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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1166824
審判番号 不服2006-3349  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-23 
確定日 2007-11-01 
事件の表示 平成11年特許願第235693号「冷凍サイクル」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月16日出願公開、特開2001- 66004〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本特許出願は、平成11年8月23日の出願であって、平成18年1月16日付け(発送日:同年1月24日)で、拒絶をすべき旨の査定がされたところ、同査定に対して平成18年2月23日付けで審判が請求され、同年3月27日付けで手続補正書が提出された。
そして、平成19年2月7日付けで当審による拒絶理由が通知されたのに対して、平成19年4月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、平成19年5月18日付けで、最後の拒絶理由が通知されたのに対して、平成19年7月23日付けで、意見書が提出されたものである。

第2.当審の拒絶理由

当審において、平成19年5月18日付けで通知された拒絶理由の概略は、以下のとおりのものである。

「1.本件補正
平成19年4月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に、次の事項(以下、「補正事項」という。)を追加するものである(関連する発明の詳細な説明の補正を含む。)。

「前記密閉型電動圧縮機(100)は、モータハウジング(130)に収容された電動モータ(120)と、前記モータハウジング(130)の外部から前記電動モータ(120)に電力を供給する給電端子と、前記電動モータ(120)の駆動軸によって駆動される圧縮機構(110)とを有し、
前記モータハウジング(130)内に圧縮される前の前記冷媒とポリアルキレングリコールとが混合した状態で流入するものにおいて、
前記駆動軸が水平方向に配置されており、
前記給電端子が前記駆動軸よりも上方に配置されている」

・・・・・ 略 ・・・・・

2.出願当初の明細書の記載、及び、審判請求人の補正の根拠の主張
出願当初の明細書には、前記補正事項及びその作用効果については、次の記載の外は、何も記載されていない。

「【0020】 図1中、100は冷媒(二酸化炭素)を吸入圧縮する密閉型電動圧縮機(以下、圧縮機と略す。)であり、この圧縮機100は、図2に示すように、スクロール型の圧縮機構110と、この圧縮機構110を駆動する電動モータ120とからなるものである。」

そして、審判請求人は、前記意見書において、本件補正の根拠として次のとおり主張する。

「また、上記手続補正書における「前記駆動軸が水平方向に配置されており、前記給電端子が前記駆動軸よりも上方に配置されている」という限定を追加する補正は、出願当初の明細書の図1乃至図3に基づくものであります。
なぜならば、図3には、アキュムレータ500の上下方向が記載されています。図1に記載されたアキュムレータ500と密閉型電動圧縮機500の配置関係から、図2における上下方向は図3と同様であり、「駆動軸が水平方向に配置されていること」及び「給電端子が駆動軸よりも上方に配置されていること」は図1乃至図3の記載から自明であります。」(第2頁下から12-5行)

3.本件補正の適否の判断
図1は、「本発明の実施形態に係るアキュムレータサイクルの模式図」であり、圧縮機、放熱器、減圧機、蒸発器、及びアキュムレータの接続関係を示すだけのものにすぎないことから(図1が、蒸発器の上方に圧縮機を配置し、その上方に放熱器を配置することを示すものでないことからも明らかである。)、「駆動軸が水平方向に配置されていること」及び「給電端子が駆動軸よりも上方に配置されていること」が図1ないし図3の記載から自明であるということはできない。

まして、前記「電動モータの駆動軸を水平方向に配置し、給電端子を駆動軸よりも上方に配置するため、給電端子がモータハウジングの下方に溜まったポリアルキレングリコールに浸ることを防止し、上記課題によって電動モータの起動が妨げられることを未然に防止することができます。」という作用効果を前提にして、このように配置したことが、図1ないし図3の記載から自明であるとは到底いえない。

したがって、本件補正は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、よって本願は拒絶されるべきものである。 」


