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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1166651
審判番号 不服2005-12383  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-30 
確定日 2007-10-22 
事件の表示 平成 8年特許願第341166号「設計図面データ作成支援装置及び支援方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月21日出願公開、特開平10-187775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年12月20日の出願であって、平成17年5月24日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成16年12月2日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項6に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「プラント設備の機能構成を示す設計図面が機械化された設計図面データであるCAD図面データを用いる設計図面データ作成支援方法において、上層と中層及び下層の3段階に重なった記憶層の上層と下層には改訂前(又は改訂後)のCAD図面データを読み込み、中層には改訂後(又は改訂前)のCAD図面データを読み込む読み込み工程と、前記上層を非表示として前記中層を透過させて前記下層と重ねて表示させる改定前(又は改定後)の図面を基点とした改定後(又は改定前)の比較結果の表示と、前記下層を非表示として前記上層を透過させて前記中層と重ねて表示させる改定後(又は改定前)の図面を基点とした改定前(又は改定後)の比較結果の表示とを人間の目に残像が残る程度の速度で切り替える表示切り替え工程とを備えたことを特徴とする設計図面データ作成支援方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-83882号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はCADシステムに関し、特に工事設計用CADシステムに関する。」

(b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】この従来のCADシステムは、システム制御手段,図面操作手段,図形入力手段,図形操作手段,図形出力手段及びファイル操作手段を有し、図面作成の電子化を目的とし、図面作成の作業工程を電子的に管理するように構成されているので、工事設計、特に建築現場において、建築設計部隊が作成したフロアレイアウトに基づいて、強電,弱電,空調,衛生,防災などの各部隊が各々の設置する機器に対する配管,配線,ダクトなどの系統図を記入する場合、それぞれの設計部隊で管理する図面名称や図面が異なると、各図面間の対比を行うことが煩雑になり難しく、同時に複数の図面に対して、その配管,配線,及びダクト系統などの相互の干渉を検討する場合には、全ての図面をプロッター出力しなければならず、その出力のための時間や、対比比較を行うためにかなりの労力がさかれるという問題点がある。」

(c)「【0008】図1は本発明の一実施例の工事設計用CADシステムの一例を示すブロック図である。
【0009】図1において、本実施例の工事設計用CADシステムはプログラムのメニューを格納しているメモリ33と、プログラムのメニュー等の表示を行うCRT34と、プログラムの設定等の各種入力を行うキーボード35,マウス36と、図面を出力するプロッタ37と、出力図面の情報を記録するフロッピーディスク(審決注:「プロッピーディスク」は誤記。以下、同様。)38と、他へ図面情報を通信回線を介して送出するための通信インタフェース39と、本実施例の工事設計用CADシステム全体を制御するCPU32とを有して構成している。」

(d)「【0025】フロッピーディスク38から読み込まれた原設計図14には、設計統括部隊13のグループコード41である“ASK”が書き込まれているため、読み込みに際しては図4のレイヤ構成図に示される、参照用レイヤA42に読み込みが行われる。」

(e)「【0026】原設計図14を読み込んだ操作者は、メニュー1により図形操作手段5からレイヤ変更を行い、編集用レイヤ43を選択したうえで、参照用ライヤA42の原設計図14を編集用レイヤ43に複写する。操作者は、編集用レイヤ43に複写された原設計図14を基に、詳細建築図18を作成する。」

(f)「【0040】(2)版数管理
同一の図面名称及び図番の図面に関して、改版時に新たな版数を与える。又、改版理由などについても、本機能により管理する。」

(g)「【0045】図面対比手段9は、現在編集中の図面と、参照レイヤに読み込まれた図面情報の比較検討を行うための機能である。そのため、レイヤの構成図は、図4に示すように多重構造となっている。」

(h)「【0048】これら各レイヤに対して、読み込んだ図面を比較対照する機能が、図面対比手段9であるが、以下に詳細の機能を示す。」

(i)「【0049】(1)重ねレイヤ指定
読み込んだ図面情報に対して、どのような重ね合わせ表示を行わせるかを指定する機能である。各レイヤ及びサブレイヤに対して、その重ね合わせ順序,表示色,透過か上書きかの重ねモード指定が行える。」

(j)「【0050】(2)レイヤ情報比較
改版が行われた場合、どの部分が変更されたかを比較検討するため、参照レイヤに改版前後の図面を読み込み、その2者の比較を行える。」

