央通路を有するエンコーダディスクを含んでおり、前記中央通路が、回転軸を収容しかつ定置に保持するように形成されており、ディスクの中心軸線が実質的に回転軸の軸線と一致しており、さらに放射モジュレータがコリメータを含んでおり、ブロックと、コリメータとが、回転軸の軸線に対するエミッタと、センサと、エンコーダディスクと、コリメータとの回転位置を整列させかつ固定するように互いに係合させられるように構成されている、請求項6記載のエンコーダ。
【請求項16】 ブロックには、これらブロックの相互結合が可能となるように、対応するピンと穴とが設けられており、コリメータが、コリメータが取付けブロックに結合されることを可能にするためにピンを受容するように構成されている、請求項15記載のエンコーダ。
【請求項17】 ブロックが、放射エミッタと放射センサとを各ブロック上の対応個所に保持しており、これにより、エミッタとセンサとが、相互に、かつまたエンコーダディスク及びコリメータと直接整列せしめられるようになっている、請求項15記載のエンコーダ。
【請求項18】 コリメータが、貫通形成された窓を有する窓付きプレートを備えており、これらの窓の回転位置が、回転軸の軸線に対し整列かつ固定されている、請求項15記載のエンコーダ。
【請求項19】 (a)装置の回転軸と、(b)光学式エンコーダとの組合せにおいて、光学式エンコーダに、
光源と、光センサと、光源を保持し回転軸に連結される第1取付けブロックと、光センサを保持し回転軸に連結される第2取付けブロックとが設けられており、前記光源が、第1の発光ダイオードと第2の発光ダイオードとを有しており、これらの発光ダイオードがそれぞれ、第1の高い束密度放射パターンと第2の高い束密度放射パターンとを形成するようになっており、前記光センサが、第1のフォトダイオードチャネルと第2のフォトダイオードチャネルとを備えた放射検出器を有しており、前記第1のチャネルが実質的に前記第1のパターンのみを検出し、前記第2のチャネルが実質的に前記第2のパターンのみを検出するようになっており、前記第1及び第2のチャネルが、第1のチャネルの出力信号が第2のチャネルの出力信号と位相が異なっておりこれにより直角信号が出力されるように形成されており、
光源と光センサとの間に配置されておりかつ回転軸に連結されたエンコーダディスクが設けられており、
前記ブロックが、光源と、エンコーダディスクと、センサとの間に形成された光通路がシャフトと実質的に軸方向で整列させられるように結合されていることを特徴とする、装置の回転軸と光学式エンコーダとの組合せ。
【請求項20】 ブロックが、光源と、センサと、エンコーダディスクとが軸に関して互いに対して実質的に半径方向で整列させられるように結合されている、請求項19記載の組合せ。
【請求項21】 光路が連続的に維持されるようにブロックが相互に連結されている、請求項19記載の組合せ。
【請求項22】 それぞれのブロックが、ブロックを貫通した通路を有しており、該通路が、個々の軸通路の軸線を実質的に回転軸の軸線と一致するように整列させかつ維持するように回転軸を収容するように形成されている、請求項19記載の組合せ。
【請求項23】 それぞれのブロックが、ブロックを貫通した通路を有しており、該通路が、内部にブッシュを定置に保持するように形成されており、前記ブッシュが、個々の軸通路の軸線を実質的に回転軸の軸線と一致するように整列させかつ維持するように回転軸を有用するように形成されている、請求項19記載の組合せ。
【請求項24】 ブロックが、放射源とセンサとを個々のブロック上の対応する位置に保持しており、これにより、放射源とセンサとが回転軸の軸線に対して整列させられるようになっている、請求項19記載の組み合わせ。
【請求項25】 回転軸用のエンコーダにおいて、
(a)2つの別個の高い束密度放射パターンを形成する2つの発光ダイオードを含む放射源が設けられており、該放射源が、放射発信方向に対して実質的に垂直な第1の平面を規定しており、
