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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1166654
審判番号 不服2006-2504  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-09 
確定日 2007-10-22 
事件の表示 特願2003- 13704「画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日出願公開、特開2004-228889〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成15年1月22日の出願であって、平成17年10月18日付けの拒絶理由通知に対して、平成17年12月13日付けで手続補正がされたが、平成18年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年2月9日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成18年2月9日付けの手続補正の適否について
平成18年2月9日付けの手続補正により、特許請求の範囲は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】 画像検出用センサと、
画像読取対象物に形成されている画像を前記画像検出用センサに結像するための結像光学系と、
前記画像検出用センサにて検出された画像の画像データに、前記結像光学系を含む画像読取り用の光路中に存在する塵埃により発生する異常画像データが存在するか否かを推定する異常データ推定手段と、
前記異常画像データを補正処理する画像データ補正手段とが備えられた画像読取装置であって、
前記異常画像データが存在すると推定されたときに、その異常画像データの発生原因となる塵埃が、塵埃の除去が可能な部位として予め設定されている除去可能部位に付着しているか否かを特定する付着部位特定手段と、
前記除去可能部位に付着しているものと特定されたときにその旨を報知して塵埃の除去を要求し、且つ、前記除去可能部位以外の部位に付着しているものと特定されたときに前記画像データ補正手段に前記補正処理を実行させる管理手段とが設けられ、
前記付着部位特定手段は、前記結像光学系におけるフォーカス調整又はズーム調整の実行による前記画像検出用センサの検出画像データにおける前記異常画像データの変化の大小によって、塵埃が前記除去可能部位に付着しているか否かを特定するように構成されている画像読取装置。
【請求項2】 前記画像読取対象物が写真フィルムであり、
前記付着部位特定手段は、1本分の写真フィルムの画像の読取り毎に、その写真フィルムの読取り開始前のその写真フィルムの先端が前記画像読取り用光路に進入していない状態で、塵埃が前記除去可能部位に付着しているか否かを特定する処理を実行するように構成されている請求項1記載の画像読取装置。」

上記補正は、特許請求の範囲に記載された「塵埃の存在位置が」を「塵埃が」と補正するもの等であって、特許法第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、適法である。

3.本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成18年2月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと求められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 画像検出用センサと、
画像読取対象物に形成されている画像を前記画像検出用センサに結像するための結像光学系と、
前記画像検出用センサにて検出された画像の画像データに、前記結像光学系を含む画像読取り用の光路中に存在する塵埃により発生する異常画像データが存在するか否かを推定する異常データ推定手段と、
前記異常画像データを補正処理する画像データ補正手段とが備えられた画像読取装置であって、
前記異常画像データが存在すると推定されたときに、その異常画像データの発生原因となる塵埃が、塵埃の除去が可能な部位として予め設定されている除去可能部位に付着しているか否かを特定する付着部位特定手段と、
前記除去可能部位に付着しているものと特定されたときにその旨を報知して塵埃の除去を要求し、且つ、前記除去可能部位以外の部位に付着しているものと特定されたときに前記画像データ補正手段に前記補正処理を実行させる管理手段とが設けられ、
前記付着部位特定手段は、前記結像光学系におけるフォーカス調整又はズーム調整の実行による前記画像検出用センサの検出画像データにおける前記異常画像データの変化の大小によって、塵埃が前記除去可能部位に付着しているか否かを特定するように構成されている画像読取装置。」

4.引用例
(引用例1)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-50062号公報(平成12年2月18日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 原稿画像を走査する走査手段と、
該走査手段から出力する画像データを取り込み、該画像データ中に含まれる上記画像ノイズに対応するノイズ情報が存在する主走査アドレスを検出する画像ノイズ位置検出手段と、
該画像ノイズ位置検出手段により検出された主走査アドレス周辺のピント情報を演算するピント演算手段と、
各副走査ライン毎にピントデータを記憶するピントデータ記憶手段と、
該ピントデータ記憶手段により記憶されたピントデータに基づいて上記走査手段に付着したごみのごみ付着位置を決定するごみ付着位置決定手段と、
を備えたことを特徴とする画像入力装置。
【請求項2】 上記走査手段が、原稿が載置される原稿ガラスと、該原稿ガラス上の原稿に対して相対移動可能に設けられ、上記原稿を走査する光を投射する光源と、上記原稿からの反射光を受けてレンズ系に導くミラーと、該ミラーの反射光を光電変換素子に結像させる上記レンズ系と、画像データを出力する上記光電変換素子とを備え、
上記ごみ付着位置決定手段は、ピント演算手段の演算結果が、ピント良ならば上記光電変換素子または原稿ガラス上に、ピント良でかつごみデータ幅大ならば上記光電変換素子上にごみが存在するとそれぞれ判定し、
ピント不良ならば上記ミラーまたはレンズ上に、ピント不良で副走査方向でピントデータ変化するときは上記ミラー上にごみが存在するとそれぞれ判定することを特徴とする請求項1に記載の画像入力装置。
【請求項3】 上記ごみ付着位置決定手段の判定結果を知らせる清掃位置指示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の画像入力装置。」(第2頁特許請求の範囲)
なお、下線は審決において附された。以下、同様。

