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審決分類 審判 訂正 発明同一 訂正しない A01K
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A01K
管理番号 1166668
審判番号 訂正2006-39177  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-10-23 
確定日 2007-10-15 
事件の表示 特許第3104838号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3104838号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成6年11月16日に特許出願され、平成12年9月1日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その特許について平成16年3月23日に無効2004-35154号として無効審判が請求され、平成17年2月1日付けで「訂正を認める。本件の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、請求項2ないし3に係る発明についての審判請求は成り立たない」とする旨の審決がなされ、平成17年3月14日付けで本件訂正審判請求人から東京高等裁判所に前記審決のうち「本件の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との部分の取消を求める訴が平成17年(行ケ)第97号として提起され、裁判所の組織変更により知的財産高等裁判所に平成17年(行ケ)第10267号として移管され、平成17年6月13日付けで本件特許につき訂正2005-39093号として特許庁に訂正審判の請求がなされたことに基づいて平成17年7月15日付けで知的財産高等裁判所にて本件を審判官に差し戻すために前記審決を取り消す旨の決定がなされ、本件特許について前記訂正2005-39093号による訂正請求を援用したものとみなされ、平成18年6月15日付けで「訂正を認める。本件の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」旨の審決がなされ、平成18年7月25日付けで本件訂正審判請求人を原告として知的財産高等裁判所に前記審決の取消を求める訴が平成18年(行ケ)第10347号として提起され、平成18年10月23日付けで本件特許につき訂正2006-39177号として特許庁に訂正審判の請求がなされたが知的財産高等裁判所にて本件を審判官に差し戻さない旨の決定がなされ、平成19年6月5日付けで「原告の請求を棄却する。」旨の判決がなされ、本件訂正審判請求人を原告として最高裁判所に当該判決の取消を求める訴がなされているところ、平成19年7月10日付けで本件訂正審判請求に係る訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成19年8月13日付けで請求人より意見書が提出されたものである。

第2.審判請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第3104838号に係る明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を、本件審判請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正内容は以下のとおりのものである。(下線部は、特許権の設定登録時の本件特許明細書に対する訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のように訂正する。
「樹脂をマトリックスとして強化繊維によって強化形成された竿管内に釣糸を挿通させる中通し釣竿の製造方法であって、
マンドレルに厚さの厚い巻回部材を、該巻回部材側縁間に釣糸ガイド部材を沿わせる隙間を有するように巻回し、
前記隙間を前記巻回部材よりも厚さの薄い柔軟部材によって覆い(該薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きする方法を除く)、且つ、上記巻回部材の表面全体に亘って覆い、
該薄い柔軟部材の上から厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設することによって、該隙間に押し込められた薄い柔軟部材が存在しており、
その上に前記樹脂を含浸又は混合した繊維強化プリプレグを巻回し、加圧、加熱して形成し、
その後、前記マンドレルを引き抜き、前記厚い巻回部材と薄い柔軟部材を除去する中通し釣竿の製造方法であって、釣糸ガイド部材周りに流入する樹脂によって囲まれた釣糸ガイド部材の断面形状を、前記薄い柔軟部材の存在によって竿管の半径方向に突出する表面を滑らかに形成することを特徴とする中通し釣竿の製造方法。」
(2)訂正事項b
本件特許明細書の段落【0007】の記載を以下のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本発明は、請求項1において、樹脂をマトリックスとして強化繊維によって強化形成された竿管内に釣糸を挿通させる中通し釣竿の製造方法であって、マンドレルに厚さの厚い巻回部材を、該巻回部材側縁間に釣糸ガイド部材を沿わせる隙間を有するように巻回し、前記隙間を前記巻回部材よりも厚さの薄い柔軟部材によって覆い(該薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きする方法を除く)、且つ、上記巻回部材の表面全体に亘って覆い、該薄い柔軟部材の上から厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設することによって、該隙間に押し込められた薄い柔軟部材が存在しており、その上に前記樹脂を含浸又は混合した繊維強化プリプレグを巻回し、加圧、加熱して形成し、その後、前記マンドレルを引き抜き、前記厚い巻回部材と薄い柔軟部材を除去する中通し釣竿の製造方法であって、釣糸ガイド部材周りに流入する樹脂によって囲まれた釣糸ガイド部材の断面形状を、前記薄い柔軟部材の存在によって竿管の半径方向に突出する表面を滑らかに形成することを特徴とする中通し釣竿の製造方法を提供する。」

