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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166691
審判番号 不服2004-3136  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-18 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 特願2002- 89798「ネットワークゲームシステム、データ配信システム、ゲーム装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 307〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、出願日が、平成14年3月27日である、特願2002-89798号であって、平成16年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年2月18日付けで審判請求がなされ、平成16年3月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月12日付けの手続補正を却下する。
[理由] 独立特許要件
(1)補正後の本願発明
平成16年3月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】ゲームデータサーバと複数のゲーム端末とを含むネットワークゲームシステムにおいて、
前記複数のゲーム端末は、それぞれ、
ユーザの操作に応じて、前記ゲームデータサーバにゲームデータ要求を送信するゲームデータ要求送信手段と、
前記ゲームデータ要求送信手段により送信されるゲームデータ要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信されるゲームデータを受信するゲームデータ受信手段と、
該ゲームデータ受信手段により受信されるゲームデータに基づいてゲームを実行するゲーム実行手段と、
当該ゲーム端末を識別する識別情報又は当該ゲーム端末のユーザを識別する識別情報を含む、前記ゲームデータ要求とは異なる日時条件要求を送信する日時条件要求送信手段と、
該日時条件要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信される日時条件を受信する日時条件受信手段と、
受信される日時条件を記憶する日時条件記憶手段と、
前記ユーザの操作に応じて現在日時情報を取得する現在日時情報取得手段と、
前記現在日時情報取得手段により前記ユーザの操作に応じて取得される現在日時情報と前記日時条件記憶手段に記憶される日時条件とに基づいて前記ゲームデータ要求の送信が許可されているか否かを判断し、許可されていないと判断する場合に、前記ゲームデータ要求送信手段による前記ユーザの操作に応じた前記ゲームデータ要求の送信を制限するゲームデータ要求送信制限手段と、を含み、
前記ゲームデータサーバは、
前記ゲーム端末から日時条件要求を受信する日時条件要求受信手段と、
受信される日時条件要求に含まれる前記いずれかの識別情報に基づいて日時条件を生成し、前記ゲーム端末に返信する日時条件送信手段と、
前記複数のゲーム端末からそれぞれゲームデータ要求を受信するゲームデータ要求受信手段と、
前記ゲームデータ要求受信手段により受信されるゲームデータ要求に応じてゲームデータを返信するゲームデータ返信手段と、を含む、
ことを特徴とするネットワークゲームシステム。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1の
1)「前記ゲームデータサーバにゲームデータ要求を送信する」に関して、「ユーザの操作に応じて」との限定を付加、
2)「日時条件要求」に関して、「前記ゲームデータ要求とは異なる」との限定を付加
3)「現在日時情報を取得する」及び「取得される」に関して、「前記ユーザの操作に応じて」との限定を付加
4)「ゲームデータ要求の送信を制限するゲームデータ要求送信制限手段」に関して、「前記ゲームデータ要求の送信が許可されているか否かを判断し、許可されていないと判断する場合に」、及び「前記ユーザの操作に応じた前記」との限定を付加
する補正であるから、1)?4)に係る補正は全て、補正前の請求項1の発明特定事項を限定的に減縮するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の目的要件を満たすものであるから、次に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特許第3219747号公報(以下、引用例1という。)には、以下の点が記載されている。

[記載事項1]
「【0054】ゲームシステムは、端末装置である携帯電話200と、携帯電話200から伝送路を介して送信される配信要求情報に基づきゲーム情報を生成し、携帯電話200へ向けゲーム情報を伝送するゲーム情報配信装置100とを含んで構成されている。
【0055】ここで、ゲーム情報配信装置100と携帯電話200とはパケット網300を介して接続されている。また、ゲーム情報配信装置100と携帯電話200間の伝送路は、無線の伝送路320と、有線の伝送路310とを含んで構成されている。
【0056】なお、パケット網300内には携帯電話200のための基地局やパケットの分解組立装置等が介在しており、パケットの形態でゲーム情報配信装置100と携帯電話200間でデータが送受信される。また、実際には複数の携帯電話200がパケット網300を介してゲーム情報配信装置100と接続されている。
【0057】まず、プレーヤーが携帯電話200を用いてパケット網300に接続し、携帯電話200は、プレーヤーの操作に基づき生成した配信要求データをゲーム情報配信装置100へ向け送信手段に送信させる。ゲーム情報配信装置100では配信要求に応じたゲーム情報を生成し、携帯電話200へ向け送信手段に送信させる。
【0058】携帯電話200は、ゲーム情報配信装置100からのゲーム情報を受信し、画面にゲーム画像を表示してゲームを実行する。」

