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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61D
管理番号 1166838
審判番号 不服2005-10932  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-10 
確定日 2007-10-12 
事件の表示 平成10年特許願第546219号「馬用の鼻支持装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月29日国際公開、WO98/47451、平成12年10月17日国内公表、特表2000-513621号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は1998年4月17日(パリ条約による優先権主張1997年4月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年3月7日付けで拒絶査定がなされ、同年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年7月11日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「馬の鼻の、第一及び第二の外側前庭壁の外表面を支持する鼻支持装置であって、
前記装置は、前記第一及び第二の外側前庭壁を構造的に支持するよう配置された支持層と、前記装置を前記家畜の鼻に固定する結合層とを備え、
前記鼻支持装置が、
前記第一の外側前庭壁に結合し、吻側端部、尾側端部及び第一の吻-頚背方向寸法を有する第一の側部片と、
前記第二の外側前庭壁に結合し、吻側端部、尾側端部及び第二の吻-頚背方向寸法を有する第二の側部片と、
前記第一及び第二の側部片の交差部分を含む中線領域とを含み、
前記中線領域は、吻側端部、及び尾側端部を有するとともに、前記第一の吻-頚背方向寸法並びに第二の吻-頚背方向寸法と少なくとも同程度の大きさの吻-頚背寸法を有し、
前記中線領域の吻-頚背寸法は3?16cmであり、
前記第一の側部片の側縁と前記第二の側部片の側縁との間の間隔である横方向寸法は、吻-頚背方向において変化しており、横方向寸法が最も狭い部分で5?12cm、最も広い部分で10?17cmである鼻支持装置。」と補正された。

(2)補正の目的の適否
上記補正は、平成16年5月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という。)の請求項1に記載された発明について、「家畜」を「馬」と限定し、「外側前庭壁を支持する」とあるのを「外側前庭壁の外表面を支持する」と限定し、かつ、支持装置の寸法に関し、「中線領域の吻-頚背方向寸法」について、側部片のいずれの「吻-頚背方向寸法」に対しても「少なくとも同程度の大きさ」であると限定し、「前記中線領域の吻-頚背寸法は3?16cmであり、前記第一の側部片の側縁と前記第二の側部片の側縁との間の間隔である横方向寸法は、吻-頚背方向において変化しており、横方向寸法が最も狭い部分で5?12cm、最も広い部分で10?17cmである」との限定を付加するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

ア.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、特表平6-508273号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次のように記載されている。
「本発明にかかる鼻拡張器10は、図1に概要的に示されている。鼻拡張器10は、着用者14の鼻12に図示されるように装着されている。
図2で示すように、鼻拡張器10は、中間セグメント24により第一の端部20へ結合された第一の端部20および第二の端部22を有する柔軟な材料片18を含むトラス材16を備えてなる。中間セグメントの幅は、第一および第二の端部20、22の幅より小さい。材料18の柔軟片は、鼻12の皮膚に対して痛みを最少化し、最大限快適に呼吸するために織られた生地により形成されるのが好ましい。代替的には、材料片18は、プラスチックにより形成することも可能である。
トラス材は、さらに、材料片18の片の第一の側28に固定された弾性手段26を含む。弾性手段26は、材料片18の第一の側28へ第一の粘性手段31aにより固定された第一の弾性バンド30aを含む。第一の弾性バンド30aは、中間セグメント24の第一の端32に隣接した材料片18に固定されている。さらに、第一の弾性バンド30aから離間された第二の弾性バンド30bは、第二の粘性手段31bにより、材料片18の第一の側28に固定されている。第一および第二の弾性バンド30a,30bは互いに平行に配され、柔軟な材料片18の長手方向にほぼ平行に配されている。各第一および第二の粘性手段31a、31bは、例えば、両面粘性の気泡テープのような粘性の手段により形成されている。…(中略)…
図2に示すように、材料片18の第二の側は、第一および第の端部20、22および中間セグメント24へ伸びる粘性物質層を含む。粘性物質46は、鼻12の皮膚と生物的適合するものとする。パッド要素48は粘性物質46を介して、中間セグメント24の中央に固定されている。容易に除去可能な、第一および第二のリリースライナー49、50は、各々、材料片18の第一および第二の端部20、22を被覆している。第一および第二のリリースライナー49、50は粘性物質46を被覆し、鼻拡張器10が使用されるまで、材料片18上に残っている。第一および第二のリリースライナー49、50もまた、パッド要素48を被覆する伸長部51、52を含み、さらに、鼻拡張器10が装着者14の鼻12に固定されるまで、パッド要素48を保護するように作用する。
図3、4に示すように、鼻12は、第一の鼻通路54、第二の鼻通路56および第一および第二の鼻通路54、56の間に配されたブリッジ58としてしられる鼻の部分を含む。図4は空気の好ましい流れが鼻の通路54、56を介して生じない場合にの第一および第二の鼻通路54、56の状態を示したものである。アレルギー反応による偏向した隔膜や隆起部のような奇形によれば、第一および第二の鼻通路54、56の外側壁組織60、62は、吸入時(図5)、縮まる(つぶれ)。吸入時の縮みは第一および第二の鼻通路54、56を介して呼吸時にながれる空気の速度の増加の結果による第一および第二の鼻通路54、56内の減少した空気圧により生ずる。吸入時の縮まった外側壁組織60、62の部分(孔)は鼻軟骨64(図1、3のダッシュのついたライン)と鼻通路54、56の入り口の間に配される。外側壁組織60、62の縮みは鼻閉塞を生ずる。本発明の鼻拡張器10はこの問題を解決する。
鼻拡張器10を鼻12に固定するのには、第一および第二のリリースライナー49、50は粘性物質46を露出するのに柔軟な材料片18から除去される。」(3ページ右下欄3行?4ページ右上欄1行)
「さらに、材料片18および第一および第二の粘性手段31a,31bの柔軟さ、第一および第二のバンド31a,31bの弾性、および溝38a,38bによる第一および第二のバンド30a,30bの柔軟さは、すべて、鼻拡張器10を各個人の装着者の鼻のカーブに適合するようになっている。
本鼻拡張器10は、効果的な設計で呼吸時の第一および第二の鼻通路の外側壁組織54、56の縮みを効果的に防止する。」(4ページ右上欄12?18行)
また、図1、2には、鼻拡張器10も材料片18と同様の形状であることが図示されている。

