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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200680198 | 審決 | 特許 |
無効200580341 | 審決 | 特許 |
無効200680029 | 審決 | 特許 |
無効200580033 | 審決 | 特許 |
無効200680032 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 C10M |
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管理番号 | 1166530 |
審判番号 | 無効2006-80168 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-08-31 |
確定日 | 2007-10-19 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3529467号発明「潤滑油組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3529467号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
I 手続の経緯 本件特許第3529467号に係る発明についての出願は、平成7年1月30日の出願であって、平成16年3月5日に特許権の設定登録がなされ、これに対して、その請求項1に係る発明の特許について審判請求人:インフィニューム インターナショナル リミテッド(以下、「請求人」という。)より、平成18年8月31日に無効審判の請求がなされた。これに対して、平成18年9月19日付けで被請求人:株式会社ADEKA(以下、「被請求人」という。)に対し請求書副本を送達し、答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もなかったものである。 II 本件発明 本件特許に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める(以下、請求項1に係る特許発明を、「本件特許発明」という。) 「【請求項1】 潤滑油基油100重量部に、(a)油溶性有機モリブデン化合物0.01?5重量部と(b)下記〔化1〕の一般式(I)で表されるフェノール系酸化防止剤0.01?5重量部とを添加したことを特徴とする潤滑油組成物。 【化1】 」 III 請求人の主張 請求人は、本件特許第3529467号についての特許を無効にする、審判費用は、被請求人の負担とする旨の審決を求めて、証拠方法として甲第1号証?甲第11号証を提出して、大略以下のような無効理由を主張している。 請求人が主張する無効理由は、下記のとおりである。 (ア)無効理由1 本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (イ)無効理由2 本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (ウ)無効理由3 本件特許発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第6号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 記 (1)甲第1号証:米国特許第5,346,635号明細書(Cl.252) (2)甲第2号証:"Phenolic antioxidant Irganox L 135"、Additives for Lubricants、1994年 (3)甲第3号証:Roger G1yde氏の宣誓供述書 (4)甲第4号証:"IRGANOX L 135 PHENOLIC ANTIOXIDANT"、FLUIDS AND ADDITIVES FOR LUBRICANTS、1991年6月、"IRGANOX L 135 AO for gasoline engine oils"、FLUIDS AND ADDITIVES FOR LUBRICANTS、1991年4-6月、及び、"IRGANOX L 135 AO for Diesel engine oils"、FLUIDS AND ADDITIVES FOR LUBRICANTS、1991年6月 (5)甲第5号証:Ian Peter Field氏の宣誓供述書 (6)甲第6号証:特開平3-269094号公報 (7)甲第7号証:特開昭63一223094号公報 (8)甲第8号証:特開昭63一223092号公報 (9)甲第9号証:"IRGANOX L 135"、MATERIAL SAFETY DATA SHEET DIRECTIVE 91/155/EEC CIBA-GEIGY LIMITED BASLE SWITZERLAND ADDITIVES DIVISION、1996年1月2日 (10)甲第10号証:"Benzenepropanoic acid, 3,5-bis(1,1-dimethylethyl)-4-hydroxy-,C7-9-branched alkyl esters",[CAS online]、1990年3月2日、[2006年検索] (11)甲第11号証:米国特許第5,218,008号明細書(Cl.521) IV 当審の判断 上記IIIの(イ)無効理由2の請求人の主張、すなわち、本件特許発明が甲第1号証に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとの主張が妥当であるか否かについて検討する。 