[記載事項2]
「【0062】以下、恋愛シミュレーションゲームを行う場合を例に採り説明する。
【0063】図3は、本実施形態の一例に係るゲーム画面の画面遷移の一例を示す図である。
【0064】例えば、ゲームの1場面において、「それじゃデートしようか」という問いかけの画面400が表示部220に表示され、プレーヤーは、携帯電話200の数字キーの1を押して「デートする」を選択したことを想定する。
【0065】プレーヤーが「デートする」を選択したことがゲーム情報配信装置100に配信要求情報の一部として伝達され、ゲーム情報配信装置100は、プレーヤーが次にゲーム情報配信装置100にアクセスする日時を示す「じゃ、明日の午後1時にね」という返答を示す画面402を表示するための情報を生成し、携帯電話200へ向け配信する。」

[記載事項3]
「【0070】ゲーム情報配信装置100に配信要求を行う携帯電話200は、上述したように、操作部210と、操作部210からの操作情報を含む配信要求情報を送信し、ゲーム情報配信装置100からのゲーム情報を受信する送受信部290と、受信したゲーム情報を一時的に記憶する記憶部230と、記憶部230に記憶したゲーム情報をブラウザを用いて整形して液晶画面に表示する表示部220とを含んで構成されている。また、電話であるため、ゲーム音声がある場合は、受話部分から再生されることになる。
【0071】なお、ここで、ゲーム情報とは、例えば、ゲームを実行するためのデータ、プログラム、データとプログラムが一体となったオブジェクト等を意味する。また、ゲーム情報は、ゲーム画像だけでなくゲーム音声を含んでもよく、ゲーム音声だけでもよい。この場合、携帯電話200は、ゲーム情報に基づきゲーム音声を出力する音声出力部を含んで構成される。」

[記載事項4]
「【0072】ゲーム情報配信装置100は、携帯電話200からの配信要求情報を受信し、ゲーム情報を送信する送受信部190と、受信した配信要求情報に基づき、どの携帯電話200が送信したかを識別し、記憶部120に記憶された所定のデータを更新する制御部112と、受信した配信要求情報に基づき、ゲーム情報を生成するゲーム情報生成部111とを含んで構成されている。」

[記載事項5]
「【0115】また、ゲーム情報生成部111は、配信要求指定テーブル128を参照することにより、どの時刻を配信要求時として多く指定しているか判断できる。
【0116】すなわち、ゲーム情報生成部111は、これらの判断に基づき、応答時間が短く、かつ、アクセス数が少なく、配信要求時としてあまり指定していない時刻を配信要求時として指定するゲーム情報を生成する。」