第3.独立特許要件の適否
本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(前記第2.(1)参照、以下「本件訂正発明」という。)は、特許請求の範囲を減縮する目的で訂正されたものであるところ、当該発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることを要するから、特許法第29条の2の規定に該当するか否か、本件の出願の日前に出願され、その後出願公開された下記の先願明細書又は図面に記載の発明に基づいて、以下検討する。
先願:特願平6-187986号の願書に最初に添付された明細書又は図面
(特開平8-51894号公報)

1.先願明細書に記載の発明
特願平6-187986号(特開平8-51894号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の記載が認められる。
(a)「【産業上の利用分野】本発明は樹脂と強化繊維とからなる竿素材の内周面を、凹凸面に形成してある中通し竿及びその製造方法に関する。」(2頁右欄13?15行)、
(b)「【作用】つまり、凸部においても強化繊維を配置することによって、凸部自体も繊維で強化でき、糸の繰り出し時や巻き取り時において糸が圧接することによる曲げ等に対する強度を高めることができる。」(2頁右欄46?49行)、
(c)「請求項5における発明の目的は、焼成後に凹凸形成用テープを容易に剥がし易い中通し竿の製造方法を提供する点にある。この為に採られた構成は、請求項4の構成において、前記離型材と前記凹凸形成用テープとの間、及び、前記凹凸形成用テープと竿素材との間に、離型用テープを巻回することによって、焼成後に剥がす際により容易に行うことができ、凹凸面が所期通りにでき、糸の摺動抵抗の増加を来すことはない。」(3頁右欄11?19行)、
(d)「【実施例】
〔第1実施例〕中通し竿を製造工程に従って離型用テープ3,5を使用する場合について説明する。図1(イ)に示すように、芯金1に離型材としてのワックス2を塗布するとともに、図1(ロ)に示すように、この上から離型用のポリエステルテープ3をそのテープ3の側面同士が接触する状態に密巻きし、この状態から図1(ハ)に示すように、凹凸形成用のテープ4を芯金軸芯方向に所定間隔を持って巻回するようにしてある。この凹凸形成用のテープ4は基材が布であり、細い芯金1へも適用できるように柔軟性、凹凸面の精度を維持する為の耐熱性、芯金軸芯方向での所定間隔の精度を維持する為の無延伸性、を備えることが要求される。図1(ニ)に示すように、更に、凹凸形成用テープ4の上より、離型用のポリエステルテープ5をそのテープ5の側面同士が接触する状態に密巻きする。これによって、凹凸形成用テープ4の剥離が容易になる。この凹凸形成用テープ4を巻回したものに油性ワックス6を塗布し、凹凸形成用テープ4の剥離を良好に行えるようにするとともに、凹凸形成用テープ4が施されていない竿内面部(後記する凹凸面9A,9Bにおける凸面9Bに相当する部分)に油性ワックス6を残して撥水性を付与するようにしてある。この状態より、図2(イ)に示すように、周方向に配した炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状プリプレグをテープ状に細断し、そのテープ7Aを側面同士が接触する状態に密巻きして、最内層を形成する。これより更に、図2(ロ)に示すような、前後端の膨出嵌合部を形成するプリプレグパターン7aを巻回した後、図2(ハ)に示すように、炭素繊維を軸芯方向に配したプリプレグテープ7Bを、その側面同士が接触する状態になるように密巻きして、第2層を形成する。そして、さらに、周方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ7Cと軸芯方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ7Dを巻回して第3層及び第4層を形成し、図4に示すように、4層構造の竿素材7を形成する。このような竿素材7の上から、図2(ニ)に示すように、保形用テープとしてのポリエステルテープ8を巻回して、図3(イ)に示すように、焼成し、図3(ロ)に示すように、焼成後ポリエステルテープ8を剥離し、図3(ハ)に示すように、離型用テープ3,5とともに凹凸形成用テープ4を取り外す。これによって、内周面に螺旋状の凹凸面9A,9Bを有する竿素材7を形成することができるとともに、凸面9B内に周方向の繊維を配置することができるのである。」(4頁左欄50行?同頁右欄42行)、
(e)「凸面9Bの断面形状としては、角形に近いが、台形、三角形等を採用できる。又、角部が先鋭とならないように丸みを持たせたものでもよい。」(4頁右欄47?50行)、
(f)「図8に示すように、軸芯方向に強化繊維を配したプリプレグ7Eを複数段に重合わせるとともに、それらプリプレグ7Eの間に、強化繊維を二方向に配したガラスクロス7Fを挟み込んで、竿素材7を形成してもよい。この場合に、第1層としてガラスクロス7Fを配しているが、この場合に製造工程としては次のようになる。つまり、芯金1にワックス2を塗布した状態で、凹凸形成用テープ4を所定間隔をおいて巻回するとともに、その間隔内に表面高さを揃えてプリプレグテープ7Gを巻回し、この上からガラスクロス7Fを巻回する。このように、ガラスクロス7Fを層間に介在させることによって、巻回する場合に軸芯方向に強化繊維を配したプリプレグが所謂バラケを生ずることを阻止できる。」(5頁左欄40行?同頁右欄2行)。

