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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1166416
審判番号 不服2005-1329  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-21 
確定日 2007-10-19 
事件の表示 特願2000-340551「フレキシブル配線基板」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月24日出願公開、特開2002-151806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年11月8日の出願であって、その請求項1?4に係る発明は、特許法第17条の2の規定に基づき平成17年2月18日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面(以下、「本願明細書及び図面」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項2に記載された発明(以下、「本願発明2」という。)は、請求項1に記載された事項を引用し、次のとおりである。
「【請求項2】請求項1記載のフレキシブル配線基板において、前記第2の接触部には、前記第2の接触部の先端から前記第3の方向で前記一辺側へ延在しかつ前記第2の配線パターンよりも前記第1及び第2の方向における幅寸法が狭く形成されて前記ベース板の板面に第2の幅狭部が配設されており、該第2の幅狭部が少なくとも前記第1の接触部間で前記第1の接触部に対して前記第1及び第2の方向で間隔をもって位置していることを特徴とするフレキシブル配線基板。」
そして、請求項1に記載された事項は、次のとおりである。
「【請求項1】絶縁性のベース板と、該ベース板の一辺に平行な第1の方向及び該第1の方向とは逆向きの第2の方向で少なくとも前記一辺側の前記ベース板の板面に複数を配設した導電性の第1の接触部と、前記第1及び第2の方向を直交する第3の方向及び該第3の方向とは逆向きの第4の方向で前記第1の接触部から前記第4の方向へ位置ずれし前記ベース板の板面に複数を配設した導電性の第2の接触部と、前記第1の接触部に接続し前記第4の方向へ延在し前記ベース板の板面に配設した導電性の第1の配線パターンと、前記第2の接触部に接続し前記第4の方向へ延在し前記ベース板の板面に配設した導電性の第2の配線パターンとを有し、
前記第1の配線パターンを有する前記第1の接触部の複数と前記第2の配線パターンを有する前記第2の接触部の複数とが前記第1及び第2の方向で接近した状態で交互に配列されており、前記第1及び第2の接触部が前記第1及び第2の方向で前記第1及び第2の配線パターンの幅寸法よりも幅広な寸法に形成されており、前記第2の接触部に前記第1及び第2の方向で接近して対向している前記第1の配線パターンの一部分を前記第1及び第2の方向で幅寸法を狭く形成した第1の幅狭部を有しているフレキシブル配線基板において、
前記第1の接触部は、前記第1の幅狭部に接続している接続部分が前記第4の方向で前記第1の幅狭部側へ向かって先細り状に形成した第1の先細り状部を有し、前記第2の接触部は、前記第3の方向で先端部分が先端に向かって先細り状に形成した第2の先細り状部を有し、前記第1及び第2の先細り状部は、前記第3及び第4の方向で前記第1及び第2の方向に平行な一軸仮想線を含み互いに重なりに近い状態で接近しており、かつ第1及び第2の方向で接近して配設されていることを特徴とするフレキシブル配線基板。」

[2]引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平2-56886号(実開平4-15872号)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物」という。)には、下記の事項が記載されている。