[記載事項6]
「【0118】図3に示す例では、画像生成部113により、携帯電話200で「じゃ明日の午後1時にね」ということを示す画面402を表示するための画像情報が生成される。
【0119】そして、画面402でプレーヤーが数字キーの1を押して「OK」を選択した場合、「OK」を選択したという情報がゲーム情報配信装置100に送信される。これにより、配信要求時指定が確定することになる。
・・・(中略)・・・
【0122】そして、プレーヤーが一旦ゲームを終了し、次の日の13:00前後に携帯電話200からゲーム情報配信装置100にアクセスし始めた場合、ゲーム情報生成部111は、実際の配信要求日時が指定した配信要求日時に適合しているかどうかを判断する。ゲーム情報生成部111は、ユーザーテーブル123の「指定日時」と「指定種別」を参照する。これにより、ゲーム情報生成部111は、プレーヤーが13:00頃にアクセスし始めたのであれば、指定に適合しているということが判断できる。
・・・(中略)・・・
【0124】また、携帯電話200が次の日の13:00ではなく、19:00頃にアクセスしたり、9:00頃にアクセスした場合、ゲーム情報生成部111は、ゲームにおいて不利なゲーム情報を生成する。具体的には、例えば、画像生成部113は、プレーヤーの操作するキャラクターが相手のキャラクターにふられる画面を表示するための画像情報を生成し、音声生成部114はそれに合わせた音声情報を生成する。
【0125】このように、ゲームにおいて配信要求時に適合していれば有利にし、適合していなければ不利にすることにより、プレーヤーはなるべく配信要求時に適合するようにアクセスするため、各携帯電話200からのアクセスを分散できる。これにより、ゲーム情報配信装置100の処理負荷を分散でき、プレーヤーは待ち時間が減り、快適にゲームを行うことができる。」

[記載事項7]
「【0127】以上は、ゲーム情報配信装置100で配信要求時を指定した例について説明してきたが、携帯電話200のプレーヤーと対話的な処理を行いながら配信要求時を決定することも可能である。
【0128】図7は、本実施形態の一例に係るゲーム画面の画面遷移の他の一例を示す図である。
【0129】ゲーム実行中の携帯電話200の表示部220に表示される問いかけの画面410では、「それじゃデートしようか。何時にする?_時_分」と表示される。
【0130】プレーヤーは、携帯電話200の数字キーを使用して18と30を入力する。これにより、プレーヤーが18時30分を入力したということを示す配信要求時指定情報がゲーム情報配信装置100に送信される。
【0131】ゲーム情報配信装置100では、ゲーム情報生成部111が、応答履歴テーブル126、要求頻度テーブル127、配信要求指定テーブル128を参照し、18時30分が配信要求時として適切かどうかを判断する。
【0132】ゲーム情報生成部111は、18時30分がアクセスが集中し、適切でない時間帯であると判断すると、画面412の「18時30分?ごめんなさい。その時間は忙しいの _時_分」のような配信要求の許否を示す応答の画像を表示するための情報を生成する。
【0133】携帯電話200では、画面412が表示され、プレーヤーは再び時刻を入力する。
【0134】このような作業を繰り返しながら適切な配信要求時が決定する。図3で示した例のように、強制的に時刻が指定されるのではなく、対話的に配信要求時を決定する処理を行うことにより、プレーヤーにとっても都合のよい時間帯を配信要求時として決定することができる。」

[記載事項8]
「【0137】例えば、上述した例では、ゲーム情報を配信するゲーム情報配信装置100に適用した例について説明したが、例えば、懸賞の応募や、コンサートのチケット予約等にも適用することが可能である。
【0138】次に、懸賞の応募システムに適用した例について説明する。
【0139】図8は、本実施形態の一例に係る締め切り時刻テーブル129の模式図である。
【0140】一般に、受付開始時刻直後や受付終了時刻直前は配信要求が集中する。より具体的には、例えば、コンサートのチケットの予約の開始時や、懸賞の応募期間の締め切り時等には配信要求が集中する。
【0141】このため、締め切り間際等に情報配信装置側の処理負荷が高まり、処理待ちや情報配信装置に接続しない事態が発生することになる。
【0142】この場合、情報配信装置の記憶部には、締め切り時刻テーブル129が設けられ、締め切り時刻が所定の端末番号ごとに割り振られている。
【0143】図8に示す締め切り時刻テーブル129では、「端末番号」が1?99の端末には「締め切り時刻」が9月30日18時に指定され、「端末番号」が100?199の端末には「締め切り時刻」が9月30日19時に指定され、「端末番号」が200?299の端末には「締め切り時刻」が9月30日20時に指定される。
【0144】なお、端末番号は、あらかじめ携帯電話200に割り当てられている番号である。すなわち、上述した例のように、ユーザーIDを入力させてもよいが、あらかじめ割り当てられた端末番号を使用する方式も適用できる。特に、携帯電話200の場合には、固有の電話番号が割り当てられるため、携帯電話200を重複なく識別することができる。」

