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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1166552 |
審判番号 | 不服2006-7942 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-26 |
確定日 | 2007-10-26 |
事件の表示 | 特願2001-229361「固定子に誘導子を有する電動機駆動システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月20日出願公開、特開2003- 88083〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の発明 本願は、平成13年7月30日(国内優先権主張 平成12年7月28日及び平成13年7月3日)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年5月24日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「環状磁性体から放射状に外側に設けられた各主極に巻線が巻かれ、それら各主極の先端に複数の磁歯から成る誘導子を有する固定子と、エヤギャップを保って内周回転方向にN極、S極が交互に配置された外転型永久磁石回転子とが対向する回転電機において、 前記の各主極に巻かれる巻線を3相巻線とし、また、前記主極の数を3m個とし、さらに、前記回転子の外周部又は側面部に、タイヤ、ドラム、テーブル等の外転体を装着したことを特徴とする電動機駆動システム。 但し、mは1相当たりの固定子主極数で2、3、4のいずれかの数とする。」 なお、上記手続補正書による特許請求の範囲についての補正は、旧請求項2を削除すると共に、他の請求項との整合性を図るものであるから、請求項の削除及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認める。 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-285891号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、車輌の車輪とモータとが一体となったホイールモータに関するものであり、特に、アウターロータ型のホイールモータに関する。」 ・「【0063】ステータ支持体102の車輌外側部の外周には、表面に絶縁体がコーティングされた珪素鋼板の積層体104が設けられている。この積層体104の一枚一枚の各珪素鋼板は放射状に18個のティースが突出しており、内径には多数の切り込みが設けられており、ステータ支持体102の外径にセレーション嵌合するようになっている。このような各珪素鋼板は、ステータ支持体102に車輌外側から順にはめ込まれ、最後にスペーサ105を介してサークリップ106でスラスト方向を固定してある。 【0064】珪素鋼板積層体104の各ティースには、ティース外で予め巻き線し、高圧でプレスした状態で樹脂を巻線の隙間に流し込んだカセット化された18個のステータコイル110が各ティースにはめ込まれている。」 ・「【0066】アクスルハブ127は鉄の無垢材でできており、外周部はステータを覆うように円筒形となっている。このアクスルハブ127の円筒部の内側にはステータに用いられた珪素鋼板積層体104と同様に絶縁膜で覆われた多数の珪素鋼板を重ねたロータ用の珪素鋼板積層体138が設けられており、多数のビス142で固定されている。そして、この円筒形珪素鋼板積層体138の内側には、16個の永久磁石143が等間隔に配列され、接着剤で固定されている。」 ・「【0068】ところで、このホイールモータに要求されるトルクは、モータ回転数を変数とする関数となり、低回転時には比較的高いトルクが要求されるが、回転が速くなるにしたがって要求トルクは低くなる。そこで、モータ制御もこの要求トルクに合わせて行うことになり、低回転時にはステータコイル110が発生する交番磁界の磁束密度を高くし、高回転時にはその磁束密度を低くする。」 ・「【0080】3本の給電線141のうちのU相が端子151に、V相が端子152に、W相が端子153にそれぞれ接続されている。ステータ用珪素鋼板積層体104の各ティースに嵌合されたカセットコイル110の端子111および112は、配線基板113に設けられた円形穴形状の雌コンタクトに差し込まれ、各コンタクトがカシメられる。各コンタクトは、図示のように2つのコンタクト間をつなぐ帯状の導電体により互いに電気的に接続されており、これにより3本の給電線141と18個カセットコイル110との所望の電気的結線が達成されている。なお、端子111および112と雌コンタクトとの電気的接続および固定は、端子111および112を雌コンタクトに挿入した後にカシメることにより達成しているが、カシメに代えてはんだ付けを用いてもよい。」 ・また、図6には、各ティースが環状部から放射状に外側に突出された構成の珪素鋼板積層体104、及び、ステータと内周回転方向にN極、S極の永久磁石が交互に配置されたロータとが対向する構成が示され、また、図5には、ロータの外周部に車輪を装着したホイールモータが示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「珪素鋼板積層体を構成する環状部から放射状に外側に突出された各ティースにステータコイルがはめ込まれているステータと、円筒形珪素鋼板積層体の内周回転方向にN極、S極の永久磁石が交互に配置されたロータとが対向するモータにおいて、 前記の各ティースにはめ込まれるステータコイルを3相用とし、また、前記ティースの数を18個とし、さらに、前記ロータの外周部に車輪を装着したホイールモータ。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「珪素鋼板積層体を構成する環状部から放射状に外側に突出された各ティースにステータコイルがはめ込まれているステータ」が前者における「環状磁性体から放射状に外側に設けられた各主極に巻線が巻かれ」る「固定子」に相当し、以下同様に、「円筒形珪素鋼板積層体の内周回転方向にN極、S極の永久磁石が交互に配置されたロータ」が「内周回転方向にN極、S極が交互に配置された外転型永久磁石回転子」に、「モータ」が「回転電機」に、「各ティースにはめ込まれるステータコイルを3相用とし」が「各主極に巻かれる巻線を3相巻線とし」に、「ティースの数を18個」が「主極の数を3m個」に、「ロータの外周部に車輪を装着」が「回転子の外周部又は側面部に、タイヤ、ドラム、テーブル等の外転体を装着」に、「ホイールモータ」が「電動機駆動システム」に、それぞれ相当している。 また、後者における「ロータ(外転型永久磁石回転子)」は「ステータ(固定子)」と対向する際に、「エヤギャップを保って」いることが明らかである。 したがって、両者は、 「環状磁性体から放射状に外側に設けられた各主極に巻線が巻かれる固定子と、エヤギャップを保って内周回転方向にN極、S極が交互に配置された外転型永久磁石回転子とが対向する回転電機において、 前記の各主極に巻かれる巻線を3相巻線とし、また、前記主極の数を3m個とし、さらに、前記回転子の外周部又は側面部に、タイヤ、ドラム、テーブル等の外転体を装着した電動機駆動システム。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 固定子に関し、本願発明は、「各主極の先端に複数の磁歯から成る誘導子を有する」ものであるのに対し、引用発明は、かかる構成を備えていない点。 [相違点2] 固定子の主極の数である3m個に関し、本願発明は、「mは1相当たりの固定子主極数で2、3、4のいずれかの数とする」としているのに対し、引用発明は、3mが「18」であるところから、「mは1相当たりの固定子主極数で6とする」ものである点。 4.当審の判断 上記相違点について以下検討する。 ・相違点1について 環状磁性体から放射状に外側に設けられた各主極に巻線が巻かれた固定子と、外転型永久磁石回転子とが対向する回転電機において、高精度に駆動するために、固定子の各主極の先端に複数の磁歯から成る誘導子を設けることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-111233号公報、同特開平11-113236号公報にも開示されているように、当該分野における周知技術であるといえる。 引用発明において、高精度に駆動することは当然に要求されるべき課題であるから、かかる課題の下に、上記周知技術を適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 ・相違点2について 本願の出願当初明細書の【請求項5】ないし【請求項8】に、「mは1相当たりの固定子主極数で1以上の整数」と記載されていたことからすれば、mを2、3、4のいずれかの数としたもののみが、他の整数としたものに比して、格別顕著な作用効果を生じさせることになるとは解されない。 また、引用発明において、固定子の主極の数は、当業者が実験的に所望の特性が得られるものとして適宜選択し得るものというべきである。 そうすると、引用発明において、固定子の主極の数に関し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜改変し得る設計的事項にすぎない。 そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-03 |
結審通知日 | 2007-08-14 |
審決日 | 2007-08-31 |
出願番号 | 特願2001-229361(P2001-229361) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 尾家 英樹 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
谷口 耕之助 仁木 浩 |
発明の名称 | 固定子に誘導子を有する電動機駆動システム |
代理人 | 高橋 陽介 |
代理人 | 斎藤 春弥 |