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は原稿を走査してデジタル画像信号を発生する画像入力装置に関し、より詳しくは、原稿を光学的に走査する入力光学系に付着したごみやほこり等を検出する画像入力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の画像入力装置としては、シェーディングデータをCPUが読み取り、CCDセンサにより検出された各画素が正常画素であるか、異常画素であるかを判定するようにしたものが知られている(例えば特開平6-6589号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、シェーディングデータをCPUが読み取ることにより、CCDセンサの各画素が正常画素であるか、異常画素であるかを判定する上記従来の画像入力装置では、シェーディング板に付着しているごみやほこりの検出には有効であるが、CCDセンサ上やレンズ上などに付着しているごみやほこりの検出は不可能であり、また、ほこりの付着位置や付着部位を特定することも困難であるという問題があった。
【0004】本発明の目的は、入力光学系にごみが付着したときにその清掃位置を特定することができる画像入力装置を提供することにある。
【0005】本発明のいま一つの目的は、上記目的に加えて、入力光学系にごみが付着したときにその清掃位置をユーザ等に知らせる画像入力装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、原稿画像を走査する走査手段と、該走査手段から出力する画像データを取り込み、該画像データ中に含まれる上記画像ノイズに対応するノイズ情報が存在する主走査アドレスを検出する画像ノイズ位置検出手段と、該画像ノイズ位置検出手段により検出された主走査アドレス周辺のピント情報を演算するピント演算手段と、各副走査ライン毎にピントデータを記憶するピントデータ記憶手段と、該ピントデータ記憶手段により記憶されたピントデータに基づいて上記走査手段に付着したごみのごみ付着位置を決定するごみ付着位置決定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像入力装置において、上記走査手段が、原稿が載置される原稿ガラスと、該原稿ガラス上の原稿に対して相対移動可能に設けられ、上記原稿を走査する光を投射する光源と、上記原稿からの反射光を受けてレンズ系に導くミラーと、該ミラーの反射光を光電変換素子に結像させる上記レンズ系と、画像データを出力する上記光電変換素子とを備え、上記ごみ付着位置決定手段は、ピント演算手段の演算結果が、ピント良ならば上記光電変換素子または原稿ガラス上に、ピント良でかつごみデータ幅大ならば上記光電変換素子上にごみが存在するとそれぞれ判定し、ピント不良ならば上記ミラーまたはレンズ上に、ピント不良で副走査方向でピントデータ変化するときは上記ミラー上にごみが存在するとそれぞれ判定することを特徴とする。
【0008】さらに、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像入力装置において、上記ごみ付着位置決定手段の判定結果を知らせる清掃位置指示手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
【作用】画像データに含まれる画像ノイズに対応するノイズ情報が存在する主走査アドレスを検出する。検出した主走査アドレス周辺のピント情報を演算し、各副走査ライン毎にピントデータを記憶する。該ピントデータに基づいて、ごみ付着位置決定手段が走査手段に付着したごみのごみ付着位置を決定する。
【0010】また、上記ピント情報の演算結果に応じて、上記ごみ付着位置決定手段が入力光学系を構成する原稿ガラス、ミラー、レンズもしくは光電変換素子のいずれにごみが付着しているかを判定する。この判定結果は、清掃位置指示手段によりユーザに指示される。」

