ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01K |
---|---|
管理番号 | 1166415 |
審判番号 | 不服2005-785 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-13 |
確定日 | 2007-10-19 |
事件の表示 | 特願2001-188270「赤外線放射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 63870〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は平成13年6月21日(パリ条約による優先権主張2000年6月21日、ドイツ)の出願であって、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成16年7月30日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 石英ガラス管内に配置されて炭素繊維を含むフィラメントを備えた赤外線放射装置であって、フィラメントの端部が石英ガラス管の壁を通して案内された接触部材に結合されている形式のものにおいて、フィラメント(2)が石英ガラス管(1)の壁から離隔して、かつスペースホルダー(3)を用いて石英ガラス管(1)の軸線に対してセンタリングして配置されていることを特徴とする赤外線放射装置。」 (当審註:平成16年7月30日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載全般からみて、上記の請求項1において、最初に記載された「石英ガラス管の壁」は、フィラメントの端部が貫通する石英ガラス管の部位の壁を指すものであり、2回目に記載された「石英ガラス管(1)の壁」は、フィラメントの伸びる方向に対向する石英ガラス管の部位の壁を指すものである。) 2.刊行物記載の発明・記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である特開2000-77166号公報(以下「刊行物」という。)には、以下のとおり記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】・・・さらに本発明は、赤外線放射機のための加熱エレメントであって、螺旋の形状に形成されていて、前記螺旋の端部には、電気的な接続のためのコンタクト手段が設けられている形式のものに関する。さらに本発明は、電気的な接続部が設けられた螺旋状の加熱エレメントを取り囲むケーシングを備えた赤外線放射機に関する。」 (2)「【0031】図1に示された螺旋状の放射バンドは、厚さ0.15mm、幅5mmのカーボンバンド1から成っている。カーボンバンド1の端部には、電気的な接続のための金属製の接続接点2が設けられている。カーボンバンド1によって成形された螺旋は約10mmの直径を有している。互いに隣接する巻き条の間隔は約5mmである。カーボンバンド1は炭素繊維・樹脂複合材料から製造されている。この場合、樹脂は製造方法の過程において取り除かれる。」 (3)「【0035】炭素繊維・樹脂複合材料3が軸4上で冷却された後に、炭素繊維・樹脂複合材料3の螺旋状の構造が得られる。最終的に固定するためにこのように製造された螺旋は次いで、窒素雰囲気の中で約1000℃でグロー発光処理される。埋め込み材料、この場合樹脂の大部分は気化またはガス状の構成成分に分解する。しかしこの場合、炭素繊維の螺旋状の配列は維持され、これによりグロー発光処理後には、図1に示されたような螺旋状のカーボンバンド1が得られる。」 (4)「【0036】図1の螺旋状のカーボンバンド1は、カーボンバンドの長く伸びた形状に対して、(同じ長さで)約3倍に拡大された表面積を特徴としている。これにより放射能力は向上され、これは特に1000℃よりも低い温度では顕著である。従って螺旋状のカーボンバンドは、特に波長範囲1.5?4.5μmのための本発明による赤外線放射機の製造に適している。」 (5)「【0037】次に本発明の赤外線放射機の実施例を詳しく説明する。赤外線放射機は、2.5μm前後の波長のための中赤外線放射機である。囲繞管としては、プレス封止により両側で溶融密封され排気された石英ガラス管が設けられており、この管が螺旋状のカーボンバンドを取り囲んでいる。カーボンバンドは図1に示されており、その製造方法は図1および図2につき上に詳しく記載されている。カーボンバンドには電気的な接続部が設けられており、これらの接続部は両側でのプレス封止部を介して外方に案内されている。」 (6)図面の図1には、カーボンバンド1の端部に接続接点2を設けた構成が示されている。 上記摘記事項(2)によれば、カーボンバンド1は炭素繊維・樹脂複合材料から製造されるのであり、上記摘記事項(3)によれば、製造工程によって樹脂の大部分は気化または分解され、炭素繊維の螺旋状の配列は維持されてカーボンバンド1が得られるのである。してみれば、この製造工程によって得られたカーボンバンド1は炭素繊維を含むものであることは明らかである。また、上記摘記事項(5)、(6)によれば、カーボンバンド1の両端部には接続接点2が設けられており、この接続接点2が電気的な接続部として石英ガラス管1の両端部のプレス封止部を介して外方に案内されているのであるから、カーボンバンド1の端部は、石英ガラス管のプレス封止部を通して案内された接続部に結合されていることが読み取れる。 