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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166702
審判番号 不服2004-14686  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-14 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 特願2000-222331「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月20日出願公開、特開2001- 46647〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年7月2日に出願した特願平9-177348号の一部を平成12年7月24日に新たな出願としたものであり、同年9月11日付で手続補正がなされ、平成15年8月29日付の拒絶理由通知に対して同年11月4日付で手続補正がなされ、平成16年2月27日付の拒絶理由通知に対して同年5月6日付で手続補正がなされ、これに対し、同年6月7日付で手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月14日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同年7月30日付で手続補正がなされたものである。


第2.平成16年7月30日付の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成16年7月30日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
【1】本件補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成15年11月4日付手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】 遊技域中に設けられた表示画面と、
該表示画面中の一領域に図柄を表示する表示領域を設定し、該表示領域に表示する前記図柄を予め定められた順列に従って連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて停止図柄を明示する表示制御手段と、
該表示制御手段が起動し、前記停止図柄として特定の図柄が前記表示領域に明示された場合のみ、特別遊技を実行する特別遊技実行手段とを備えたパチンコ機において、
前記表示制御手段は、
前記表示領域での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、該リーチ状態で変動表示中の表示領域において一度に表示する前記図柄の数を増加表示できるように拡大表示領域を形成するとともに、該拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄のうち1つを明示しながらたどり、停止図柄を強調表示して選択明示する手段を備えることを特徴とするパチンコ機。」から、

「【請求項1】 遊技域中に設けられた表示画面と、
該表示画面中の一領域に図柄を表示する表示領域を設定し、該表示領域に表示する前記図柄を予め定められた順列に従って連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて停止図柄を明示する表示制御手段と、
該表示制御手段が起動し、前記停止図柄として特定の図柄が前記表示領域に明示された場合のみ、特別遊技を実行する特別遊技実行手段とを備えたパチンコ機において、
前記表示制御手段は、
前記表示領域での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、該リーチ状態で変動表示中の表示領域において一度に表示する前記図柄の数を増加表示できるように拡大表示領域を形成するとともに、該拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄の中から無秩序で、且つ出現の頻度が等しい状態で図柄を抽出する手段と、
前記拡大表示領域中に表示する図柄の順番を前記順列通りに行うとともに、前記無秩序で、且つ出現の頻度が等しい状態で抽出された図柄を明示することで、該拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄のうち1つを明示しながらたどり、停止図柄を強調表示して選択明示する手段とを備えることを特徴とするパチンコ機。」
へと補正された。


【2】独立特許要件違反の適否
[1]補正の適否
本件補正により特許請求の範囲の請求項1にした補正は、拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄のうち1つを明示しながらたどり、停止図柄を強調表示して選択明示する手段を備える表示制御手段が、「拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄の中から無秩序で、且つ出現の頻度が等しい状態で図柄を抽出する手段」を備えたものであり、また、「前記拡大表示領域中に表示する図柄の順番を前記順列通りに行うとともに、前記無秩序で、且つ出現の頻度が等しい状態で抽出された図柄を明示する」ものであることを特定したものであるが、これらは発明特定事項の直列的付加に当たり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的としたものに該当するから、以下、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを検討する。