(a)「電子部品等に複数並設された端子に配線パターンの電極を接続して該電子部品等と配線パターンとを導通する回路基板に於て、左右に並設された端子に接続する電極を交互に前後方向へ変位して巾広に形成したことを特徴とする回路基板に於ける電極パターン。」(実用新案登録請求の範囲)、
(b)実施例として、「(10)はFPC(フレキシブルプリント回路基板)であつて、第1図に示すよう、該FPC(10)には配線パターン(11)(11)・・・が印刷されてあり、該FPC(10)の端部(12)には配線パターン(11)(11)・・・の電極(13)(13)・・・,(13a)(13a)・・・が露出されている。これら電極(13)(13)・・・,(13a)(13a)・・・は交互に配設され、電極(13)(13)・・・はFPC(10)の配線パターン(11)側(第1図中上側)を巾広に形成して接触部(14)(14)・・・を設け、且つ、FPC(10)の先端部側(第1図中下側)の巾を細く延設している。一方、電極(13a)(13a)・・・は前記配線パターン(11)(11)・・・より電極(13)(13),(13)(13),・・・の接触部(14)(14),(14)(14)・・・間を細巾に形成してFPC(10)の先端部側へ延設され、前記電極(13)(13)・・・の細巾に形成された先端部側の延設部(15)(15),(15)(15),・・・間にて該電極(13a)(13a)・・・の先端部側を巾広形成し、接触部(14a)(14a)・・・を設けている。従って、FPC(10)の左右に並設された電極(13)(13)・・・,(13a)(13a)・・・は交互に前後方向へ変位して巾広の接触部(14)(14)・・・,(14a)(14a)・・・を形成している。そして、該接触部(14)(14),(14)(14)・・・,(14a)(14a),(14a)(14a)・・・間の延設部(15a)(15a),(15)(15),・・・を細巾に形成している。前記FPC(10)は第2図及び第3図に示すFPC用のコネクタ(16)に挿入して、該コネクタ(16)を装着したPC基板(17)の回路パターン(図示せず)とFPC(11)の配線パターン(11)(11)・・・と導通する。」(第4頁8行?第5頁12行)が記載されている。
(c)第1図のFPCの一部切欠平面図には、FPC(10)の先端部の辺と直交する方向に延在する配線パターン(11)が多数、該辺に平行な方向に接近した状態で設けられ、各配線パターン(11)先端には、二種類の電極(電極(13)と電極(13a)と)が上記辺に沿って交互に設けられ該辺に平行な方向に配列され、各電極(13)の接触部(14)は、配線パターン(11)より巾広に形成され、配線パターン(11)より細巾に形成された隣接する電極(13a)の部分に接近して位置し、各電極(13)の先端部側の延設部(15)は配線パターン(11)より細巾に形成され、配線パターンより巾広に形成された両側に隣接する電極(13a)の接触部(14a)間に、該接触部(14a)に対して上記辺に平行な方向で間隔をもって位置している点、及び、上記接触部(14a)は、その細巾に形成された部分(15a)に接続する部分が、該部分(15a)側へ向かって先細り状に形成された先細り状部を有し、上記接触部(14)は、その細巾に形成された延設部(15)側へ向かって先細り状に形成された先細り状部を有し、両先細り状部は、上記辺と直交する方向で互いに接近しており、かつ上記先端部の辺に平行な方向で接近して配設されている点が図示されている。

[3]対比・判断
摘記(a)によれば、引用刊行物には、電子部品等に複数並設された端子に配線パターンの電極を接続して該電子部品等と配線パターンとを導通する回路基板に於て、左右に並設された端子に接続する電極を交互に前後方向へ変位して巾広に形成した、回路基板に於ける電極パターンが記載されており、当該電極パターンは回路基板の一部の構成であるから、当該電極パターンを有する回路基板が記載されているともいえる。
また、摘記(b)によれば、上記回路基板は、フレキシブルプリント回路基板であって、該回路基板には、多数の配線パターンが印刷されてあり、該回路基板の端部には、各配線パターンの先端側に二種類の電極(電極(13)と電極(13a)と)が交互に設けられ、電極(13)は、配線パターン側に巾広に形成した接触部を有し、且つ、先端側の巾を細巾に延設し、一方、電極(13a)は、電極(13)の接触部間の部分が配線パターンより細巾に形成され、電極(13)の細巾の延設部間にて先端部側に巾広の接触部が形成され、従って、該回路基板の左右に並設された電極(13)と電極(13a)とは、交互に前後方向へ変位して巾広の接触部を有し、該接触部間に位置する各電極の部分は細巾に形成されている。
また、摘記(c)によれば、上記配線パターン(11)は、上記回路基板の先端部の辺と直交する方向に延在して、該辺に平行な方向に接近した状態で多数設けられ、各配線パターン(11)先端には、二種類の電極(電極(13)と電極(13a)と)が上記辺に沿って交互に設けられ、該辺に平行な方向に配列され、各電極(13)の接触部は、その配線パターンよりも巾広に形成され、隣接する電極(13a)の配線パターンより細巾に形成された部分に接近し、各電極(13)の先端部側の延設部は、その配線パターンより細巾に形成され、両側に隣接する電極(13a)の配線パターンよりも巾広に形成された両接触部間に、該両接触部に対して上記辺に平行な方向で間隔をもって位置しており、また、各電極(13a)の接触部は、その細巾に形成された部分側へ向かって先細り状に形成された先細り状部を有し、各電極(13)の接触部は、その細巾に形成された延設部側へ向かって先細り状に形成された先細り状部を有し、両先細り状部は、上記辺と直交する方向で互いに接近しており、かつ上記辺に平行な方向で接近して配設されている。