(ウ)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係る画像入力装置の実施の形態について説明する。
【0012】以下では、本発明に係る画像入力装置をデジタルカラー複写機(以下、単に複写機と記す。)に適用した一つの実施形態について、(複写機の全体構成)、(画像処理回路の構成)および(制御フロー)に項を分けて説明する。
【0013】(複写機の全体構成)図1に示すように、上記複写機90は、自動原稿送り装置100と、画像読取り部200と、画像形成部300とから構成されている。上記複写機90は通常、自動原稿原稿送り装置100により画像読取り位置に搬送された原稿を画像読取り部200によって読み取り、読み取られた画像データを画像形成部300に送信して画像を形成することにより、複写機能を達成する。
【0014】上記複写機90はまた、インターフェース回路207によりパーソナルコンピュータ等の図示しない外部機器との接続が可能となっている。このため上記複写機90では、画像読取り部200により読み取った画像データを外部機器に出力したり、逆に外部機器からの画像データを画像形成部300に送ることにより、画像を形成することができるようになっている。
(中略)
【0017】(b)画像読取り部200
上記画像読取り部200では、露光ランプ201により照射された原稿ガラス208上の原稿の反射光は第1、第2および第3ミラー202a,202bおよび202cからなるミラー群202によりレンズ203に導かれ、CCDセンサ204に結像する。上記露光ランプ201と第1ミラー202aはスキャナモータ209により矢印A1の方向へ倍率に応じた速度Vでスキャンされ、原稿ガラス208上の原稿を全面にわたって走査する。また、露光ランプ201と第1ミラー202aのスキャンに伴い、第2ミラー202bと第3ミラー202cは速度V/2で同方向へスキャンされる。なお、上記スキャナモータ209の制御は、画像処理回路205(図2参照)のCPU2056により行われる。
【0018】露光ランプ201と第1ミラー202aとからなるスキャナの位置は、ホーム位置からの移動量がスキャナホームセンサ210の出力とスキャナモータ209のステップ数のカウント値に基づいて算出され、制御される。
【0019】CCDセンサ204に入射した原稿の反射光は、該CCDセンサ204内で画像信号に変換され、該画像信号は後に詳述する画像処理回路205により増幅等のアナログ処理、A/D変換およびデジタル画像処理が行われた後、インターフェース回路207および画像形成部300へ送られる。
(中略)
【0027】(画像処理回路の構成)画像処理回路205の詳細を図2に示す。該画像処理回路205は、ごみデータ抽出回路2051、ごみデータシフト回路2052、変倍回路2053、ごみデータ補正回路2054、セレクタ2055、CPU2056(中央処理装置)およびその他画像処理回路2057から構成されている。
【0028】上記ごみデータ抽出回路2051は、CCDセンサ204により読み取られた画像データから、「ごみの有無」、主走査方向における「ごみの位置」、および「ごみの幅」の情報を検出するための回路である。上記ごみデータ抽出回路2051では、後にさらに詳しく説明するように、所定の処理を行った後の画像データをFIFO(先入れ先出し)バッファメモリ(以下、単にFIFOと記す。)に蓄え、CPU2056が上記FIFOからデータを読み出すことにより、ごみに関する上記情報を検出する。上記ごみデータシフト回路2052は、ごみデータ抽出回路2051で抽出された主走査方向における「ごみの位置」、「ごみの幅」の上記情報に基づいて、ごみ部分の画像データを強制的に欠落させるように画像データをシフトして出力する。
【0029】上記変倍回路2053は、画像データの拡大を行う。これは、上記ごみデータシフト回路2052が主走査方向の画素を欠落させる処理を行うことにより発生する主走査方向の画像の縮小を補うためである。画像データを拡大する倍率は、ごみデータ抽出回路2051で抽出された主走査方向における「ごみの幅」の情報に基づいて、CPU2056が決定する。従って、ごみサイズが大きい程、上記変倍回路2053での拡大率は大となる。ごみデータ補正回路2054は、周辺画像データから所定の演算を行うことにより、ごみにより欠落した画像データの補正を行う。
【0030】セレクタ2055は、ごみデータ抽出回路2051での抽出結果に基づいて、画像データの切替を行う。該画像データの切替は、CPU2056からの指令により、変倍回路2053の出力を用いるか、ごみデータ補正回路2054の出力を用いるか、ごみデータ抽出回路2051の出力を用いるかを切り替える。その他画像処理回路2057は、以上に説明した処理を除いた例えばMTF補正、色変換などの画像処理を行い、その出力をプリントヘッド301に出力する。
【0031】以上に説明した図2の画像処理回路205を構成する回路のうち、上記ごみデータ抽出回路2051、ごみデータシフト回路2052およびごみデータ補正回路2054について、図3ないし図8を参照して、さらに詳細に説明する。
【0032】(a)ごみデータ抽出回路2051画像処理回路205のごみデータ抽出回路2051の詳細を図3に示す。ごみデータ抽出回路2051は、シェーディング補正回路511、シェーディングメモリ制御回路512、シェーディングメモリ513、FIFO1ないしFIFO8、平均/差分値回路514、平均値メモリ515および差分値メモリ516を備えている。上記シェーディング補正回路511およびシェーディングメモリ制御回路512には、CCDセンサ204から画像データが入力される。
【0033】上記シェーディング補正回路511は、CCDセンサ204のチップばらつきにより発生する各画素ごとの感度むらを補正する。上記シェーディング補正回路511による上記感度むらの補正の際に、図1にて説明したシェーディング板、CCDセンサ204、第1ないし第3ミラー202a,202b,202cおよびレンズ203上にごみやほこりなどが付着していると、CCDセンサ204上に光が到達しないため、シェーディングデータ信号のレベルがごみやほこりのない部分に比べて低下する。
【0034】この結果は、上記シェーディングメモリ制御回路512によりシェーディングメモリ513に書き込まれ、CPU2056(図2参照)により読出しが可能な構成になっている。すなわち上記CPU2056はシェーディングメモリ513内のデータを読み出すことにより、シェーディングデータの異常を検出し、シェーディング状態において、主走査方向における「ごみの位置」や「ごみの幅」を特定することができる。
【0035】シェーディング補正回路512により上記感度むらが補正されたデータは、副走査方向に複数ライン分、データ(本実施形態では8ライン分)をFIFO1ないしFIFO8に蓄積する。