[記載事項1]及び【図1】の記載より、ゲームシステムは、パケット網300を介してゲーム情報配信装置100と携帯電話200とを含んで構成されているから、ネットワークゲームシステムであるといえる。また、複数の携帯電話200は、ゲーム情報配信装置100と、それぞれ同じ関係であることは明らかである。
[記載事項1]より、携帯電話200は、プレーヤーの操作に基づき生成した配信要求情報(配信要求データ)をゲーム情報配信装置100へ向け送信する送信手段を有し、さらにゲーム情報配信装置100からのゲーム情報を受信し、画面にゲーム画像を表示してゲームを実行しているから、受信手段とゲーム実行手段を有しているといえる。
[記載事項4]より、ゲーム情報配信装置100における携帯電話200との情報の送受信は送受信部190で行われることもわかる。
[記載事項1]、[記載事項6]によれば、プレーヤーが携帯電話200を操作してゲーム情報配信装置100にアクセスするとゲーム情報が生成され、当該ゲーム情報が携帯電話200へ送信されることから、プレーヤーの携帯電話200による情報配信装置100へのアクセス(送信)は、プレーヤーの操作に基づき生成したゲーム情報の配信要求情報の送信であり、ゲーム情報配信装置100で受信されるものであるといえる。
[記載事項7]より、配信要求時は、ゲーム情報配信装置100が携帯電話200に対して強制的に指定し、送信するものにかえて、対話的に配信要求時を決定する処理、つまり、プレーヤーが携帯電話200を操作して、ゲーム情報配信装置100に配信要求時指定情報(「18時30分」という入力)を送信する処理を有しているといえる。
さらに、ゲーム情報配信装置100のゲーム情報生成部111においては、携帯電話200から送信される上記配信要求時指定情報に対応して許否を示す応答を繰り返しながら適切な配信供給時が決定されていることから、ゲーム情報配信装置100は、送受信部190を介して、携帯電話200に対し、許否を示す応答を送信していることがわかる。これに対し、携帯電話200は、前記許否を示す応答を受信していることは明らかである。そして、[記載事項1]も参照すれば、携帯電話200において情報の送信及び受信は送信手段、受信手段から行われていることも明らかである。

したがって、上記記載事項を参照すれば、引用例1には、
「ゲーム情報配信装置100と複数の携帯電話200とを含むネットワークゲームシステムにおいて、
複数の携帯電話200は、それぞれ、
プレーヤーの操作に基づき生成した配信要求情報(配信要求データ)をゲーム情報配信装置100へ向け送信する送信手段と、
携帯電話200の配信要求に応じてゲーム情報配信装置100から送信されるゲーム情報を受信する受信手段と、
ゲーム情報配信装置100からのゲーム情報を受信し、画面にゲーム画像を表示して恋愛シミュレーションゲーム等のゲームを実行する実行手段と、を含み、
プレーヤーが携帯電話200を操作して、ゲーム情報配信装置100に配信要求時指定情報を送信する送信手段と、ゲーム情報配信装置100から送信される当該配信要求時指定情報に応じた許否を受信する受信手段と、を含み、
ゲーム情報配信装置100は、
携帯電話200との情報の送受信を行う送受信部190と、ゲーム情報及び許否を示す応答の生成を行うゲーム情報生成部111とを含み、
送受信部190は、携帯電話200から配信要求時指定情報を受信し、当該配信要求時指定情報に応じた許否を示す応答を携帯電話200へ返信する手段であり、また、携帯電話200からの配信要求情報を受信し、当該配信要求情報に応じて下記ゲーム情報生成部111で生成されたゲーム情報を携帯電話200へ返信する手段であって、
ゲーム情報生成部111は、複数の携帯電話200からそれぞれゲーム情報の配信要求情報を受信して、受信された前記それぞれのゲーム情報の配信要求情報が、指定された配信要求時に適合したアクセスかどうか判断し、指定に適合していない場合、適合している場合に比べて不利なゲーム情報を生成するものであって、また、携帯電話200から送信される配信要求時指定情報に対し、許否を示す応答を生成するものであって、
送受信部190を介し、携帯電話200とゲーム情報生成部111との間で、当該配信要求時指定情報に対する許否を示す応答を繰り返すことにより、適切な配信供給時を決定し、ゲーム情報配信装置の送受信部190から携帯電話200へ送信する、ネットワークゲームシステム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

