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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1166656 |
審判番号 | 不服2006-7262 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-14 |
確定日 | 2007-10-22 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第224796号「太陽電池装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月18日出願公開、特開平 9- 51115〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年8月9日に出願された特許出願であって、原審において、平成17年9月14日付で拒絶理由が通知され、同年11月1日に手続補正がなされたところ、平成18年3月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月14日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、その請求項に係る発明は、上記手続補正がなされた明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 P層(2)とN層(3)が接合された太陽電池セル(1)の裏面に電気絶縁酸化膜を設け、P型素子から成る熱電半導体(8)とN型素子から成る熱電半導体(9)とこれらに接合された金属電極(10)とから成るサーモ・モジュール(7)の金属電極(10)を、前記電気絶縁酸化膜を介して前記太陽電池セル(1)の裏面に固着し、前記サーモ・モジュール(7)に電源を接続して、前記太陽電池セル(1)を冷却するようにしたことを特徴とする太陽電池装置。」 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-46900号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「〔産業上の利用分野〕 本発明は人工衛星等に搭載する太陽電池装置に関し、特に短時間の間に大電力を必要とする機器の電力負荷に適合する太陽電池装置に関する。」(1頁左下欄14?17行) イ.「〔課題を解決するための手段〕 本発明のピーク電力供給太陽電池装置はバッテリと太陽電池パドルと前記太陽電池パドルからの電力を前記バッテリと負荷に供給制御する制御部とを有し人工衛星に搭載される太陽電池装置において、前記太陽電池パドルの基板の背面に配置された前記太陽電池パドルを冷却するサーモエレメントと、指令信号によって前記サーモエレメントに電力を供給する前記制御部とを有することを特徴とする。」(2頁右上欄9?18行) ウ.「〔実施例〕 次に本発明について図面を参照して説明する。 第1図は本発明の一実施例の構成図、第2図は第1図中の太陽電池パドルの部分断面図である。 太陽電池パドル1上の太陽電池素子10に太陽光Sが入射すると太陽電池素子10は太陽光Sの幅射エネルギを電気工ネルギに変換して制御回路2に出力する、制御回路2は太陽電池素子10から供給された電気工ネルギの電圧をほぼ一定になるように制御し、負荷4に必要電力を供給し、残りをバッテリ3に供給する。 ・・・・(中略)・・・・ 太陽電池パドル1の太陽光Sの受光面側には所定数の太陽電池素子10が相互に導電体配線14により結線され基板11に対して電気絶縁体15を介して接着剤13によって固着されている。 これらの太陽電池素子10からの太陽電池出力は制御回路2に加えられる。 また、基板11の裏面には電気絶縁体15を介して接着剤13によってサーモエレメント12が必要数固着配置され、互いに導電体配線14で結線されている。 サーモエレメント12には制御回路2からのサーモエレメント制御信号が加えられる。 前述のサーモエレメント12には、たとえば、電流を一方向に渡すとサーモエレメント12の一端の温度が降下し他端の温度が上昇するいわゆるペルチェ効果を利用した素子を使用すればよい。 このようなサーモエレメント12に電流を流したとき、温度が降下する端部を基板11に近い方へ、また、サーモエレメント12の他端が上述の太陽電池パドルの裏面の外方に位置するように配置する。 なお、前述した基板が電気絶縁体であれば電気絶縁体15は省略することができる。」(2頁右上欄19行?同頁右下欄18行) エ.ここで、太陽電池素子10が、P型半導体とN型半導体とが接合された太陽電池セルを含む技術概念であること、および、ペルチェ効果を利用した素子であるサーモエレメント12が、P型素子から成る熱電半導体とN型素子から成る熱電半導体とこれらに接合された電極とからなること、は自明である。また、上記ウ(特に下線を付した箇所)からは、基板11が電気絶縁体である場合には、上記太陽電池セルが接着剤13により基板11上に固着され、基板11の裏面にはペルチェ効果を利用した素子であるサーモエレメント12が、電流を流したときに上記太陽電池セルを冷却するように、接着剤13により固着されていることが読み取れる。 これらア?