• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1166683
審判番号 不服2003-11892  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-26 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 特願2001-190371「ネットワークゲーム用サーバ装置、ネットワークゲーム進行制御方法及びネットワークゲーム進行制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 7日出願公開、特開2003- 954〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1. 手続の経緯

本願は、平成13年6月22日の出願であって、平成15年5月19日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年6月26日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、平成15年7月28日付で手続補正がなされたものである。
その後、平成19年6月6日付で当審から拒絶理由通知がなされ、それに対して、請求人は、平成19年8月9日付の意見書の提出とともに、同日付で手続補正がなされたものである。


2.本願発明について

本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成19年8月9日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された次のとおりのものである。
「ネットワークを介してユーザが使用する端末装置との間でデータの送受信を行うネットワークゲーム用サーバ装置であって、
将来発生し得る現実の事象に対するユーザの予想内容に対応する予想データを前記端末装置から受け付け、受け付けた予想データを当該ユーザに関連付けて登録する予想データ登録手段と、
前記予想データに対して現実に発生した事象を結果データとして取得する結果データ取得手段と、
前記結果データと前記予想データとが予め定めた条件を満たすとき、当該予想データに関連付けて登録されたユーザに所定のポイントを付与するポイント付与手段と、
前記ポイントに応じて、端末装置を使用するユーザに対して所定の価値を有する対価データをユーザに付与する対価データ付与手段と、
端末装置を使用するユーザに関連付けて当該ユーザが獲得したポイント及び対価データを管理するユーザ情報管理手段と、
端末装置から対価データの付与を要求する対価データ付与要求を受信する対価データ付与要求受信手段と、
前記ユーザ情報管理手段によって管理されている対価データと当該対価データに対応して定められたポイントとの交換を要求するポイント交換要求を端末装置から受信するポイント交換要求受信手段とを備え、
前記対価データ付与手段は、前記ユーザ情報管理手段によって管理されているポイントが所定条件を満たす場合に、前記対価データ付与要求に応じて、予め複数記憶されている前記対価データの中から1つの対価データを無作為に選出してユーザに付与するとともに、付与された対価データに対応して定められたポイントを減少させ、
前記ポイント付与手段は、ポイント交換要求に応じてユーザ情報管理手段によって管理されている対価データの中からユーザによって指定された対価データを消去するとともに、当該対価データに相当するポイントをユーザに付与することを特徴とするネットワークゲーム用サーバ装置。」


3.引用例

これに対して、当審拒絶理由通知で引用された、本願特許出願前に頒布された刊行物である「iモード公式ゲームナビ」,初版,株式会社エニックス,2000年10月13日(以下、「引用例1」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。


a-1.第4頁の中央部に、
「どんなゲーム?
エニックスが提供する「ドラゴンクエストNET」。このコンテンツでは、「グランカジノ」と「カードのほこら」という、2種類のゲームを遊ぶことができる。利用料金は、各100円とかなりの格安。しかも、この2つのゲームでは、カードとゴールドが共通。つまり、「グランカジノ」でゴールドを稼ぎ、「カードのほこら」でカード購入することができるのだ。さらに、稼いだゴールドやメダルの数によって、レアなグッズが当たるぞ。(ひらかた)」と記載されている。

a-2.第5頁の中央部に、
「カードのほこら
「カードのほこら」は、カードを集めるためにドラゴンクエストの世界を冒険するゲームだ。
フィールドを探索しながら、遭遇したモンスターと戦い、勝つとモンスターがカードに変身する。こうやって、ドンドンカードを集めていくのだ。
カードはのみの市やグランマーズの館などで売買も可能なので、上手に利用してカードを集めよう。
また、世界にはいろいろな謎があり、その謎を解くのも楽しみの1つになっているのだ。」と記載されている。

a-3.第8頁の左下部に、
「格闘場
格闘場では、ゴールドを払ってモンスターと戦い、勝利を収めると一定のゴールド手に入れることができる。通常参加料は100Gで、勝利すると500Gもらうことができる。時々、闘技会が開催され、この時は参加料が200Gになり、勝利すると1200Gもらえるのだ。」と記載されている。

a-4.第9頁の上部に、
「カードのトレーディング
冒険で手に入れたカードは、「のみの市」で売りに出すことができる。「カードを飛ばす」では、合い言葉を入力することで、友達にカードを渡すことができる。
また、グランマーズの館や旅の商人(詳しくはP11)でもカードの売買をすることができる。冒険の初期、カードをほとんど持っていないときは重宝するぞ。」と記載されている。

