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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1166715
審判番号 不服2004-25719  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-16 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 平成 7年特許願第302846号「複合粉体の製造方法およびそれを用いてなる化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月 3日出願公開、特開平 9-143030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年11月21日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年8月19日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「微粒子100重量部と表面処理剤0.1?50重量部および溶媒50?5000重量部を混合して、サンドグラインダーミルで解砕、分散処理した後、該処理微粒子と無機薄片を混合することを特徴とする複合粉体の製造方法。」

2.引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平7-108156号公報(以下、「引用例A」という。)、特開平6-9337号公報(以下、「引用例B」という。)及び特開平6-79163号公報(以下、「引用例C」という。)には、以下の事項が記載されている。

引用例A;

(A-1)「粉体を有機化合物又は有機金属化合物で表面被覆処理する際、処理装置としてサンドグラインダーミルを用い、基材粉体100重量部に対し、表面処理剤0.1?50重量部、溶媒50?5000重量部の範囲で処理することを特徴とする表面処理粉体の製造方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】、1頁1欄2?7行)

(A-2)「基材粉体としては、特に制限はなく、…化粧品…の分野で一般的に用いられる粉体であれば、有機化合物・無機化合物に関わりなく単独で、または二種以上を混合して使用することができる。…上記基材粉体の中では、…特に酸化チタン、アルミナ、シリカ、酸化鉄、酸化錫、酸化亜鉛などが、さらに、マイカ、チタンマイカ、タルク、セリサイトや群青などの各種顔料が好ましい。」(段落【0019】、【0020】、3頁3欄14?23行)

(A-3)表1には、例1に基剤粉体として「テイカ社製 微粒子二酸化チタン MT-500SA」を用いることが記載されている。(段落【0032】、【0035】、5頁7?8欄,7頁11欄15?16行)

(A-4)「表面処理剤としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどの各種のシリコーンオイル、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n-オクタデシルジメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライドなどの各種のアルキルシラン、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどの各種のフルオロアルキルシラン、特にビニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤に代表される、シラン系・チタン系・アルミ系・アルミナ-ジルコニア系などの各金属系カップリング剤、イソステアリン酸、ステアリン酸などの脂肪酸やそれらの金属塩など、さらに界面活性剤などいずれの処理剤も使用可能であり、これらを単独、または二種以上を混合して用いることができる。」(段落【0021】、3頁3欄25?44行)

(A-5)表1の例1には表面処理剤としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社製 KF-99)を用いることが記載されている。(段落【0032】、【0035】、5頁7?8欄、7頁11欄27行)

(A-6)「サンドグラインダーミルとは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた攪拌ディスクを高速回転させることにより、基材粉体の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、基材粉体に表面処理を行う際に基材を十分に分散させ、かつ表面処理できる形式であれば問題なく、たとえば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。」(段落【0016】、2頁2欄44行?3頁3欄2行)

(A-7)「溶媒としては、特に制限はなく、水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、パラフィンなどの各種有機溶剤などの媒体を、基材の分散程度や使用する表面処理剤の特性に応じ、単独あるいは二種以上混合して、使い分けて用いることができる。」(段落【0022】、3頁3欄45?50行)

(A-8)表1の例1には溶媒としてトルエンを用いることが記載されている。(段落【0032】、5頁7?8欄)

(A-9)「本発明方法によって得られた表面処理粉体は、一般に提供されている表面処理粉体と比較して、粉体基材が微細な粒子に解砕され、同時に表面処理されているため、配合の際の粉砕により凝集粒子がこわれても、表面処理されていない未処理の面が出てくることがなく、撥水性・撥油性などの表面処理効果の低下のない、均一な表面処理粉体を製造することができる。…また、上記のようにして得られた表面処理粉体は、化粧品…の用途に対して顔料…として利用したり…して有用である。」(段落【0026】、【0028】、3頁4欄22?28、41?47行)

(A-10)表4には例1で得られる表面処理粉体(微粒子二酸化チタン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、トルエンより構成されるもの)の平均粒径が2.3μmであり、サンドグラインダーミル処理を行わない比較例1で得られた表面処理粉体の平均粒径である3.3μmよりも小さいこと、及び表5には例1で得られた表面処理粉体の紫外線透過率が49%であり、サンドグラインダーミル処理を行わない比較例1で得られた表面処理粉体の紫外線透過率である63%より低いことが記載されている。
また、「微粒子二酸化チタンは、紫外線を散乱させる作用を有しているので、基材である微粒子二酸化チタンが充分に分散していると、その結果として分散液の紫外線透過率が小さくなり、透過率が小さい程、分散性が大きいことを示している。」こと、及び「横型連続式サンドグラインダーミルを用いて表面処理を行った本発明の粉体は、紫外線の透過率が、比較例よりも低いことから、より微細な粒子にまで解砕されて表面処理されていることがわかる。」ことが記載されている。(段落【0036】?【0042】、7頁11欄37行?8頁14欄5行)

引用例B;

(B-1)「紫外線散乱剤を薄片状粉体に吸着させた複合粉体を配合してなる粉体化粧料。」(【特許請求の範囲の請求項1】、2頁1欄2?3行)

(B-2)「紫外線散乱剤は微粒子酸化チタン、酸化亜鉛等である。これらのうち微粒子酸化チタンが好ましい。これらの紫外線散乱剤の大きさは例えば微粒子酸化チタンでは粒径が約10?40mμであることができる。」(段落【0004】、2頁2欄29?33行)