さらに、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-168861号公報(以下、引用例2という。)には、以下の点が記載されている。

[記載事項9]
「[発明の目的]
本発明は、このような従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、人間がかかわらなくても自動的に通信回線を接続して自動的に定期業務としてデータの入出力を行なうことができ、しかも複数の通信端末装置間で回線が混雑しないように通信を可能にした通信装置を提供することにある。」(公報第2頁左下欄第1?8行)

[記載事項10]
「各通信端末装置12は、第1図に示すように、中央制御部である制御装置16に、操作部18、記憶装置20、表示部22、および通信手段24が各々接続され、この通信手段24が上記中継装置14に回線接続されるようになっている。
操作部18は、手動で通信を行なったり、通信端末装置12内の各種情報を見るためにコマンドを入力したりし得るようになっている。
記憶装置20は、各通信端末装置12ごとに回線接続時間を記録したタイムスケジュールテーブルを記憶するようになっている。
表示部22は通信の内容や操作部18の入力に従った表示を行なうようになっている。
制御装置16は、通信端末装置12の全体の制御を行なうものである。そして、電源投入時に、現在の時刻を読み出して、記憶装置20に格納された各通信端末装置12ごとのタイムスケジュールテーブルに登録された時刻と比較し、上記タイムスケジュールテーブルに登録された時刻になっていないときにはその時刻まで通信を待機し、タイムスケジュールテーブルに登録された時刻と一致するときは回線接続可能に制御するようになっている。」(公報第3頁左下欄第6行?右下欄第8行)

