• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1166714
審判番号 不服2004-24982  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-07 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 平成 7年特許願第 7189号「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月30日出願公開、特開平 8-194207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年1月20日の出願であって、原審において平成16年11月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日に手続補正がなされ、その後当審において平成19年6月5日付で拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年8月1日に意見書及び補正書が提出されたものである。



II.平成19年8月1日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年8月1日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1を、以下のように補正することを含むものである。
「【請求項1】
マトリクス状に配列された複数の画素を有し、これらの画素を映像信号に基づいてフィールド毎に順次書き換えて画像を表示する画像表示素子と、
この画像表示素子を照明するバックライトと、
前記画像表示素子における表示画像の観察位置を選択的にシフトする画素ずらし手段と、
前記表示画像の観察位置をフィールド毎に画素の書き換え中にシフトさせるよう前記画素ずらし手段を制御すると共に、前記画像表示素子の画素の書き換え中は前記バックライトを消灯し、書き換え終了後、次のフィールドの画素の書き換え開始までの期間は前記バックライトを点灯させる制御手段とを有することを特徴とする画像表示装置。」


2.新規事項
上記補正は、請求項1に、表示画像の観察位置をフィールド毎に「画素の書き換え中に」シフトさせること、を追加するものである。

この点について検討する。
上記補正事項に関して、願書に最初に添付した明細書または図面には、「なお、画素ずらし手段52は、制御手段62によりフィールド毎に画素ずらしするように制御する。」(【0042】)、「注視行の書き換えに同期して、画素ずらしを行う」(【0040】)等の記載はあるものの、表示画像の観察位置をフィールド毎に「画素の書き換え中に」シフトさせることについては記載されておらず、また、上記補正事項が願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から自明な事項であるともいえない。
よって、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.独立特許要件
上記2.において述べたとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものであるが、仮に本件補正が同第17条の2第3項の規定に違反するものでないとしたとしても、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項1に、「表示画像の観察位置をフィールド毎に「画素の書き換え中に」シフトさせる」との限定を付加するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、以下に述べるとおり、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