【0036】そして平均/差分値回路514では、上記FIFO1ないしFIFO8に蓄積されたデータを基に、主走査方向の同一画素の副走査方向における平均値((最大値+最小値)/2)および差分値(最大値-最小値)を算出する。この結果は平均値メモリ515および差分値メモリ516に書き込まれ、CPU2056(図2参照)により、読み出しまたは書き込みが可能な構成になっている。
【0037】すなわち、CPU2056は平均値メモリ515および差分値メモリ516内のデータを読み出すことにより、主走査方向の同一画素の副走査方向複数ラインにおける、平均値((最大値+最小値)/2)および、差分値(最大値-最小値)を知ることができる。これらの情報を基に、画像読み取り状態における画像データの異常を検出することができる。
【0038】上記構成により、CPU2056はシェーディングデータに基づいて、シェーディング状態における異常を、平均値メモリ515および差分値メモリ516により、画像読み取り状態における画像データの異常を、次のようにして検出することができる。
【0039】上記データ抽出回路2051では、図1のデジタル複写機90の原稿ガラス208からCCDセンサ204までの図4に示す光路図において、ほこりの付着位置が原稿ガラス208やCCDセンサ204である場合には、光学的にピントが合っている状態であるため、ほこりによる主走査方向の画像データの欠落状態はシャープな形状になる(図4の(1)参照)。また、同じサイズのごみやほこりであっても、光学的にみると原稿ガラス208上のごみやほこりでは小さく、CCDセンサ204上のごみやほこりでは大きく投影されるため、検出されたごみやほこりの大きさにより、ごみの付着位置が原稿ガラス208上であるか、CCDセンサ204上であるかを推定することができる。
【0040】ほこりの付着位置が第1,第2,第3ミラー202a,202b,202cやレンズ203である場合には、光学的にピントが合っていない状態であるため、ほこりによる主走査方向の画像データの欠落状態はアンシャープな形状になる。また、ほこりの付着位置が第1,第2,第3ミラー202a、202b、202cであった場合、スキャンを行うことにより、データの欠落状態が変化する(図4の(2)ないし(4)参照)。これは、スキャンを行うことにより、レンズ203と第1,第2,第3ミラー202a,202b,202cとの距離が変化することにより発生する。従って、画像データの欠落状態がアンシャープであった場合には、スキャナモータ209を制御し、複数箇所でのデータ欠落状態を観察することにより、ほこり付着位置を推定することができる。
【0041】一方、正常な画素データにおいては、主走査方向の所定画素においては、副走査方向の画像濃度の分布により、画像データは激しく変化する。図5に、主走査方向の所定画素における、副走査方向のデータの変化の様子を示す。
【0042】ごみやほこりに基づく異常な画素データでは、主走査方向の所定画素に入射する光の入射光量が制限されるため、副走査方向の画像データは変化に乏しく、輝度信号は低レベル(高濃度)を保持し続ける。この様子はCPU2056が平均値メモリ515および差分値メモリ516を観測することにより検出することができる。
【0043】(b)ごみデータシフト回路2052
ごみデータシフト回路2052は、既に述べたように、ごみデータ抽出回路2051で抽出された主走査方向における「ごみの位置」、「ごみの幅」の情報に基づいてごみ部分の画像データを強制的に欠落させるように、画像データをシフトして出力する。画像処理回路205のごみデータシフト回路2052を図6に示す。
【0044】ごみデータシフト回路2052は、FIFO521、ライトアドレスカウンタ522、セレクタ523、リードアドレスカウンタ524および加算器525を備えている。ごみデータシフト回路2052内部の上記FIFO521のリードアドレスは、図2のCPU2056から出力されるシフト開始位置信号とシフト幅信号に基づいて制御される。
【0045】上記リードアドレスカウンタ524はクロックに同期してアドレスをカウントアップする。上記加算器525は、CPU2056から出力されるシフト幅信号に基づいて、リードアドレスカウンタ524からのシフト幅に相当するデータ幅分だけアドレスを加算する。これにより、FIFOメモリ521に蓄積された所定幅分の画像データを強制的に読み飛ばし欠落させることができる。
【0046】上記セレクタ523は、FIFOメモリ521に与えるアドレスを、リードアドレスカウンタ524によるアドレスと加算器525のデータによるアドレスとを切り替えている。該切替は、図2のCPU2056から入力されるシフト開始位置信号により指示され、所定アドレスに到達するまでは、リードアドレスカウンタ524による出力を採用し、到達後は加算器525から出力されるデータを出力するように切り替えられる。
【0047】上記のようなごみデータシフト回路2052を備えることにより、図7に示すように、ごみデータにより発生する副走査方向の黒すじ526を主走査方向にデータをシフトして強制的に欠落させることにより、見やすい画像を作成することができる。
【0048】(c)ごみデータ補正回路2054画像処理回路205のごみデータ補正回路2054の詳細を図8に示す。該ごみデータ補正回路2054は、周辺6画素切出し回路541、画像データをRGB空間から、明度、色度空間であるYCrCb空間に色空間変換を行う色空間変換回路542、明度データ復元フィルタ543、色度データ復元フィルタ544、YCrCb空間からRGB空間へ再変換を行う再変換回路545を備えている。
【0049】上記周辺6画素切出し回路541は、ごみやほこりにより発生する主走査方向の欠落画像の欠落ラインを中心とした3×3の画素ブロックを抽出し、欠落画素ラインの3画素を除く、周辺の6画素を抽出する。上記色空間変換回路542は、これらの6画素について、画像データをRGB空間から、明度、色度空間であるYCrCb空間に色空間変換を行う。該色空間変換は、復元フィルタリングを、明度と色度では異なる方式で行うために必要となる。
【0050】明度データ復元フィルタ543では、上記周辺6画素切出し回路541で抽出した周辺の6画素データに基づいて、中央画素の値を演算により決定する。本実施形態では、「隣接する横の画素を1/4倍したもの」と「隣接する斜めの画素を1/8倍したもの」全ての合計値を演算することにより中央画素の値を決定するようにしている。なお、該中央画素の値の決定には、ほかの演算式を用いることもできる。
【0051】他方、色度データ復元フィルタ544では、上記周辺6画素切出し回路541で抽出した周辺の6画素データに基づいて、中央画素の値を演算により決定する。本実施形態では、「隣接する6画素全てにおける最大値」に基づいて中央画素の値を決定するようにしている。なお、中央画素の決定には、他の演算式を用いることもできる。また、補正後の画像データは、上記再変換回路545により、YCrCb空間からRGB空間へ再変換が行われる。
【0052】このように、本実施形態では、復元フィルタリングを明度と色度では異なる方式で行うため、文字画像においては色にじみの少ないシャープな復元が可能となり、写真画像においても滑らかな復元が可能となる。」