(B-3)「薄片状粉体としては、劈開セリサイト、劈開セリサイトチタン、劈開マイカ、劈開マイカチタン等が挙げられ、劈開セリサイトや劈開セリサイトチタンが好ましく使用される。薄片状粉体(例えば劈開セリサイト等)の大きさは、長径0.5?50μ、短径が0.2?30μ、厚さ約0.005?0.1μであることができる。」(段落【0004】、2頁2欄33?39行)

(B-4)「薄片状粉体に紫外線散乱剤を吸着させた複合粉体を化粧料に配合することにより、紫外線カット効果が優れ…ることを見出し」(段落【0004】、2頁2欄20?24行)

(B-5)「本発明の化粧料は…皮膚上に塗布した場合、伸び(延展性)が良く、なめらかである。更には薄付きながら、肌への密着感(性)、隠蔽性にも優れていることが明らかであ…る。」(段落【0022】、6頁9欄18?25行)

引用例C;

(C-1)「通常化粧料用粉体として用いられている酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の体積累積平均径1μm以下の微粒子粉体は、それ自身の凝集力が極めて強いため、フッ素化合物で表面処理しただけでは、それを配合した化粧料に、微粉子によるきしみ感やのびの悪さが残る等、使用感の面で問題があった。」(段落【0004】、2頁1欄45?50行)

(C-2)「粉体化粧料の付着性を向上し、粉っぽさを無くすには、微粒子粉体とマイカ、タルク、セリサイト等の板状粉体とを複合化する必要がある。」(段落【0007】、2頁2欄10?12行)

3.対比判断
引用例Aには「粉体を有機化合物で表面被覆処理する際、処理装置としてサンドグラインダーミルを用い、基材粉体100重量部に対し、表面処理剤0.1?50重量部、溶媒50?5000重量部の範囲で処理することを特徴とする表面処理粉体の製造方法。」(摘記事項(A-1))が記載されている。
引用例Aには、本願明細書の実施例1で基材粉体として採用されている「テイカ社製 微粒子二酸化チタン MT-500SA」を粉体として用いることが記載されているので(摘記事項(A-3))、 引用例Aの粉体(摘記事項(A-2))は本願発明の微粒子(段落【0014】?【0015】)に相当する。
また、引用例Aの表面処理剤(摘記事項(A-4)、(A-5))、溶媒(摘記事項(A-7)、(A-8))及びサンドグラインダーミル(摘記事項(A-6))も、それぞれ本願発明の表面処理剤(段落【0016】)、溶媒(段落【0017】)及びサンドグラインダーミル(段落【0011】)と同一のものである。

そうすると、引用例Aには「微粒子100重量部と表面処理剤0.1?50重量部および溶媒50?5000重量部を混合して、サンドグラインダーミルで解砕、分散処理した処理微粒子の製造方法」が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明A」という。)

本願発明と引用発明Aとを対比すると、両者は、「微粒子100重量部と表面処理剤0.1?50重量部および溶媒50?5000重量部を混合して、サンドグラインダーミルで解砕、分散処理した処理微粒子の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、処理微粒子と無機薄片を混合する工程を有し、最終的に複合粉体を製造しているのに対して、引用発明Aでは処理微粒子と無機薄片を混合することについての記載がない点。

以下、相違点について検討する。
引用例Bには、「微粒子酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線散乱剤を劈開セリサイト、劈開セリサイトチタン、劈開マイカ、劈開マイカチタン等の薄片状粉体に吸着させた複合粉体」(摘記事項(B-1)、(B-2)、(B-3))が化粧料の「紫外線カット効果」を高めること(摘記事項(B-4))、及びこの化粧料を「皮膚上に塗布した場合、伸び(延展性)が良く、なめらかであり、更には薄付きながら、肌への密着感(性)、隠蔽性にも優れ」(摘記事項(B-5))ることが記載されている。また、引用例Cには「化粧料用粉体として用いられている酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の体積累積平均径1μm以下の微粒子粉体は、それ自身の凝集力が極めて強いため、それを配合した化粧料に、微粉子によるきしみ感やのびの悪さが残る等、使用感の面で問題があった」(摘記事項(C-1))こと、及び「粉体化粧料の付着性を向上し、粉っぽさを無くすには、微粒子粉体とマイカ、タルク、セリサイト等の板状粉体とを複合化する必要がある」(摘記事項(C-2))ことが記載されている。

そうすると、引用例Aに記載の紫外線の遮蔽に向けた化粧料にも用いられる表面処理粉体(摘記事項(A-2)、(A-3))の紫外線カット効果を更に高め、皮膚適用の化粧料で求められる特性である付着性、伸び(延展性)等をこの粉体に付与することを期待する当業者であれば、引用例Aに記載の表面処理粉体をセリサイト、マイカ等の薄片状(板状)粉体(無機薄片)と混合し、複合粉体としてみることは容易に想到し得ることである。

そして、本願明細書に記載される紫外線遮蔽性、滑り性、付着性についての効果も、サンドグラインダーミルによる表面処理で、微粒子二酸化チタンの分散能が上がり、紫外線散乱効果が高まることが引用例Aに記載されていること(摘記事項(A-10))及び複合粉体とすることにより、紫外線カット効果が高まり、付着性、伸び(延展性)が良好になることが引用例B、Cに記載されていることからみて(摘記事項(B-4)、(B-5)、(C-1)、(C-2))、当業者の予測を超えるものと評価することはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用例A乃至Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2007-08-21 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願平7-302846
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 福井 悟
弘實 謙二
発明の名称 複合粉体の製造方法およびそれを用いてなる化粧料  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  

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