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審決分類 |
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1166799 |
審判番号 | 不服2005-13584 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-14 |
確定日 | 2007-11-01 |
事件の表示 | 特願2002-226240「半導体装置及び半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 71705〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年8月2日の出願であって、平成17年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後当審において、平成18年8月1日付けで審尋がなされ、その後同年10月4日に回答書が提出されたものである。 2.平成17年7月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成17年7月14日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正の内容 補正前の請求項1ないし4を削除するとともに、補正前の請求項5を補正後の請求項1とし、なおかつ、【0012】ないし【0014】を削除し、【発明の名称】及び【0015】を補正するものであって、補正後の請求項1は以下のとおりである。 「【請求項1】 (a)半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程と、 (b)前記半導体素子を覆うように、前記半導体基板の上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程と、 (b1)前記第1の絶縁膜の表面を、化学機械研磨により平坦化する工程と、 (c)前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い有機絶縁材料またはポーラスシリカで形成される第2の絶縁膜を、塗布法により形成する工程と、 (d)前記第2の絶縁膜及び前記第1の絶縁膜を貫通するビアホールを形成する工程と、 (e)前記ビアホール内に導電性プラグを埋め込む工程と、 (f)前記第2の絶縁膜の上に、前記導電性プラグに接続された金属製の配線を形成する工程と を有する半導体装置の製造方法。」 (2)本件補正の内容の整理 補正事項を整理すると以下のとおりである。 (a)補正事項1 補正前の請求項1ないし4を削除すること。 (b)補正事項2 補正前の請求項5の「(c)前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い絶縁材料からなる第2の絶縁膜を、塗布法により形成する工程」を、「(c)前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い有機絶縁材料またはポーラスシリカで形成される第2の絶縁膜を、塗布法により形成する工程」とすること。 (c)補正事項3 補正前の【0012】ないし【0014】を削除すること。 (d)補正事項4 補正前の明細書の【0015】を、補正後の明細書の【0015】と補正すること。 (e)補正事項5 補正前の【発明の名称】を、補正後の【発明の名称】と補正すること。 (3)本件補正についての検討 (3-1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について (a)補正事項1について 補正事項1は、請求項の削除を目的とするものである。 (b)補正事項2について 補正事項2についての補正は、補正前の請求項5の(c)工程の「該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い絶縁材料からなる第2の絶縁膜」を「該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い有機絶縁材料またはポーラスシリカで形成される第2の絶縁膜」と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする。 また、本願明細書の【0019】、【0034】には、それぞれ「保護膜6の上に、ポーラスシリカからなる厚さ250nmのビア層絶縁膜7が形成されている。」、「上記第1の実施例では、低誘電率絶縁材料としてポーラスシリカを使用したが、誘電率が、酸化シリコンやPSGやBPSGの誘電率よりも低い他の低誘電率絶縁材料を使用してもよい。例えば、ダウケミカル社のSiLK(登録商標)等の有機絶縁材料を使用してもよい。」と記載されているから、補正事項2についての補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (c)補正事項3ないし5について 補正事項3ないし5についての補正は、補正された特許請求の範囲と整合させるために行われた補正であって、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 したがって、補正事項2についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項の規定に適合する。 