[2]引用例
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、平成8年5月14日に頒布された刊行物である引用例(特開平8-117407号公報)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0012】・・・表示器11の画像表示装置10によって表示される画面を、表示箇所の全てを表示する通常画面11aと、・・・複数種類の図柄20の全てを1個づつ表示する特別画面11bとにより構成して、この特別画面11b上において、各図柄20の内のどれを選択するかを動的に表示するようにした・・・」(第3頁第3欄8?24行)
(イ)「【0016】図2に示した実施例では、通常画面11aにおける左及び中表示箇所12L及び12Cによる表示が(イ)に示したようなリーチ目となったとき、通常画面11aは図2の(ロ)に示すような特別画面11bに変換されて、用意されている全ての図柄20が図柄円盤21上に表示される。すなわち、実施例では、図2の(イ)に示した右表示箇所12Rにどのような図柄20がきて停止するのかを、特別画面11bの全体を利用して一目瞭然に表示するのであり、・・・。
【0017】換言すれば、本発明に係る画像表示装置10によると、図2の(イ)に示した右側の表示箇所12Rにおいて、遊技者にとって停止表示して欲しい図柄を含む全ての図柄が特別画面11b上に表示され、なおかつ停止表示して欲しい図柄が今どこに存在していて、それが当り矢印21aに対してどれだけ離れているかが、直ちにかつ時々刻々と表示されることになる。」(第3頁第4欄9?26行)
(ウ)「【0021】図1には本発明に係るパチンコ機100の正面図が示してあり、・・・この遊技領域の略中央に、画像表示装置10を構成している液晶モニター等の表示器11を配置して、・・・画像表示装置10の表示器11において大当り図柄が表示されたとき、遊技領域の下方部分に設けたアタッカー42を開放して大当り遊技状態を現出させるようにしたものである。」(第4頁第5欄9?23行)
(エ)「【0024】さて、このパチンコ機100の前面から見える表示器11は、・・・通常は図2または図3の各(イ)にて示した3個(左、中、及び右)の表示箇所12L、12C、及び12Rを表示する通常画面11aと、この通常画面11aにおいてリーチ目が表示された後に通常画面11aに代わって表示される特別画面11bとを表示する機構を有しているものであり、後述する画像表示装置10によって制御されるものである。」(第4頁第5欄48行?第6欄6行)
(オ)「【0025】・・・表示器11を制御する画像表示装置10は、・・・表示器11と、・・・制御回路13と、・・・とを備えているものである。表示器11は、制御回路13に接続されてこれにより表示制御されるものである。」(第4頁第6欄11行?第6欄19行)
(カ)「【0029】ところで、通常画面11aの各表示箇所12L、12C及び12Rにおいては、図2または図3の各(ロ)において示したような全ての図柄20が垂直方向に上から下に向かってスクロールするように表示されるものであり、・・・左及び中の2つの各表示箇所12L及び12Cにおいて同一の図柄20が停止表示されたとき、すなわちリーチ目となったときに、図2及び図3の各(ロ)で例示したような特別画面11bを表示器11にて表示するものである。」(第5頁第7欄4?16行)
(キ)「【0030】そして、リーチ状態となって切り換えられた特別画面11bでは、・・・それまで通常画面11a中の右表示箇所12Rにおいてスクロール表示されていた図柄20の全てが画像表示装置10の画面を最大限に利用して表示される。図2に示した実施例では、全ての図柄20を表示した図柄円盤21が、使用者の目には回転しているように見えるように表示するものであり、この特別画面11b上の特定個所に一つの当り矢印21aを固定的に表示するものである。そして、この図柄円盤21を一定時間回転表示してから停止させたとき、当り矢印21aに対向する図柄20が何であるかによって、大当りか否かを判定するようにしたものである。なお、図柄円盤21は、・・・一旦停止した後にさらに1コマ以上前進あるいは後退させたりすることによって、所謂リーチアクションを複雑なものとすることができるものである。」(第5頁第7欄24?40行)
(ク)「【0032】・・・通常画面11aにおいて表示していた3つの表示箇所12L、12C及び12Rを特別画面11bの隅に小さく表示するよにしているものであり、通常画面11aと特別画面11bとの切換えがあっても、各画面における連続性を表示するようにしている。換言すれば、リーチ目となったときに、通常画面11aにおいて全ての表示箇所12L、12C及び12Rを順次段階的に小さくしながら隅の方へ移行させて表示し、その移行が完了した時点で特別画面11bに切り換えるようにしているものである。」(第5頁第7欄50行?第8欄10行)
(ケ)【図2】(イ)(ロ)には、表示箇所12L、12C、12Rが、表示器11中の一領域に設定された点が記載されている。
(コ)【図2】(ロ)には、回転表示する図柄20の順番を、予め定められた順列とした点が記載されている。

(2)引用例に記載の発明
上記(ア)?(コ)の記載及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「遊技領域の略中央に配置された表示器11と、
該表示器11中の一領域に図柄20を表示する表示箇所12L、12C、12Rを設定し、該表示箇所12L、12C、12Rに表示する前記図柄20をスクロールするように表示を行った後、停止表示する画像表示装置10の制御回路13と、
該画像表示装置10の制御回路13による表示制御により、前記表示器11において大当り図柄が表示されたとき、大当り遊技状態を現出させる手段とを備えたパチンコ機において、
前記画像表示装置10の制御回路13は、
前記表示箇所12L、12Cで停止表示された前記図柄20が同一であるリーチ目となったとき、リーチ状態で、前記表示箇所12L、12C、12Rを隅に小さく表示しつつ、全ての前記図柄20を表示した図柄円盤21が使用者の目には回転しているように見えるように前記画像表示装置10の画面を最大限に利用して表示される特別画面11bを表示するとともに、該特別画面11bで回転表示中の複数の図柄の中から、回転表示を停止させて当り矢印21aに前記図柄20を対向させる手段と、
前記回転表示を一旦停止させて当り矢印21aに前記図柄20を対向させることで、該特別画面11bで回転表示中の複数の前記図柄20のうち1つを当り矢印21aに対向させ、さらに1コマ以上前進あるいは後退させ、回転表示の停止により当り矢印21aに対向した前記図柄20を選択して表示する手段とを備えたパチンコ機。」