上記記載によると、先願明細書には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「樹脂と強化繊維とからなる竿素材の内周面を、凹凸面に形成してある中通し竿の製造方法であって、
(イ)芯金1に離型材としてのワックス2を塗布し、
(ロ)この上から離型用のポリエステルテープ3をそのテープ3の側面同士が接触する状態に密巻きし、
(ハ)凹凸形成用のテープ4を芯金軸芯方向に所定間隔を持って巻回し、
(ニ)更に、凹凸形成用テープ4の上より、離型用のポリエステルテープ5をそのテープ5の側面同士が接触する状態に密巻きすることによって、凹凸形成用のテープ4間に形成された前記所定間隔において該離型用のポリエステルテープ5が突出することによりその突出部分に対応して外表面に凹部を形成しており、
(ホ)離型用のポリエステルテープ5の上に、周方向に配した炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状プリプレグをテープ状に細断したプリプレグテープ7Aを側面同士が接触する状態に密巻きすることによって、離型用のポリエステルテープ5の前記外表面に形成された凹部に該プリプレグテープ7Aが突出した状態で竿素材の最内層を形成し、
(ヘ)前後端の膨出嵌合部を形成するプリプレグパターン7aを巻回し、
(ト)炭素繊維を軸芯方向に配したプリプレグテープ7Bを、その側面同士が接触する状態になるように密巻きして、第2層を形成し、さらに、周方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ7Cと軸芯方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ7Dを巻回して第3層及び第4層を形成して4層構造の竿素材7を形成し、
(チ)竿素材7の外周面に保形用テープとしてのポリエステルテープ8を巻回して竿素材7を焼成し、
(リ)焼成後ポリエステルテープ8を剥離し、離型用テープ3,5とともに凹凸形成用テープ4を取り外し、竿の内周面に螺旋状の凹面9A及び凸面9Bを有する竿素材7を形成する中通し竿の製造方法。」