上記(a)ないし(j)の記載及び図面から、引用例には
「工事設計用の図面情報を扱うCADシステムにおいて、編集用レイヤ43、参照用レイヤA42等からなる多重構造のレイヤを備えており、フロッピーディスク38から読み込まれた原設計図を前記参照用レイヤA42に読み込むとともに、読み込んだ図面を比較対照するために、各レイヤに対して、重ね合わせ順序、表示色、透過か上書きかの重ねモード指定を行うことにより、どのような重ね合わせ表示を行わせるかを指定する機能、及び同一の図面名称及び図番の図面に関して、改版が行われた場合、どの部分が変更されたかを比較検討するため、参照レイヤに改版前後の図面を読み込み、2者の比較を行うレイヤ情報比較機能を備えており、建築現場等で用いられる工事設計用の図面について、出力図面の情報をフロッピーディスクに記録し、他へ図面情報を通信回線を介して送出する等、図面作成の電子化、及び図面作成の作業工程の電子的管理を行うことを特徴とするCADシステム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

4.対比
(ア)引用発明の工事設計用CADシステムは、建築現場等で用いられる工事設計用の図面について、出力図面の情報をフロッピーディスクに記録し、他へ図面情報を通信回線を介して送出する等、図面作成の電子化、及び図面作成の作業工程の電子的管理を行っており(前掲(a)、(b)、(c))、前記電子化された図面情報は「機械化」された情報であるといえるから、引用発明は、「設計図面が機械化された設計図面データであるCAD図面データを用い」るものであるといえる。

(イ)引用発明は、工事設計用の図面情報を扱うCADシステムに関するものであるが(前掲(a)、(c))、前記CADシステムは、前記工事設計用の図面情報の作成及びその支援を行うための手順を実行するものであるから、「設計図面データ作成支援方法」に関するものであるといえる。

(ウ)引用発明は、編集用レイヤ43、参照用レイヤA42等からなる多重構造のレイヤを備えており(前掲(e)、(g))、フロッピーディスク38から読み込まれた原設計図を前記参照用レイヤA42に読み込むとともに(前掲(d))、読み込んだ図面情報に対して、どのような重ね合わせ表示を行わせるかを指定する機能を備えており(前掲(i))、複数の「段階に重なった記憶層」に「CAD図面データを読み込」む構成を備えているといえる。

(エ)引用発明は、同一の図面名称及び図番の図面に関して、改版が行われた場合、どの部分が変更されたかを比較検討するため、参照レイヤに改版前後の図面を読み込み、2者の比較を行うレイヤ情報比較機能を備えており(前掲(h)、(j))、ある「層には改訂前(又は改訂後)のCAD図面データを読み込み」、他の「層には改訂後(又は改訂前)のCAD図面データを読み込む読み込み工程」に相当する構成を備えているといえる。

(オ)引用発明は、読み込んだ図面を比較対照するために、重ねレイヤ指定により、重ね合わせ順序、表示色、透過か上書きかの重ねモード指定を行うとともに、改版が行われた場合、参照レイヤに改版前後の図面を読み込み、2者の比較を行っている(前掲(h)、(i)、(j))。
ここで、改版前後の図面の比較を行う場合、各レイヤに対して重ね合わせ順序、あるいは透過か上書きかの重ねモードを適宜指定することにより、改版前及び改版後の図面について、一方の図面を基点として、他方の図面を比較した結果を表示可能であることは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「改訂前(又は改訂後)の図面を基点とした改訂後(又は改訂前)の比較結果の表示」に相当する構成を備えている。
そして、前記重ねモード指定の内容を変更することにより、改版前後の図面について、基点とする図面と、比較対象とする図面とが、逆の関係になるように切り替えて表示することも明らかに可能であるから、引用発明は、本願発明の「改訂前(又は改訂後)の図面を基点とした改訂後(又は改訂前)の比較結果の表示と、」「改訂後(又は改訂前)の図面を基点とした改訂前(又は改訂後)の比較結果の表示とを」「切り替える表示切り替え工程」に相当する構成を備えている。

以上を踏まえ、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「設計図面が機械化された設計図面データであるCAD図面データを用いる設計図面データ作成支援方法において、複数の段階に重なった記憶層の、ある層には改訂前(又は改訂後)のCAD図面データを読み込み、他の層には改訂後(又は改訂前)のCAD図面データを読み込む読み込み工程と、改定前(又は改定後)の図面を基点とした改定後(又は改定前)の比較結果の表示と、改定後(又は改定前)の図面を基点とした改定前(又は改定後)の比較結果の表示とを切り替える表示切り替え工程とを備えたことを特徴とする設計図面データ作成支援方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明が、「プラント設備の機能構成を示す設計図面」を処理の対象としているのに対し、引用発明においては、建築現場等で用いられる工事設計用の図面を処理の対象としている点。