(b)放射検出器が設けられており、該放射検出器が、放射受信方向に対して実質的に垂直な第2の平面を規定しており、
(c)放射モジュレータが設けられており、該放射モジュレータが、放射伝播方向に対して実質的に垂直な第3の平面を規定しており、
(d)第1のブロックが設けられており、
(e)第2のブロックが設けられており、
前記放射源が、第1の整列で前記第1のブロックに固定されており、
前記放射検出器が、固定された整列で前記第2のブロックに固定されており、
前記第1のブロックは、前記第1の平面が前記第2の平面に対して実質的に平行でありかつ前記放射発信方向及び放射受信方向が実質的に同一線上に位置するように前記第2のブロックに固定されており、
前記放射モジュレータが前記回転軸に連結されており、これにより、前記放射モジュレータを前記回転軸に対して実質的に一定の半径方向整列状態で固定しており、前記第3の平面が前記回転軸の回転軸線に対して実質的に垂直方向であり、
前記第1及び第2のブロックは、前記第1及び第2のブロックから独立して前記シャフトを回転させるような形式で前記回転軸に連結されており、この場合、前記第1の平面及び前記第2の平面が前記第3の平面に対して実質的に平行であり、かつ前記放射伝播方向が前記放射発信方向及び放射受信方向に対して実質的に同一線上に位置していることを特徴とする、回転軸用のエンコーダ。
【請求項26】 前記第1のブロックが第1の軸穴を規定しており、第2のブロックが第2の軸穴を規定しており、前記回転軸が前記第1及び第2の軸穴に貫通させられており、前記第1及び第2の軸穴が前記回転軸の周囲に密に嵌合しており、これにより、前記回転軸が回転できるようにしながら前記シャフトを取り付けている、請求項25記載のエンコーダ。
【請求項27】 前記長手方向整列ツールが、前記放射源と、検出器と、モジュレータとが整列させられた後、前記エンコーダの動作の前に、取外し可能である、請求項3記載のエンコーダ。
【請求項28】 前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが、第1のプリント回路板上に設けられており、前記放射検出器が第2のプリント回路板上に設けられている、請求項1記載のエンコーダ。
【請求項29】 前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが、共通の軸線に沿って前記回転軸と軸方向で整列させられている、請求項28記載のエンコーダ。
【請求項30】 前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが、共通の軸線に沿って前記回転軸と軸方向で整列させられている、請求項5記載のエンコーダ。
【請求項31】 前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが、第1のプリント回路板上に設けられており、前記放射検出器が第2のプリント回路板上に設けられている、請求項30記載のエンコーダ。
【請求項32】 前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが第1のプリント回路板上に設けられており、前記放射検出器が第2のプリント回路板上に設けられている、請求項19記載のエンコーダ。
【請求項33】 前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが、共通の軸線に沿って前記回転軸と軸方向で整列させられている、請求項32記載のエンコーダ。
【請求項34】 2つの発光ダイオードが共通の軸線に沿って前記回転軸と市得列させられている、請求項25記載のエンコーダ。
【請求項35】 前記2つの発光ダイオードが第1のプリント回路板上に設けられており、前記放射検出器が第2のプリント回路板上に設けられている、請求項34記載のエンコーダ。」