a-5.第9頁の中央部に、
「■のみの市
のみ市では、カードを購入したり、手カードを売りに出せる。売りに出すときの値段はプレイヤーの言い値だ。上手く売り買いして、効率よくカードを集めよう。
出品後、3日間経っても売れない場合、手元に戻ってくる。」と記載され、前記記載の右側に、
「●カードを購入する場合
よくあるカード レア度の低いカードばかり。値段も安い。
ちょい珍しい レア度が中くらいのカードが主
これは珍しい 珍しいカードばかり。値段もびっくり。」と記載され、さらに、右側には、
「●カードを売却したい場合」と記載され、前記記載の下に、
上部に「●出品カード●」、左側に「No.」の表示がされ、「出品したいカードのNoを入れる。」との説明が付記されているテキストボックス、
上部に「売りたい値段」の表示がされ、「出品したカードの値段を入れる。」との説明が付記されているテキストボックス、
「カードを見る」及び「▲戻る」の表示がある入力画面が図示されている。

a-6.第11頁の左上部に、
「グランマーズの館
グランマーズの館では、カードの売買やカードを見ることができる。売却価格は、一律100G。
また、館の主が不思議な占いをしてくれるぞ。」と記載されている。

a-7.第11頁の中央部に、
「ランキング
ランキングでは今自分がどれだけのゴールドを持っているか、プレイを始めてから何日たったかなどの情報を見ることができる。
「称号」なども見ることができるので、こまめにチェックしておくと、自分の成長ぶりがよく分かるぞ。」と記載されている。

a-8.引用例1に記載のゲームである「グランカジノ」や「カードのほこら」の各ゲームを提供する「ドラゴンクエストNET」は、携帯電話を通じてゲームを提供する環境であって、携帯電話の端末側からの操作情報をネットワークを介してサーバ装置側に送り、前記操作情報に基づいてサーバ装置でゲームプログラムを実行し、前記実行した結果をネットワークを介して携帯電話の端末側に出力し、前記ゲームプログラムに利用される各種データ(ユーザ情報や、ユーザ情報に関連づけられたゲームデータ等)をサーバ装置で管理するゲームを提供する環境であることは、出願前に当業者によく知られた事項である。
よって、前記環境で提供されている「グランカジノ」、「カードのほこら」の各ゲームは、ネットワークゲームであることは自明である。
また、引用例1の「ドラゴンクエストNET」が、ネットワークを介してユーザが使用する携帯電話との間でデータを送受信を行うネットワークゲーム用サーバ装置を備えることは自明である。

a-9.引用例1に記載の上記a-3.?a-7.で摘記の「格闘場」、「のみの市」、「グランマーズの館」、「ランキング」等の各機能は、ゲームプログラムがコンピュータに実現させる機能の一部であるが、上記a-8.で説示のとおり、引用例1の「ドラゴンクエストNET」は、サーバ装置でゲームプログラムを実行する環境なので、「ドラゴンクエストNET」に備えられるネットワークゲーム用サーバ装置が、「格闘場」、「のみの市」、「グランマーズの館」、「ランキング」等の各機能を実現する手段を備えることは自明である。


上記記載事項及び記載事項から自明な事項であるa-1.?a-9.によれば、引用例1には、
「「グランカジノ」や「カードのほこら」の各ネットワークゲームを提供する「ドラゴンクエストNET」であって、
前記「ドラゴンクエストNET」は、ネットワークを介してユーザが使用する携帯電話との間でデータの送受信を行うネットワークゲーム用サーバ装置を備え、
前記ネットワークゲーム用サーバ装置は、
ゴールドを払ってモンスターと戦い、勝利を収めると一定のゴールド手に入れることができる「格闘場」と、
カードを購入したり、手カードを売りに出せる「のみの市」、
カードの売買やカードを見ることができる「グランマーズの館」、
今自分がどれだけゴールドを持っているか、プレイを始めて何日たったかなどの情報を見ることができる「ランキング」の各機能を実現する手段とを備えた「ドラゴンクエストNET」。」の発明(以下、「引用例1発明」という。)の記載が認められる。