[相違点2]
本願発明においては、記憶層が「上層と中層及び下層の3段階に」重なっており、「上層と下層には」改訂前(又は改訂後の)CAD図面データを読み込み、「中層には」改訂後(又は改訂前)のCAD図面データを読み込み、改訂前(又は改訂後)の図面を基点とした改訂後(又は改訂前)の比較結果の表示を行う際には、「上層を非表示として中層を透過させて下層と重ねて表示させ」、改訂後(又は改訂前)の図面を基点とした改訂前(又は改訂後)の比較結果の表示を行う際には、「下層を非表示として上層を透過させて中層と重ねて表示させ」ているのに対し、引用発明においては、改版前後の図面を参照レイヤに読み込んで比較を行う場合、上記のような処理を行っているか明らかでない点。

[相違点3]
本願発明の「表示切り替え工程」が、改訂前(又は改訂後)の図面を基点とした改訂後(又は改訂前)の比較結果の表示と、改訂後(又は改訂前)の図面を基点とした改訂前(又は改訂後)の比較結果の表示とを「人間の目に残像が残る程度の速度で」切り替えているのに対し、引用発明においては、重ねモード指定の内容を変更して、重ね合わせ表示を切り替える際の速度について、特に定めていない点。

5.判断
上記相違点について検討する。

[相違点1について]
CADシステムにおいて、プラントの設計に関する情報を処理の対象とし、機器及び配管のレイアウト設計等を行うことは、例えば特開平5-250427号公報、特開平1-234979号公報、及び特開昭61-255470号公報にみられるように周知の技術であり、引用発明において、CADシステムで扱う図面を「プラント設備の機能構成を示す設計図面」とすることは、当業者が適宜採択し得る設計事項にすぎない。

[相違点2について]
引用発明は、複数のレイヤからなる多重構造のレイヤを備えている(前掲(e)、(g))。
また、引用発明は、参照レイヤに改版前後の図面を読み込み、どの部分が変更されたかを比較検討する機能、及び各レイヤに対して、重ね合わせ順序、表示色、透過か上書きかの重ねモード指定を行うことにより、読み込んだ図面情報に対して、どのような重ね合わせ表示を行わせるかを指定する機能を備えている(前掲(h)、(i)、(j))。
ここで、前記「透過」は、本願発明の「非表示」に相当し、前記「上書き」は、上のレイヤが下のレイヤに上書きされるように重なって表示されるから、本願発明の「中層を透過させて下層と重ねて表示させる」こと、及び「上層を透過させて中層と重ねて表示させる」ことに相当することは明らかである。
さらに、引用発明において、前記レイヤを何層重ね合わせるか、どのレイヤにどのような図面を読み込ませるか、及び前記重ねモード指定の内容をどのようにするかは、操作者が目的に応じて適宜決定すべき事項である。
そうすると、引用発明において、改版前後の図面について、一方を基点とした他方の比較結果の表示を行うために、少なくとも「上層と中層及び下層の3段階に」重なったレイヤを用意し、改版前の(又は改版後の)図面を上層と下層のレイヤに読み込ませ、改版後の(又は改版前の)図面を中層のレイヤに読み込ませ、改版前(又は改版後)の図面を基点とした改版後(又は改版前)の比較結果を表示するために、上層のレイヤを透過させて中層のレイヤが下層のレイヤに上書きされるように重ねモードを指定し、改版後(又は改版前)の図面を基点とした改版前(又は改版後)の比較結果を表示するために、下層のレイヤを透過させて上層のレイヤが中層のレイヤに上書きされるように重ねモードを指定することは、当業者が適宜採択し得る設計事項にすぎない。
したがって、引用発明において、「上層と中層及び下層の3段階に重なった記憶層の上層と下層には改訂前(又は改訂後)のCAD図面データを読み込み、中層には改訂後(又は改訂前)のCAD図面データを読み込」み、「前記上層を非表示として前記中層を透過させて前記下層と重ねて表示させる改定前(又は改定後)の図面を基点とした改定後(又は改定前)の比較結果の表示と、前記下層を非表示として前記上層を透過させて前記中層と重ねて表示させる改定後(又は改定前)の図面を基点とした改定前(又は改定後)の比較結果の表示とを」行う構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3について]
引用発明において、重ねモード指定の内容を変更して、重ね合わせ表示を切り替える際の速度をどの程度とするかは、必要に応じて任意に決定すればよく、改版前後の図面を比較検討するために、基点とする図面及び比較対象とする図面が逆の関係になるように前記表示を切り替える際の速度を、人間の目に残像が残る程度の速度とすることは、当業者が適宜採択し得る設計事項にすぎない。

そして、これらの相違点を総合的に考慮しても、本願発明は当業者が想到し難い格別のものであるとすることはできず、また本願発明の奏する作用効果も、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-22 
結審通知日 2007-08-24 
審決日 2007-09-06 
出願番号 特願平8-341166
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 伊知地 和之
井上 健一
発明の名称 設計図面データ作成支援装置及び支援方法  
代理人 堀口 浩  

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