[2]新規事項の有無
補正イ.の記載内容が願書に最初に添付した明細書中に記載されていることは明らかである。

[3]補正の目的
3-1.請求項を増加させる補正の適否
本件補正がなされる以前の特許請求の範囲は、平成16年9月3日付け手続補正書に記載されたとおりのもの(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)であり、その請求項数は34である。
特許請求の範囲はその後平成16年12月28日付け手続補正書により記載されたとおりのもの(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)となったが、その請求項数は35である。
すなわち、本件補正は請求項を増加させる補正である。尤も、請求項を増加させる補正であっても、多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や、構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合のように、補正前の請求項が実質的に複数の請求項を含むものであるときに、これを補正に際し独立の請求項とすることにより、請求項の数が増加することになるとしても、それは、実質的に新たな請求項を追加するものとはいえず、実質的には一対一の対応関係にあるということができるから、このような補正まで否定されるものではない。
しかしながら、本件補正は、補正前の請求項が実質的に複数の請求項を含むものではなく、上記の場合に該当しないものであるから、「特許範囲の減縮」に該当しないというべきであり、また、「請求項の削除」、「誤記の訂正」、「明りょうでない記載の釈明」のいずれにも該当しないことも明らかである。

3-2.補正後の請求項27
補正イ.中、請求項27(以下、「補正後の請求項27」という)に関する補正について検討する。
補正後の請求項27は、「長手方向整列ツールが、前記放射源と、検出器と、モジュレータとが整列させられた後、前記エンコーダの動作の前に、取外し可能である」エンコーダの構成を構成要件の一部とするものである。
一方、補正前の特許請求の範囲中、エンコーダを構成要件とするものは、請求項1?19、請求項32?34であるが、前記構成を構成要件の一部として含む請求項は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?19、請求項32?34中に見いだせない。
尤も、補正前の特許請求の範囲中、請求項29は「前記整列処置には、軸穴に整列工具をそう入した後に、光源・検出器・コリメータ間の連結を固定し、この固定の後、整列工具を除去する処置が含まれること」を構成要件の一部とするものであるが、該請求項に係る発明は方法の発明であって、補正後の請求項27とはカテゴリーを異にする発明であるから、目的要件の規定に違反することなく(すなわち、特許法第17条の2第3項第1号乃至第4号の規定に違反することなく)補正前の請求項29を補正後の請求項27に補正することはできない。
そうすると、補正イ中、請求項27に関する補正は、補正前の特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるとは言えず、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものであるとも言えない。

[4]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第1号乃至第4号の如何なる規定をも満足しないものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明
平成16年12月28日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1?34に係る発明は、平成16年9月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?34に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおりに記載されている。
「【請求項1】 回転軸用のエンコーダにおいて、
(a)放射源が設けられており、
(b)放射検出器が設けられており、該放射検出器が、検出のための2つのチャネルを有しており、前記チャネルが、第1のチャネルの出力信号が第2のチャネルの出力信号と位相が異なっておりこれにより直角信号が出力されるように形成されており、
(c)放射源と放射検出器との間に配置された放射モジュレータが備えられ、前記の放射源、放射検出器、放射モジュレータが直接相互に整列されていることを特徴とする、回転軸用のエンコーダ。」(以下、「本願発明」という。)。

【4】刊行物に記載された発明