第3.請求人の主張する本件補正(平成19年4月16日付けの手続補正、以下同じ)の根拠

請求人は、本件補正の根拠に関して、平成19年7月23日付け意見書において、以下の点を主張している。

「第1に、確かに図1は各構成要素の接続関係を示す模式図でありますが、図2、図3を参酌すれば、少なくとも「アキュムレータ500」と「密閉型電動圧縮機100」夫々は明らかに上下方向を意識して描かれており、当業者であれば、図1及び図2に描かれた圧縮機を縦置き(駆動軸が鉛直方向)の圧縮機であると認識することはありえません。
加えて、図2には、密閉型電動圧縮機100に冷媒が流入してくる方向と、密閉型電動圧縮機100から冷媒が吐出される方向が図示されています。このようにハウジングの軸方向から冷媒を出し入れする構成では、密閉型電動圧縮機100を縦置き(駆動軸が鉛直方向)にすると下方に配置された冷媒出入り口からの配管取り回しが困難となるばかりか、圧縮機内部にオイルを蓄えることが難しくなります。
また、当業者であれば、図面をわざわざ天地逆さまにして記載することは通常致しません。
このように、「駆動軸が水平方向に配置されていること」及び「給電端子が駆動軸よりも上方に配置されていること」は、当初明細書等に記載がなくても、これに接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項であります。」

第4.当審の判断

まず、願書に最初に添付した明細書(以下、当初明細書という)の記載について検討する。
密閉型電動圧縮機の構成について、当初明細書中には、次のような記載がある。

「 【0020】
図1中、100は冷媒(二酸化炭素)を吸入圧縮する密閉型電動圧縮機(以下、圧縮機と略す。)であり、この圧縮機100は、図2に示すように、スクロール型の圧縮機構110と、この圧縮機構110を駆動する電動モータ120とからなるものである。
【0021】
なお、冷媒は、略円筒状に形成された電動モータ120のモータハウジング130の軸方向一端側からモータハウジング130内に流入して電動モータ120を冷却した後、モータハウジング130の軸方向他端側に配設された圧縮機構110に吸入されて圧縮される。」

この記載中には、電動モータの駆動軸がどのように配置されているかについての記載はなく、同様に給電端子についての説明もない。
また、上記記載以外にも、当初明細書中に、密閉型電動圧縮機の電動モータ駆動軸の配置、その給電端子の配置に関する記載は見あたらない。

次に、願書に最初に添付した図面(以下、当初図面という)について検討する。
当初明細書では、図1について「本発明の実施形態に係るアキュムレータサイクルの模式図」(【図面の簡単な説明】)とされている。通常、模式図とは装置を概略的に表したもので、設計図と異なり、その寸法、空間配置などを正確に規定したものではない。
もっとも、図1および図3に示されたアキュムレータ500について、比重の重いPAG(潤滑油)、冷媒の順に下から層状に貯留する様子が示されており、上下方向に沿った記載がされているようにも見られる。しかしながら、アキュムレータサイクルにおける放熱器、蒸発器などは、配置場所のスペース等に応じて適宜配置されるものであり、図1に記載されているように必ず蒸発器の上方に放熱器が配置されるわけではない。したがって、当初図面がすべて上下方向を規定して記載されていると認めることはできない。

また、密閉型電動圧縮機が記載されている図2は、当初明細書によると「本発明の実施形態に係るアキュムレータサイクルに使用される密閉型電動圧縮機の断面図である。」(【図面の簡単な説明】)とされている。断面図とは、通常、対象機器の内部構造を把握するために、所定の平面で対象機器を切断したときの様子を表すものであるが、その平面としては対象機器の内部構造がより把握しやすい面が適宜設定されるている。したがって、その切断する平面は、水平であることも垂直であることも、あるいは斜めであることもあるので、図2の断面図が、電動モータの駆動軸が水平に配置され、給電端子が駆動軸より上方に配置されることを示しているとは認められない。

よって、「駆動軸が水平方向に配置されていること」及び「給電端子が駆動軸よりも上方に配置されていること」が、当初図面に記載されているとも、当業者にとって当初の図面の記載から自明であるともいうことはできない。

なお、請求人は平成19年7月23日付け意見書において、冷媒出入り口からの配管取り回しの困難性、圧縮機オイルの蓄え困難性を考慮すると、図2の密閉型電動圧縮機は縦置き(駆動軸が鉛直方向)できない旨主張している。しかしながら、アキュムレータサイクルは上記したように、配置場所のスペース等に応じて適宜配置されるものであり、密閉型電動圧縮機の配置体勢も配置場所の状況により種々設定されるから、仮に駆動軸を鉛直方向に配置できないとしても、図2の記載をもってして、「駆動軸が水平方向に配置」され、「給電端子が駆動軸よりも上方に配置」されているとすることはできない。

第5.むすび

したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-13 
結審通知日 2007-08-21 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願平11-235693
審決分類 P 1 8・ 55- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 富夫田々井 正吾  
特許庁審判長 小菅 一弘
特許庁審判官 関口 哲生
間中 耕治
発明の名称 冷凍サイクル  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  

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