(エ)「【0053】(制御フロー)次に、CPU2056の制御フローを、メインフロー、ごみ検出処理フローおよびごみ位置検出処理フローについて説明する。
【0054】(a)メインフローCPU2056制御のメインフローを図9に示す。電源がオンされると、まず、ステップS1にて、これから複写機90の制御を行うのに必要な画像処理などのパラメータ設定等の初期化処理を実行する。次いで、ごみが付着していると、コピーに画像ノイズが発生してしまうため、コピー作業を行う前に、ステップS2およびS3にて、ごみが付着していないかどうかを判定するごみ有無検出処理および判定処理を実行する。
【0055】上記ステップS3にて、ごみがあると判定されたとき(ステップS3でyes)には、ステップS4にてさらにごみ位置検出処理を実行してごみの付着位置を検出し、ステップS5にてCPU2056より操作パネル211(図2参照)などに清掃位置の警告を行う。次いで、上記ステップS4のごみ位置検出処理の検出結果に基づき、ステップS6にてどの補正方法を用いるかを制御する補正方法制御処理を実行する。本実施形態では、ごみ位置検出処理の検出結果でごみデータ幅が1画素のときには、補正方法として、ごみデータ補正回路2054を使用し、それ以外ではごみデータシフト回路2052により補正を行う。補正方法の切替はセレクタ2055により行う。
【0056】次いで、ステップS7にてごみデータシフト処理を実行し、ごみ位置検出処理の検出結果に基づいて、ごみシフト量情報、シフト開始位置情報を設定する。
【0057】なお、ステップS3にてごみがないと判定されたとき(ステップS3でno)には、セレクタ2055は、ごみデータ補正回路2054およびごみデータシフト回路2052のいずれも使用しない。
【0058】以上のステップS1ないしS7の処理を実行した後、ステップS8にてコピー処理など、その他処理を実行後、リターンする。
【0059】(b)ごみ検出処理フローS2ごみ有無検出処理フローS2を図10に示す。該ごみ有無検出処理フローS2では、まず、ステップS11を実行し、副走査方向に複数ラインの画像データを採取するため、スキャナモータ209の動作を開始する。そして、ステップS12およびS13を順次実行し、CPU2056により、ごみデータ抽出回路2051の平均値メモリ515と差分値メモリ516のデータを読み込む。
【0060】次いで、ステップS14ないしS16を順次実行し、主走査全画素チェックが終了か否か、平均値メモリ515と差分値メモリ516が両者とも所定値未満であるか否かを検出する。主走査全画素チェックが終了しておらず(ステップS14で未終了)、かつ両者の条件がともに満足するとき(ステップS15およびS16でいずれもyes)にごみ有りと判定(ステップS17)する。主走査全画素チェックが終了していないときに、両者の条件のうちの少なくとも一つでも満足されないときにはごみなし(ステップS18)と判定する。これらの処理を、ステップS14にて終了と判定されるまで主走査アドレスの全画素についてチェックする。これにより、主走査アドレスのどの位置にごみが付着したかが特定できる。
【0061】なお、ごみ検出の信頼性を向上させるために上記動作を複数回行い、ごみ有りの判断が複数回検出されたときに、ごみ有りと判定するようにしてもよい。
【0062】(c)ごみ位置検出処理フローS4ごみ位置検出処理のフローS4を図11に示す。該ごみ位置検出処理のフローでは、まず、ステップS21にて、シェーディングメモリ513を読み込み、ステップS22にてごみデータ開始位置抽出を実行し、次いでステップS23にてごみデータ幅の抽出を実行する。なお、シェーディングデータは、シェーディング板を読み込むことにより行うため、通常は高輝度レベルを示す。これに対し、ごみが付着している場合には、上記シェーディングデータは所定値を下回るので、そのシェーディングデータをごみデータと推定する。
【0063】次いで、ステップS24にて、ごみデータ周辺のデータを観測することにより、ピントデータを抽出する。上記ステップS24では、隣り合う画素の差分値を算出し、該差分値の差分データが大であるときにピント良と判断する(ステップS25でyes)。
【0064】ピント良である場合には、さらにデータ幅に着目し、ステップS26にてデータ幅が所定位置より大きいか否かを判定し、大きければ(ステップS26でyes)CCDセンサ204付近(ステップS27)、小さければ(ステップS26でno)原稿ガラス208付近(ステップS28)であると推定し、清掃位置を決定する。
【0065】ピント良でないとき(ステップS25でno)には、スキャナの位置を移動し(ステップS29)、再びシェーディングメモリの読み込みを行う(ステップS30)。そして、前に採取したデータとの変化量を求め、変化量が大(ステップS31でyes)であれば第1ないし第3ミラー202a,202b,202c付近(ステップS32)、変化量が小(ステップS31でno)であればレンズ203付近(ステップS33)であると推定し、清掃位置を決定する。
【0066】以上のように、ごみのピントデータとごみデータ幅、およびスキャン位置による変動を解析することにより、ごみ付着位置を推定することができる。」