[3]本願補正発明について
(1)本願補正発明と引用発明との対比
(ア)本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「遊技領域の略中央」は、本願補正発明の「遊技域中」に相当し、以下同様に、
「表示器11」は、「表示画面」に、
「遊技領域の略中央に配置された表示器11」は、「遊技域中に設けられた表示画面」に、
「表示箇所12L、12C、12R」は、「表示領域」に、
「スクロールするように表示」は、「連続的に変更する変動表示」に、
「停止表示する」は、「変動表示を停止させて停止図柄を明示する」に、
「画像表示装置10の制御回路13」は、「表示制御手段」に、
「画像表示装置10の制御回路13による表示制御により」は、「表示制御手段が起動し」に、
「表示器11において大当り図柄が表示されたとき」は、「停止図柄として特定の図柄が(前記)表示領域に明示された場合のみ」に、
「大当り遊技状態を現出させる手段」は、「特別遊技を実行する特別遊技実行手段」に、
「表示箇所12L、12Cで停止表示された(前記)図柄20が同一であるリーチ目となったとき」は、「表示領域での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき」に、
「特別画面11b」は、「拡大表示領域」に、
「特別画面11bを表示する」は、「拡大表示領域を形成する」に、
「回転表示中」は、「変動表示中」に、
「回転表示を停止させて当り矢印21aに(前記)図柄20を対向させる」は、「図柄を抽出する」に、
「回転表示を一旦停止させて当り矢印21aに(前記)図柄20を対向させることで」は、「抽出された図柄を明示することで」に、
「回転表示の停止により当り矢印21aに対向した前記図柄20」は、「停止図柄」に、
「選択して表示する」は、「選択明示する」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明の「表示箇所12L、12C、12R(表示領域)を隅に小さく表示しつつ、全ての(前記)図柄20を表示した図柄円盤21が使用者の目には回転しているように見えるように(前記)画像表示装置10の画面を最大限に利用して表示される特別画面11b(拡大表示領域)を表示される」は、本願補正発明の「変動表示中の表示領域において一度に表示する(前記)図柄の数を増加表示できるように拡大表示領域を形成する」に対応する。
(ウ)引用発明は、全ての図柄20を表示した図柄円盤21から1つの図柄20を抽出するものであるから、本願補正発明とは、図柄の抽出を「出現の頻度が等しい状態で」行うものである点で共通する。
(エ)引用発明における「特別画面11b(拡大表示領域)で回転表示中(変動表示中)の複数の(前記)図柄20のうち1つを当り矢印21aに対向させ、さらに1コマ以上前進あるいは後退させ」る動作は、当り矢印21aに対向させることによって1つを明示した後に、さらに次の図柄の明示に向けた前進あるいは後退(回転)を継続することによって、明示される図柄が切り替えられるものであるから、引用発明は、本願補正発明における「拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄のうち1つを明示しながらたど」る動作と共通する構成を備えたものである。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「遊技域中に設けられた表示画面と、
該表示画面中の一領域に図柄を表示する表示領域を設定し、該表示領域に表示する前記図柄を連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて停止図柄を明示する表示制御手段と、
該表示制御手段が起動し、前記停止図柄として特定の図柄が前記表示領域に明示された場合のみ、特別遊技を実行する特別遊技実行手段とを備えたパチンコ機において、
前記表示制御手段は、
前記表示領域での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、リーチ状態で変動表示中の表示領域において一度に表示する前記図柄の数を増加表示できるように拡大表示領域を形成するとともに、該拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄の中から、出現の頻度が等しい状態で図柄を抽出する手段と、
出現の頻度が等しい状態で抽出された図柄を明示することで、該拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄のうち1つを明示しながらたどり、停止図柄を選択明示する手段とを備えたパチンコ機。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点A.本願補正発明が、表示領域に表示する図柄の変動表示を「予め定められた順列に従って」行い、且つ、拡大表示領域中に表示する図柄の順番を「前記順列通り」に行うものであるのに対し、引用発明においては、それらが明らかでない点。
相違点B.拡大表示領域で行う図柄の抽出を、本願補正発明は、「無秩序」な状態で行うのに対し、引用発明ではそれが明らかでない点。
相違点C.本願補正発明が、停止図柄を「強調表示」して選択明示するものであるのに対し、引用発明においては、その点が明らかでない点。