原査定に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である、実願昭60-83822号(実開昭61-1126号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、「角度位置トランスジューサ」(考案の名称)に関し、図面とともに以下の記載がある。
a.「それ故、本考案の目的は、位置誤差を最小にし構造が簡単で経済的な回転部材のための位置トランスジューサを提供することである。」(明細書5頁3行?5行)
b.「トランスジューサ13はモータ16のフランジ14に固定できるプラスチック材料製のシエル20から成り、このシエルは、モータ16及びシャフト15の自由端にそれぞれ隣接しそしてシャフト15のための中央孔18,19(第2図)をそれぞれ有する2つの四辺形のシエル半部分21,22から成る。」(6頁16行?7頁2行)
c.「シエル半部分21,22は、スペーサ25により接触維持された2つのガイド24により分離されている。」(7頁5行?7行)
d.「スペーサ25はその厚さ分だけガイド24間に空間を形成し、この空間内では、シャフト15の固定ハブ31の面に溶着された金属円板30が最少の遊びを伴なつて回転する。」(7頁14行?17行)
e.「 円板30はその周縁から半径方向内側約1.5mmの所から半径方向内側へ延びる200個の位置ノッチを有し、これらのノッチは等間隔で位置した実質上矩形の窓35により構成され、・・・」(8頁18行?9頁1行)
前記記載b.?e.から、次の構成が読みとれる。
・シエル半部分21とシエル半部分22との間に配置された多数のノッチを有する金属円板30、
・多数のノッチを有する金属円板30がシャフト15の固定ハブ31の面に溶着されていること。
f.「本考案の第1の変形例によれば、シエル半部分及び円板は前述のものと同じであるが、第1図に示した3つの支持体の3対の光学電子素子たるフオトダイオード及びフオトトランジスタはTO18型の容器内に個々に収容されてマスク26の6つの窓39を通過する光束を集める。対をなす光学電子素子はシエル半部分21,22にそれぞれ固定された2つの板99,100(第10図)の回路に接続される。特に、フオトダイオード103,104,105は板即ちボード99の印刷回路101に溶着され、フオトトランジスタ106,107,108(第12図)は板100の印刷回路102に溶着される。」(19頁16行?20頁8行)
前記記載f.から、次の構成が読みとれる。
・シエル半部分21にフオトダイオード103,104,105が取り付けられていること。
・シエル半部分22にフオトトランジスタ106,107,108が取り付けられていること。
また、前記記載b.?f.から、次の構成が読みとれる。
・フオトダイオード103,104,105とフオトトランジスタ106,107,108との間にシャフト15の固定ハブ31の面に溶着された多数のノッチを有する金属円板30が配置されていること。
g.「装着操作の間、シエル20は、孔18,19(第2図)がシャフト15と同軸になるように、適当な工具(図示せず)によりシャフト15(第3図)に関してセンタリングされる。」(12頁6行?9行)
前記記載b.?g.から、
・フオトダイオード103,104,105が取り付けられているシエル半部分21及びフオトトランジスタ106,107,108が取り付けられているシエル半部分22が多数のノッチを有する金属円板30に対して相互に整列されていること、が読みとれる。
h.「 窓35のリムの反対側に、マスク26(第6図)は2群37,38の窓を有し、各群団37,38は円板30の窓35と同じ形で同じように配列された7個の窓39から成る。2つの群団37,38は窓の存在しない区分により隔てられており、第2群団38の窓39の縁部は第1群団37の窓39の対応する縁部に関して1/4ピッチ分だけ位相がずれている。」(9頁11行?18行)
i.「各支持体48?50は円板30の窓35,36の存在を感知するに適した光学電子装置を収容する。この目的のため、照射器56及び光感知器57がアーム51,52の2つの孔内に収容されており、これらの素子56,57は例えばフオトダイオードとフオトトランジスタとにより構成される。」(10頁13行?19行)
j.「支持体49,50の光学電子装置は窓35の角度ピッチに対応する周期を有する2つの周期信号を決定するために使用され、これらの信号はシャフト16の瞬間的な位置を示し、窓35の相対位相は回転方向を示す。」(11頁2行?7行)
k.「これらの増幅器150,151の出力において、90゜の位相がずれた2つの信号が得られ、これらの信号は、実質上正弦法則に従つて、円板117の種々の角度位置に応答して変わる。」(23頁8行?12行)
前記記載h.?k.から、
・フオトトランジスタは少なくとも2つの出力線路を有しており、第1の出力線路の出力信号が第2の出力線路の出力信号と位相が異なっておりこれにより90゜位相のずれた2つの出力信号が得られるように形成されていること、が読みとれる。