1.各証拠の記載事項 (1)甲第1号証 甲第1号証には、以下の記載がある(摘記は和訳で示す。)。 (摘記1-1) 「潤滑油及び潤滑油濃厚物は自動車用途で種々の機能を発揮する。最も重要な機能の1つは移動する機械の摩擦及び摩耗を低減することである。」(第1欄第20行?第23行) (摘記1-2) 「本発明は、主にパラフィン系油のような標準潤滑油組成物をベースとする潤滑油用の改善された潤滑油組成物又は濃厚添加剤を提供する。基油には以下の成分が添加される:・・・ヒンダードフェノール系酸化防止剤。 本発明の第1の組成物は、リンを含まない、低灰組成物であり、上述のベース組成物に添加された以下の成分を含む:・・・モリブデンジアルキルカルバメート摩擦低減剤・・・。」(第2欄第57行?第3欄第8行) 「好ましくは、酸化防止剤は、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルヒドロ桂皮酸アルキルエステルのようなヒンダードフェノール系酸化防止剤である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、最終のリンを含まない、低灰又は軽灰潤滑油中に約0.5%?約5%の量で存在する。」(第5欄第28行?第33行) (摘記1-3) 「さらに、好ましい第1の実施態様は、最終処方物の約0.5%の量で存在する摩擦低減剤、好ましくはモリブデンジアルキルカルバメートのような有機モリブデン複合体を含む。」(第5欄第44行?第48行) (摘記1-4) 「10I 酸化防止剤 3,5ジ-tert-ブチル-4 ヒドロキシルヒドロ桂皮酸アルキルエステル Irganox L135(チバガイギー) 11J 摩擦低減剤 有機モリブデン複合体(モリブデンジアルキル カルバメート)」(第10欄表1) (摘記1-5) 「実施例1 低灰エンジン油1(LAO-1) 本明細書に記載された方法に従ってLAO-1を調製した。LAO-1は以下の成分を含む: 約80%の基油(化合物1);・・・1%の酸化防止剤(10Iの化合物);0.5%の摩耗低減剤(11Jの化合物)・・・。LAO-1は、・・・摩擦低減剤と同様の反摩耗成分を含んでいた。」(第10欄第39行?第62行) (2)甲第10号証 (摘記2-1) 甲第10号証には、3,5-ビス(1,1-ジメチルーエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸 C7‐C9分岐アルキルエステル(CAS番号125643‐61‐0)が1990年3月2日に登録されたことが記載されている。 (3)甲第11号証 甲第11号証には、以下の記載がある(摘記は和訳で示す。)。 (摘記3-1) 「Irganox TM L‐135と表される酸化防止剤は、市販グレードの、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ桂皮酸とC7‐C9アルコール混合物とのエステルである。」(第11欄第18行?第21行) 2.無効理由2について (1)甲第1号証に記載された発明 本件特許出願前に頒布されたことが明らかな甲第1号証の実施例1には、約80%の基油、0.5%の摩擦低減剤11J及び1%の酸化防止剤10Iを含む低灰エンジン油1(LAO-1)が記載されている(摘記1-5)。また、同号証には、摩擦低減剤11Jが有機モリブデン複合体(モリブデンジアルキルカルバメート)であり、フェノール系酸化防止剤10Iが3,5ジ-tert-ブチル-4 ヒドロキシルヒドロ桂皮酸アルキルエステル Irganox L135(チバガイギー)であることが記載されている(摘記1-4)。 したがって、同号証には、「基油80%に対して、(a)摩擦低減剤として有機モリブデン複合体(モリブデンジアルキルカルバメート)を0.5%、(b)酸化防止剤として3,5ジ-tert-ブチル-4 ヒドロキシルヒドロ桂皮酸アルキルエステルであるIrganox L135を1%を添加した低灰エンジン油1(LAO-1)」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (2)本件特許発明と引用発明との対比・判断 (2-1)本件特許発明と引用発明との一致点・相異点 甲第1号証の「本発明は、主にパラフィン系油のような標準潤滑油組成物をベースとする潤滑油用の改善された潤滑油組成物又は濃厚添加剤を提供する。」(摘記1-2)及び「LAO-1は、・・・摩擦低減剤と同様の反摩耗成分を含んでいた。」(摘記1-5)との記載を考慮して本件特許発明と引用発明とを対比すると、後者の「基油」は、前者の「潤滑油基油」に相当し、後者の「低灰エンジン油1」は、前者の「潤滑油組成物」に相当する。 また、引用発明において、有機モリブデン複合体(モリブデンジアルキルカルバメート)は、低灰エンジン油1に溶解するので油溶性であり、基油、有機モリブデン複合体及び3,5ジ-tert-ブチル-4 ヒドロキシルヒドロ桂皮酸アルキルエステル Irganox L135の含有量を重量部に換算して表すと、基油約100重量部に対して、有機モリブデン複合体が0.625重量部(0.5/80×100)、3,5ジ-tert-ブチル-4 ヒドロキシルヒドロ桂皮酸アルキルエステル Irganox L135が1.25重量部(1/80×100)添加されていることになる。 