当審拒絶理由通知で引用された、本願特許出願前に頒布された刊行物である特開2001-56834号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。

b-1.「【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、ビジネスシステム及びビジネスモデルを開示する。本発明のビジネスシステム及びビジネスモデルでは、買い手及び売り手は、取引きを行う価格範囲について同意する。売り手は、所定の価格範囲内で商品/サービスの申し出を行う。買い手は、付随的な価格決定活動の間においてより高得点を達成することによって、提供された価格範囲内でより低い価格で取引を行うことができる機会が与えられることを条件に、申し出を受け入れる。最終の価格は、同意した価格範囲内であるが、付随的な価格決定活動(PDA)の間における買い手の行動に応じて決定される。価格決定活動は、ビデオゲーム、電子ボードゲーム、スポーツ賭け、カードゲーム、その他の活動であってもよい。また、価格決定活動は、売り手、予めプグラムされたソフトウェアの相手、コンピュータの相手、同じあるいは異なる商品に対して競争する他の買い手、買い手としてではなくプレーヤーとしてのみ参加しているプレーヤー、予め設定した所定のレベル、他の人あるいはものに対して実行されることもある。価格決定活動は、オンラインあるいはオフラインで行われる。
【0009】本発明は、インターネット等の広域通信回線網を使用することにより有利に実施できる。なぜなら、多くの買い手及び売り手が時間を気にすることなく取引きを行うことができるインターネットは、本発明を実施するのに特に適したものであるからである。全ての取り引きを管理する中央集中化されたサーバーあるいはコントローラーには、インターネットの入口あるいは電子商取引のサイトのような種々のフロントエンド(front-end)を介してアクセスが可能である。中央集中化されたサーバーによって、品質管理、買い手及び売り手の資格審査、価格決定活動(PDA)と対応する商品及びサービスとの関連付け、価格決定活動(PDA)と他のデータベース、電子商取引顧客サービスとの関連付け、及びデータコントロール等の効果的な管理が可能である。
【0010】図1は、本発明の概念に対応して実行される、典型的な取引きに含まれるステップを示すフローチャート図である。図1のステップ110では、買い手は、購入を希望する商品を選択する。選択は、売り手あるいは売り手の代理業者によって管理されているウェブサイト(例えば、マスターコントローラー)を介して、ポイントアンドクリック(point-and-click)やポップアップメニュー(pop-up menu)等の通常の選択手段を用いて行われる。ウェブサイトは、オークションモデル(例えば、eBay.comのような)、逆オークションモデル(例えば、Priceline.comのような)やその他の方法等の、常に利用可能な通常の提供方法によって商品を提供することもできる。本発明は、取引を締結するために、他のビジネスモデルと独立して、あるいはそれらと組み合わせて使用可能である。例えば、オークションモデルあるいは逆オークションモデルを使用することにより、オークション価格あるいは逆オークション価格が決定され、それらについて更なるディスカウントを得られるようにすることができる。そのディスカウントは、買い手がPDAでうまく行動すれば大きくなり、買い手がうまく行動しなければ小さくなる。種々の商品の申し出及びその商品に関連するPDAは、以下に述べる実施の形態においてフロントエンドとして動作する売り手のウェブサイトあるいはホストウェブサイトを介して行われる。
【0011】ステップ120では、買い手は、利用可能なPDAの中から1つのPDAを選択する。利用可能なPDAのセットは、売り手あるいは売り手の代理業者によって予め用意され、またPDAデータベース内の実際のPDAのセットのサブセットである。入手可能なPDAは、提供される商品/サービス、提供される価格範囲、入手可能な商品の数量、商品に対する需要等の多くの因子に応じて変化する。例えば、売り手は、売り手が販売促進品目として売り払いたい特別の品目、売り手が所定の平均価格によって取引きを行うことを意図していない商品等の特別の商品については、買い手がPDAデータベース内のどのPDAも選択できるようにする。一方、販売市場において値下げする必要がない人気商品については、売り手は、他のPDAよりも高い価格となるPDAをその商品と関連付けるようにする。PDAと商品との関連や、その他商取引に関連する様々な因子(買い手、売り手、時間間隔、本発明を実施しているウェブサイトへのどこから接続したか、データベース、あるいはこれらの組み合わせ)との関連付けは、周知のデータベース管理用ソフトウェアを用いて管理及び制御される。
【0012】買い手は、PDAを選択した後、ステップ130に示されているように、支払情報を供給する。支払情報は、周知の電子商取引財務管理用ソフトウェアを使用し、統合化されたあるいは独立の暗号化技術を利用して入力及び処理される。あるいは、買い手は、電話、郵便、電子メールあるいは他の手段を介して支払情報を提供し、そして、すでに買い手の支払情報と関連づけられているパスワードあるいはその他の安全な認証方法を用いて売り手の申し出に対してアクセスすることもできる。勿論、このステップは、図1における処理のどの段階で行ってもよいが、買い手がPDAに参加することを許可される前に行うのが好ましい。
【0013】買い手がステップ120でPDAを選択すると(好ましくは、買い手がステップ130で支払情報を供給した後)、ステップ140に示されているように、PDAが開始される。PDAの実際の開始は、買い手の開始準備ができ、及び/または、PDAを開始することによって買い手が契約締結の手続きに入ることを買い手が同意し、理解していることを示す入力情報を、買い手から受け取ることが必要である。PDAは、ビデオゲーム、電子ボードゲーム、賭けゲーム、スポーツ賭けあるいは他の活動等であってもよい。また、PDAは、一人もしくは複数のプレーヤーによる活動であり、インターネットのような広域通信回線網を介して買い手に送られる、コンピューターで実行可能なコードで構成されていてもよい。種々のPDAについては、以下に、詳細に説明する。」