これらの事項を総合すると、引用刊行物には、「フレキシブルプリント回路基板の先端部の辺に平行な方向に接近した状態で、該辺と直交する方向に延在する多数の配線パターンが設けられ、各配線パターンの先端には、二種類の電極(電極(13)と電極(13a)と)が上記辺に沿って交互に設けられ、該辺に平行な方向に配列され、
電極(13)は、その配線パターンより巾広に形成された接触部を配線パターン側に有し、該接触部は、隣接する電極(13a)の配線パターンより細巾に形成された部分に接近し、且つ、電極(13)の配線パターンより細巾に形成された延設部を先端部側に有し、該延設部は、両側に隣接する電極(13a)の配線パターンより巾広に形成された両接触部間で該両接触部に対して、上記辺に平行な方向で間隔をもって位置しており、したがって、上記辺に平行な方向に交互に設けられた電極(13)と電極(13a)とは、該辺と直交する方向へ交互に変位して巾広の接触部を有し、交互に隣接する該接触部間に離間して、各電極の細巾に形成された部分又は延設部が交互に位置しており、
また、電極(13a)の接触部は、その細巾に形成された部分側へ向かって先細り状に形成された先細り状部を有し、電極(13)の接触部は、その細巾に形成された延設部側へ向かって先細り状に形成された先細り状部を有し、両先細り状部は、上記辺と直交する方向で互いに接近しており、かつ該辺に平行な方向で接近して配設されているフレキシブルプリント回路基板」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

そして、本願発明2と引用発明とを対比すると、引用発明における「フレキシブルプリント回路基板」、「フレキシブルプリント回路基板」の基板部分、「フレキシブルプリント回路基板の先端部の辺」は、それぞれ本願発明2における「フレキシブル配線基板」、「絶縁性のベース板」、「ベース板の一辺」に相当する。
また、引用発明における「(フレキシブルプリント回路基板の先端部の)辺に平行な方向」、「(同)辺と直交する方向」は、それぞれ本願発明2における「ベース板の一辺に平行な第1の方向及び該第1の方向とは逆向きの第2の方向」、「第1及び第2の方向を直交する第3の方向及び該第3の方向とは逆向きの第4の方向」に相当し、該「第3の方向」と「第4の方向」とは、それぞれ引用発明における上記「(同)辺と直交する方向」のうちの、配線パターンの「配線パターンの先端」に向かう方向と、その逆の方向とに該当するといえる。
また、引用発明における「電極(13)」、「電極(13a)」、先端に電極(13)を設けた「配線パターン」、先端に電極(13a)を設けた「配線パターン」、「電極(13)の配線パターンより巾広に形成された接触部」、「電極(13a)の配線パターンより巾広に形成された接触部」、「電極(13)の配線パターンより細巾に形成された延設部」、「電極(13a)の配線パターンより細巾に形成された部分」は、それぞれ本願発明2における「第2の接触部」及び「第2の幅狭部」を併せたもの、「第1の接触部」及び「第1の幅狭部」を併せたもの、「第2の配線パターン」、「第1の配線パターン」、「第2の接触部」、「第1の接触部」、「第2の幅狭部」、「第1の幅狭部」に相当する。
また、引用発明における「電極(13)の接触部・・の細巾に形成された延設部側へ向かって先細り状に形成された先細り状部」、「電極(13a)の接触部・・の細巾に形成された部分側へ向かって先細り状に形成された先細り状部」は、それぞれ本願発明2における「第2の先細り状部」、「第1の先細り状部」に相当する。
してみると、両者は、「絶縁性のベース板と、該ベース板の一辺に平行な第1の方向及び該第1の方向とは逆向きの第2の方向で少なくとも前記一辺側の前記ベース板の板面に複数を配設した導電性の第1の接触部と、前記第1及び第2の方向を直交する第3の方向及び該第3の方向とは逆向きの第4の方向で前記第1の接触部から前記第4の方向へ位置ずれし前記ベース板の板面に複数を配設した導電性の第2の接触部と、前記第1の接触部に接続し前記第4の方向へ延在し前記ベース板の板面に配設した導電性の第1の配線パターンと、前記第2の接触部に接続し前記第4の方向へ延在し前記ベース板の板面に配設した導電性の第2の配線パターンとを有し、
前記第1の配線パターンを有する前記第1の接触部の複数と前記第2の配線パターンを有する前記第2の接触部の複数とが前記第1及び第2の方向で接近した状態で交互に配列されており、前記第1及び第2の接触部が前記第1及び第2の方向で前記第1及び第2の配線パターンの幅寸法よりも幅広な寸法に形成されており、前記第2の接触部に前記第1及び第2の方向で接近して対向している前記第1の配線パターンの一部分を前記第1及び第2の方向で幅寸法を狭く形成した第1の幅狭部を有しているフレキシブル配線基板において、
前記第1の接触部は、前記第1の幅狭部に接続している接続部分が前記第4の方向で前記第1の幅狭部側へ向かって先細り状に形成した第1の先細り状部を有し、前記第2の接触部は、前記第3の方向で先端部分が先端に向かって先細り状に形成した第2の先細り状部を有し、前記第1及び第2の先細り状部は、前記第3及び第4の方向で互いに接近しており、かつ第1及び第2の方向で接近して配設されているフレキシブル配線基板であって、前記第2の接触部には、前記第2の接触部の先端から前記第3の方向で前記一辺側へ延在しかつ前記第2の配線パターンよりも前記第1及び第2の方向における幅寸法が狭く形成されて前記ベース板の板面に第2の幅狭部が配設されており、該第2の幅狭部が少なくとも前記第1の接触部間で前記第1の接触部に対して前記第1及び第2の方向で間隔をもって位置しているフレキシブル配線基板。」の点で一致し、次の点で相違する。
(イ)第1及び第2の先細り状部は、本願発明2では、第3及び第4の方向で第1及び第2の方向に平行な一軸仮想線を含み互いに重なりに近い状態で接近しているのに対し、引用発明では、第3及び第4の方向で互いに接近しているものの、第1及び第2の方向に平行な一軸仮想線を含み互いに重なりに近い状態で接近していることが明らかでない点。