以上の記載事項を勘案すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。
(刊行物に記載された発明)
「角度位置トランスジューサにおいて、
フオトダイオード103,104,105が設けられており、
フオトトランジスタ106,107,108が設けられており、該フオトトランジスタ106,107,108は少なくとも2つの出力線路を有しており、第1の出力線路の出力信号が第2の出力線路の出力信号と位相が異なっておりこれにより90゜位相のずれた2つの出力信号が得られるように形成されており、
フオトダイオード103,104,105とフオトトランジスタ106,107,108との間に配置された多数のノッチを有する金属円板30が備えられ、前記のフオトダイオード103,104,105が取り付けられているシエル半部分21及びフオトトランジスタ106,107,108が取り付けられているシエル半部分22がシャフト15の固定ハブ31の面に溶着された多数のノッチを有する金属円板30に対して相互に整列されている角度位置トランスジューサ。」

【5】対比
そこで、本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
5-1. 刊行物に記載された発明における
「角度位置トランスジューサ」、「フオトダイオード103,104,105」、「フオトトランジスタ106,107,108」、「少なくとも2つの出力線路」、「90゜位相のずれた2つの出力信号」、「多数のノッチを有する金属円板30」、は、
それぞれ、本願発明における
「回転軸用のエンコーダ」、「放射源」、「放射検出器」、「検出のための2つのチャネル」、「直角信号」、「放射モジュレータ」、
に相当する。
5-2.放射源、放射検出器、放射モジュレータが「直接」相互に整列されている点について、
本願発明において、放射源、放射検出器、放射モジュレータが「直接」相互に整列されている構成が具体的にどのような構成を指すのか、請求項1の記載からは必ずしも判然としない。
また、詳細な説明を参酌しても、部材を直接に整列させることに関係する記載は、僅かに段落番号【0006】及び【0009】に見られるのみで、これらの記載を見てもなお、「直接」相互に整列されている構成が何を意味するのか、必ずしも明確に理解できるとは言えない。
一方、補正前の特許請求の範囲の請求項11には、「取付けブロックが放射エミッタと放射センサとを各ブロック上の対応位置に保持しており、それによりエミッタとセンサとが直接に相互整列せしめられる」との記載が見受けられる。
該記載に依れば、2つの部材が直接に相互整列せしめられる状態とは、一方の部材を対応する位置に取り付けた取付ブロックと他方の部材を対応する位置に取り付けた取付ブロックとを相互に整列せしめた状態を少なくとも含むと解するのが自然である。
この解釈に立って刊行物に記載された発明を見ると、
(1)フオトダイオード103,104,105と多数のノッチを有する金属円板30とは、それぞれシエル半部分21とシャフト15の固定ハブ31(いずれも「取付ブロック」に相当)に取り付けられ、かつ、相互に整列されているのであるから、フオトダイオード103,104,105と多数のノッチを有する金属円板30とは直接相互に整列されていると言える。
(2)フオトトランジスタ106,107,108と多数のノッチを有する金属円板30とは、それぞれシエル半部分22とシャフト15の固定ハブ31(いずれも「取付ブロック」に相当)に取り付けられ、かつ、相互に整列されているのであるから、フオトトランジスタ106,107,108と多数のノッチを有する金属円板30とは直接相互に整列されていると言える。
(3)既述のように、フオトダイオード103,104,105と多数のノッチを有する金属円板30、フオトトランジスタ106,107,108と多数のノッチを有する金属円板30は、いずれも直接相互に整列されているとは言えるが、フオトダイオード103,104,105とフオトトランジスタ106,107,108とが相互に整列されているとする記載が刊行物中に見あたらない以上、両者が直接相互に整列されているとは言えない。
前記(1)?(3)を考慮すると、本願発明における「放射源、放射検出器、放射モジュレータが直接相互に整列されていること」と刊行物に記載された発明における「フオトダイオード103,104,105が取り付けられているシエル半部分21及びフオトトランジスタ106,107,108が取り付けられているシエル半部分22が多数のノッチを有する金属円板30に対して相互に整列されている」ことは、共に放射源、放射検出器が放射モジュレータに対して直接相互に整列されていること、と言える。
以上のことを勘案すると、本願発明と刊行物に記載された発明との一致点、相違点は以下のとおりにまとめることができる。
(一致点)
回転軸用のエンコーダにおいて、
放射源が設けられており、
放射検出器が設けられており、該放射検出器が、検出のための2つのチャネルを有しており、前記チャネルが、第1のチャネルの出力信号が第2のチャネルの出力信号と位相が異なっておりこれにより直角信号が出力されるように形成されており、
放射源と放射検出器との間に配置された放射モジュレータが備えられ、前記の放射源、放射検出器が放射モジュレータに対して直接相互に整列されている回転軸用のエンコーダ。
(相違点)
本願発明においては、放射源と放射モジュレータ、及び放射検出器と放射モジュレータに加えて放射源と放射検出器も直接相互に整列されているのに対し、刊行物に記載された発明においては、放射源と放射モジュレータ、及び放射検出器と放射モジュレータは直接相互に整列されているとは言えるものの、放射源と放射検出器については、直接相互に整列されているとは言えない点。

【6】当審の判断
相違点について、
光学系において、光学系を構成する各光学素子同士の光軸が合致するよう調整する、所謂光軸合わせは、光学装置が所期の性能を発揮するために予め行わなければならない調整作業のひとつであり、様々な光学装置において広く実施されている技術的事項である。
そして、光学式エンコーダにおいても、発光素子と受光素子との光軸合わせを行うこと(すなわち、相互に整列させること)は普通に行われている(例えば、特開昭61-122519号公報参照)。
そうしてみると、刊行物に記載された発明において、シエル半部分21に取り付けられた放射源とシエル半部分22に取り付けられた放射検出器との光軸合わせを行うこと、すなわち、放射源と放射検出器とを直接相互に整列させることは、当業者が刊行物に記載された発明を実施する際、当然に配慮する技術的事項と言うべきものに過ぎない。
そして、本願発明の作用効果も、前記刊行物の記載及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

【7】むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、前記刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、前記のとおり、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-17 
結審通知日 2007-05-23 
審決日 2007-06-05 
出願番号 特願平7-76625
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
P 1 8・ 571- Z (G01D)
P 1 8・ 572- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 岡田 卓弥
中村 直行
発明の名称 回転軸用のエンコーダ  
代理人 山崎 利臣  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  

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