(オ)「【0067】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、画像データに含まれる画像ノイズに対応するノイズ情報が存在する主走査アドレスを検出してその周辺のピント情報を演算し、各副走査ライン毎に記憶したピントデータに基づいて、走査手段に付着したごみのごみ付着位置を決定するようにしたので、入力光学系にごみが付着していること、およびその付着位置を知ることができ、それにより出力画像の画像ノイズの原因となるごみやほこり等を確実に除去することができ、鮮明な出力画像を得ることができる。
【0068】本発明によればまた、ピントの演算結果に応じて、入力光学系を構成する原稿ガラス、ミラー、レンズもしくは光電変換素子のいずれにごみやほこりが付着しているかが判定されるので、その判定結果に応じて入力光学系を構成しているどの要素の、どの部位にごみやほこりが付着しているのかを知ることができ、容易にごみやほこりを除去することができる。さらに、入力光学系にごみやほこりが付着したときにその付着位置を操作パネル等に表示させることにより、入力光学系のどの要素のどこにごみやほこりが付着しているのかをさらに容易に知ることができ、清掃も容易になる。」

以上の記載からみて、引用例1には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「 原稿が載置される原稿ガラスと、
上記原稿ガラス上の原稿に対して相対移動可能に設けられ原稿画像を走査する走査手段と、
上記原稿を走査する光を投射する光源と、
上記原稿からの反射光を受けてレンズ系に導くミラーと、
上記ミラーの反射光を光電変換素子に結像させるレンズ系と、
画像データを出力する上記光電変換素子と、
上記走査手段から出力する画像データを取り込み、該画像データ中に含まれる上記画像ノイズに対応するノイズ情報が存在する主走査アドレスを検出する画像ノイズ位置検出手段と、
上記画像ノイズ位置検出手段により検出された主走査アドレス周辺のピント情報を演算するピント演算手段と、
各副走査ライン毎にピントデータを記憶するピントデータ記憶手段と、
上記ピントデータ記憶手段により記憶されたピントデータに基づいて上記走査手段に付着したごみのごみ付着位置を決定するごみ付着位置決定手段と、
上記ごみ付着位置決定手段の判定結果を知らせる清掃位置指示手段とを備えた画像入力装置であって、
該画像入力装置の上記ごみ付着位置決定手段は、上記ピント演算手段の演算結果が、ピント良ならば上記光電変換素子または原稿ガラス上に、ピント良でかつごみデータ幅大ならば上記光電変換素子上にごみが存在するとそれぞれ判定し、
また、ピント不良ならば上記ミラーまたはレンズ上に、ピント不良で副走査方向でピントデータ変化するときは上記ミラー上にごみが存在するとそれぞれ判定し、
そして、上記ごみ付着位置決定手段は、上記判定結果を上記清掃位置指示手段に知らせ、入力光学系にごみやほこりが付着したときにその付着位置を操作パネル等に表示させることにより、操作者が入力光学系のどの要素のどこにごみやほこりが付着しているかを容易に知ることができる画像入力装置。」

(引用例2)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-330268号公報(平成14年11月15日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、図面と共以下の事項が記載されている。

(カ)「【0029】ステップS202からS205の動作は図2のステップS102からS105の動作と同様である。ステップS204で異物が検知されなかった場合(ステップS205/No)、ユーザの清掃によって異物を除去できたことになるため、制御部1は処理を終了する。一方、ステップS204で異物検知部86が異物を検知した場合(ステップS205/Yes)、異物検知部86は、白データをさらに解析して異物の場所を検知する(ステップS206)。
【0030】制御部1は、ステップS206で異物検知部86が検知した場所は清掃を行っても異常の原因を除去できないと判断する。この場合の原因としてはユーザが清掃することができない部分(密着センサ内部や縮小光学系のスキャナユニット内部等)に異物が付着していることや読み取り部の画素の欠陥等をあげることができる。制御部1は、この場所の位置情報をメモリ2に保存しておき次回以降の読み取り時には画像処理部8に周囲画素の出力によって補正させる(ステップS207)。このようにして、清掃しても異常の原因が解消されない場合は読み取った画像に縦筋が発生しないようにする。」

5.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1に記載された発明の「ごみ及びほこり」は、本願発明の「塵埃」に相当し、
引用例1に記載された発明の「ごみデータ」は、本願発明の「異常データ」に相当し、
引用例1に記載された発明の「原稿ガラス上に置かれた原稿」は、本願発明の「読取対象物」に相当し、
引用例1に記載された発明の「CCDセンサ204」は、本願発明の「画像検出用センサ」に相当することは明らかである。
引用例1には、露光ランプ201、原稿ガラス208、ミラー群202、及びレンズ203が、結像光学系を形成することが記載されている(段落【0017】?【0019】の記載、及び第2頁の特許請求の範囲の記載参照。)から、引用例1に記載された発明の「ミラー群202、及びレンズ203」は、本願発明の「結像光学系」に相当し、引用例1に記載された発明の「原稿ガラス208、ミラー群202、レンズ203、及びCCDセンサ204を含む光路」は、本願発明の「画像読取り用の光路」に相当することも明らかである。
また、引用例1の段落【0043】?【0047】、段落【0048】?【0052】、及び段落【0055】の記載からみて、引用例1に記載された発明の「ごみデータ補正回路2054、及び、ごみデータシフト回路2052」は、本願発明の「画像データ補正手段」に相当することは明らかである。
そして、引用例1には、ごみデータ抽出回路2051の画像ノイズ位置検出手段は、CCDセンサ204から読み取られた画像データから「ごみの有無」、主走査方向における「ごみの位置」、および「ごみの幅」に関する情報を検出することが記載されている(段落【0028】の記載、段落【0059】?【0061】の記載、及び第2頁の特許請求の範囲の記載を参照。)から、引用例1に記載された発明の「ゴミデータ抽出回路2051の画像ノイズ位置検出手段」は、本願発明の「異常データ推定手段」に相当することは明らかである。
更に、引用例1には、ごみデータ抽出回路2051の付着位置決定手段は、ほこりの付着位置が、原稿ガラス面208上であるか、またはミラー202a、202b、202c上であるか、またはレンズ203上であるか、またはCCDセンサ204上であるかを判定することが記載されている(段落【0039】?【0042】の記載、段落【0062】?【0066】の記載、及び第2頁の特許請求の範囲の記載を参照。)から、引用例1に記載された発明の「ごみデータ抽出回路2051の付着位置決定手段」は、本願発明の「付着部位特定手段」に相当することも明らかである。
最後に、引用例1に記載された発明の画像入力装置、すなわち実施例におけるデジタルカラー複写機は、画像読み取り部200を備えた装置であるから、引用例1に記載された発明の「画像入力装置」は、本願発明の「画像読取装置」に相当することは明らかである。