(2)相違点Aの検討
図柄合わせゲームをするパチンコ機において、表示領域に表示する図柄の変動表示を「予め定められた順列に従って」行うことは一般的な技術事項である(例えば、特開平6-312052号公報の段落【0015】及び【図29】を参照されたい。以下、「一般技術」という。)。
そして、上記第2.【2】[2](1)(イ)に摘示した引用例の記載によれば、「通常画面11aにおける左及び中表示箇所12L及び12Cによる表示が・・・リーチ目となったとき、・・・右表示箇所12Rにどのような図柄20がきて停止するのかを、特別画面11bの全体を利用して一目瞭然に表示する」ことによって、遊技者にとって「停止表示してほしい図柄が今どこに存在していて、それが当り矢印21aに対してどれだけ離れているか」がわかるものであり、また、上記第2.【2】[2](1)(ク)に摘示した引用例の記載によれば、「通常画面11aと特別画面11bとの切換えがあっても、各画面における連続性を表示するようにし・・・リーチ目となったときに、通常画面11aにおいて全ての表示箇所12L、12C及び12Rを順次段階的に小さくしながら隅の方へ移行させて表示し、その移行が完了した時点で特別画面11bに切り換える」ものであるから、引用例においては、特別画面11b(拡大表示領域)と、通常画面11aの表示箇所12L、12C、12R(表示領域)との間に「連続性」を持たせることが課題とされているところ、その「連続性」を持たせるための具体化手段として、表示される図柄の順番を予め定められた順列通りに揃えることが、当業者にとって格段の創意を要することであるとはいえない。
してみれば、引用発明に、上記一般技術を採用するとともに、図柄の順番を予め定められた順列通りに揃えて、上記相違点Aに係る本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。

(3)相違点Bの検討
表示領域で、変動表示中の1つの図柄を除く停止図柄が揃ってリーチ状態になってから、前記変動表示中の1つの図柄の変動を一旦停止させ、前記1つの図柄を再び変動させる表示態様を備えたパチンコ機は、例えば、特開平9-24141号公報(段落【0031】、【図12】(B)等を参照されたい)、特開平9-56894号公報(段落【0031】、【図6】等を参照されたい)に記載されるように、従来周知の技術事項(以下、「周知技術」という。)である。
上記周知技術において、変動表示中の1つの図柄の一旦停止は、リーチ状態になってからの変動を、予め定められた所定図柄数とすることにより行われるものであるから、リーチ状態となるタイミングで前記1つの図柄が何を表示しているかによって、その後一旦停止する図柄が決まるものであると言い換えられるが、このリーチ状態となるタイミングは、前記1つの図柄がそのときに何を表示しているかとは無関係であり、また、(最終的な)停止図柄とも無関係に決定されるものである。すなわち、この意味において、リーチ状態となるタイミングが前記1つの図柄の表示と無関係に決定される結果、一旦停止する図柄が、全ての図柄の中から「無秩序」な状態で抽出されるものであるということができる。
してみれば、引用発明における図柄の抽出の態様として、上記の周知技術を採用することによって、上記相違点Bに係る本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

(4)相違点Cの検討
液晶表示ゲーム、タッチパネル式操作機器等において、選択する箇所を「強調表示」することは、従来周知の技術事項であり、引用発明において選択明示される停止図柄に、この周知技術を適用することは、当業者が容易に想到できるものである。

(5)本願補正発明の作用効果の検討
本願補正発明の作用効果は、引用発明及び上記一般技術並びに上記周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。

(6)補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正後の請求項1に記載された本願補正発明は、引用発明及び上記一般技術並びに上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
【1】本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年7月30日付の手続補正が上記のとおり却下されているので、平成15年11月4日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 遊技域中に設けられた表示画面と、
該表示画面中の一領域に図柄を表示する表示領域を設定し、該表示領域に表示する前記図柄を予め定められた順列に従って連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて停止図柄を明示する表示制御手段と、
該表示制御手段が起動し、前記停止図柄として特定の図柄が前記表示領域に明示された場合のみ、特別遊技を実行する特別遊技実行手段とを備えたパチンコ機において、
前記表示制御手段は、
前記表示領域での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、該リーチ状態で変動表示中の表示領域において一度に表示する前記図柄の数を増加表示できるように拡大表示領域を形成するとともに、該拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄のうち1つを明示しながらたどり、停止図柄を強調表示して選択明示する手段を備えることを特徴とするパチンコ機。」


【2】特許法第29条2項の適用
[1]引用例に記載の発明
引用例に記載の発明は、上記第2.【2】[2]に示したとおりである。

[2]対比・判断
本願発明は、本願補正発明において、拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄のうち1つを明示しながらたどり、停止図柄を強調表示して選択明示する手段を備える表示制御手段が、「拡大表示領域で変動表示中の複数の図柄の中から無秩序で、且つ出現の頻度が等しい状態で図柄を抽出する手段」を備えたものであり、また、「前記拡大表示領域中に表示する図柄の順番を前記順列通りに行うとともに、前記無秩序で、且つ出現の頻度が等しい状態で抽出された図柄を明示する」ものであるとした特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含むものに相当する本願補正発明が、上記第2.【2】[3]に説示したように、上記引用発明及び上記一般技術並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、同様の理由により、上記引用発明及び上記一般技術並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


[3]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載の発明及び一般技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-27 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願2000-222331(P2000-222331)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 尚  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 土屋 保光
小林 俊久
発明の名称 パチンコ機  
代理人 足立 勉  

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