そこで、相違点(イ)について以下検討する。
フレキシブルプリント回路基板の先端部の辺に沿って多数の電極(導電部、端子)を設け、それらの巾広の接触部を該辺と直交する方向へ交互に変位させているものにおいて、各接触部に先細り状部を、該回路基板の先端部の辺に沿う方向に平行な一軸仮想線を含むように互いに重なりに近い状態で接近させて交互に逆向きに設けることは、次の周知例1、2に記載されるように、本願出願前周知の技術であると認められる。

周知例1:実願昭61-106524号(実開昭63-12872号)のマイクロフイルム
第1図が示されるとともに、「接触部4が導電部2の他の部分5より幅広く形成されてなるプリント基板6に於て、隣合う接触部4はプリント基板6の差込み・抜出し方向(第1図の場合は上下方向)に交互に逆向きに幅を狭くした狭幅部7が形成され且隣合う狭幅部7が相互に隣の狭幅部7の位置まで入込む(第1図のLの分だけオーバーラップする)ように配置されてなる」(第4頁13?20行)、
「本考案のプリント基板は・・・・フレキシブルプリント基板でもよい。」(第6頁3?5行)が記載されている。
周知例2:特開平5-152039号公報
図7、図8が示されるとともに、「金属端子30′は、コネクタの挿入穴に挿入される先端側の部分において、各金属端子30′毎に長手方向に向かってその幅を広くした部分aと狭くした部分bを交互に互い違いに千鳥状に組み合わせて構成されている。」段落【0036】)、
「この実施例に用いる金属端子30″も、コネクタの挿入穴に挿入される先端側の部分において、各金属端子30″毎に長手方向に向かってその幅を広くした部分aと狭くした部分bを交互に互い違いに千鳥状に組み合わせて構成されている。」(段落【0039】)と記載されており、
図7、図8には、各金属端子30′、又は30″毎に長手方向に向かってその幅を広くした部分aの交互の先細り状部が互い違いに入り込み、コネクタへの挿入方向にオーバーラップしている点が示されている。

してみると、引用発明のフレキシブルプリント回路基板においても、第1及び第2の先細り状部(電極(13)及び電極(13a)の接触部の先細り状部)を、第3及び第4の方向(辺と直交する方向)で第1及び第2の方向(辺に平行な方向)に平行な一軸仮想線を含むように互いに接近させて設けることは、当業者が設計上適宜に採用し得ることであるといえる。
また、フレキシブルプリント回路基板の強度の弱い部分の屈曲、断線等が生じないように、その強度の弱い部分に導体パターンを設けて補強すること、或いは、その強度の弱い部分の導体パターンを補強することは、次の周知例3?5に記載されるように、本願出願前周知の技術であると認められる。
周知例3:実願昭57-35114号(実開昭58-138365号)のマイクロフイルム
第2図が示されるとともに、「補強パターン7は導体5よりも幅を大きくとり強度を大きくしFPCのちぎれが導体5まで至るのを防ぐ機能を有する。ダミーパッド6は・・・接続パッド4と同じ幅のものを2本設けており、接続パッド4の剥離,断線を2重に防止している。」(第2頁19行?第3頁4行)と記載されている。
周知例4:特開平8-46310号公報
「接続端子露出部と被覆部との境界上において、先端側の接続端子からの引き出し線をFPC内の最小幅よりも広く構成しているため断線に対する強度を増すことができる。従って補強板などを必要としない安価なFPCを用いることができる。
【0035】また、電気接続部の先端側と根元側のそれぞれの接続端子から延出される引き出し線の線幅は、接続端子露出部と被覆部との境界上において、徐々に変化させているため、それぞれの接続端子から延出される引き出し線に加わる応力を分散かつ均一化させることができる。従って、繰り返しの屈曲に対しても、断線のしにくい構造とすることができるため、補強板などを必要としない安価なFPCを用いることができる。」(段落【0034】【0035】)と記載されている。
周知例5:特開平4-137688号公報
第1図(b)、第4図が示されるとともに、「実施例2」として、
「第1図(b)は実施例2を示し、第4図に示した従来例に対応する。
本実施例は、信号パターン3gの細線パターン部に食い込むように、コモンパターン3aの斜線で示す拡張導電パターン部3a’を基板1上に設けたもので、基板1の補強を拡張導電パターン部3a’により図っている。」(第3頁左上欄20行?右上欄6行)、
[発明の効果]として、「本発明によれば、フレキシブルプリント基板の曲げ剛性を高めると共に均一化し、細線パターン部への応力集中を緩和して断線事故を未然に防止することができる。」(第4頁右上欄7?11行)と記載されている。