1)刊行物記載の発明
本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-324320号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 縦方向及び横方向に配列された複数個の画素の各々が、表示画素パターンに応じて発光することにより、画像が表示される画像表示装置と、観測者またはスクリーンとの間に、光路をフィールドごとに変更する光学部材を配すると共に、
フィールド毎に、前記光路の変更に応じて表示位置がずれている状態の前記表示画素パターンを前記画像表示装置に表示するようにした画像表示装置の解像度改善方法。」
(イ)「【請求項6】 請求項1に記載の画像表示装置の解像度改善方法において、前記光学部材は、前記画像表示装置からの光の偏波面を変更させる光学手段と、複屈折素子とで構成され、
前記光学手段により、1フィールド毎に偏波面が変更され、その変更後の光が前記複屈折素子を通過することにより前記光路の変更が行われるようにした画像表示装置の解像度改善方法。」
(ウ)「【請求項8】 縦方向及び横方向に配列された複数個の画素の各々が、表示画素パターンに応じて発光することにより画像が表示される画像表示部と、
この画像表示部と観測者またはスクリーンとの間に配設され、光路を変更するための光学部材と、
前記画像表示部において、前記表示画素パターンを、前記光学部材による光路の変更に応じてシフトするようにするシフト手段とを備える画像表示装置。」
(エ)「【請求項11】 請求項8に記載の画像表示装置において、前記光学部材は、偏波面回転板と複屈折板とで、構成され、
前記画像表示部からの光が前記偏波面回転板、複屈折板の順に通過するように、前記光学部材が前記画像表示部と、観測者あるいはスクリーンとの間に配設されてなる画像表示装置。」
(オ)「【産業上の利用分野】この発明は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)などのように、縦方向及び横方向に複数個の画素が配列された画像表示装置において、見掛け上、画素数を増加させて、表示画像の解像度を改善する方法及び装置に関する。」
(カ)「【0032】次に、図5に光路変更手段としてレンズを機械的に往復摺動させるようにする場合のシステム構成例を示す。
【0033】図5において、10はLCD(液晶表示ディスプレイ)パネル、20はLCDドライブ回路、31は接眼レンズ、30は光路変更手段、40は光路変更手段30のドライブ回路である。BLはLCDの後方から光を与えて、LCDでの表示を明るくさせるためのいわゆるバックライト部材である。
【0034】LCDパネルは、図6に示すように構成されている。すなわち、図6において、点線で囲われた部分11は画素である。それぞれの画素11は、薄膜トランジスタ(TFT)11Tと、液晶11Lとをそれぞれ有している。この例は、画素11は図4Aのように配列され、ストライプフィルタR,G,Bが図のように配列され、縦方向に同一色の画素が並ぶようになっている。つまり、この例は図4に示した例のカラー表示装置の場合である。」
(キ)「【0042】このLCDパネル10を駆動するLCDドライブ回路20は、図7に示すように構成される。すなわち、入力端子21を通じて入力された、例えばNTSCカラー映像信号VIは、RGBデコーダ22に供給されて、赤、緑及び青の3原色信号VR,VG及びVBに変換される。この3原色信号VR,VG及びVBは、反転回路23に供給される。
【0043】RGBデコーダ22では、また、入力カラー映像信号VIから複合同期信号SYNCが抽出され、この複合同期信号SYNCがタイミング信号発生回路24に供給される。このタイミング信号発生回路24からは、1水平区間毎に極性反転するパルスFRPが得られ、これが反転回路23に供給されて、各原色信号VR,VG,VBが、1水平区間毎に反転されて、直流分がキャンセルされる。この反転回路23からの、1水平区間毎に、反転されていない信号と反転された信号とが交互になる各信号SR,SG,SBは、図6に示した3原色信号の入力端子174、175、176に供給される。」
(ク)「【0045】この例の場合、表示される画像は、1フィールド毎に水平方向にPc/2(=3PH/2;PHは水平方向の画素ピッチ)だけ、垂直方向にPv/2だけ、それぞれずれたものとされる。」
(ケ)「【0086】次に、光路変更手段の他の例を、図15?図17に示す。この例の光路変更手段70は、偏波面回転板71と、複屈折の大きい材料からなるプリズム形状の複屈折板(例えば水晶板、方解石、液晶板)72とで構成される。
【0087】この例の偏波面回転板71は、液晶板73の両面に透明電極74、75が被着形成されて構成され、両透明電極74、75間に液晶駆動電圧が印加されて、フィールド毎に偏波面が回転されて変更されて、複屈折板72の正常光と異常光の偏波面と一致させられる。
【0088】複屈折板72の正常光は、例えば垂直偏波(=偏波面90゜)とし、異常光は水平偏波(=偏波面0゜)とした場合、偏波面回転板71は、1フィールド毎に偏波面を90゜と0゜とに回転させる。」
(コ)「【0091】この制御ドライバー86からの液晶駆動電圧S86が偏波面回転板71の透明電極74、75間に印加される。これにより、偏波面回転板71は、例えば奇数フィールドでは偏波面を0゜から90゜に、偶数フィールドでは、偏波面を90゜から0゜に、それぞれ回転させる。
【0092】以上のような構成においては、LCDパネル10から出射した直線偏波は、偏波面回転板71に入射して1フィールド毎に偏波面が0゜/90゜回転された後、複屈折板72に入射する。そして、この複屈折板72の通過時に、偏波面の0゜と90゜に対応した正常光と異常光との屈折率差により、光偏向量が変わり、フィールド毎に画素パターンがシフトする。
【0093】図17はこの例の光学画素シフトの原理を説明するための図である。この図17において、θはプリズム角であり、θeは異常光(水平偏波)の屈折角、θoは正常光(垂直偏波)の屈折角である。」
(サ)「【0113】図22は、垂直走査に同期して、できるだけ同一フィールド分のみがシフトされるようにする場合の他の例で、この例は図15?図17に示した例の改善例である。
【0114】この例においては、図22に示すように、図15の例の偏波面回転板71の全画面分の透明電極74に代えて、各水平走査ラインに対応するように分割した状態の走査ライン電極TD(透明電極)を、走査ライン数(例えば図の例では218ライン)だけ設ける。他は、図15の偏波面回転板71の構成と同様である。そして、LCD表示パネル10の垂直走査に同期させて走査ライン電極TDk(kはライン番号;k=1,2,……218)と対向透明電極75との間の走査ライン電圧Ekを制御して、各走査ラインの画素からの直線偏波の偏波面を0゜から90゜または90゜から0゜に、垂直方向に順次回転するようにする。このときの走査ライン電圧Ekの例を図23に示す。
【0115】図22の状態は、第1走査ライン電極TD1と第2走査ライン電極TD2の部分が現フィールドの書き込み領域となっており、偏波面は90゜であり、また、第3走査ライン電極TD3以下は前フィールド表示領域であって、その偏波面は0゜である。」