エの記載によれば、引用例には、 「P型半導体とN型半導体とが接合された太陽電池セルが接着剤により電気絶縁体基板上に固着され、上記基板の裏面には、P型素子から成る熱電半導体とN型素子から成る熱電半導体とこれらに接合された電極とからなるペルチェ効果を利用した素子であるサーモエレメントの端部が、電流を流したときに上記太陽電池セルを冷却するように、接着剤により固着されている太陽電池パドル。」 との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。 同じく、特開平5-114480号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 オ.「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の有機薄膜電界発光素子においては、発光して短時間、例えば、2時間後には、発光層、キャリヤ輸送層等が結晶化し、発光しなくなることがあった。また、電極の一部が剥離する場合もあった。 ・・・・(中略)・・・・ 【0006】 【課題を解決するための手段】発明者らは、上記問題を鋭意研究したところ、上記問題は、素子の発光作動時における発熱により、素子の温度が上昇することによることを知見した。 【0007】本発明は上記知見に基づくものであり、すなわち、本発明による有機薄膜電界発光素子は、冷却器を備えていることを特徴とするものである。」 カ.「【0010】 【実施例】以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施例による有機薄膜電界発光素子を比較例とともに説明する。 【0011】(実施例1)図1は、本発明の実施例による有機薄膜電界発光素子1の概略斜視図である。この有機薄膜電界発光素子1は、素子本体10、および冷却器としてのヒートパイプ20を備えている。素子本体10は、例えば、次のようにして作製される。すなわち、厚さ1.1mmのホウケイ酸ガラス基板11上に、ITO透明電極12を形成し、その上に、TPD(ジアミン化合物)を1000A 真空蒸着してホール輸送層13を形成し、ついで、このホール輸送層13上に1-メチル-2,3,4,5-テトラフェニルシクロペンタジェンを1000A 真空蒸着して発光層14を形成し、最後に、この発光層14上にAgMg電極15を共蒸着し、有機薄膜電界発光素子を作製した。」 キ.「【0014】(実施例2、3)冷却器として、ペルチェ効果を利用した熱電冷却素子30、ゼーベック効果を利用した熱電発電素子40を用いた他は上記実施例1と同様にして有機薄膜電界発光素子を作製し、これらの有機薄膜電界発光素子についても、上記と同じ条件で、電圧を印加したところ、継続して10時間経過しても発光を維持した。なお、図2、3において、符号31、41は、絶縁層である。」 ク.また、図2からは、「ペルチェ効果を利用した熱電冷却素子30は、P形半導体とN形半導体とこれらに接合された電極とからなり、上記電極が絶縁層31を介して有機薄膜電界発光素子1へ直接固着されている。」ことが見て取れる(なお、図2の「ペルチェ効果を利用した熱電素子」には、図番が40と振られているが、30の誤りであることが明らかであるので、上記のとおり認定した。)。 上記オ?クによれば、引用例2には、次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が開示されていると認められる。 「発熱により性能が劣化する電子素子(有機薄膜電界発光素子)に冷却器を備えた電子装置であって、上記冷却器は、ペルチェ効果を利用した熱電冷却素子であり、P形半導体とN形半導体とこれらに接合された電極とからなり、上記電極が絶縁層を介して上記電子素子へ直接固着されている電子装置。」 3.対比 そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、次のとおりである。 a.引用例1発明の「P型半導体とN型半導体とが接合された太陽電池セル」は、本願発明の「P層(2)とN層(3)が接合された太陽電池セル(1)」に相当し、同様に「太陽電池パドル」は、「太陽電池装置」に相当する。 b.引用例1発明の「電気絶縁体基板」は、太陽電池セルの裏面に設けられた電気絶縁層である点で、本願発明の「電気絶縁酸化膜」と一致する。 c.本願明細書には、「【0002】【従来の技術】・・・また、ペルチェ効果を利用したサーモ・モジュールが電子冷熱素子として知られている。」、「【0008】・・・一方、サーモ・モジュール7のπ型直列回路P,N対のNからPの方向に電源13から電流が供給されると、ペルチェ効果によってπ型の上部で吸熱、下部で発熱が起こり、熱が上部から下部に向かってポンピングされる。」との記載があることからみて、本願発明のサーモ・モジュール(7)は、ペルチェ効果を利用したサーモ・モジュールであることが明らかである。 そして、引用例1発明の「P型素子から成る熱電半導体とN型素子から成る熱電半導体とこれらに接合された電極とからなるペルチェ効果を利用した素子であるサーモエレメント」は、当該サーモエレメントに電流を流したときに太陽電池セルを冷却する端部が、電気絶縁体基板に固着されていることからみて、「P型素子から成る熱電半導体とN型素子から成る熱電半導体とこれらに接合された電極とから成るサーモ・モジュールであって、前記サーモ・モジュールに電源を接続して、前記太陽電池セルを冷却するようにした」ものであることが明らかであるから、この点で、本願発明の「サーモ・モジュール(7)」と一致する。 