ここで、補正事項2についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合し、かつ同法同条第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであるから、本件補正について、同法同条第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて更に検討する。 (3-2)独立特許要件の検討 (3-2-1)刊行物に記載された発明 刊行物1. 特開2001-274239号公報 本願の出願日前に国内において頒布された特開2001-274239号公報には、図1及び図4とともに以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、層間絶縁膜として高誘電率膜/低誘電率膜の積層絶縁膜を用いた半導体装置およびその製造方法に関する。」 「【0016】図1(a)は、シリコン基板1上に第1の配線層を形成した段階の断面図を示しており、2は層間絶縁膜、3は金属配線を示している。」 「【0018】次に図1(b)に示すように、全面に高誘電率膜4、低誘電率膜5を順次堆積し、積層構造の層間絶縁膜を形成する。高誘電率膜4は、例えばプラズマCVD法により形成したTEOS膜もしくはSiO2膜、シリコン窒化膜、SiOF膜・・・、またはこれらの絶縁膜から選ばれた少なくとも2種類以上の絶縁膜の積層膜である。低誘電率膜5は、例えば有機SOG膜、HSQ膜、CVD有機シリコン酸化膜、ポーラスシリカ膜である。高誘電率膜4は、一般に、低誘電率膜5に比べて、ヤング率または硬度が高く、機械的強度が強い。 【0019】次に図1(c)に示すように、図示しない保護膜、高誘電率膜4および低誘電率膜5をエッチングして、金属配線3に対してのヴィアホール6および配線溝7を形成する。なお、図中右側の配線溝の下のヴィアホールは他の断面にあり、図には示していない。また、ヴィアホール6、配線溝7を作る順序は、どちらが先でも良い。 【0020】ここで、従来と異なる点は、配線溝7の底面は低誘電率膜5内にあり、高誘電率膜4までは達していないことにある。このような配線溝7は、エッチング時間を制御することで形成することができる。 【0021】次に図1(d)に示すように、ヴィアホール6および配線溝7の内部を埋め込むように、DD配線となる金属膜8を全面に堆積する。金属膜8は、例えばAl膜またはCu膜である。なお、実際のダマシンプロセスでは、ライナー膜や拡散防止膜等の下地膜を形成してから金属膜8を形成するが、ここでは説明を簡単にするために省略してある。 【0022】最後に、図1(e)に示すように、低誘電率膜5上の金属膜8を化学的機械的研磨法を用いて研磨し、ヴィアホール6および配線溝7の外部の不要な金属膜8を除去し、表面を平坦化してDD配線8(第2の配線層)が完成する。」 「【0029】以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ダマシン配線として特にDD配線の場合について説明したが、本発明はシングルダマシン配線(SD配線)にも適用できる。 【0030】図4に、本発明をSD配線に適用した場合の図1に相当する工程断面図を示す。なお、図1と対応する部分には図1と同一符号(添字が異なるものを含む)を付してあり、詳細な説明は省略する。 【0031】図1に示したDD配線8の場合、プラグと配線は同じ金属膜により、同時に形成される。しかし、SD配線の場合、図4に示すように、プラグ8pと配線8wはそれぞれ別の工程で形成される。 【0032】また、本発明のSD配線が従来のそれとなる点は、配線の下部角部と低誘電率膜とがコンタクトする構造を実現するために、低誘電率膜5を第1の低誘電率膜51 と第2の低誘電率膜52との積層膜にしたことにある。」 「【0034】また、上記実施形態では、シリコン基板1上の金属配線3とコンタクトするDD配線の場合について説明したが、シリコン基板1の表面のソース/ドレイン拡散層などのように、基板表面の不純物拡散層とコンタクトするDD配線に対しても本発明は有効である。」 よって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「半導体基板上に、TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成する工程と、前記高誘電率膜4の上に、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する工程と、前記高誘電率膜4及び前記低誘電率膜51を貫通するヴィアホール6を形成する工程と、前記ヴィアホール6内にプラグ8pを埋め込む工程と、低誘電率膜51の上に低誘電率膜52を形成した後、プラグ8p上を含む低誘電率膜51の上の低誘電率膜52に配線溝7を形成し、プラグ8pに接続された配線8wを形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。」 (3-2-2)対比・判断 平成17年7月14日付けで補正された請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物発明」という。)とを対比検討する。 (1)刊行物発明の「TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4」は、絶縁膜であることは明らかであるから、補正発明の「絶縁材料からなる第1の絶縁膜」に相当する。 (2)刊行物発明の「プラズマCVD法により形成する」ことは、「CVD法」が化学気相成長法を意味するから、補正発明の「気相成長により形成する」ことに相当する。 (3)刊行物発明の「有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51」は、「TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4」よりも低誘電率を有していることは明らかであり、「有機SOG」は有機絶縁材料であることも明らかであるから、刊行物発明の「有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51」は、補正発明の「第1の絶縁膜よりも誘電率の低い有機絶縁材料またはポーラスシリカで形成される第2の絶縁膜」に相当する。 (4)刊行物1には、図4とともに、「図1に示したDD配線8の場合、プラグと配線は同じ金属膜により、同時に形成される。しかし、SD配線の場合、図4に示すように、プラグ8pと配線8wはそれぞれ別の工程で形成される。」(【0031】)と記載されていることから、刊行物発明の「プラグ8p」及び「配線8w」は、「金属膜」で形成すること、及び導電性を有することは明らかである。 したがって、刊行物発明の金属膜から形成された「プラグ8p」及び「配線8w」は、それぞれ、補正発明の「導電性プラグ」及び「金属製の配線」に相当する。 (5)上記(4)において検討したとおり、刊行物発明の「プラグ8p」及び「配線8w」は、それぞれ、補正発明の「導電性プラグ」及び「金属製の配線」に相当するから、刊行物発明の「低誘電率膜51の上に低誘電率膜52を形成した後、プラグ8p上を含む低誘電率膜51の上の低誘電率膜52に配線溝7を形成し、プラグ8pに接続された配線8wを形成する工程」は、補正発明の「前記第2の絶縁膜の上に、前記導電性プラグに接続された金属製の配線を形成する工程」に相当する。 したがって、補正発明と刊行物発明とは、 「半導体基板上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程と、前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い有機絶縁材料またはポーラスシリカで形成される第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜及び前記第1の絶縁膜を貫通するビアホールを形成する工程と、前記ビアホール内に導電性プラグを埋め込む工程と、前記第2の絶縁膜の上に、前記導電性プラグに接続された金属製の配線を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 補正発明では、「半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子を覆うように、前記半導体基板の上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程」を備えているのに対して、刊行物発明では、「半導体基板上に、TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成する工程」を備えているものの、半導体基板の表面上に半導体素子を形成し、半導体素子を覆うように、高誘電率膜4を形成することが明確でない点 相違点2 補正発明では、「前記第1の絶縁膜の表面を、化学機械研磨により平坦化する工程」を備えているのに対して、刊行物発明では、当該工程を備えるか不明である点 相違点3 補正発明では、「前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い有機絶縁材料またはポーラスシリカで形成される第2の絶縁膜を、塗布法により形成する工程」を備えているのに対して、刊行物発明では、「前記高誘電率膜4の上に、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する工程」を備えているものの、当該低誘電率膜51を塗布法により形成することが明確でない点 以下、各相違点について検討する。 相違点1について 刊行物1には、「また、上記実施形態では、シリコン基板1上の金属配線3とコンタクトするDD配線の場合について説明したが、シリコン基板1の表面のソース/ドレイン拡散層などのように、基板表面の不純物拡散層とコンタクトするDD配線に対しても本発明は有効である。」(【0034】)と記載されているから、実施形態に示される、シリコン基板1上の金属配線3とコンタクトするDD配線の場合のみならず、シリコン基板1の表面のソース/ドレイン拡散層などのように、基板表面の不純物拡散層とコンタクトするDD配線に対して適用することも示唆されている。そして、「ソース/ドレイン拡散層」は半導体素子である電界効果トランジスタを構成するものであって、当該電界効果トランジスタは、通常半導体基板の表面上に形成されるものであるから、刊行物1には「半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程」を備えることも示唆されている。 また、刊行物1には、「例えば、上記実施形態では、ダマシン配線として特にDD配線の場合について説明したが、本発明はシングルダマシン配線(SD配線)にも適用できる。」(【0029】)との記載もあり、刊行物1でいう本発明は、SD配線にも適用できること、具体的には、図4に示される場合を開示している。 そうすると、刊行物1に記載された事項から示唆される内容を考慮すれば、刊行物発明において、「半導体基板上に半導体素子を形成する工程」を備えることにより、補正発明の如く、「半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子を覆うように、前記半導体基板の上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程」を備えるようにすることは当業者が容易になし得たものである。 