2.対比
本件訂正発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「芯金1」及び「プリプレグテープ7B、プリプレグテープ7C、プリプレグテープ7D」が、本件訂正発明の「マンドレル」及び「樹脂を含浸又は混合した繊維強化プリプレグ」にそれぞれ相当する。
そして、先願発明の「凹凸形成用テープ4」が竿素材の内周面に糸の摺動抵抗を軽減する凹凸面を形成できるに足る程度の厚さを有するものとして、本件訂正発明の「厚さの厚い巻回部材」に対応するとともに、先願発明の「離型用のポリエステルテープ5」が離型が容易でかつ前記凹凸面が所期通りに形成できる厚さを有するものとして、本件訂正発明の「薄い柔軟部材」に対応する。
また、先願発明の「(ハ)凹凸形成用のテープ4を芯金軸芯方向に所定間隔を持って巻回」することは、本件訂正発明の「マンドレルに厚さの厚い巻回部材を、該巻回部材側縁間に隙間を有するように巻回」することに相当するとともに、先願発明の「(ホ)離型用のポリエステルテープ5の上に、周方向に配した炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状プリプレグをテープ状に細断したプリプレグテープ7Aを側面同士が接触する状態に密巻きして、竿素材の最内層を形成」することと、本件訂正発明の「薄い柔軟部材の上から厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設」することは、前記プリプレグテープ7Aの本来の存在意義が釣糸ガイド部材を形成することにあるから、「薄い柔軟部材の上から釣糸ガイド部材を構成する素材を配設」することで共通する。
さらに、マンドレルに樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して焼成して釣竿を形成する際に加圧すること、及び、焼成後マンドレルを引き抜くことは常套手段である。
そうすると、本件訂正発明と先願発明とは、下記の点で一致し、並びに一応相違するものと認められる。

一致点
「樹脂をマトリックスとして強化繊維によって強化形成された竿管内に釣糸を挿通させる中通し釣竿の製造方法であって、
マンドレルに厚さの厚い巻回部材を、該巻回部材側縁間に隙間を有するように巻回し、
前記隙間を厚さの薄い柔軟部材によって覆い、且つ、上記巻回部材の表面全体に亘って覆い、
該薄い柔軟部材の上から厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に釣糸ガイド部材を構成する素材を配設し、
その上に前記樹脂を含浸又は混合した繊維強化プリプレグを巻回し、加圧、加熱して形成し、
その後、前記マンドレルを引き抜き、前記厚い巻回部材と薄い柔軟部材を除去する中通し釣竿の製造方法。」

相違点(A)
厚さの厚い巻回部材間の隙間を厚さの薄い柔軟部材によって覆う構成において、本件訂正発明では、「隙間を厚さの厚い巻回部材よりも厚さの薄い柔軟部材によって覆い(該薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きする方法を除く)」ものであるのに対し、先願発明では、「薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きする」ものである点。
相違点(B)
釣糸ガイド部材を構成する素材を配設することにおいて、本件訂正発明では、「薄い柔軟部材の上から厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設することによって、該隙間に押し込められた薄い柔軟部材が存在して」いるのに対し、先願発明では、「離型用のポリエステルテープ5の上に、周方向に配した炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状プリプレグをテープ状に細断したプリプレグテープ7Aを側面同士が接触する状態に密巻きすることによって、離型用のポリエステルテープ5の外表面に形成された凹部に該プリプレグテープ7Aが突出した状態で竿素材の最内層を形成し」ている点。
相違点(C)
前記薄い柔軟部材の存在によって、本件訂正発明では、釣糸ガイド部材周りに流入する樹脂によって囲まれた釣糸ガイド部材の断面形状を、竿管の半径方向に突出する表面を滑らかに形成する機能を有するのに対し、先願発明では、該機能を有するものか不明である点。

