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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1166751
審判番号 不服2006-7391  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-18 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 特願2001-346019「電子エネルギー損失分光装置、及びそれを備えた電子顕微鏡、及び電子エネルギー損失スペクトル測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月23日出願公開、特開2003-151478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成13年11月12日の出願であって、平成18年3月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年5月15日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年5月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月15日付の手続補正(以下、「本件補正という。」)を却下する。
[理由]
(1) 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5は、平成17年11月7日付の手続補正による
「請求項3記載の電子エネルギー損失スペクトルを測定する方法において、
前記電子線の軌道は、電子線源の加速電圧、ドリフトチューブの電圧、または磁場セレクタの磁場強度により制御することを特徴とする電子線エネルギー損失スペクトル測定装置。」
から、
「請求項1記載の電子線エネルギー損失スペクトルを測定する方法において、
前記電子線の軌道は、電子線源の加速電圧、ドリフトチューブの電圧、または磁場セクタの磁場強度により制御することを特徴とする電子線エネルギー損失スペクトルを測定する方法。」
と補正された。

(2)補正の目的違反について
請求項5に係る補正は、引用する請求項を「方法」の発明である請求項3から、「装置」の発明である請求項1に変え、さらに、請求項5に係る発明を「装置」の発明から「方法」変える補正を含むものであるが、当該補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも当たらない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記補正は、上記理由により、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成18年5月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年11月7日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「試料上の電子線位置を制御し、電子線検出器で試料上の2ケ所以上の場所で電子エネルギー損失スペクトルを測定する方法であって、
電子線検出器でエネルギー損失スペクトルの電子線強度が最大のピークを検出し、電子線強度が最大のピーク位置が、前記電子線検出器で定めた基準位置からずれた量を検出し、そのずれ量を電子線の軌道を制御して補正する処理と、前記ずれ量を補正した後にエネルギー損失スペクトルを測定する処理と、を行うことを特徴とする電子エネルギー損失スペクトルを測定する方法。」

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例
引用例1;特開2000-348670号公報
引用例2;国際公開00/41206号パンフレット

(1).1 引用例1の記載事項
【0001】段落には、
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子線分光装置とそれを用いた電子顕微鏡に関し、特に測定エネルギーの変化に対応した処理が可能な電子線分光装置とそれを用いた電子顕微鏡に関する。」
と記載されている。

【0008】?【0016】段落には、
「【0008】電子線エネルギー損失分光法と呼ばれる分析方法は、一般的にはEELS(Electron Energy Loss Spectoroscopy)と言われ、電子線分光装置を使用した分析法の代表的な手法である。試料の特定の場所を通過した電子線のスペクトル…を測定し、物質の元素組成、電子状態、厚さ、光学定数等を調べることができる。

【0010】…元素組成、電子状態分析を行なうため、損失エネルギーの大きな領域での測定では信号積算量を適正にするために測定時間を長くする必要がある。
【0011】…電子線分光装置を使用して長時間の測定を行なう場合に、…それを検知して測定しようとするエネルギーが常に変化しないように補正をかけられるようにすることが必要である。

【0013】
【課題を解決するための手段】…
【0015】また、本発明は、電子顕微鏡に付加して用いられ、磁界または電界、または磁界と電界を使用して電子線をそのエネルギーにより分離する電子線分離機構と、この電子線分離機構により分離された電子線を受光しその情報を得る電子線受光機構とを具備する電子線分光装置において、前記電子線受光機構の近傍にその検出部が複数に分割された電子線検出器を配置することを特徴とする。
【0016】さらに、本発明は、電子線分光装置装置(原文の通り記載)を付加した電子顕微鏡において、電子線検出器によって得られた情報によって、電子顕微鏡の加速電圧を変化させる加速電圧調整機構を具備することを特徴とする。」
と記載されている。

【0027】段落には、
「【0027】電子線受光機構14により、…電子線検出器2から得られるスペクトル情報により、例えばゼロロスピークの位置を検出し、電子線検出器2に入射するゼロロスピークの位置が常に一定になるように、電子顕微鏡の加速電圧あるいは電子線分光装置の磁界強度あるいは電子線分光装置の電界強度にフイードバックをかける方法がある。
図14は、この構成をブロック図で示したもので、電子線検出器2からの電子線のエネルギーのスペクトル情報を波形分析21で分析してピーク位置を検出し、電子顕微鏡加速電圧22、エネルギーフィルタの磁界23、エネルギーフィルタの電界24、電子線偏向機構25のいずれかか、あるいは複数のものにフィードバックをかける。…
図15および図16のような電子線を偏向させる電子線偏向機構25を有した装置においては、同様に電子線を偏向させる電子線偏向機構25にフイードバックをかける。」
と記載されている。

