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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1166692 |
審判番号 | 不服2004-4400 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-04 |
確定日 | 2007-10-25 |
事件の表示 | 特願2003- 96289「広告表示システム、広告表示装置、広告表示方法、ならびに、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月28日出願公開、特開2004-302231〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年3月31日に出願したものであって、平成16年1月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月4日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月29日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 第2 平成16年3月29日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年3月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正により、特許請求の範囲は、 「 【請求項1】 サーバ装置と、複数の端末とがネットワークを介して接続された広告表示システムであって、 前記サーバ装置は、広告情報記憶部と、広告情報取得部と、広告情報送信部とを備え 前記広告情報記憶部は、前記各端末にて表示されうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 前記広告情報取得部は、前記端末を利用する利用者の利用履歴に応じて定まる広告情報を、前記広告情報記憶部から取得し、 前記広告情報送信部は、取得された当該広告情報を所定のタイミングで、前記各端末に向けて送信し、 前記各端末は、ゲームデータ記憶部と、画像生成部と、広告情報受信部と、広告特定部と、画像合成部とを備え、 前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、自己の端末において実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、 前記画像生成部は、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記広告情報受信部は、前記サーバ装置から送信される広告情報を受信し、 前記広告特定部は、受信された当該広告情報に含まれる条件情報に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、実行されるゲームの進行状況に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、生成された当該ゲーム画像に合成して表示する ことを特徴とするもの。 【請求項2】 請求項1に記載の広告表示システムであって、 前記広告情報記憶部により記憶される当該条件情報には、複数に区分けされた得点範囲に対応して、対象の当該広告画像を、画像サイズ、表示時間および表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 前記広告特定部は、当該条件情報に定められた得点範囲に基づいて、実行されるゲームにおける獲得点数に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を当該ゲーム画像に合成して表示する際に、当該条件情報に定められた表示形態にて表示する ことを特徴とするもの。 【請求項3】 請求項1に記載の広告表示システムであって、 前記各端末は、報告情報送信部をさらに備え、 前記報告情報送信部は、前記広告特定部により特定されて、当該ゲーム画像に表示された当該広告画像および、ゲームの進行状況を含んだ報告情報を、前記サーバ装置に向けて送信し、 前記サーバ装置は、報告情報受信部と、課金額算定部とをさらに備え、 前記報告情報受信部は、前記各端末からそれぞれ送信される報告情報を受信し、 前記課金額算定部は、受信された当該報告情報に基づいて、ゲームの進行状況に応じた広告表示に対する課金額を算定する ことを特徴とするもの。 【請求項4】 ゲームデータ記憶部と、画像生成部と、広告情報記憶部と、得点算定部と、広告特定部と、画像合成部と、を備える広告表示装置であって、 前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、 前記画像生成部は、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記広告情報記憶部は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 記憶される当該条件情報には、複数に区分けされた得点範囲に対応して、対象の当該広告画像を、画像サイズ、表示時間および表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 前記得点算定部は、実行されるゲームにおける獲得点数を算定し、 前記広告特定部は、当該広告情報に含まれる条件情報に定められた表示条件に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、算定された当該獲得点数に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、当該条件情報に定められた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する ことを特徴とするもの。 