したがって上記刊行物には次の発明(以下、「刊行物記載の発明」という)が記載されているものと認める。 <刊行物記載の発明> 「石英ガラス管内に配置されて炭素繊維を含むカーボンバンド1を備えた赤外線放射機であって、カーボンバンド1の端部が石英ガラス管のプレス封止部を通して案内された接続部に結合されている赤外線放射機。」 3.対比 本願発明1と刊行物記載の発明とを対比する。 後者の「カーボンバンド1」は前者の「フィラメント(2)」に相当し、同様に、「赤外線放射機」は「赤外線放射装置」に、「接続部」は「接触部材」に相当する。また、後者の「カーボンバンド1の端部が石英ガラス管のプレス封止部を通して案内された接続部に結合されている」ことは、同プレス封止部が石英ガラス管内部のフィラメントと管外部との間を電気的に接続する部材を貫通させる部位であることからみて、前者の「フィラメントの端部が石英ガラス管の壁を通して案内された接触部材に結合されている」ことに相当する。 してみると、両者は次の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「石英ガラス管内に配置されて炭素繊維を含むフィラメントを備えた赤外線放射装置であって、フィラメントの端部が石英ガラス管の石英ガラス管の壁を通して案内された接触部材に結合されている赤外線放射装置。」 <相違点> 本願発明1においては、フィラメント(2)が石英ガラス管(1)の壁から離隔して、かつスペースホルダー(3)を用いて石英ガラス管(1)の軸線に対してセンタリングして配置されているのに対し、刊行物1記載の発明においては当該構成を有していない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 赤外線放射装置において、フィラメントを石英ガラス管の壁から離隔して、かつ該フィラメントを支持する手段を用いて石英ガラス管の軸線に対してセンタリングして配置することは、例えば、特公昭43-17795号公報の第1頁左欄第25?31行における「管筒型ランプにおいては石英硝子・・・のごとき耐高温材料でなる直径に対し長さが著しく大である管筒型外管A内にその長手方向に発熱繊条Bを管筒内壁から離して張架し、該繊条の中間部には適当間隔を置いて支持板Cを配設してこれを支持せしめ、その発熱等により垂下して管壁に接触するのを防止し・・・」の記載、同公報第3頁右欄第4?9行における「例えば赤外線ランプとしての輻射源の均一が水平状態における使用は勿論、直立、傾斜等の取付使用においても得られ、また繊条温度の高低に関せずこれが支持機能を完全に具備せしめ得たランプとすることが出来る。」の記載、及び、同公報図面第5図における発熱繊条B1が外管Aの軸線に対してセンタリングして配置されている構成、あるいは、特開平9-17395号公報の段落【0008】における「・・・本発明による直線状フィラメントランプは、ランプ管と、ランプ管の軸方向に延在した直線状フィラメントと、フィラメントに沿って間隔を置いて設けられて、フィラメントをランプ管から離間させる複数のスペーサであって・・・」の記載、同公報段落【0012】における「各支持リングは融解させたガラスビーズ(bead)61により石英管1に固定される。・・・図4のランプでは、フィラメントは支持リング43により水平に支持され、また支持リングを管1に固定し且つ支持リングをフィラメントに固定することにより垂直に支持されている。」の記載、及び、同公報図面図4?6におけるフィラメント3が支持リングにより管1の軸線に対してセンタリングして配置されていることからみて、周知の技術である。 そして、フィラメントを支持する部材を用いることにより、フィラメントと石英ガラス管内壁との接触を防止するという作用は、フィラメントの材質と関係せずに成立するものであることは明らかであるから、刊行物記載の発明に対し赤外線放射装置における上記周知の技術を適用することにより相違点に係る技術事項を得ることは当業者が容易に想到し得たものといえる。 そして、本願発明1の作用効果は、刊行物に記載の発明及び周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。 5.むすび よって、本願請求項1に係る発明は、上記刊行物に記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし16に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-18 |
結審通知日 | 2007-05-23 |
審決日 | 2007-06-05 |
出願番号 | 特願2001-188270(P2001-188270) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01K)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村井 友和 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
居島 一仁 上原 徹 |
発明の名称 | 赤外線放射装置 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | ラインハルト・アインゼル |
代理人 | 矢野 敏雄 |