そして、引用例1には、
CCDセンサ204(本願発明の画像検出用センサに相当)と、
原稿ガラス208上に置かれた原稿(本願発明の画像読取対象物に相当)に形成されている画像を前記CCDセンサ204に結像するための原稿ガラス208、ミラー群202、及びレンズ203からなる結像光学系(本願発明の結像光学系に相当)と、
前記CCDセンサ204にて検出された原稿画像の画像データに、前記原稿ガラス208、ミラー群202、及びレンズ203からなる前記結像光学系を含む画像読み取り用の光路中に存在するごみ及びほこり(本願発明の塵埃に相当)により発生するごみデータ(本願発明の異常画像データに相当)が存在するか否かを判定するゴミデータ抽出回路2051の画像ノイズ位置検出手段(本願発明の異常データ推定手段に相当)と、
前記ごみデータ(本願発明の異常画像データに相当)を補正処理するデータ補正回路2054(本願発明の画像データ補正手段に相当)とが備えられたデジタル複写機としての画像入力装置(本願発明の画像読取装置に相当)が記載されているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「画像検出用センサと、
画像読取対象物に形成されている画像を前記画像検出用センサに結像するための結像光学系と、
前記画像検出用センサにて検出された画像の画像データに、前記結像光学系を含む画像読取り用の光路中に存在する塵埃により発生する異常画像データが存在するか否かを推定する異常データ推定手段と、
前記異常画像データを補正処理する画像データ補正手段とが備えられた画像読取装置」
である点で差異はない。

引用例1には、
前記画像入力装置(本願発明の画像読取装置に相当)において、
前記ごみデータ(本願発明の異常画像データに相当)が存在すると判定されたときに、そのごみデータの発生原因となるごみ及びほこり(本願発明の塵埃に相当)が、原稿ガラス面208、ミラー群202、レンズ203、及びCCD204の中のどの部位に付着しているかを特定するごみデータ抽出回路2051の付着位置決定手段(本願発明の付着部位特定手段に相当)と、
前記ごみ及びほこり(本願発明の塵埃に相当)が、前記原稿ガラス面208、ミラー群202、レンズ203、またはCCD204の中のいずれかの部位に付着していると特定されたときにその旨を清掃位置指示手段に報知し、且つ、前記データ補正回路2054(本願発明の画像データ補正手段に相当)に前記補正処理を実行させる手段と、
が設けられていることが記載されているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「前記異常画像データが存在すると推定されたときに、その異常画像データの発生原因となる塵埃が、読取光学系のどの部位に付着しているか否かを特定する付着部位特定手段と、
読取光学系の特定の部位に付着しているものと特定されたときにその旨を報知し、且つ、前記画像データ補正手段に前記補正処理を実行させる手段と」
が設けられている点で差異はない。

引用例1には、
前記ごみデータ抽出回路2051の付着位置決定手段(本願発明の付着部位特定手段に相当)は、前記原稿ガラス208、ミラー群202、及びレンズ203からなる前記結像光学系(本願発明の結像光学系に相当)におけるピント調整の実行による前記CCDセンサ204(本願発明の画像検出用センサに相当)の検出画像データにおける前記ごみデータ(本願発明の異常データに相当)のデータ幅の変化量の大小によって、前記ごみ及びほこり(本願発明の塵埃に相当)が原稿ガラス面208、ミラー群202、レンズ203、またはCCD204の中のどれに付着しているか否かを特定することが記載されているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「前記付着部位特定手段は、前記結像光学系における光学的値の調整の実行による前記画像検出用センサの検出画像データにおける前記異常画像データの変化の大小によって、塵埃がどの部位に付着しているか否かを特定するように構成されている画像読取装置。」
である点で差異はない。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、