[記載事項11]
「そしてこのホスト装置10では、各通信端末装置12のビジー情報を記憶装置30内に蓄えておき、定期的に各通信端末装置12ごとのビジー情報を処理して現在の各通信端末装置ごとのタイムスケジュールテーブルと比較し、その状況に応じてタイムスケジュールテーブルを作成し直してタイムスケジュールテーブルを更新し、各通信端末装置12に転送するようになっている。」(公報第3頁左下欄下から2行?第4頁左上欄第6行)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「ゲーム情報配信装置100」は本願補正発明の「ゲームデータサーバ」に相当する。同様に、「複数の携帯電話200」は「複数のゲーム端末」に、「プレーヤーの操作に基づき」は、「ユーザの操作に応じて」に、「ゲーム情報」は「ゲームデータ」にそれぞれ相当する。
引用発明では携帯電話200の配信要求情報(配信要求データ)に応じてゲーム情報配信装置100からゲーム情報が送信されるものであって([記載事項1]も参照)、配信要求情報はゲーム情報の配信要求であることが明らかであるから、引用発明の「配信要求情報」は本願補正発明の「ゲームデータ要求」に相当し、同様に、引用発明の「生成した配信要求情報(配信要求データ)をゲーム情報配信装置100へ向け送信する送信手段」は本願補正発明の「ゲームデータサーバにゲームデータ要求を送信するゲームデータ要求送信手段」に相当する。
引用発明の「配信要求時指定情報」は、配信要求時を決定するためのトリガーとなる情報であるから、本願補正発明の「日時条件要求」に対応する。そして、引用発明の「配信要求時指定情報を送信する処理」は、送信手段を内包していることは明らかであり、また、本願補正発明の「日時条件要求を送信する」のはユーザであることは明らかであるから、引用発明の「プレーヤーが携帯電話200を操作して、ゲーム情報配信装置100に配信要求時指定情報を送信する処理」は本願補正発明の「日時条件要求を送信する日時条件要求送信手段」に対応する。
さらに、引用発明のゲーム情報配信装置100の送受信部190は、携帯電話200からの配信要求時指定情報を受信し、ゲーム情報配信装置100内のゲーム情報生成部111において生成される当該配信要求時指定情報に応じた許否を示す応答を、携帯電話200に向けて送信しているから、引用発明の「ゲーム情報配信装置100から送信される当該配信要求時指定情報に応じた許否を示す応答を受信する受信手段」と、本願補正発明の「該日時条件要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信される日時条件を受信する日時条件受信手段」とは、ともに「該日時条件要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信される条件を受信する条件受信手段」である点で一致し、また、引用発明の「送受信部190を介し、携帯電話200とゲーム情報生成部111との間で、当該配信要求時指定情報に応じた許否を示す応答を繰り返すことにより、適切な配信供給時を決定し、ゲーム情報配信装置の送受信部190から携帯電話200へ送信する」構成と本願補正発明の「ゲーム端末から日時条件要求を受信する日時条件要求受信手段と、受信される日時条件要求に含まれる前記いずれかの識別情報に基づいて日時条件を生成し、前記ゲーム端末に返信する日時条件送信手段」とは、ともに「ゲーム端末から日時条件要求を受信する日時条件要求受信手段と、受信される日時条件要求に基づいて条件を決定し、前記ゲーム端末に返信する条件送信手段」を有する点で一致している。
また、引用発明の「携帯電話200からの配信要求情報を受信し、当該配信要求情報に応じて下記ゲーム情報生成部111で生成されたゲーム情報を携帯電話200へ返信する手段」である「送受信手段190」は本願補正発明の「複数のゲーム端末からそれぞれゲームデータ要求を受信するゲームデータ要求受信手段と、前記ゲームデータ要求受信手段により受信されるゲームデータ要求に応じてゲームデータを返信する返信手段」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「ゲームデータサーバと複数のゲーム端末とを含むネットワークゲームシステムにおいて、
前記複数のゲーム端末は、それぞれ、
ユーザの操作に応じて、前記ゲームデータサーバにゲームデータ要求を送信するゲームデータ要求送信手段と、
前記ゲームデータ要求送信手段により送信されるゲームデータ要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信されるゲームデータを受信するゲームデータ受信手段と、
該ゲームデータ受信手段により受信されるゲームデータに基づいてゲームを実行するゲーム実行手段と、
前記日時条件要求を送信する日時条件要求送信手段と、
該日時条件要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信される条件を受信する条件受信手段と、
を含み、
前記ゲームデータサーバは、
前記ゲーム端末から日時条件要求を受信する日時条件要求受信手段と、
受信される日時条件要求に基づいて条件を決定し、前記ゲーム端末に返信する条件送信手段と、
前記複数のゲーム端末からそれぞれゲームデータ要求を受信するゲームデータ要求受信手段と、
前記ゲームデータ要求受信手段により受信されるゲームデータ要求に応じてゲームデータを返信するゲームデータ返信手段と、を含む、
ことを特徴とするネットワークゲームシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「日時条件要求」が本願補正発明では
a)「当該ゲーム端末を識別する識別情報又は当該ゲーム端末のユーザを識別する識別情報を含む」、
b)「前記ゲームデータ要求とは異なる」
ものであるのに対し、引用発明では上記a)、b)のような限定がなされていない点。
[相違点2]
「ゲームデータサーバから返信される条件」及び「条件受信手段」が本願補正発明では「日時条件」及び「日時条件受信手段」であるのに対し、引用発明では単に「条件」及び「条件受信手段」である点。
[相違点3]
「複数のゲーム端末」が本願補正発明では「受信される日時条件を記憶する日時記憶手段と、前記ユーザの操作に応じて現在日時情報を取得する現在日時情報取得手段と、前記現在日時情報取得手段により前記ユーザの操作に応じて取得される現在日時情報と前記日時条件記憶手段に記憶される日時条件とに基づいて前記ゲームデータ要求の送信が許可されているか否かを判断し、許可されていないと判断する場合に、前記ゲームデータ要求送信手段による前記ユーザの操作に応じた前記ゲームデータ要求の送信を制限するゲームデータ要求送信制限手段」を有するのに対し、引用発明では当該構成を有していない点。
[相違点4]
「受信される日時条件要求に基づいて条件を決定し、前記ゲーム端末に返信する条件送信手段」が本願補正発明は「受信される日時条件要求に含まれる前記いずれかの識別情報に基づいて生成し、前記ゲーム端末に返信する日時条件送信手段」であるのに対し、引用発明では「識別情報」に係る限定がない点。