【請求項5】 ゲームデータ記憶部と、広告情報記憶部と、中央演算処理部と、画像処理部とを用いる広告表示方法であって、前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、前記広告情報記憶部は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 記憶される当該条件情報には、複数に区分けされた得点範囲に対応して、対象の当該広告画像を、画像サイズ、表示時間及び表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 画像処理部が行う画像生成工程と、中央演算処理部が行う得点算定工程と、中央演算処理部が行う広告特定工程と、画像処理部が行う画像合成部工程と、を備え、 前記画像生成工程では、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが中央演算処理部にて実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記得点算定工程では、当該実行されるゲームにおける獲得点数を算定し、 前記広告特定工程では、当該広告情報に含まれる条件情報に定められた得点範囲に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、算定された当該獲得点数に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成工程では、特定された当該広告画像を、当該条件情報に定められた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する ことを特徴とする方法。 【請求項6】 コンピュータを、ゲームデータ記憶部、画像生成部、広告情報記憶部、得点算定部、広告特定部、画像合成部、として機能させるプログラムであって、 前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、 前記画像生成部は、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記広告情報記憶部は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 記憶される当該条件情報には、複数に区分けされた得点範囲に対応して、対象の当該広告画像を、画像サイズ、表示時間及び表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 前記得点算定部は、実行されるゲームにおける獲得点数を算定し、 前記広告特定部は、当該広告情報に含まれる条件情報に定められた表示条件に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、算定された当該獲得点数に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、当該条件情報に定められた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する ように機能させることを特徴とするもの。」から、 「 【請求項1】 サーバ装置と、複数の端末とがネットワークを介して接続された広告表示システムであって、 前記サーバ装置は、広告情報記憶部と、広告情報取得部と、広告情報送信部とを備え 前記広告情報記憶部は、前記各端末にて表示されうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 前記広告情報取得部は、前記端末を利用する利用者の利用履歴に応じて定まる広告情報を、前記広告情報記憶部から取得し、 前記広告情報送信部は、取得された当該広告情報を所定のタイミングで、前記各端末に向けて送信し、 前記各端末は、ゲームデータ記憶部と、画像生成部と、広告情報受信部と、広告特定部と、画像合成部とを備え、 前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、自己の端末において実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、 前記画像生成部は、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記広告情報受信部は、前記サーバ装置から送信される広告情報を受信し、 前記広告特定部は、受信された当該広告情報に含まれる条件情報に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、実行されるゲームの進行状況に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、生成された当該ゲーム画像に合成して表示する ことを特徴とするもの。 【請求項2】 請求項1に記載の広告表示システムであって、 前記広告情報記憶部により記憶される当該条件情報には、複数に区分けされた得点範囲に対応して、対象の当該広告画像を、画像サイズ、表示時間および表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 前記広告特定部は、当該条件情報に定められた得点範囲に基づいて、実行されるゲームにおける獲得点数に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を当該ゲーム画像に合成して表示する際に、当該条件情報に定められた表示形態にて表示する ことを特徴とするもの。 【請求項3】 請求項1に記載の広告表示システムであって、 前記各端末は、報告情報送信部をさらに備え、 前記報告情報送信部は、前記広告特定部により特定されて、当該ゲーム画像に表示された当該広告画像および、ゲームの進行状況を含んだ報告情報を、前記サーバ装置に向けて送信し、 前記サーバ装置は、報告情報受信部と、課金額算定部とをさらに備え、 前記報告情報受信部は、前記各端末からそれぞれ送信される報告情報を受信し、 前記課金額算定部は、受信された当該報告情報に基づいて、ゲームの進行状況に応じた広告表示に対する課金額を算定する ことを特徴とするもの。 