3.判断
(1)相違点(A)について
特許明細書には、本件訂正発明の「厚さの薄い柔軟部材」に関し、
「【作用】請求項1では、厚さの厚い巻回部材を、釣糸ガイド部材を沿わせられる隙間を有してマンドレルに巻回させれば、この隙間に沿わせて釣糸ガイド部材を配設し、この上からプリプレグを巻回して成形すれば、竿管内面に釣糸ガイドが突出形成できるが、これでは前記隙間における釣糸ガイド部材にプリプレグの樹脂が流入して硬化すると、釣糸ガイド部材の表面に樹脂による角部を形成することになるため、釣糸が接触すると損傷したり切断されたりする虞がある。そこで、上記隙間を厚さの薄い柔軟部材によって覆い、これを介して釣糸ガイド部材を沿わせれば、釣糸ガイド部材周りに流入する樹脂によって囲まれた釣糸ガイド部材の断面形状は、前記薄い柔軟部材の存在によって竿管の半径方向内方に突出する表面が滑らかに形成され、釣糸を滑らかに案内できる。」(段落【0010】)、
「ここでは巻回部材20は帯状に細長い形態を成しており、これを図のように、その巻回部材20の側縁間に針金状の釣糸ガイド部材24を沿わせる適切な間隔をおいて螺旋状に巻回し、螺旋状に連続した隙間SPを形成している。この隙間の上を、耐熱性の高いポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート(PET)から成る厚さの薄い柔軟部材22で覆う。この実施例では巻回作業が容易となるように厚さの厚い巻回部材20の表面全体に亘って覆っている。」(段落【0014】)、と記載されている。
上記記載によると、本件訂正発明の「厚さの薄い柔軟部材」は、釣糸ガイド部材周りに流入する樹脂によって囲まれた釣糸ガイド部材の断面形状を、竿管の半径方向内方に突出する表面が滑らかに形成させるためのものであり、その巻き方としては、厚い巻回部材20の隙間とともに厚い巻回部材20の表面全体を厚さの薄い柔軟部材22で覆う方法が発明の詳細な説明で裏付けられているのみであり、その他の構成は発明の詳細な説明には記載されていないので、本件訂正発明における「隙間を厚さの薄い柔軟部材によって覆い(該薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きする方法を除く)」は、隙間とともに厚い巻回部材20の表面全体を厚さの薄い柔軟部材22で覆うものを含むが、薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きするものは含まれないものと認められる。
そこで、先願発明の「離型用のポリエステルテープ5」についてみると、先願明細書には、「凹凸形成用テープ4の上より、離型用のポリエステルテープ5をそのテープ5の側面同士が接触する状態に密巻きする。これによって、凹凸形成用テープ4の剥離が容易になる。」(上記(d)の記載参照。)と記載されている。先願発明の「離型用のポリエステルテープ5」は、凹凸形成用テープ4の剥離を容易にするためのものであり、離型用のポリエステルテープ5をそのテープの側面同士が接触する状態に密巻きされているが、離型用のポリエステルテープ5は凹凸形成用テープ4及びその隙間を被覆していれば、その側面同士が接触する状態に密巻きしたものでなくてもその作用を奏することは明らかである。
また、本件訂正発明は、隙間形成用の厚さの厚い巻回部材よりも厚さの薄い柔軟部材によって前記隙間を覆う構成であるのに対して、先願発明においては、その実施例を示す図4に、隙間形成用の凹凸形成用テープ4よりも厚さの厚い離型用のポリエステルテープ5によって前記隙間を覆う構成が図示されているところではあるが、離型用のポリエステルテープ5の厚さを隙間形成用の凹凸形成用テープ4よりも特に厚くすべき技術的理由はないから、当業者は、その逆の厚さ関係を含めて前記実施例に示される厚さ関係に限定されないものと理解することは、明らかである。
そうすると、先願発明において、隙間を厚さの厚い巻回部材よりも厚さの薄い柔軟部材によって覆い(該薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きする方法を除く)ように構成することは当業者なら適宜できる程度の設計上の微差に過ぎない。