(4)当審の判断
上記[相違点1]?[相違点4]について検討する。
[相違点1]について
a)について:
引用例1の[記載事項4]には、携帯電話200を、受信した配信要求に基づいて識別していることが記載されているから、「配信要求情報」(本願補正発明の「ゲームデータ要求」に相当)には「ユーザを識別する識別情報又は当該ゲーム端末のユーザを識別する識別情報」が含まれているといえる。
また、引用例1の[記載事項8]には、携帯電話200から「配信要求」に関する情報を送信する際に、本願補正発明の「ユーザを識別する識別情報」及び「ゲーム端末を識別する識別情報」に相当する、「ユーザーID」、「端末番号」を付加させる構成が記載されている。
そして、引用例1においては、本願補正発明の「日時条件要求」に相当する「配信要求時指定情報」も、[記載事項4]の「配信要求情報」、[記載事項8]の「配信要求」に関する情報と同様に処理されていることは明らかであるから、当然「配信要求時指定情報」にも「ユーザを識別する識別情報又は当該ゲーム端末のユーザを識別する識別情報」が含まれているといえる。
b)について:
本願補正発明の「ゲームデータ要求」に相当する引用発明の「配信要求情報」と、同じく本願補正発明の「日時条件要求」に相当する引用発明の「配信要求時指定情報」とは異なるものであるから、引用発明も、「ゲームデータ要求とは異なる日時条件要求」という構成を有するものである。
以上a)、b)より、相違点1に係る発明特定事項を限定することは格別なことではない。

[相違点2]について
返信する「条件」の種類として、日時を指定したものにするか、許否を示すものとするかは、当業者が必要に応じて選択し得る設計事項である。
したがって、相違点2に係る発明特定事項を特定することは格別ではない。

[相違点3]について
引用例2には、「通信端末装置12」が、「通信端末装置12」(本願補正発明の「ゲーム端末」に相当)ごとに回線接続時間を記録した、ホスト装置10(本願補正発明の「ゲームデータサーバ」に相当)から転送されるタイムスケジュールテーブル(本願補正発明の「受信される日時条件」に相当)を記憶装置20に記憶する構成(本願補正発明の「日時条件記憶手段」に相当)、及び、「通信端末装置12」の全体の制御を行なう制御装置16が、電源投入時に(本願補正発明の「ユーザの操作に応じて」に相当)、現在の時刻を読み出す構成(本願補正発明の「現在日時情報取得手段」に相当)及び、読み出した時刻と、記憶装置20に格納された各通信端末装置12ごとのタイムスケジュールテーブルに登録された時刻と比較し、上記タイムスケジュールテーブルに登録された時刻になっていないときにはその時刻まで通信を待機し、タイムスケジュールテーブルに登録された時刻と一致するときは回線接続可能に制御する構成(本願補正発明の「送信制限手段」に相当)を有する、複数の通信端末装置感で回線が混雑しないような回線接続の制御を可能とした通信装置の構成が記載されている。
ところで、引用発明は、「プレーヤーが次にゲーム情報配信装置100に配信要求情報を送信した場合」であって、「ゲーム生成部111が上記指定した配信要求時に適合しているかどうか判断し、指定に適合していない場合」には、適合している場合に比べて不利なゲーム情報が生成され(プレーヤーに)送信される発明である。
引用発明も引用例2も、いずれもアクセス集中を防止することを目的としている。
したがって、上記目的を達成するために、引用発明において、プレーヤーが「指定に適合していない」アクセス(「配信要求情報」を配信)をした場合には、不利なゲーム情報を受信させることで、プレーヤーが指定の時間以外にはアクセスしないように誘導する構成にかえて、引用例2のように、指定の時間以外にはそもそもアクセスできないような構成を採用し、本願補正発明の相違点3に係る構成とすることは容易である。