【請求項4】 ゲームデータ記憶部と、画像生成部と、広告情報記憶部と、得点算定部と、広告特定部と、画像合成部と、を備える広告表示装置であって、 前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、 前記画像生成部は、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記広告情報記憶部は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 記憶される当該条件情報には、予め複数に区分けされた得点範囲のそれぞれに対応して、表示対象の広告画像を指定すると共に、当該広告画像を、画像サイズ、表示時間および表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 前記得点算定部は、実行されるゲームにおける獲得点数を逐次算定し、 前記広告特定部は、当該広告情報に含まれる条件情報に定められた表示条件に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、算定された当該獲得点数が属する得点範囲に応じた広告画像を逐次特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて、当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する ことを特徴とするもの。 【請求項5】 ゲームデータ記憶部と、広告情報記憶部と、中央演算処理部と、画像処理部とを用いる広告表示方法であって、前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、前記広告情報記憶部は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 記憶される当該条件情報には、予め複数に区分けされた得点範囲のそれぞれに対応して、表示対象の広告画像を指定すると共に、当該広告画像を、画像サイズ、表示時間及び表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 画像処理部が行う画像生成工程と、中央演算処理部が行う得点算定工程と、中央演算処理部が行う広告特定工程と、画像処理部が行う画像合成部工程と、を備え、 前記画像生成工程では、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが中央演算処理部にて実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記得点算定工程では、当該実行されるゲームにおける獲得点数を逐次算定し、 前記広告特定工程では、当該広告情報に含まれる条件情報に定められた得点範囲に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、算定された当該獲得点数が属する得点範囲に応じた広告画像を逐次特定し、 前記画像合成工程では、特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて、当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する ことを特徴とする方法。 【請求項6】 コンピュータを、ゲームデータ記憶部、画像生成部、広告情報記憶部、得点算定部、広告特定部、画像合成部、として機能させるプログラムであって、 前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、 前記画像生成部は、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記広告情報記憶部は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 記憶される当該条件情報には、予め複数に区分けされた得点範囲のそれぞれに対応して、表示対象の広告画像を指定すると共に、当該広告画像を、画像サイズ、表示時間及び表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示することが表示条件として定められており、 前記得点算定部は、実行されるゲームにおける獲得点数を逐次算定し、 前記広告特定部は、当該広告情報に含まれる条件情報に定められた表示条件に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、算定された当該獲得点数が属する得点範囲に応じた広告画像を逐次特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて、当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する ように機能させることを特徴とするもの。」と補正された。 2.本件補正の適否について 本件補正は、特許法第17条の2第1項第3号に係る審判請求に伴うものであり、同法第17条の2第3項に規定されるように補正範囲が制限されているので、以下、本件補正が、この補正範囲の制限を満たすものかについて検討する。 前記のように、本件補正においては、補正前の請求項1?3については補正がない。 そして、補正後の請求項4?6では、 補正前の請求項4、6における 「前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、当該条件情報に定められた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する」を 「前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて、当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する」とする補正事項と、 補正前の請求項5における 「前記画像合成工程では、特定された当該広告画像を、当該条件情報に定められた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する」を、 「前記画像合成工程では、特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて、当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する」とする補正事項を含むものである。 