(2)相違点(B)について
先願発明では、プリプレグテープ7Aは、炭素繊維が周方向に配されていて細断されていて、薄い柔軟部材(離型用のポリエステルテープ5)の上から凹凸形成用テープ4とその隙間に巻回されており、凹凸形成用テープ4上に巻回されたプリプレグテープ7Aは、焼成後、竿の内周面(凹面9A)を形成し、凹凸形成用テープ4間の隙間に巻回されたプリプレグテープ7Aは、焼成後、竿の内周面に凸面9Bを形成し釣糸ガイドとして作用するものであるから、凹凸形成用テープ4間の隙間に巻回されたプリプレグテープ7Aは、薄い柔軟部材の上から前記隙間に沿って配設した、釣糸ガイド部材形成用のテープということができる。
ところで、「沿う」の通常の語義は「線条的なもの、または線条的に移動するものに、近い距離を保って離れずにいる意。長く連なるものから離れずに進んだり続いたりする場合に「沿」を使う。」(広辞苑第五版)というものである。そして、本件訂正発明の「沿わせる」についても、通常の語義を離れた意味を有すると解すべき理由はないから、釣糸ガイド部材を「隙間」に沿わせるとは、釣糸ガイド部材が、巻回部材側縁間の隙間に対して近い距離を保って離れずにいる状態を意味すると解されるものである。
しかして、先願発明における,焼成前のプリプレグテープ7Aの内側突出部分(焼成後の凸面9B)は、凹凸形成用のテープ4間に形成された隙間の中に位置してはいないものの、凹凸形成用のテープ4間に形成された隙間に対して離型用のポリエステルテープ5の突出部分が形成されることに対応してその外表面に周方向に連続した凹部が形成され、該凹部にテープ状に細断したプリプレグテープ7Aを巻回することで前記隙間に対応する部分において周方向に連続した前記プリプレグテープ7Aの内側突出部分が形成されることにより、近い距離を保って離れずにいる状態にあることになるから、テープ7Aの前記内側突出部分の構成は、凹凸形成用テープ4間に形成された隙間に「沿わせる」ものであるということができ、先願発明は、本件訂正発明の「薄い柔軟部材の上から厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設する」ものである。
すなわち、先願発明のプリプレグテープ7Aは、その側面同士が接触する状態に密巻きすることによって竿素材の最内層を形成するものとして、凹凸形成用のテープ4により形成された隙間に対応する離型用のポリエステルテープ5の凹部を単に覆えばよいというものではなく、前記のように、周方向に炭素繊維を配してテープ状に細断したプリプレグテープ7Aをもって巻回する技術的意義は、凹凸形成用のテープ4により形成された隙間に対応する離型用のポリエステルテープ5の凹部の形状に適合するように、炭素繊維により糸に対する接触抵抗が強化されたプリプレグテープ7Aが入り込むことでプリプレグテープ7Aの内側突出部分(焼成後の凸面9B)として釣糸ガイド部材が形成されるべく、該プリプレグテープ7Aを前記隙間に沿わせて配設するものである。そして、プリプレグテープ7Aにより形成される最内層のうち、前記隙間以外に巻回される部分については、釣糸ガイド部材を形成する目的に何ら寄与するものではないために当初から格別の存在意義がなく、ひいては特に巻回する必要がないことは、当業者に自明である。
しかして、先願発明は、凹凸形成用のテープ4により形成された隙間に対応してプリプレグテープ7Aの内側突出部分を形成することに技術的意義があるから、離型用のポリエステルテープ5の上にテープ状に細断したプリプレグテープ7Aを巻回する作用により、前記内側突出部分が有効に形成されるべく前記隙間に離型用のポリエステルテープ5が押し込められた状態で存在することになるのは明らかであり、実際に実施例を示す図4に、凹凸形成用のテープ4からなる厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に離型用のポリエステルテープ5が押し込められた状態で存在することが図示されているところ、前記相違点Aについて検討したように、離型用のポリエステルテープ5として、前記厚さの厚い巻回部材よりも厚さの薄い柔軟部材とする構成を排除するものではないから、該構成を採用することにより、先願発明として「該隙間に押し込められた薄い柔軟部材が存在して」いるものになる。
そうすると、先願発明は「薄い柔軟部材の上から厚さの厚い巻回部材の側縁によって形成された隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設する」ものであるから、釣糸ガイド部材を沿わせて配設する隙間を対象に、本件訂正発明のように「該隙間に押し込められた薄い柔軟部材が存在して」いる構成とすることは、当業者が適宜できる設計上の微差に過ぎない。