[相違点4]について
引用例1の[記載事項8]には、ゲーム情報配信装置100が、日時条件である「締め切り時刻」を指定し、携帯電話200に送信していることが記載されている。
また、引用例1においては、「[相違点1]について」の項で既に記載したように、本願補正発明の「日時条件要求」に相当する「配信要求時指定情報」も、「ユーザを識別する識別情報又は当該ゲーム端末のユーザを識別する識別情報」が含まれているといえるから、引用発明においても、「受信される日時条件要求に含まれる前記いずれかの識別情報」に基づいて日時条件を生成し、前記ゲーム端末に返信するように構成とすることは容易である。
したがって、引用例1から本願補正発明の相違点4に係る構成を導くことは、当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明の効果は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するもので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年3月12日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年7月9日付け手続補正書の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】ゲームデータサーバと複数のゲーム端末とを含むネットワークゲームシステムにおいて、
前記複数のゲーム端末は、それぞれ、
前記ゲームデータサーバにゲームデータ要求を送信するゲームデータ要求送信手段と、
前記ゲームデータ要求送信手段により送信されるゲームデータ要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信されるゲームデータを受信するゲームデータ受信手段と、
該ゲームデータ受信手段により受信されるゲームデータに基づいてゲームを実行するゲーム実行手段と、
当該ゲーム端末を識別する識別情報又は当該ゲーム端末のユーザを識別する識別情報を含む日時条件要求を送信する日時条件要求送信手段と、
該日時条件要求に応じて前記ゲームデータサーバから返信される日時条件を受信する日時条件受信手段と、
受信される日時条件を記憶する日時条件記憶手段と、
現在日時情報を取得する現在日時情報取得手段と、
前記現在日時情報取得手段により取得される現在日時情報と前記日時条件記憶手段に記憶される日時条件とに基づいて前記ゲームデータ要求送信手段によるゲームデータ要求の送信を制限するゲームデータ要求送信制限手段と、を含み、
前記ゲームデータサーバは、
前記ゲーム端末から日時条件要求を受信する日時条件要求受信手段と、
受信される日時条件要求に含まれる前記いずれかの識別情報に基づいて日時条件を生成し、前記ゲーム端末に返信する日時条件送信手段と、
前記複数のゲーム端末からそれぞれゲームデータ要求を受信するゲームデータ要求受信手段と、
前記ゲームデータ要求受信手段により受信されるゲームデータ要求に応じてゲームデータを返信するゲームデータ返信手段と、を含む、
ことを特徴とするネットワークゲームシステム。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2の記載事項は、前記「2.(2)刊行物」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)」補正後の本願発明」で述べた、本願補正発明の「ユーザの操作に応じて、前記ゲームデータサーバにゲームデータ要求を送信する」、「前記ゲームデータ要求とは異なる日時条件要求」、「前記ユーザの操作に応じて現在時刻情報を取得する」、「前記ユーザの操作に応じて取得される」、という発明特定事項から、それぞれ「ユーザの操作に応じて」、「前記ゲームデータ要求とは異なる」、「前記ユーザの操作に応じて」、「前記ユーザの操作に応じて」との限定を省き、「前記ゲームデータ要求の送信が許可されているか否かを判断し、許可されていないと判断する場合に、前記ゲームデータ要求送信手段による前記ユーザの操作に応じた前記ゲームデータ要求の送信を制限するゲームデータ要求送信制限手段」という発明特定事項から、「前記ゲームデータ要求の送信が許可されているか否かを判断し、許可されていないと判断する場合に」及び「前記ユーザの操作に応じた前記」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)当審の判断」に記載したとおり、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-15 
結審通知日 2007-08-21 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願2002-89798(P2002-89798)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森口 良子
植野 孝郎
発明の名称 ネットワークゲームシステム、データ配信システム、ゲーム装置及びプログラム  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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