• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B27G
管理番号 1166593
審判番号 不服2004-19808  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2007-10-09 
事件の表示 特願2001-578176「ダイボードの製作方法及びその方法を実施するための装置および材料」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 1日国際公開、WO01/81051、平成15年10月21日国内公表、特表2003-531035〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本件発明
本件出願は、平成13年4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年4月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1乃至7に係る発明は、平成19年3月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】ダイボードに溝を形成するための回転切削工具であって、
第一外径を規定する非テーパ状の第一切削部分と、
その第一切削部分と同軸に該第一切削部分から延出し第二外径を規定する非テーパ状の第二切削部分とを備え、
上記第二外径が上記第一外径と異なり、
上記第二切削部分がほぼ円筒状の外表面を規定する回転切削工具において、
上記第一及び第二切削部分の各々が、上記ダイボードに互いに異なる幅の溝を形成するために、少なくとも二つの長手方向に延びる螺旋状の段溝・ひだ(flute)により部分的に規定され、
上記第一切削部分と上記第二切削部分との間にテーパ部分が設けられ、そのテーパ部分は、上記第一外径から上記第二外径へ向かって徐々に小さくなる直径を有することを特徴とする回転切削工具。」

2 引用刊行物
これに対して、当審で平成18年9月8日付けで通知した拒絶理由には、本件優先権主張日前に頒布された刊行物である、下記の刊行物1?3が引用されている。
[引用刊行物]
刊行物1:米国特許第5570978号明細書
刊行物2:実願平3-101894号(実開平5-41623号)のCD -ROM
刊行物3:実願昭52-45579号(実開昭53-139695号)の マイクロフィルム

このうち、刊行物2には、バーコード用溝切削工具に関して、図面とともに以下の技術的事項が記載されている。

(ア)段落【0007】
「そこで本考案の考案者は、図9(a)に示すように先端に小径切削部22、及びその基部側に大径切削部23を有する特殊なエンドミル21を考案した。このエンドミル21は、物品1に対する切込み深さを大小に変更して使用し、細幅溝27を形成するときには物品1に浅く切り込み(図9(b))、また太幅溝28を形成するときには深く切り込む(図9(c))。次にその切り込んだ状態から横方向に送りを加えて、溝27,28とするものである(図9(d))。このように、形成すべき溝の幅に応じた複数種類の径の切削部を有するエンドミルを用いれば、複数種類の幅の溝を単一のエンドミル21で形成できる。また、小径、中径、大径の3種類の切削部を備えるエンドミルを用いれば、3種類の幅の溝の形成も可能である。」

(イ)図9(a)?(d)の記載によれば、エンドミル21が、第一外径を規定する非テーパ状の大径切削部23と、その大径切削部23と同軸に該大径切削部23から延出し第二外径を規定する非テーパ状の小径切削部22とを備え、上記第二外径が上記第一外径と異なり、上記小径切削部23がほぼ円筒状の外表面を規定しており、大径及び小径の切削部の各々が、少なくとも二つの長手方向に延びる螺旋状の段溝・ひだ(flute)により部分的に規定されていることが看取できる。

上記記載事項を技術常識を勘案しながら本件発明に照らして整理すると、刊行物2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「物品1に溝を形成するためのエンドミル21であって、
第一外径を規定する非テーパ状の大径切削部23と、
その大径切削部23と同軸に該大径切削部23から延出し第二外径を規定する非テーパ状の小径切削部22とを備え、
上記第二外径が上記第一外径と異なり、
上記小径切削部23がほぼ円筒状の外表面を規定するエンドミル21において、
大径及び小径の切削部の各々が、少なくとも二つの長手方向に延びる螺旋状の段溝・ひだ(flute)により部分的に規定されているエンドミル21。」

3 対比
本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エンドミル21」は本件発明における「回転切削工具」に相当し、以下同様に、「大径切削部23」は「第一切削部分」に、「小径切削部23」は「第二切削部分」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「物品1」は、溝が形成される物品という限りで本件発明における「ダイボード」と共通しており、引用発明において、長手方向に延びる螺旋状の段溝・ひだ(flute)は、物品に互いに異なる幅の溝を形成するために規定されていることは自明である。
したがって、両者の一致点と相違点は次のとおりと認められる。
[一致点]
「物品に溝を形成するための回転切削工具であって、
第一外径を規定する非テーパ状の第一切削部分と、
その第一切削部分と同軸に該第一切削部分から延出し第二外径を規定する非テーパ状の第二切削部分とを備え、
上記第二外径が上記第一外径と異なり、
上記第二切削部分がほぼ円筒状の外表面を規定する回転切削工具において、
上記第一及び第二切削部分の各々が、上記物品に互いに異なる幅の溝を形成するために、少なくとも二つの長手方向に延びる螺旋状の段溝・ひだ(flute)により部分的に規定されている回転切削工具。」である点。
[相違点1]
本件発明は、ダイボードに溝を形成するための回転切削工具であるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
[相違点2]
本件発明では、第一切削部分と第二切削部分との間にテーパ部分が設けられ、そのテーパ部分は、上記第一外径から上記第二外径へ向かって徐々に小さくなる直径を有するのに対し、引用発明では、第一切削部分と第二切削部分との間にテーパ部分が設けらていない点。

4 相違点についての検討
ア 相違点1について
ダイボードにルール固定用の溝を形成することは、当審で通知した前記拒絶理由に引用した米国特許第3322004号明細書、米国特許第4052886号明細書等に示されているように従来周知の事項である。
そして、上記米国特許第4052886号明細書の第3欄第45?47行には「スロットはジグソー、レーザービームを使用するか、慣用されるルーティング又はミリング法を使用することにより形成することができる。」と記載され、また、同第4欄第45?46行には「凹部36は、ルータ、大入れブレードや他の標準的なツールにより形成される。」と記載されているように、ダイボードに溝を形成するに当たりルータやミリングツール等の回転切削工具を用いることも従来周知の事項である。
また、引用発明に係る回転切削工具をダイボードの溝形成に用いることができないという特段の理由も発見しない。
したがって、引用発明に係る回転切削工具をダイボードに溝を形成するための回転切削工具とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
大径部分と小径部分とを有する回転切削工具において、大径部分と小径部分との間にテーパ部分を設けることは従来周知の事項である(例えば、当審で通知した拒絶理由に引用した上記刊行物1には、ドリルであるがカッティングエッジ48からなる小径部分とエッジ56からなる大径部分との間に面51からなるテーパ部分を設けることが記載されている。また、特開平5-187371号公報の図7(a)には、エンドミルにおいて大径部分と小径部分との間にテーパ部分を設けることが記載されており、実願昭60-195293号(実開昭62-104808号)のマイクロフィルムの第1、5図には、ドリルにおいて大径部分と小径部分との間にテーパ部分を設けることが記載されている。)。
してみると、大径部分と小径部分とを有する回転切削工具である引用発明において、大径部分と小径部分との間にテーパ部分を設けることは当業者が容易になし得たことである。そして、そのテーパ部分を、大径部分である第一外径から小径部分である第二外径へ向かって徐々に小さくなる直径を有するものとすることも自明の事項にすぎない。

ウ 本件発明の作用効果について
本件発明の奏する作用効果についてみても、引用発明及び上記従来周知の各事項から当業者が十分予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本件発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであり、本件出願の請求項1に係る発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-26 
結審通知日 2007-05-08 
審決日 2007-05-21 
出願番号 特願2001-578176(P2001-578176)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B27G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
菅澤 洋二
発明の名称 ダイボードの製作方法及びその方法を実施するための装置および材料  
代理人 絹谷 信雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