(3)相違点(C)について
先願発明は、前記相違点Bについて検討したように、凹凸形成用テープ4間の隙間を薄い柔軟部材(離型用のポリエステルテープ5)で覆い、ついで該薄い柔軟部材の上から該隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設することによって、該隙間に押し込められた薄い柔軟部材が存在しているものであるから、これを釣竿分野の技術常識に従って加圧焼成すると、該薄い柔軟部材の存在によって、釣糸ガイド部材周りに流入する樹脂によって囲まれた釣糸ガイド部材の断面形状を、竿管の半径方向に突出する表面を滑らかに形成する作用を奏することは明らかであるから、実質的な構成の差異があるとはいえない。

(4)請求人の主張について
請求人は、本件訂正発明では、「該薄い柔軟部材の上から前記隙間に釣糸ガイド部材を沿わせて配設する工程」(以下、「前者の工程」という。)と「その上に前記樹脂を含浸又は混合した繊維強化プリプレグを巻回する工程」(以下、「後者の工程」という。)の2工程を備えているのに対して、先願発明では、「(ホ)離型用のポリエステルテープ5の上に、周方向に配した炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状プリプレグをテープ状に細断したプリプレグテープ7Aを側面同士が接触する状態に密巻きすることによって、離型用のポリエステルテープ5の前記外表面に形成された凹部に該プリプレグテープ7Aが突出した状態で竿素材の最内層を形成する工程」として、同一部材による1工程しか備えておらず、製法上の相違点を看過しているとともに、先願発明は繊維蛇行が発生するという致命的欠点を有するものである旨主張している。
しかしながら、前記「2.対比」において認定したように、本件訂正発明の前記後者の工程に相当するものとして、先願発明には、「(ト)炭素繊維を軸芯方向に配したプリプレグテープ7Bを、その側面同士が接触する状態になるように密巻きして、第2層を形成し、さらに、周方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ7Cと軸芯方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ7Dを巻回して第3層及び第4層を形成して4層構造の竿素材7を形成し」という工程がそのために別個に存在しており、先願発明の前記(ホ)の工程は、周方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ7Aにより竿素材の最内層を形成することをもって、前記前者の工程として釣糸ガイド部材を形成することに主体的意義があり、釣竿本体を形成するために繊維強化プリプレグを巻回する工程を付随的に含むとしても、該工程では周方向に炭素繊維を配したプリプレグを巻回しているために軸心方向に繊維蛇行が発生するものではないから、先願発明の前記(ホ)の工程が本件訂正発明の前記後者の工程を一部含むとしても、該後者の工程は、当業者が適宜省略可能な設計上の微差に過ぎないものというべきであり、よって、請求人の主張は、失当である。

4.まとめ
よって、本件訂正発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された上記先願出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本件訂正発明の発明者が上記先願明細書等に記載された発明の発明者と同一であるとも、本件出願の時において、その出願人が上記先願出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

第4.結び
以上のとおり、本件訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
 
審理終結日 2007-08-17 
結審通知日 2007-08-22 
審決日 2007-09-04 
出願番号 特願平6-306930
審決分類 P 1 41・ 856- Z (A01K)
P 1 41・ 161- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 辻野 安人
川島 陵司
登録日 2000-09-01 
登録番号 特許第3104838号(P3104838)
発明の名称 中通し釣竿の製造方法  
代理人 河野 哲  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 中村 誠  

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