相違点2について 半導体基板上に形成される層間絶縁膜として、CVD法により形成される絶縁膜と塗布法により形成される絶縁膜の積層構造を形成する際に、CVD法により形成される絶縁膜の表面をCMP法により平坦化した後に、塗布法により絶縁膜を更に形成することは、例えば、特開2001-53151号公報(「【0071】・・・TEOSガスとO3ガスとをソースとしたプラズマCVD法で形成された第1TEOS酸化膜7が形成されており、第1TEOS酸化膜7の表面は、例えばCMP法によって平坦化されている。さらに、第1TEOS酸化膜7の上層には、有機SOG膜8および第2TEOS酸化膜9が順次積層されている。」及び図20参照)、特開2002-93902号公報(「【0032】(2)次に、図2(b)に示すように、酸化シリコン系の材質からなる第1の絶縁層30を形成する。第1の絶縁層30は、たとえばCVD法により形成されることができる。・・・また、必要に応じて、第1の絶縁層30をCMP法により平坦化することができる。【0033】 次に、第1の絶縁層30の上に、非感光性の有機ポリマーからなる中間層40を形成する。・・・中間層40の形成方法としては、たとえば、塗布法、好ましくはスピンコート法を挙げることができる。」、「【0024】・・・中間層40は、非感光性の有機ポリマーからなる。非感光性の有機ポリマーの具体例としては、ポリアリーレンエーテルを主体としたAllied Signal製FLARE(登録商標)、Dow Chemical製Silk(登録商標)、BCB(Benzocyclobutene)を挙げることができる。非感光性の有機ポリマーの比誘電率は、好ましくは3以下である。」及び図2参照)にも開示されているように、従来周知の技術にすぎないものであるから、刊行物発明において、「半導体基板上に、TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成する工程と、前記高誘電率膜4の上に、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する工程」を行う際に、高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成した後であって、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する前に、CMP法により、高誘電率膜4の表面を平坦化する工程を採用することで、補正発明の如く、「前記第1の絶縁膜の表面を、化学機械研磨により平坦化する工程」を備えるようにすることは当業者が容易になし得たものである。 相違点3について 有機SOG膜は、例えば、半導体大辞典(株式会社工業調査会、1999年12月20日発行)の第573頁に記載されているように、「ポリメチルシロキサンを代表する、膜中にSi-C結合(一般にはSi-CH3結合)を持つ塗布シリコン酸化膜(SOG:Spin On Glass )」のことであるから、塗布法により形成されることは明らかであるし、また、同文献の第575頁には、ポーラスシリカも、形成方法として、「成膜には、一般に塗布法が用いられるが、(1)湿潤状態でゲル骨格を形成し、その後液相を除去する方法(xerogel)と、(2)熱分解物質を含むSOGを形成し、その後の酸化などの熱処理で空孔を形成する方法がある。」と記載されているように、塗布法を用いるものである。 したがって、刊行物発明の「有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する」方法としては、塗布法を用いることが技術常識であって、相違点3は実質的な相違点にはならない。 よって、補正発明は、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (3-3)むすび よって、補正発明を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、適法でない補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 平成17年7月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成16年9月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであり、そのうちの請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項5に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項5】(a)半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程と、 (b)前記半導体素子を覆うように、前記半導体基板の上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程と、 (b1)前記第1の絶縁膜の表面を、化学機械研磨により平坦化する工程と、 (c)前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い絶縁材料からなる第2の絶縁膜を、塗布法により形成する工程と、 (d)前記第2の絶縁膜及び前記第1の絶縁膜を貫通するビアホールを形成する工程と、 (e)前記ビアホール内に導電性プラグを埋め込む工程と、 (f)前記第2の絶縁膜の上に、前記導電性プラグに接続された金属製の配線を形成する工程と を有する半導体装置の製造方法。」 4.刊行物記載の発明 刊行物1には、上記「2.(3-2-1)刊行物に記載された発明」の「刊行物1.」