すると、本件補正は請求項4?6に関して、補正前の「特定された当該広告画像を、当該条件情報に定められた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する」を、補正後では「特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて、当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する」とする補正がなされており、補正後においては、特定された広告画像の表示形態が獲得点数(が属する得点範囲)によって変化するものとなっている。 請求人は、平成16年3月29日付け手続補正書において、この補正根拠について説明していなかったので、当審は、前記補正が本願の当初明細書のいかなる記載に基づくものであるかについて請求人に問うと共に、回答がないか、あるいはあったとしても納得ができない場合には、平成16年3月29日付け手続補正を却下するとした平成18年11月28日付け審尋を行った。 請求人は、平成18年12月12日付け回答書において、本願請求項4?6についての補正事項は、当初明細書に記載された事項の範囲内であり、新規事項を追加するものではないとして、その補正根拠は以下のものであると回答している。 「 (イ)本願請求項4に係る発明は、1a)ゲームデータ記憶部と、1b)画像生成部と、1c)広告情報記憶部と、1d)得点算定部と、1e)広告特定部と、1f)画像合成部と、を備える広告表示装置の発明であります。 ここで、1c)広告情報記憶部は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、広告画像の『表示条件を定めた条件情報』を含んだ広告情報を記憶します。 また、記憶される『条件情報』には、予め複数に区分けされた得点範囲のそれぞれに対応して、『表示対象の広告画像を指定する』と共に、広告画像を、『画像サイズ、表示時間および表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示する』ことが表示条件として定められております。 つまり、『条件情報』には、『表示対象の広告画像を指定する』こと、及び、その広告画像を『画像サイズ、表示時間および表示手法のうちの少なくとも何れか一つを含む表示形態にて表示する』ことが定められております。 なお、このような1c)広告情報記憶部については、当初明細書における図4(b)及び、図4(b)を説明する段落[0046]等に記載されております。特に図4(b)を参照して頂ければご理解頂けるように、広告画像(図中では、画像ID)だけでなく、表示形態(図中では、画像の大きさ、表示時間、表示手法等)について、得点ランクに応じて規定されております。 そして、1f)画像合成部は、特定された広告画像を、『表示条件』に基づいて、『獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態』にて、生成された当該ゲーム画像に合成します。 つまり、図4(b)に示すような条件情報に基づき、得点ランクに応じた画像IDの広告画像を、得点ランクに応じた画像の大きさ、表示時間、表示手法等の表示形態にて合成します。 なお、このような1f)画像合成部については、当初明細書における図7(S609)及び、図7のステップS609を説明する段落[0055]に記載されております。特に段落[0055]には、「・・・この際、画像合成部507は、広告特定部506により特定された広告画像を、広告情報(条件情報)に規定された大きさ、および表示手法にて、規定された時間だけ合成する。・・・」と記載されております。この記載は、図4(b)に示すような条件情報に基づいて、広告画像を、得点ランクに応じた画像の大きさ、表示時間、表示手法等の表示形態にて合成することを示しております。 例えば、図4(b)の条件情報を用いる場合、100,000点までは、Img_123の広告画像を、100×30ピクセルの大きさで、10秒間、スクロール表示をすることになり、また、100,000点を超えると(200,000点以下)、Img_234の広告画像を、150×80ピクセルの大きさで、15秒間、アニメーション表示をすることになり、そして、200,000点を超えると(300,000点以下)、Img_345の広告画像を、200×120ピクセルの大きさで、30秒間、フラッシュ表示をすることになります。 すなわち、広告画像だけでなく、表示形態も、得点ランクに応じて異なることは、図4(b)等を参照すれば明白であります。この結果、「特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて、当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて、生成された当該ゲーム画像に合成する」との記載は、当初明細書に記載された事項の範囲内であり、新規事項を追加するものではありません。 (ウ)本願請求項5,6に係る発明についても、上記と同様であります。つまり、本願請求項5は、上述した本願請求項4に相当する方法の発明であり、また、本願請求項6は、本願請求項4に相当するプログラムの発明であります。 」 なるほど、当初明細書における図4(b)及び、図4(b)を説明する段落【0046】等を参照するに、 「広告情報記憶部」は、表示対象となりうる複数の広告画像、および、広告画像の『表示条件を定めた条件情報』を含んだ広告情報を記憶しており、 「画像合成部」は、特定された広告画像を、『表示条件』に基づいて、『獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態』にて、生成された当該ゲーム画像に合成していることは認める。 