ここで、引用刊行物1に示された「画像表示装置」の「LCDパネル10」は、マトリクス状に配列された複数の画素を有するものであることが図6から見て取れる。また、該「LCDパネル10」に設けられたマトリクス状に配列された複数の画素は、「カラー映像信号」に基づいてフィールド毎に順次書き換えられて画像を表示するものであることは明らかである。
また、引用刊行物1に示された「光路変更手段70」は、「LCDパネル10」における表示画像の表示位置を選択的にシフトするものであり、さらに、引用刊行物1に示された「画像表示装置」には、該表示画像の表示位置をフィールド毎にシフトさせるよう前記「光路変更手段70」を制御する制御手段が備えられている、ということができる。
さらに、引用刊行物1に示された「バックライト部材BL」は、「LCDパネル10」を照明するものであることは明らかである。

したがって、上記記載事項等を総合すると、引用刊行物1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている、といえる。

「マトリクス状に配列された複数の画素を有し、これらの画素をカラー映像信号に基づいてフィールド毎に順次書き換えて画像を表示するLCDパネルと、
このLCDパネルを照明するバックライト部材と、
前記LCDパネルにおける表示画像の表示位置を選択的にシフトする光路変更手段と、
前記表示画像の表示位置をフィールド毎にシフトさせるよう前記光路変更手段を制御する制御手段とを有する画像表示装置。」


同じく、特公平4-42653号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(シ)「特許請求の範囲
1 a 間隔をおいて交差させた走査信号線と情報信号線、その交差部に形成したマトリクス状の画素、該走査信号線と情報信号線との間に配置した、印加電圧の極性に応じて一方の配向状態と他方の配向状態の何れか一方の状態に配向する強誘電性液晶を有する液晶パネル、
b 発光光量が明状態と暗状態との間で周期的に変化し、該明状態と暗状態に応じた明暗識別信号を出力し、前記液晶パネルを背面から照明する様に配置した光源、
c 前記走査信号線を順次走査選択して走査選択信号を印加し、前記情報信号線に、該走査選択信号と同期させて、情報に応じた情報信号を印加することによつて、走査選択された走査信号線上の画素への書込みを行ない、走査選択されていない走査信号線上の画素に対しては、該画素がその書込み状態を保持する様に、該走査選択されていない走査信号線に走査非選択信号を印加する駆動手段、
d 前記駆動手段に書込みを指示する書込み指示信号を発生する手段、並びに
e 前記光源の発光光量が暗状態のとき、走査選択された走査信号線上の画素への書込みを行ない、前記光源の発光光量が明状態のとき、走査選択された走査信号線上の画素への書込みを行なわない様に、前記明暗識別信号の暗識別信号と該書込み指示信号とが共に入力されたときに、駆動手段から走査信号線に走査選択信号を出力して書込みを行なう同期手段
を有することを特徴とする強誘電性液晶装置。」(第1欄第1行?第2欄第7行)
(ス)「[作用]
背面光源がオフになつた時に走査が始まるので、閾値以上の電圧による書込みの部分はもちんのこと、それ以外の画素における閾値以下の電圧による瞬間的な透過光量変化に対しても、画面上においてその変化を感じさせることがない。」(第4欄第25?30行)
(セ)「[実施例]
第1図は本発明による液晶表示装置の概略構成図である。第1図において、書込み命令が外部入力装置8から与えられると、表示制御部4はB端子から書込み指示信号を出力する。一方、背面光源駆動部3からは、背面光源のオン・オフを示す明暗識別信号がA端子から出力される。この2つの信号はゲート回路9に入り、NAND信号となつて走査側駆動部6のシフトレジスタにシフトクロツクとして供給されるとともに、表示制御部4のC端子及び信号側駆動部7にラツチパルスとしても供給される。表示制御部4ではC端子入力の立上りエツジをカウントし、所定の走査本数に達したところでB端子出力を非書込み状態にする。なお、表示制御部4はこれらの動作に平行してビデオメモリからのデータを信号側駆動部7のシフトレジスタに送る動作も行なう。
第2図は以上の動作を各信号のタイミング図であらわしたものである。第2図において、Lは背面光源の輝度、Aは背面光源制御部3のA端子から出力される明暗識別信号、Bは表示制御部4のB端子から出力される書込み状態信号、Cはゲート回路9の出力信号でAとBのNAND信号を示す。走査側駆動部6のシフトレジスタ、表示制御部4のC端子及び信号側駆動部7のラツチはともにC信号の立下りエツジでトリガされるので、時刻T1に外部入力によつて表示制御部4の書込み指示信号が出力されても走査が開始されるのは時刻T2の時となる。このように、背面光源の消灯に同期させて走査開始の時刻を遅らせることにより走査期間中は背面光源が消えているようにすることができる。したがつて液晶セルの電界印加による透過率変化が画面のちらつきになつてあらわれず、見易い表示画面を得ることができる。」(第4欄第31行?第5欄第20行)
よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている、といえる。