b-2.「【0023】PDAの他の例として、スポーツの勝敗を予想する賭けがある。買い手は、スポーツ大会の結果、スポーツ大会の結果の組み合わせ、あるいはスポーツ大会のシーズン中における個人またはチームの成績を賭けるあるいは予想する。オッズ(odds)は、買い手の賭けの正確性に基づいて買い手に権利が与えられる価格に応じて設定される。」

また、本願特許出願前に頒布された刊行物である特開2000-157721号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。

c-1.「【0056】4.本実施形態の特徴
本実施形態の第1の特徴は、プレーヤがコイン(代価)を支払うと、複数のキャラクタ情報の中からランダムに(又は所与の条件下でランダムに)選別されたキャラクタ情報がメモリーカード(携帯型情報記憶装置)に書き込まれる点にある。このようにすることで、キャラクタ情報を購入して収集するという従来のゲーム装置では得られないゲームの楽しみ方をプレーヤに対して与えることができる。
【0057】例えば、本実施形態の比較例として、ゲームプログラム販売装置と呼ばれるものが考えられる。しかしながら、このゲームプログラム販売装置では、プレーヤが所望するゲームプログラムをプレーヤ自身が選択して購入することになる。従って、その性格はいわゆる自動販売機と何ら変わりない。
【0058】これに対して、本実施形態のゲーム装置では、ランダムに選別されたキャラクタ情報がメモリーカードに書き込まれる。従って、書き込みが終了するまでプレーヤは、どのようなキャラクタ情報が書き込まれるのかを知ることができない。このため、プレーヤは、自分が未だ収集していないキャラクタ情報が書き込まれるのを期待しながら、一体どのようなキャラクタ情報が書き込まれるのかを心待ちにすることになる。従って、単なるゲームプログラム販売装置では実現できないゲームの面白みを得ることができる。
【0059】なお、キャラクタ情報の選別は完全にランダムである必要はなく、所与の条件下でランダムに選別するようにしてもよい。例えば、所与の確率で特定のキャラクタ情報が選別されるという条件の下で、ランダムに選別するようにしてもよい。また、書き込むキャラクタ情報は、図1のネットワークを介してホスト装置からダウンロードされたものであってもよいし、ゲーム装置の記憶部に予め保持されたものであってもよい。」


4.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「携帯電話」が、本願発明の「端末装置」に相当する。

引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」は、「のみの市」や「グランマーズの館」でカードを購入することができ、その際にゴールドを用いることは自明であり、また、カードを売却してゴールドに戻すことができるものなので、引用例1発明の「ゴールド」は、本願発明の「ポイント」に相当し、引用例1発明の「カード」は、本願発明の「所定の価値がある対価データ」及び「対価データ」に相当する。