そして、図4(b)に示すような条件情報に基づき、得点ランクに応じた画像IDの広告画像を、得点ランクに応じた画像の大きさ、表示時間、表示手法等の表示形態にて合成していることも認める。 しかしながら、これらを認めたとしても、「当該各得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて」、すなわち、特定された広告画像の表示形態が獲得点数(が属する得点範囲)によって変化することを直ちに導き出せるものとはいえない。 というのも、請求人が補正根拠とする図4(b)及び、図4(b)を説明する段落【0046】等においては、特定された広告画像である「画像ID」、「画像の大きさ」、「表示時間」及び「表示手法」が一体として、「得点ランク」に対応付けられており、表示形態と目される「画像の大きさ」、「表示時間」及び「表示手法」のいずれも、「画像ID」と切り離されて、単独に「得点ランク」に対応付けられているとの示唆はない。 前記補正では、請求人が意図するか意図しないかに拘わらず、「生成された当該ゲーム画像に合成する」に際して、「特定された当該広告画像を、当該表示条件に基づいて」行うことに加えて、「当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて」行うことも特定されていると解される。 そして、請求人の回答を参酌したとしても、本願当初明細書には、「特定された広告画像を、生成された当該ゲーム画像に合成する」に際して、「特定された広告画像」と切り離された「当該獲得点数が属する得点範囲に応じた表示形態にて」、「生成された当該ゲーム画像に合成する」ことが記載も示唆もないのであるから、前記補正は本願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反しているから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1?6に係る発明は、平成15年8月29日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。 なお、本願請求項1?6の記載は、前記「第2 平成16年3月29日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「[理由]1.本件補正の内容」の補正前のものをもって代え、以下、本願の請求項1?6に係る発明を請求項順に、「本願発明1」?「本願発明6」という。 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物:特開2001-321573号公報には、以下の記載がある。 段落【0001】「【発明の属する技術分野】本発明は、ゲーム画面中やゲーム音声中に静止画、動画あるいは音声等を挿入して広告を実施する広告システムおよび広告方法ならびに広告の仲介システムおよび仲介方法に係り、特に、広告の実施/不実施、広告の内容、広告の掲載位置、広告の掲載方法および広告の実施タイミング等をゲーム展開に応じて切り換えられる広告システムおよび広告方法ならびに広告の仲介システムおよび仲介方法に関する。」 段落【0009】「本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、ゲーム画面中およびゲーム音声中に用意された広告枠における広告の実施形態を、ゲーム展開や視聴者数に応じて切り換えるようにした広告システムおよび広告方法、ならびにスポンサが広告実施条件をゲーム展開や視聴者数と対応付けて指定できるようにした広告の仲介システムおよび仲介方法を提供することにある。」 段落【0017】「【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明が適用されるゲーム配信/広告仲介システムの主要部の構成を示したブロック図であり、複数(本実施形態では、4つ)のゲーム端末G1?G4と、複数(本実施形態では、2つ)のスポンサ端末T1,T2と、ゲームセンタ・サーバ1と、広告仲介サーバ2と、課金管理サーバ3とを含む。前記ゲーム端末G1?G4はゲーム観戦端末としても機能できる。」 段落【0020】「図1では、各サーバ1、2、3が通信ネットワークNTを介して相互に接続されているが、各サーバの接続には、電話回線やTCP/IPを用いたローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、インターネットなどの他の通信ネットワークを用いることもできる。また、各サーバ1、2、3の機能を1台のコンピュータで実現する場合には、通信ネットワークNTの代わりにコンピュータの内部バスを用いることができる。」 段落【0058】「図6は、前記広告仲介サーバ2の主要部の構成を示したブロック図であり、当該広告仲介サーバ2は、通信機能部205および通信ネットワークNTを介して各スポンサ端末T1,T2および他のサーバ1、3と通信する。」 段落【0062】「図10は、前記広告申込データテーブル201aの登録内容を模式的に示した図であり、各ゲームの広告枠ごとに、そのスポンサ名、広告の画像ファイルや音声ファイルを特定するための広告ファイル識別子、広告実施条件および希望料金が、広告申込データとして登録されている。」 段落【0063】「ゲーム開催情報取得部204は、ゲームセンタ・サーバ1から通知されるゲームの開催情報を取得して記録する。この開催情報には、ゲームの開始時刻、参加プレーヤ名、参加プレーヤ数、観戦者数などが含まれ、開始直前の最新情報が通知される。各ゲームに関する開催情報は、ゲームセッションの終了時点で消去される。」 段落【0064】「広告実施条件判定部203は、前記ゲーム開催情報取得部204に記録された開催情報を参照し、これを前記広告申込メモリ201に登録されている各広告申込データの広告実施条件と比較する。そして、今回の開催情報により満足される広告実施条件を含む広告申込データが登録されていれば、その広告申込データ、すなわち広告枠、スポンサ名、広告内容および広告実施条件等を、広告要求データとしてゲームセンタ・サーバ1に通知する。