に記載されるとおりの事項が記載され、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「半導体基板上に、TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成する工程と、前記高誘電率膜4の上に、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する工程と、前記高誘電率膜4及び前記低誘電率膜51を貫通するヴィアホール6を形成する工程と、前記ヴィアホール6内にプラグ8pを埋め込む工程と、低誘電率膜51の上に低誘電率膜52を形成した後、プラグ8p上を含む低誘電率膜51の上の低誘電率膜52に配線溝7を形成し、プラグ8pに接続された配線8wを形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。」 5.対比・判断 本願発明と刊行物発明とを対比検討する。 (1)刊行物発明の「TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4」は、絶縁膜であることは明らかであるから、本願発明の「絶縁材料からなる第1の絶縁膜」に相当する。 (2)刊行物発明の「プラズマCVD法により形成する」ことは、「CVD法」が化学気相成長法を意味するから、本願発明の「気相成長により形成する」ことに相当する。 (3)刊行物発明の「有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51」は、「TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4」よりも低誘電率を有していることは明らかであるから、刊行物発明の「有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51」は、本願発明の「第1の絶縁膜よりも誘電率の低い第2の絶縁膜」に相当する。 (4)刊行物1には、図4とともに、「図1に示したDD配線8の場合、プラグと配線は同じ金属膜により、同時に形成される。しかし、SD配線の場合、図4に示すように、プラグ8pと配線8wはそれぞれ別の工程で形成される。」(【0031】)と記載されていることから、刊行物発明の「プラグ8p」及び「配線8w」は、「金属膜」で形成すること、及び導電性を有することは明らかである。 したがって、刊行物発明の金属膜から形成された「プラグ8p」及び「配線8w」は、それぞれ、本願発明の「導電性プラグ」及び「金属製の配線」に相当する。 (5)上記(4)において検討したとおり、刊行物発明の「プラグ8p」及び「配線8w」は、それぞれ、本願発明の「導電性プラグ」及び「金属製の配線」に相当するから、刊行物発明の「低誘電率膜51の上に低誘電率膜52を形成した後、プラグ8p上を含む低誘電率膜51の上の低誘電率膜52に配線溝7を形成し、プラグ8pに接続された配線8wを形成する工程」は、本願発明の「前記第2の絶縁膜の上に、前記導電性プラグに接続された金属製の配線を形成する工程」に相当する。 よって、本願発明と刊行物発明とは、 「半導体基板上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程と、前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜及び前記第1の絶縁膜を貫通するビアホールを形成する工程と、前記ビアホール内に導電性プラグを埋め込む工程と、前記第2の絶縁膜の上に、前記導電性プラグに接続された金属製の配線を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 本願発明では、「半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子を覆うように、前記半導体基板の上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程」を備えているのに対して、刊行物発明では、「半導体基板上に、TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成する工程」を備えているものの、半導体基板の表面上に半導体素子を形成し、半導体素子を覆うように、高誘電率膜4を形成することが明確でない点 相違点2 本願発明では、「前記第1の絶縁膜の表面を、化学機械研磨により平坦化する工程」を備えているのに対して、刊行物発明では、当該工程を備えるか不明である点 相違点3 本願発明では、「前記第1の絶縁膜の上に、該第1の絶縁膜よりも誘電率の低い絶縁材料からなる第2の絶縁膜を、塗布法により形成する工程」を備えているのに対して、刊行物発明では、「前記高誘電率膜4の上に、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する工程」を備えているものの、当該低誘電率膜51を塗布法により形成することが明確でない点 以下、各相違点について検討する。 相違点1について 刊行物1には、「また、上記実施形態では、シリコン基板1上の金属配線3とコンタクトするDD配線の場合について説明したが、シリコン基板1の表面のソース/ドレイン拡散層などのように、基板表面の不純物拡散層とコンタクトするDD配線に対しても本発明は有効である。」(【0034】)と記載されているから、実施形態に示される、シリコン基板1上の金属配線3とコンタクトするDD配線の場合のみならず、シリコン基板1の表面のソース/ドレイン拡散層などのように、基板表面の不純物拡散層とコンタクトするDD配線に対して適用することも示唆されている。そして、「ソース/ドレイン拡散層」は半導体素子である電界効果トランジスタを構成するものであって、当該電界効果トランジスタは、通常半導体基板の表面上に形成されるものであるから、刊行物1には「半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程」を備えることも示唆されている。 