引用例1発明の「格闘場」は、携帯電話を使用するユーザが「モンスターと戦い、勝利を収めると一定のゴールド手に入れることができる」ものであり、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」が、前記「格闘場」という機能を実現する手段を備えることは上記記載事項から自明な事項a-9.で説示のとおり自明であるので、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」は、本願発明の「ポイント付与手段」であって、少なくとも、その機能の一部である「ユーザに所定のポイントを付与する」という機能を備える「ポイント付与手段」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「のみの市」や「グランマーズの館」は、携帯電話を使用するユーザがカードを購入することができ、カードを購入する際にゴールドを用いることは自明であり、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」が、前記「のみの市」や「グランマーズの館」という機能を実現する手段を備えることは上記記載事項から自明な事項a-9.で説示のとおり自明であるので、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」は、本願発明と同様に、「前記ポイントに応じて、端末装置を使用するユーザに対して所定の価値を有する対価データをユーザに付与する対価データ付与手段」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」は、上記記載事項から自明な事項a-8.で説示のとおり、ゲームプログラムに利用される各種データ(ユーザ情報や、ユーザ情報に関連づけられたゲームデータ等)をサーバ装置で管理するゲームを提供する環境であることは、出願前に当業者によく知られた事項であるので、「ドラゴンクエストNET」で提供されている「グランカジノ」、「カードのほこら」の各ネットワークゲームは、ネットワークゲーム用サーバ装置でゲームプログラムが実行され、前記ゲームプログラムに利用される各種データをネットワークゲーム用サーバ装置で管理するゲームであることは当業者にとって自明なことである。
また、前記ネットワークゲームがネットワークゲーム用サーバ装置でゲームプログラムが実行され、前記ゲームプログラムに利用される各種データをネットワークゲーム用サーバ装置で管理するゲームであることは、引用例1発明の「のみの市」や「グランマーズの館」で行われているカードの売買も、ネットワークゲーム用サーバ装置側で、カードを売買する携帯電話の使用者であるユーザの情報とカードの情報とを対応づけなければできない処理であることや、引用例1発明の「ランキング」において、自分のゴールドの情報をランキングとしてみることができるので、ネットワークゲーム用サーバ装置側で前記ユーザの情報とゴールドの情報とを対応づけなければできない処理であることからも明らかである。
そうすると、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」は、本願発明と同様に、「端末装置を使用するユーザに関連付けて当該ユーザが獲得したポイント及び対価データを管理するユーザ情報管理手段」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「のみの市」や「グランマーズの館」は、携帯電話を使用するユーザがカードを購入することができるものであり、また、前記ユーザがカードを購入するという操作情報を、ゲームプログラムを実行する引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」が受信することは自明であるので、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」は、本願発明と同様に、「端末装置から対価データの付与を要求する対価データ付与要求を受信する対価データ付与要求受信手段」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「のみの市」や「グランマーズの館」は、携帯電話を使用するユーザがカードを売却してゴールドに戻すことができるものであり、また、前記ユーザがカードを売却してゴールドに戻すという操作情報を、ゲームプログラムを実行する引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」が受信することは自明であり、また、ユーザと関連づけられたゴールドやカード等のデータを当該「ネットワークゲーム用サーバ装置」が管理していることは上述したように自明であるので、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」は、本願発明と同様に、「前記ユーザ情報管理手段によって管理されている対価データと当該対価データに対応して定められたポイントとの交換を要求するポイント交換要求を端末装置から受信するポイント交換要求受信手段」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「のみの市」や「グランマーズの館」は、携帯電話を使用するユーザが、カードを購入することができるものであり、その際にゴールドを用いることは自明であり、また、自身の所持しているカードの中から売却したいカードを所定の値段で売却してゴールドに戻すことができるものである。
そして、ユーザと関連づけられたゴールドやカード等のデータを引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」が管理していることは上述したように自明であるので、引用例1発明の「ドラゴンクエストNET」の「ネットワークゲーム用サーバ装置」は、本願発明の「対価データ付与手段」であって、少なくとも、その機能の一部である「前記ユーザ情報管理手段によって管理されているポイントが所定条件を満たす場合に、前記対価データ付与要求に応じて、予め複数記憶されている前記対価データの中から1つの対価データをユーザに付与するとともに、付与された対価データに対応して定められたポイントを減少させ」るという機能を備える「対価データ付与手段」に対応する構成を備えているといえ、同時に、本願発明の「ポイント付与手段」であって、少なくとも、その機能の一部である「ポイント交換要求に応じてユーザ情報管理手段によって管理されている対価データの中からユーザによって指定された対価データを消去するとともに、当該対価データに相当するポイントをユーザに付与する」という機能を備える「ポイント付与手段」に対応する構成を備えていると言える。