したがって、ゲームセンタ・サーバ1に通知される前記広告要求データは、広告申込メモリ201に記憶された多数の広告申込データのうち、開催情報が広告実施条件を満足すると判断された一部のデータである。」 段落【0068】「図7は、前記ゲームセンタ・サーバ1の構成を示したブロック図であり、当該ゲームセンタ・サーバ1は、通信機能部102および通信ネットワークNTを介して各ゲーム端末G1?G4およびスポンサ端末T1,T2、ならびに他のサーバ2、3と通信する。」 段落【0069】「ゲーム実行部101は、プレーヤのゲーム端末G1,G2と通信してゲームプログラムを開始し、プレーヤがゲーム端末G1,G2で行った操作を検知してゲームを進行させると共に、ゲーム画面およびゲーム音声をゲーム端末G1,G2および観戦者のゲーム端末G3,G4へ送出する。」 段落【0070】「ゲーム開催情報通知部103は、開催予定のゲームに関する情報を前記広告仲介サーバ2へ通知する。この開催情報の通知に応答して広告仲介サーバ2から通知される前記広告要求データ(広告申込メモリ201に記憶された多数の広告申込データのうち、開催情報が広告実施条件を満足するとして広告仲介サーバ3から通知されたデータ)は広告要求メモリ104に記憶される。」 段落【0073】「ゲーム実行部101がゲームプログラムを開始すると、各ゲーム端末G1,G2での操作に応答してゲームが進行し、前記広告実施フラグに従って所定の広告枠で広告ファイルが再生される。すなわち、広告が実施されてゲーム画面またはゲーム音声中で広告の画像または音声が聴視覚情報として出力される。」 段落【0087】「さらに、上記した実施形態では、ゲームプログラムがゲームセンタ・サーバ1のゲーム実行部101で実施されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、ゲーム実行部101がゲームの開催ごとにゲームプログラムを各ゲーム端末G1,G2へダウンロードし、各ゲーム端末G1,G2がゲームプログラムを独自に実行するようにしても良い。」 前記段落【0001】、【0009】を参照するに、当該刊行物には、ゲームを利用して、ゲーム画面中およびゲーム音声中に用意された広告枠における広告の実施形態を、ゲーム展開や視聴者数に応じて切り換えられるようにした広告表示システムが記載されている。 そして、前記段落【0017】によれば、当該広告表示システムは、複数のゲーム端末G1?G4と、ゲームセンタ・サーバー1と、広告仲介サーバー2とを備え、各端末G1?G4、サーバ1、2は通信ネットワークNTを介して相互に接続され、ゲームの開始から終了まで(ゲームセッション)における音声・画像等の情報および各種の制御信号は、通信ネットワークNTを介して送受信されるように構成されている。 そして段落【0058】あるいは【0068】を参照するに、通信ネットワークNTを介した送受信を行うために、広告仲介サーバ2は通信機能部205を、ゲームセンタ・サーバ1は通信機能部102をそれぞれ備えていることが把握できる。 また、前記段落【0062】によれば、広告仲介サーバー2の広告申込データテーブル201aには、各ゲームの広告枠ごとに、そのスポンサ名、広告の画像ファイルや音声ファイルを特定するための広告ファイル識別子、広告実施条件が、広告申込データとして登録されており、続く段落【0063】によれば、当該広告仲介サーバ2のゲーム開始情報取得部204が、ゲームセンタ・サーバ1から通知されるゲームの開始情報を取得して記憶しており、さらに続く段落【0064】によれば、当該広告仲介サーバー2の広告実施条件判定部203が、ゲームセンタ・サーバ1から通知されるゲームの開始情報を参照して、広告申込メモリ201に登録されている各広告申込データの広告実施条件と比較して、今回の開催情報により満足される広告実施条件を含む広告申込データが登録されている場合に、その広告申込データ、即ち広告枠、スポンサ名、広告内容および広告実施条件等を、広告要求データとしてゲームセンタ・サーバ1に通知するものとされる。 なお、当該段落【0064】によれば、広告仲介サーバ2からゲームセンタ・サーバ1に通知される前記広告要求データは、広告申込メモリ201に記憶された多数の広告申込データのうち、開催情報が広告実施条件を満足するとされた一部のデータであることが記載されている。 次に、段落【0069】によれば、ゲームセンタ・サーバ1のゲーム実行部101は、プレーヤのゲーム端末G1、G2と通信してゲームプログラムを開始し、プレーヤがゲーム端末G1、G2で行った操作に対応してゲームを進行させ、ゲーム画面及びゲーム音声をゲーム端末G1、G2へ送出することとされる。 そして、続く段落【0070】には、ゲームセンタ・サーバ1のゲーム開催情報通知部103が開催予定のゲームに関する情報を広告仲介サーバ2へ通知すると、広告仲介サーバ2から広告要求データ(広告申込メモリ201に記憶された多数の広告申込データのうち、開催情報が広告実施条件を満足するとして広告仲介サーバ3から通知されたデータ)が通知され、これがゲームセンタ・サーバ1の広告要求メモリ104に記憶されることが記載されており、さらに、段落【0073】によれば、ゲーム実行部101はゲームが進行し、広告要求データにおける広告実施条件に応じて、広告を実施してゲーム画面またはゲーム音声中で広告の画像または音声を聴視覚情報として出力されることが記載されている。 なお、前記段落【0020】には、各サーバ1、2の機能を1台のコンピュータで構成することの示唆があり、また段落【0087】には、ゲームプログラムをゲームセンタ・サーバ1のゲーム実行部101で実施するのに代えて、ゲーム実行部101がゲームの開催ごとにゲームプログラムを各ゲーム端末G1、G2へダウンロードして、各ゲーム端末G1、G2がゲームプログラムを独自に実行するようにしてもよいことが示唆されている。 してみれば、当該刊行物には、以下の広告表示システムが開示されていると把握できる。 