(1).2 引用例1に記載された発明
ア.【0027】段落の記載から、引用例1には、電子線受光機構14により、電子線検出器2から得られるスペクトル情報により、ゼロロスピークの位置を検出し、電子線検出器2に入射するゼロロスピークの位置が常に一定になるように、電子顕微鏡の加速電圧あるいは電子線分光装置の磁界強度あるいは電子線分光装置の電界強度にフイードバックをかけることが記載されている。
イ.【0008】段落の記載から、引用例1には、 電子線エネルギー損失分光法であって、試料の特定の場所を通過した電子線のスペクトルを測定する方法が記載されている。

そうすると、引用例1には、
「電子線受光機構14により、電子線検出器2から得られるスペクトル情報により、ゼロロスピークの位置を検出し、電子線検出器2に入射するゼロロスピークの位置が常に一定になるように、電子顕微鏡の加速電圧あるいは電子線分光装置の磁界強度あるいは電子線分光装置の電界強度にフイードバックをかける電子線エネルギー損失分光法であって、試料の特定の場所を通過した電子線のスペクトルを測定する方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(1).3 引用例2の記載事項
引用例2には、走査透過型電子顕微鏡(STEM)と電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて、試料の各測定点でのEELSスペクトル(電子エネルギー損失スペクトル)を求めることが記載(第3頁第5行?第6頁第5行)されている。

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較する。
ア.引用発明の「電子線エネルギー損失分光法」は、引用例1の【0008】段落の記載を参照すると、本願発明の「電子エネルギー損失スペクトルを測定する方法」に実質的に相当する。
イ.引用発明の「ゼロロスピーク」は、本願発明の【0045】段落の記載を参照すると、「電子線検出器でエネルギー損失スペクトルの電子線強度が最大のピーク」に実質的に相当する。
ウ.上記イ.を参照すると、引用発明の「電子線受光機構14により、電子線検出器2から得られるスペクトル情報により、ゼロロスピークの位置を検出」することは、本願発明の「電子線検出器でエネルギー損失スペクトルの電子線強度が最大のピークを検出」することに相当する。
エ.引用発明の「ゼロロスピークの位置が常に一定になるよう」に、「フイードバックをかける」ことは、本願発明の「電子線強度が最大のピーク位置」を「補正する」ことに実質的に相当するから、引用発明の「電子線検出器2に入射するゼロロスピークの位置が常に一定になるように、電子顕微鏡の加速電圧あるいは電子線分光装置の磁界強度あるいは電子線分光装置の電界強度にフイードバックをかける」ことは、本願発明の「電子線強度が最大のピーク位置が、前記電子線検出器で定めた基準位置からずれた量を検出し、そのずれ量を電子線の軌道を制御して補正する」ことに実質的に相当する。
オ.引用発明の「試料の特定の場所を通過した電子線のスペクトルを測定する」ことが、「電子線受光機構14により、電子線検出器2から得られるスペクトル情報により、ゼロロスピークの位置を検出し、電子線検出器2に入射するゼロロスピークの位置が常に一定になるように、電子顕微鏡の加速電圧あるいは電子線分光装置の磁界強度あるいは電子線分光装置の電界強度にフイードバックをかけ」て電子線検出器2に入射するゼロロスピークの位置を補正した後に行われることは【0027】段落の記載から明らかである。

そうすると、両者は、
「試料の電子エネルギー損失スペクトルを測定する方法であって、
電子線検出器でエネルギー損失スペクトルの電子線強度が最大のピークを検出し、電子線強度が最大のピーク位置が、前記電子線検出器で定めた基準位置からずれた量を検出し、そのずれ量を電子線の軌道を制御して補正する処理と、前記ずれ量を補正した後にエネルギー損失スペクトルを測定する処理と、を行う電子エネルギー損失スペクトルを測定する方法。」
において一致し、以下の点で相違する。

相違点
本願発明が、「試料上の電子線位置を制御し、電子線検出器で試料上の2ケ所以上の場所で電子エネルギー損失スペクトルを測定する」構成を有するのに対し、引用発明は、上記構成の記載がない点で相違する。

(3)判断
相違点について検討する。
走査透過型電子顕微鏡(STEM)と電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて、試料の各測定点でのEELSスペクトル(電子エネルギー損失スペクトル)を求めることは、周知手段(引用例2、特開昭58-51452号公報(第1頁右欄第3行?第10行)等参照)であり、走査透過型電子顕微鏡においては、測定点が2カ所以上であることは明らかである。
引用発明において、電子顕微鏡を、周知手段である走査透過型電子顕微鏡とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知手段から当業者が予測できる範囲のものである。

4.以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知手段に基いて当業者が容易に発明できたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-22 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願2001-346019(P2001-346019)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 濱田 聖司
辻 徹二
発明の名称 電子エネルギー損失分光装置、及びそれを備えた電子顕微鏡、及び電子エネルギー損失スペクトル測定方法  
代理人 ポレール特許業務法人  

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