(一致点)
「画像検出用センサと、
画像読取対象物に形成されている画像を前記画像検出用センサに結像するための結像光学系と、
前記画像検出用センサにて検出された画像の画像データに、前記結像光学系を含む画像読取り用の光路中に存在する塵埃により発生する異常画像データが存在するか否かを推定する異常データ推定手段と、
前記異常画像データを補正処理する画像データ補正手段とが備えられた画像読取装置であって、
前記異常画像データが存在すると推定されたときに、その異常画像データの発生原因となる塵埃が、読取光学系のどの部位に付着しているか否かを特定する付着部位特定手段と、
読取光学系の特定の部位に付着しているものと特定されたときにその旨を報知し、且つ、前記画像データ補正手段に前記補正処理を実行させる手段とが設けられ、
前記付着部位特定手段は、前記結像光学系における光学系の光学的値の調整の実行による前記画像検出用センサの検出画像データにおける前記異常画像データの変化の大小によって、塵埃がどの部位に付着しているか否かを特定するように構成されている画像読取装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、付着した塵埃の部位が、塵埃の除去が可能な部位として予め設定されている除去可能部位か否かを特定し、除去可能部位であればその旨を報知して塵埃の除去を要求し、除去可能部位以外であれば画像データ補正手段に補正処理を実行させるのに対し、
引用例1に記載された発明は、原稿ガラス208、ミラー群202、レンズ203、もしくはCCD204の中のどの部位にごみ及びほこり(本願発明の塵埃に相当)が付着しているかを特定し、ごみ及びほこりの付着位置を清掃位置指示手段に報知して清掃位置の警告を行い、ごみ及びほこりが除去可能な部位であるか否かにかかわらず、ごみデータ補正回路2054(本願発明の画像データ補正手段に相当)により画像データの補正処理を実行させる点。

(相違点2)
本願発明は、結像光学系におけるフォーカス調整又はズーム調整の実行による画像検出用センサの検出画像データにおける異常画像データの変化の大小によって、塵埃が除去可能部位に付着しているか否かを特定しているのに対して、
引用例1に記載された発明は、結像光学系におけるピント調整の実行によるCCD204の検出画像データにおけるごみデータ(本願発明の異常画像データに相当)のピントの良不良、及びごみ幅の変化の大小によって、ごみ及びほこり(本願発明の塵埃に相当)が、原稿ガラス208、ミラー群202、レンズ203、またはCCD204の中のいずれの部位に付着しているか否かを特定している点。

6.判断
(相違点1について)
前記相違点1について判断する。
(i)一般に、ごみ及びほこり(塵埃)が簡単に拭き取れる部位(例えば、原稿ガラス208)に付着しているのであれば、操作者は清掃位置指示手段の警告に従って直ちにごみ及びほこりを拭き取ることができ、反対に、ごみ及びほこりが拭き取り不可能な部位(例えば、CCDセンサ204)に付着しているのであれば、操作者は清掃位置指示手段の警告があっても拭き取ることができないことは、当業者ならぬ通常人にあっても直ちに理解できる自明な技術常識である。すなわち、ユーザに対して、ごみ及びほこりの除去の要求を行うのは、除去可能部位にごみ及びほこり(塵埃)が付着しているときだけであるということは、当業者にとって自明のことである。
(ii)そして、ユーザの清掃によって除去できる場所(例えば、コンタクトガラス36及び白圧板34等)に異物(塵埃)が付着している場合、付着箇所提示手段の指示により異物を除去し、その後に画像を読み取り、逆に、ユーザの清掃によって除去できない場所(例えば、密着センサ内部及び縮小光学系のスキャナユニット内部等)に異物が付着している場合、読み取った画像を補正することにより画像に異物の存在により生じる縦筋が発生しないようにすることは、本件出願前から当業者に周知慣用されている技術常識でもある。例えば、この点については、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-330268号公報(特に、段落【0029】及び【0030】の記載)を参照されたい。
なお、この点は項目「4.引用例(引用例2)」に(カ)として摘記してある。参照されたい。
(iii)さらに、引用例1には、ごみ付着位置決定手段により、ごみ及びほこり(塵埃)があると判定された場合、その判定結果を清掃位置指示手段に知らせ、清掃位置の警告を行うことが記載されているから、引用例1に記載された発明に、上記(i)及び(ii)に示される周知技術を適用することにより、本願発明の如く構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
前記相違点2について判断するに、一般に、フォーカス調整又はズーム調整の実行により得た異常画像データの変化の大小によって、塵埃が付着しているか否かを特定することは、広く行われていることにすぎず、この点に格別の技術的困難性は見受けられない。
例えば、本件出願前に公開された特開平11-355529号公報(平成11年12月24日出願公開)には、
「【0112】なお、本第2実施形態では、微小量変化させるパラメータとして、NDフィルタの位置を微小距離だけ移動させた際の画像データと移動前の画像データとを画素毎に比較することによって塵等の有無を判定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、微小量変化させるパラメータとしては、ズーム倍率、フォーカス位置、原稿台スキャンの場合の原稿台位置、ミラースキャンの場合のミラー位置、レンズユニットを光軸に直交する方向に移動可能な場合のレンズユニットの位置、等を適用することができる。例えば、ズーム倍率を微少量変化させる場合では、ズーム倍率を1.0に設定した場合の画像データが図12(A)に示すような状態(塵等の位置に対応する画像データを斜線で表現)である場合、ズーム倍率を1.5倍とした場合の画像データは図12(B)に示すような図12(A)とは異なる状態となるため、対応する画素毎に値を比較することによって塵等の有無を判定することができる。」
との記載がある。参照されたい。

そして、本願発明の奏する効果の程についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される範囲内のものにすぎず、格別なものがあるとはいえない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-21 
結審通知日 2007-08-22 
審決日 2007-09-06 
出願番号 特願2003-13704(P2003-13704)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮島 潤  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 伊知地 和之
井上 健一
発明の名称 画像読取装置  
代理人 前井 茂樹  

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