「ゲームセンタ・サーバ1と、広告仲介サーバ2と、複数のゲーム端末G1、G2とがネットワークを介して接続された広告表示システムであって、 前記広告仲介サーバ2は、各ゲームの広告枠ごとに、そのスポンサ名、広告の画像ファイルや音声ファイルを特定するための広告ファイル識別子、広告実施条件等が、広告申込データとして登録されている広告申込データテーブル201aと、 ゲームセンタ・サーバ1から通知されるゲームの開催情報を参照して、広告申込メモリ201に登録されている各広告申込データの広告実施条件と比較して、今回の開催情報により満足される広告実施条件を含む広告申込データが登録されている場合に、その広告申込データ、即ち広告枠、スポンサ名、広告内容および広告実施条件等を、広告要求データとしてゲームセンタ・サーバ1に通知する広告実施条件判定部203と、 ネットワークNTを介して他のサーバあるいはゲーム端末と通信を行うための通信機能部205を備え、 前記ゲームセンタ・サーバ1は、ゲーム実行部101と、広告要求メモリ104を備え、 前記ゲーム実行部101は、ゲーム開催情報通知部103が開催予定のゲームに関する情報を広告仲介サーバ2へ通知すると広告仲介サーバ2が通知してくる広告要求データを通信機能部102を介して受信して、広告要求メモリ104に記憶させ、実行されるゲームの進行状況に応じて、受信された広告要求データに含まれる広告実施条件に基づいて、広告画像または音声をゲーム画面またはゲーム音声としてゲーム端末G1、G2に出力する広告表示システム。」 (以下、「刊行物記載発明」という。) 3.本願発明1と刊行物記載発明との対比 刊行物記載発明と、本願発明1は、いずれも、サーバ装置と、複数の端末とがネットワークを介して接続され、ゲームを利用して広告を表示する広告表示システムとして共通している。 すると、刊行物記載発明の広告と、本願発明1の広告は、いずれもゲームを利用してゲーム画面に表示されるものである点で共通し、刊行物記載発明の広告実施条件と、本願発明1の条件情報は、いずれも実行されるゲームの進行状況に応じた広告画像を特定する情報を含んでいる点において共通している。 そして、サーバ装置にデータを記憶する場合、通常記憶装置が用いられることから、刊行物記載発明の広告仲介サーバ2における広告申込データテーブル201aは記憶装置に記憶されていると推定できるので、当該記憶装置は、本願発明1のサーバ装置の広告情報記憶部に相当する。 また、刊行物記載発明の広告仲介サーバ2における広告実施条件判定部203と、本願発明1のサーバ装置の広告情報取得部とはいずれもゲームで表示する広告を取得する機能を備えている点で共通している。 刊行物記載発明のゲームセンタ・サーバ1のゲーム実行部101は、ゲームを進行させるものである以上、ゲーム画像及び実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶していると推定でき、また、ゲーム端末G1、G2に対して、ゲームの進行状況に応じてゲーム画面を出力するものであることから、ゲームデータ記憶部、画像生成部を当然に備えていると推定され、さらに、広告仲介サーバ2から広告を受信して、これをゲームの進行状況に応じてゲーム画面に表示していることからして、広告情報受信部と、広告特定部と、画像合成部を備えているといえる。 他方、本願発明1の各端末は、自己の端末において実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶するゲームデータ記憶部を備え、ゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成する画像生成部を備え、サーバ装置から送信される広告情報を受信する広告情報受信部を備え、受信された当該広告情報に含まれる条件情報に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、実行されるゲームの進行状況に応じた広告画像を特定する広告特定部を備えている。 そして、刊行物記載発明のゲーム端末G1、G2は、少なくともゲームを行う者が操作するものであって、これにはゲーム画面が表示されるものであるから、ゲームを行う者が操作し、ゲーム画面を表示するものである限りにおいて、本願発明1の各端末に相当する。 してみると、刊行物記載発明のゲームセンタ・サーバ1のゲーム実行部101は、本願発明1の各端末が備える機能のうち、ゲームを行う者が操作し、ゲーム画面を表示する機能を除いた部分であるゲーム実行機能を備えている点で本願発明1の各端末と共通しているといえる。 以上の対応関係を前提として、前記ゲーム実行機能を備える装置(すなわち、刊行物記載発明ではゲーム実行部101を備えるゲームセンタ・サーバ1が該当し、本願発明1ではゲームデータ記憶部と、画像生成部と、広告情報受信部と、広告特定部と、画像合成部とを備えた各端末が該当する。)を「ゲーム実行装置」と呼称すれば、刊行物記載発明と、本願発明1とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。 <一致点> サーバ装置と、複数の端末とがネットワークを介して接続された広告表示システムであって、 前記サーバ装置は、広告情報記憶部と、広告情報取得部と、広告情報送信部とを備え 前記広告情報記憶部は、前記各端末にて表示されうる複数の広告画像、および、当該広告画像の表示条件を定めた条件情報を含んだ広告情報を記憶し、 前記広告情報取得部は、ゲームで表示する広告情報を、前記広告情報記憶部から取得し、 前記広告情報送信部は、取得された当該広告情報を所定のタイミングで、ゲーム実行装置に向けて送信し、 前記ゲーム実行装置は、ゲームデータ記憶部と、画像生成部と、広告情報受信部と、広告特定部と、画像合成部とを備え、 前記ゲームデータ記憶部は、少なくともゲーム画像が含まれ、各端末において実行されるゲームを規定するゲームデータを記憶し、 前記画像生成部は、記憶される当該ゲームデータに基づいたゲームが実行されるに伴って、当該ゲームデータに含まれるゲーム画像を生成し、 前記広告情報受信部は、前記サーバ装置から送信される広告情報を受信し、 前記広告特定部は、受信された当該広告情報に含まれる条件情報に基づいて、当該広告情報に含まれる複数の広告画像から、実行されるゲームの進行状況に応じた広告画像を特定し、 前記画像合成部は、特定された当該広告画像を、生成された当該ゲーム画像に合成して各端末において表示するもの。 <相違点1> ゲーム実行装置に関して、 本願発明1においては、複数の端末が「ゲーム実行装置」であるとして特定がされているのに対して、 刊行物記載発明においては、ゲームセンタ・サーバ1がゲーム実行装置である点。 <相違点2> サーバ装置の広告情報取得部が、ゲームで表示する広告情報を広告情報記憶部から取得するに際して、 本願発明1では、「前記端末を利用する利用者の利用履歴に応じて定まる広告情報を、前記広告情報記憶部から取得」すると特定されているのに対して、 刊行物記載発明においては、このような特定を有しない点。 4.判断 (4-1)相違点1について 前記刊行物の段落【0087】には、実施形態においてはゲームプログラムをゲームセンタ・サーバ1のゲーム実行部101で実施するものとしているが、ゲームの開催ごとにゲームプログラムを各ゲーム端末G1、G2へダウンロードして、各ゲーム端末G1、G2においてゲームプログラムを独自実行してもよいとの示唆がある。 既に、前記対比で検討したように、刊行物記載発明のゲームセンタ・サーバ1のゲーム実行部101は、本願発明1の各端末が備える機能のうち、ゲームを行う者が操作し、ゲーム画面を表示する機能を除いた部分であるゲーム実行機能を備えている点で本願発明1の各端末と共通しているのであり、前記示唆に基づけば、刊行物記載発明において、相違点1のように、ゲーム端末G1、G2を「ゲーム実行装置」とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 (4-2)相違点2について なるほど、刊行物においては、前記段落【0064】に、広告仲介サーバ2よりゲームセンタ・サーバ1に通知される広告要求データを、開催される予定のゲーム開催情報を参照して、広告申込メモリ201の広告実施条件と比較して、満足すると判断したもののみが通知されており、広告実施条件について、段落【0024】「各スポンサ端末T1,T2は、前記広告仲介サーバ2から配信された広告募集画面(後に、図2、3に関して詳述する)を参照して、各広告枠の募集要項、すなわち広告の掲載位置、掲載方法および実施タイミング等を検討する。広告を実施する場合には、同じく広告仲介サーバ2から配信される広告申込画面(後に、図4に関して詳述する)から、広告の画像ファイルや音声ファイルを特定するために識別子、および広告実施条件を指定して広告枠の利用を申し込む。」或いは段落【0025】「前記広告実施条件では、ゲーム展開、プレーヤ数および観戦者数といった複数の動的な変動要因(以下、単に“ゲーム展開”で代表する場合もある)が指定され、ゲーム展開が所定の広告実施条件を満足した場合のみ広告が実施されることになる。」との記載はあるものの、「広告実施条件」に、本願発明1におけるように「前記端末を利用する利用者の利用履歴」を含むことの記載はない。 しかしながら、ネットワークを介して不特定多数のユーザからアクセスされるサービス、すなわち、広告システム、購買システムあるいは顧客管理システムにおいては、広告効果あるいは購買実績の向上をめざすべく利用履歴を参照して適宜に決定した特定条件にあてはまるユーザを対象として、広告を送付することが従来から行われている(特開2003-67622号公報、特開2003-16340号公報、特開2002-325140号公報あるいは特開平11-282393号公報等参照)。 ここで、本願発明1における「利用者の利用履歴」がいかなるものかについて、本願明細書の記載を参照するに、段落【0049】に以下の記載がある。 段落【0049】「また、各利用者のゲーム開始日から所定の期間内に限り、表示することが設定されている広告情報がある場合、広告取得部303は、対象の利用者の利用履歴等から現在日時がその期間内であると判別すると、その広告情報を取得する。 ・・・。 また、各利用者のゲーム回数が所定の回数内に限り、表示することが設定されている広告情報がある場合、広告取得部303は、対象の利用者の利用履歴等から今回を含めたゲーム回数がその回数内であると判別すると、その広告情報を取得する。」 すると、本願発明1において広告情報取得部が広告情報を取得するに際して参照する「利用者の利用履歴」とは、「各利用者のゲーム開始日からの期間」あるいは「各利用者のゲーム回数」なる、ゲームを行った実績を意味していると解される。 しかしながら、前記のように、ネットワークを介して不特定多数のユーザからアクセスされるサービスにおいては、利用履歴を参照して適宜に決定した特定条件にあてはまるユーザを対象とした広告送付を行うことは、従来から行われているのであって、対象をゲームとした場合に、ゲームを行った実績を条件特定に用いることは、当業者であれば容易に想到し得る程度のことといわざるを得ない。 そして、相違点2のようにしたことにより得られる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なことである。 (4-3)まとめ 以上のとおりであるから、相違点1及び相違点2に係る差異は、いずれも当業者であれば想到容易なものであって、それらを寄せ集めたとしても、それらにより得られる作用効果も、当業者であれば、容易に推察可能なものでしかない。 5.むすび したがって、本願発明1は、その出願前に頒布された刊行物の記載及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-16 |
結審通知日 | 2007-08-21 |
審決日 | 2007-09-10 |
出願番号 | 特願2003-96289(P2003-96289) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤木 啓二、櫻井 茂樹、木村 史郎 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
名取 乾治 尾崎 俊彦 |
発明の名称 | 広告表示システム、広告表示装置、広告表示方法、ならびに、プログラム |
代理人 | 石井 裕一郎 |