また、刊行物1には、「例えば、上記実施形態では、ダマシン配線として特にDD配線の場合について説明したが、本発明はシングルダマシン配線(SD配線)にも適用できる。」(【0029】)との記載もあり、刊行物1でいう本発明は、SD配線にも適用できること、具体的には、図4に示される場合を開示している。 そうすると、刊行物1に記載された事項から示唆される内容を考慮すれば、刊行物発明において、「半導体基板上に半導体素子を形成する工程」を備えることにより、本願発明の如く、「半導体基板の表面上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子を覆うように、前記半導体基板の上に、絶縁材料からなる第1の絶縁膜を、気相成長により形成する工程」を備えるようにすることは当業者が容易になし得たものである。 相違点2について 半導体基板上に形成される層間絶縁膜として、CVD法により形成される絶縁膜と塗布法により形成される絶縁膜の積層構造を形成する際に、CVD法により形成される絶縁膜の表面をCMP法により平坦化した後に、塗布法により絶縁膜を更に形成することは、例えば、特開2001-53151号公報(「【0071】・・・TEOSガスとO3ガスとをソースとしたプラズマCVD法で形成された第1TEOS酸化膜7が形成されており、第1TEOS酸化膜7の表面は、例えばCMP法によって平坦化されている。さらに、第1TEOS酸化膜7の上層には、有機SOG膜8および第2TEOS酸化膜9が順次積層されている。」及び図20参照)、特開2002-93902号公報(「【0032】(2)次に、図2(b)に示すように、酸化シリコン系の材質からなる第1の絶縁層30を形成する。第1の絶縁層30は、たとえばCVD法により形成されることができる。・・・また、必要に応じて、第1の絶縁層30をCMP法により平坦化することができる。【0033】 次に、第1の絶縁層30の上に、非感光性の有機ポリマーからなる中間層40を形成する。・・・中間層40の形成方法としては、たとえば、塗布法、好ましくはスピンコート法を挙げることができる。」、「【0024】・・・中間層40は、非感光性の有機ポリマーからなる。非感光性の有機ポリマーの具体例としては、ポリアリーレンエーテルを主体としたAllied Signal製FLARE(登録商標)、Dow Chemical製Silk(登録商標)、BCB(Benzocyclobutene)を挙げることができる。非感光性の有機ポリマーの比誘電率は、好ましくは3以下である。」及び図2参照)にも開示されているように、従来周知の技術にすぎないものであるから、刊行物発明において、「半導体基板上に、TEOS膜もしくはSiO2膜からなる高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成する工程と、前記高誘電率膜4の上に、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する工程」を行う際に、高誘電率膜4をプラズマCVD法により形成した後であって、有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する前に、CMP法により、高誘電率膜4の表面を平坦化する工程を採用することで、本願発明の如く、「前記第1の絶縁膜の表面を、化学機械研磨により平坦化する工程」を備えるようにすることは当業者が容易になし得たものである。 相違点3について 有機SOG膜は、例えば、半導体大辞典(株式会社工業調査会、1999年12月20日発行)の第573頁に記載されているように、「ポリメチルシロキサンを代表する、膜中にSi-C結合(一般にはSi-CH3結合)を持つ塗布シリコン酸化膜(SOG:Spin On Glass )」のことであるから、塗布法により形成されることは明らかであるし、また、同文献の第575頁には、ポーラスシリカも、形成方法として、「成膜には、一般に塗布法が用いられるが、(1)湿潤状態でゲル骨格を形成し、その後液相を除去する方法(xerogel)と、(2)熱分解物質を含むSOGを形成し、その後の酸化などの熱処理で空孔を形成する方法がある。」と記載されているように、塗布法を用いるものである。 したがって、刊行物発明の「有機SOG膜或いはポーラスシリカ膜からなる低誘電率膜51を形成する」方法としては、塗布法を用いることが技術常識であって、相違点3は実質的な相違点にはならない。 したがって、本願の請求項5に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願は、請求項1ないし4に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-29 |
結審通知日 | 2007-09-04 |
審決日 | 2007-09-18 |
出願番号 | 特願2002-226240(P2002-226240) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L) P 1 8・ 121- Z (H01L) P 1 8・ 574- Z (H01L) P 1 8・ 571- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷山 健、北島 健次 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
齋藤 恭一 井原 純 |
発明の名称 | 半導体装置及び半導体装置の製造方法 |
代理人 | 高橋 敬四郎 |