そうすると、引用発明のフレキシブルプリント回路基板も、第1及び第2の先細り状部(電極(13)及び電極(13a)の接触部の先細り状部)を、第3及び第4の方向(辺と直交する方向)で第1及び第2の方向(辺に平行な方向)に平行な一軸仮想線を含むように互いに接近させて設ければ、該接触部付近の補強にもなり、該接触部付近の屈曲、断線等を防ぎ得ることは、上記周知技術から当業者が普通に予測できることであるから、引用発明において、第1及び第2の先細り状部を、第3及び第4の方向で第1及び第2の方向に平行な一軸仮想線を含み互いに重なりに近い状態で接近させることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

また、相違点(イ)に係る本願発明2の発明特定事項によってもたらされる効果について検討するに、第1及び第2の先細り状部を接近させて設けることにより、フレキシブルプリント回路基板の上記の部分を補強でき、その屈曲、断線等を防ぎ得ることは、上述したように、上記周知技術から当業者が普通に予測できる程度のものであるから、格別なものとはいえない。
更にまた、本願明細書には、「図3及び図4に示したフレキシブル配線基板においては、図9によって説明したフレキシブル配線基板のような屈曲が行われたとき、第1の幅狭部11bの近傍に第2の接触部12が配設されており、第1の接触部11の近傍に第2の幅狭部12bが配設されているので、第2の接触部12または第2の幅狭部12bによって屈曲に対する強度が高くなり、第1の幅狭部11bが狭い部分であるにもかかわらず断線しにくい構成となる。」(段落【0034】)、「本発明のフレキシブル配線基板では、フレキシブル配線基板に屈曲がなされたたとき、第1の幅狭部の近傍に第2の接触部が配設されており、第1の接触部の近傍に第2の幅狭部が配設されているので、第2の接触部または第2の幅狭部によって屈曲に対する強度が高くなり、特に、第1の幅狭部が狭い部分であるにもかかわらず断線しにくい構成となる」(段落【0041】)と記載されている。
同記載によれば、引用発明の「該接触部は、隣接する電極(13a)の配線パターンより細巾に形成された部分に接近し、且つ、その配線パターンより細巾に形成された延設部を先端部側に有し、該延設部は、両側に隣接する電極(13a)の配線パターンより巾広に形成された両接触部間で該両接触部に対して、上記辺に平行な方向で間隔をもって位置しており、したがって、上記辺に平行な方向に交互に設けられた電極(13)と電極(13a)とは、該辺と直交する方向へ交互に変位して巾広の接触部を有し、交互に隣接する該接触部間に離間して、各電極の細巾に形成された部分又は延設部が交互に位置」するという、本願発明2と同様の構成によって、フレキシブルプリント回路基板の上記の部分を補強でき、その屈曲、断線等を防ぎ得るという効果は、引用発明において既に得られているといえるので、相違点(イ)に係る発明特定事項によって上記の効果がもたらされたとすることもできない。

したがって、本願発明2は、引用刊行物に記載された発明、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明2は、引用刊行物に記載された発明、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明2が特許を受けることができないため、本願の請求項1、3、4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-21 
結審通知日 2007-08-22 
審決日 2007-09-05 
出願番号 特願2000-340551(P2000-340551)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
小川 武
発明の名称 フレキシブル配線基板  
代理人 池田 憲保  

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