したがって、本願発明と引用例1発明の両者は、
「ネットワークを介してユーザが使用する端末装置との間でデータの送受信を行うネットワークゲーム用サーバ装置であって、
ユーザに所定のポイントを付与するポイント付与手段と、
前記ポイントに応じて、端末装置を使用するユーザに対して所定の価値を有する対価データをユーザに付与する対価データ付与手段と、
端末装置を使用するユーザに関連付けて当該ユーザが獲得したポイント及び対価データを管理するユーザ情報管理手段と、
端末装置から対価データの付与を要求する対価データ付与要求を受信する対価データ付与要求受信手段と、
前記ユーザ情報管理手段によって管理されている対価データと当該対価データに対応して定められたポイントとの交換を要求するポイント交換要求を端末装置から受信するポイント交換要求受信手段とを備え、
前記対価データ付与手段は、前記ユーザ情報管理手段によって管理されているポイントが所定条件を満たす場合に、前記対価データ付与要求に応じて、予め複数記憶されている前記対価データの中から1つの対価データを選出してユーザに付与するとともに、付与された対価データに対応して定められたポイントを減少させ、
前記ポイント付与手段は、ポイント交換要求に応じてユーザ情報管理手段によって管理されている対価データの中からユーザによって指定された対価データを消去するとともに、当該対価データに相当するポイントをユーザに付与することを特徴とするネットワークゲーム用サーバ装置」
の点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1:「ネットワークゲーム用サーバ装置」が、本願発明では、「将来発生し得る現実の事象に対するユーザの予想内容に対応する予想データを前記端末装置から受け付け、受け付けた予想データを当該ユーザに関連付けて登録する予想データ登録手段」と「前記予想データに対して現実に発生した事象を結果データとして取得する結果データ取得手段」とを備え、「ポイント付与手段」が「所定のポイント」を「前記結果データと前記予想データとが予め定めた条件を満たすとき、当該予想データに関連付けて登録されたユーザ」に対して付与するものであるのに対して、引用例1発明では、そのような限定がない点。

相違点2:「ネットワークゲーム用サーバ装置」に備えられる「対価データ付与手段」が、本願発明では、前記対価データ付与要求に応じて、予め複数記憶されている前記対価データの中から1つの対価データを選出してユーザに付与する際に、「無作為に選出」するものであるのに対して、引用例1発明では、携帯電話の使用者が購入する「カード」を無作為に選出して携帯電話の使用者に付与するとの限定がない点。


5.判断

相違点1について
引用例2には、通信回線網において、スポーツの勝敗(本願請求項1の「将来発生し得る現実の事象」に相当。)を予想するゲームの発明(特に、記載事項b-2.の段落【0023】の記載を参照)が記載されている。
また、前記スポーツの勝敗は、本願の請求項1に係る発明の発明特定事項の「将来発生し得る現実の事象」に相当するものといえる。
そして、引用例1発明と引用例2に記載された発明は、共にネットワークゲームの技術分野に属する発明であるから、引用例1発明において、上記引用例2に記載されたスポーツの勝敗を予想する構成を採用して、「将来発生し得る現実の事象に対するユーザの予想内容に対応する予想データを前記端末装置から受け付け、受け付けた予想データを当該ユーザに関連付けて登録する予想データ登録手段」及び「前記予想データに対して現実に発生した事象を結果データとして取得する結果データ取得手段」とを備える点を限定し、また、「ポイント付与手段」が「所定のポイントを付与する」条件、対象として「前記結果データと前記予想データとが予め定めた条件を満たすとき、当該予想データに関連付けて登録されたユーザ」と限定することは当業者が容易になし得る事項にすぎない。

相違点2について
ゲームにおいて、ゲームを操作するプレーヤが硬貨、コイン等の対価を支払うと、対価に見合う複数の対価データの中からランダムに選出された対価データを支払う技術自体は、特に例示するまでもないが、例えば、周知例1(特に、周知例1の摘記事項c-1.の「【0056】4.本実施形態の特徴
本実施形態の第1の特徴は、プレーヤがコイン(代価)を支払うと、複数のキャラクタ情報の中からランダムに(又は所与の条件下でランダムに)選別されたキャラクタ情報がメモリーカード(携帯型情報記憶装置)に書き込まれる点にある。このようにすることで、キャラクタ情報を購入して収集するという従来のゲーム装置では得られないゲームの楽しみ方をプレーヤに対して与えることができる。」の記載を特に参照)に示されるように従来周知の技術である。
したがって、相違点2に係る構成は、従来周知の技術にすぎず、引用例1発明において、相違点2に係る構成を備えるようにすることは当業者が何ら困難なく容易に想到し得る事項にすぎない。

そして、本願発明の効果は、引用例1発明、引用例2に記載された発明及び従来周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.まとめ

以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-24 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願2001-190371(P2001-190371)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 隆一植野 孝郎  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 濱田 聖司
森内 正明
発明の名称 ネットワークゲーム用サーバ装置、ネットワークゲーム進行制御方法及びネットワークゲーム進行制御プログラム  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  
代理人 樋口 次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