次に、本件特許出願前に頒布されたことが明らかな甲第11号証には、「Irganox TM L‐135と表される酸化防止剤は、市販グレードの、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ桂皮酸とC7‐C9アルコール混合物とのエステルである。」との記載がある(摘記3-1)から、これと上記摘記1-4の記載からみて、引用発明における「3,5ジ-tert-ブチル-4 ヒドロキシルヒドロ桂皮酸アルキルエステル Irganox L135」は、「3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ桂皮酸C7‐C9アルキルエステル」であると解される。 したがって、本件特許発明と引用発明とは、 「潤滑油基油約100重量部に、(a)油溶性有機モリブデン化合物0.01?5重量部と(b)下記の一般式(I)’で表されるフェノール系酸化防止剤0.01?5重量部とを添加したことを特徴とする潤滑油組成物。 (式中、R1は炭素数1?4のアルキル基を示し、R2は炭素数 6?14のアルキル基を示す。)」 で一致し、 (A)本件特許発明では、一般式(I)’で表されるフェノール系酸化防止剤について、R2が「炭素数6?14の分枝のアルキル基」であるのに対して、引用発明では、アルキル基の炭素数は重複するが、そのアルキル基が分枝しているものであるか否か不明な点、 で相違するものと認められる。 (2-2)相違点(A)についての判断 甲第10号証は、化学物質検索のデータベースとして当業者に周知のCAS onlineの検索結果であるが、そこには、本件特許出願前の1990年3月2日に3,5-ビス(1,1-ジメチルーエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7‐C9分岐アルキルエステルがCAS番号125643‐61‐0として登録されたことが記載されている(摘記2-1)。そして、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7‐C9分岐アルキルエステルは、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルヒドロ桂皮酸C7‐C9分岐アルキルエステルと同義である。 また、同化合物が含まれる3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシベンゼン-1-アルキル化合物は、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤として周知のものである。 してみれば、甲第10号証に記載された分枝型アルキルエステルが酸化防止剤としての機能を有することは当業者が直ちに想到することであるから、引用発明において、一般式(I)’で表されるフェノール系酸化防止剤として、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルヒドロ桂皮酸C7‐C9分岐アルキルエステルを使用すること、すなわち、一般式(I)’で表される化合物において、R2をC7?C9アルキル基であって、このアルキル基として分枝のあるものを選択することは当業者が容易になし得ることである。 そして、本件特許発明の効果についてみると、本件特許明細書には、フェノール系酸化防止剤として、本件特許発明に該当する数種類の酸化防止剤と比較の酸化防止剤である4,4’-メチレンビス(2,6-ジ第三ブチルフェノール)とを用い、摩擦係数及び酸化に関して劣化前と劣化後とについて比較した試験結果が示されている。 しかしながら、同明細書には、化合物としてビス型のフェノール系酸化防止剤と分枝型のフェノール系酸化防止剤との比較が例示されているだけであって、分枝型と直鎖型との比較がなされているわけではなく、分枝型のものが直鎖型のものに比べて作用効果が優れているとはいえない。 (3) まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証、第10号証及び第11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 V むすび 本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたもので、特許を受けることができないものであるから、他の無効理由を検討するまでもなく、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-21 |
結審通知日 | 2007-08-23 |
審決日 | 2007-09-06 |
出願番号 | 特願平7-13054 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Z
(C10M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山本 昌広 |
特許庁審判長 |
原 健司 |
特許庁審判官 |
石井 淑久 岩瀬 眞紀子 |
登録日 | 2004-03-05 |
登録番号 | 特許第3529467号(P3529467) |
発明の名称 | 潤滑油組成物 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 平山 孝二 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 山崎 一夫 |
代理人 | 浅井 賢治 |