「液晶パネルの背面光源がオフになつた時、すなわち背面光源の発光光量が暗状態のときに走査選択された走査信号線上の画素への書込みを行ない、前記背面光源の発光光量が明状態のときに走査選択された走査信号線上の画素への書込みを行わないようにし、結果として液晶パネルの画素の書き換え中は背面光源が消灯され、該画素の書き換えを行っていない期間(書き換え終了後、次の画素の書き換え開始までの期間)に該背面光源が点灯されるように制御する液晶装置。」


同じく、特開平3-109596号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(ソ)「〔産業上の利用分野〕
本発明は光源を用いて液晶パネルに画像を表示する液晶表示装置に係わり、特に単板の液晶パネルを用いて高精細なカラー画像を表示するのに好適な液晶カラー表示装置に関する。」(第2頁右上欄第9?13行)
(タ)「〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
第1図は、本発明に基づく単板液晶カラー表示装置の信号処理回路ブロック図であり、ビデオ入力端子1,クロマ回路2,同期回路3,制御回路4,デイジタル遅延回路5,極性交番回路6,液晶パネル7,3色光源8で構成し、・・・」(第3頁左下欄第3?10行)
(チ)「液晶パネル7では、R原色信号の入力順序にしたがつてRの単色画像を書き込み、つぎにG原色信号の入力にしたがつてGの単色画像が書き込み、最後にB原色信号の入力にしたがつてBの単色画像を書き込む。
一方、3色光源8では液晶パネル7でのRGB単色画像の書込に同期して光源の色切り換えを行なう。すなわち、液晶パネル7のR原色信号書込終了時点でR光源81を点灯し、G原色信号書込終了時点でG光源82を点灯し、B原色信号書込終了時点でB光源83を点灯する。」(第3頁右下欄第14行?第4頁左上欄第4行)
(ツ)「第2図は、上記第1図に示すブロック図における各信号の時間関係を説明するためのタイミングチャート図である。
第1フイールド期間の映像信号をクロマ回路2で復調して得られるRGB原色信号をそれぞれR1,G1,B1とおき、第2フイールドの映像信号を復調して得られるRGB原色信号をそれぞれR2,G2,B2とおく。
これらの原色信号R1,G1,B1,R2,G2,B2をデイジタル遅延回路5で遅延し、液晶パネル7への書き込み信号R1,G1,B1,R2,・・・として極性交番回路68介して液晶パネル7に印加する。なお、第2図には第1フイールド以前の映像信号に基づく原色信号R0,G0,B0も示すが、以下の説明は第1フイールド以降の映像信号に基づいて行なう。
第2図において原色信号の復調はR1,G1,B1の3つが第1フィールド期間内で同時に行なうが、書き込みはR1,G1,B1の順に第2フィールド期間内で3回行なう。
各原色信号の書込を時間twで行なうものとし、ざらに書込時間と書込時間との時間間隔を設けてこれをtlと置く。」(第4頁左上欄第16行?同頁右上欄第18行)
(テ)「こうして、R1書込終了後の時間tlの間にR光源を点灯させ、G1書込終了後の時間tlの間にG光源を点灯させ、B1書込終了後の時間tlの間にB光源を点灯させることにより、各単色画像を面順次で表示することができる。」(第4頁左下欄第12?16行)

ここで、引用刊行物3の液晶表示装置は、液晶パネルに信号(R書込信号)を書込中は光源(R光源)を消灯し、該信号(R書込信号)の書込終了時点から次の信号(G書込信号)の書込開始までの期間は該光源(R光源)を点灯するものであることを、第2図から見て取れる。

よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている、といえる。

「液晶パネルに信号を書込中は光源を消灯し、信号の書込終了時点から次の信号の書込開始までの期間に光源を点灯するように制御する表示装置。」


2)対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「カラー映像信号」、「LCDパネル」、「バックライト部材」、「(LCDパネルにおける)表示画像の表示位置」、「光路変更手段」及び「画像表示装置」は、それぞれ本願発明の「映像信号」、「画像表示素子」、「バックライト」、「(画像表示素子における)表示画像の観察位置」、「画像ずらし手段」及び「画像表示装置」に相当する。
したがって、両者は、
「マトリクス状に配列された複数の画素を有し、これらの画素を映像信号に基づいてフィールド毎に順次書き換えて画像を表示する画像表示素子と、
この画像表示素子を照明するバックライトと、
前記画像表示素子における表示画像の観察位置を選択的にシフトする画素ずらし手段と、
前記表示画像の観察位置をフィールド毎にシフトさせるよう前記画素ずらし手段を制御する制御手段とを有する画像表示装置。」
である点で一致し、以下の相違点において相違する。

相違点
[相違点1]:本願補正発明の画像表示装置は、画像表示素子の画素の書き換え中はバックライトを消灯し、書き換え終了後、次のフィールドの画素の書き換え開始までの期間は前記バックライトを点灯させる制御手段を有するのに対し、引用発明1はそのような制御手段がない点。
[相違点2]:本願補正発明の画像表示装置は、表示画像の観察位置をフィールド毎に画素の書き換え中にシフトさせるよう画素ずらし手段を制御するのに対し、引用発明1はその点が明らかでない点。


3)判断
上記相違点につき検討する。
[相違点1]について
液晶パネルの背面光源がオフになつた時、すなわち背面光源の発光光量が暗状態のときに走査選択された走査信号線上の画素への書込みを行ない、前記背面光源の発光光量が明状態のときに走査選択された走査信号線上の画素への書込みを行わないようにし、結果として液晶パネルの画素の書き換え中は背面光源が消灯され、該画素の書き換えを行っていない期間(書き換え終了後、次の画素の書き換え開始までの期間)に該背面光源が点灯されるように制御する液晶装置の発明(引用発明2)は引用刊行物2において知られており、この引用発明2を引用発明1に適用して上記相違点に係る本願発明の技術的事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、液晶パネルに信号を書込中は光源を消灯し、信号の書込終了時点から次の信号の書込開始までの期間に光源を点灯するように制御する表示装置の発明(引用発明3)は引用刊行物3において知られており、この引用発明3を引用発明1に適用して上記相違点に係る本願発明の技術的事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

[相違点2]について
画像表示装置において、表示画像が流れて観察されることがないようにすることは自明であるから、引用発明1において、表示画像の観察位置をフィールド毎にシフトさせる際に、当該シフトを画素の書き換え中に行うように画像ずらし手段を制御することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明によってもたされる効果は、上記引用刊行物1及び引用刊行物2または引用刊行物1及び引用刊行物3記載の発明から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明または引用刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



III.本願発明について
1.本願発明
平成19年8月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年12月7日付手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるものである。
「【請求項1】
マトリクス状に配列された複数の画素を有し、これらの画素を映像信号に基づいてフィールド毎に順次書き換えて画像を表示する画像表示素子と、
この画像表示素子を照明するバックライトと、
前記画像表示素子における表示画像の観察位置を選択的にシフトする画素ずらし手段と、
前記表示画像の観察位置をフィールド毎にシフトさせるよう前記画素ずらし手段を制御すると共に、前記画像表示素子の画素の書き換え中は前記バックライトを消灯し、書き換え終了後、次のフィールドの画素の書き換え開始までの期間は前記バックライトを点灯させる制御手段とを有することを特徴とする画像表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物記載の発明
本願の出願前に頒布され、当審における平成19年6月5日付の拒絶理由通知において引用された引用刊行物1:特開平6-324320号公報、引用刊行物2:特公平4-42653号公報、引用刊行物3:特開平3-109596号公報には、上記II.3.1)において摘記した事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.で検討した本願補正発明から、表示画像の観察位置を(フィールド毎に)「画素の書き換え中に」シフトさせることを省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記II.3.に記載したとおり、引用刊行物1及び2に記載された発明または引用刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物1及び2に記載された発明または引用刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明または引用刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-23 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-11 
出願番号 特願平7-7189
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G02F)
P 1 8・ 121- WZ (G02F)
P 1 8・ 561- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小牧 修  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 稲積 義登
山村 浩
発明の名称 画像表示装置  
代理人 冨田 和幸  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 徳永 博  
代理人 杉村 憲司  
代理人 来間 清志  
代理人 岩佐 義幸  
代理人 杉村 興作  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