したがって、両者は、 「P層とN層が接合された太陽電池セルの裏面に電気絶縁層を設け、P型素子から成る熱電半導体とN型素子から成る熱電半導体とこれらに接合された電極とから成るサーモ・モジュールを、前記電気絶縁層を介して前記太陽電池セルの裏面に固着し、前記サーモ・モジュールに電源を接続して、前記太陽電池セルを冷却するようにした太陽電池装置。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点1]本願発明の電気絶縁層は、「太陽電池セル(1)の裏面に設けられた電気絶縁酸化膜であって、前記電気絶縁酸化膜を介して前記太陽電池セル(1)の裏面にサーモ・モジュール(7)を固着する」ものであるのに対して、引用例1発明の電気絶縁層は、電気絶縁体基板であって、太陽電池セルとサーモ・モジュールとは、各々接着剤により上記基板の表・裏面に固着されるものである点。 [相違点2]本願発明の電極は、「金属電極(10)」であって、当該「金属電極(10)」を、電気絶縁層を介して太陽電池セルの裏面に固着するものであるのに対して、引用例1発明においては、電気絶縁層を介して太陽電池セルの裏面に固着する部分は「端部」であるが、この「端部」が電極であるのか否か、また、この電極が金属電極であるのか否かが不明である点。 4.判断 [相違点1]について 引用例1発明において、電気絶縁層に電気絶縁体基板を用いる趣旨は、引用例1の「太陽電池パドル1の太陽光Sの受光面側には所定数の太陽電池素子10が相互に導電体配線14により結線され基板11に対して電気絶縁体15を介して接着剤13によって固着されている。」(上記ウ)なる記載からみて、所定数の太陽電池素子10(太陽電池セル(1)に相当)を結線するとともに、それらを固着保持するには、十分な機械的強度を備えた電気絶縁性の基板を必要とするためと解される。 他方、本願発明は、電気絶縁酸化膜を介して太陽電池セルとサーモ・モジュールとを固着するものであり、少なくとも本願明細書および図面の記載においては、上記太陽電池セル、サーモ・モジュールおよび両者の固着に関し、両者とも単一のものの場合のみしか具体的な開示がなく、それらが複数からなる太陽電池装置を開示したものではないから、それゆえ、引用例1発明におけるような機械的強度を考慮した設計をする必要がないものといえる。 かかる前提を基礎に考察するならば、機械的強度を要さない単一の太陽電池セルとサーモ・モジュールとの固着に際しては、そもそも余分な強度部材である電気絶縁性の基板を採用すべき積極的な理由がないのであり、両者の電気絶縁性のみ考慮すればよいのであるから、これに電気絶縁膜を用いることは当業者の射程の範囲であるといえる。この場合、周知ないしは慣用されているSiO2のような電気絶縁酸化膜を電気絶縁膜に採用することに何らかの困難性があるとはいえず、また、これを採用するについて本願明細書に特段の有意な効果も記載がないから、この点は単なる周知・慣用手段の採用というに相当する。 そして、引用例2発明には、発熱により性能が劣化する電子素子と、ペルチェ効果を利用した熱電冷却素子のP形半導体とN形半導体とを接合する電極と、を絶縁層を介して直接固着する点が開示されており、これによれば、上記電子素子が本願発明とは異なる有機薄膜電界発光素子であることを割り引いて考慮しても、電気絶縁性の基板を適宜省略して絶縁層のみを介して発熱により性能が劣化する電子素子と熱電冷却素子とを直接固着することが引用例2発明から導出可能であることは明らかである。 よって、上記相違点1に係る本願発明の事項は、引用例1発明および引用例2発明に基づき、上記周知・慣用手段を採用することにより容易になし得たことである。 [相違点2]について 上記相違点1についてで述べたように、引用例2発明には、発熱により性能が劣化する電子素子と、ペルチェ効果を利用した熱電冷却素子のP形半導体とN形半導体とを接合する電極と、を絶縁層を介して直接固着する点が開示されている。上記において「電極」が金属電極であるとの明示はないが、特段の断りがない限り、電極が金属からなることは自明であって、この点は記載されているに等しい事項といえる。 したがって、引用例1,2に接した当業者であれば、引用例2発明を、引用例1発明に適用することによって、相違点2に係る本願発明の事項に想到することは容易である。 また、本願発明の効果も引用例1,2の発明及び周知・慣用手段から予測される程度のことであって、格別とはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明、および周知・慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-27 |
結審通知日 | 2007-08-28 |
審決日 | 2007-09-10 |
出願番号 | 特願平7-224796 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柏崎 康司、加藤 昌伸 |
特許庁審判長 |
向後 晋一 |
特許庁審判官 |
里村 利光 小牧 修 |
発明の名称 | 太陽電池装置 |
代理人 | 西島 綾雄 |