上記記載及び図示内容から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「人の第一および第二の鼻通路54、56の外側壁組織60、62の縮みによる鼻閉塞を防止する鼻拡張器10であって、
中間セグメント24により結合された第一の端部20および第二の端部22を有する柔軟な材料片18と、該材料片18の片の第一の側28に、固定された弾性手段26を含むトラス材16を備え、鼻拡張器10も第一の端部、第二の端部及び中間セグメントを備えた形状であり、材料片18の第二の側は、粘性物質46の層を含んでいて、粘性物質46により鼻に固定される鼻拡張器10。」

イ.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者における「材料片18」、「弾性手段26」、「鼻拡張器10」、「第一の端部」、「第二の端部」、「中間セグメント」は、その機能ないし構造からみて、それぞれ、前者における「結合層」、「支持層」、「鼻支持装置」、「第一の側部片」、「第二の側部片」、「中線領域」に相当する。
そして、後者の「鼻拡張器10」は、その第一、第二の端部が粘性物質46により鼻の表面に固定されるから、「鼻の、第一及び第二の外側前庭壁の外表面」を支持するものといえ、「弾性手段26」は、「第一及び第二の外側前庭壁を構造的に支持するよう配置された」ものといえる。
また、後者の「第一の端部」、「第二の端部」、「中間セグメント」がそれぞれ、吻側端部、尾側端部に相当する端部を有し、かつ、それら端部を結ぶ方向の寸法即ち吻-頚背方向寸法に相当する寸法を有し、また、「中間セグメント」は、第一及び第二の端部の交差部分を含むことは当然のことであるから、両者は、
「鼻の、第一及び第二の外側前庭壁の外表面を支持する鼻支持装置であって、
前記装置は、前記第一及び第二の外側前庭壁を構造的に支持するよう配置された支持層と、前記装置を鼻に固定する結合層とを備え、
前記鼻支持装置が、
前記第一の外側前庭壁に結合し、吻側端部、尾側端部及び第一の吻-頚背方向寸法を有する第一の側部片と、
前記第二の外側前庭壁に結合し、吻側端部、尾側端部及び第二の吻-頚背方向寸法を有する第二の側部片と、
前記第一及び第二の側部片の交差部分を含む中線領域とを含み、
前記中線領域は、吻側端部、及び尾側端部を有する鼻支持装置。」である点で一致しており、次の点で相違する。

相違点:本願補正発明は、馬の鼻に適用するものであって、「中線領域」の吻-頚背方向寸法が、第一の側部片の吻-頚背方向寸法並びに第二の側部片の吻-頚背方向寸法と少なくとも同程度であって、3?16cmであり、前記第一の側部片の側縁と前記第二の側部片の側縁との間の間隔である横方向寸法は、吻-頚背方向において変化しており、横方向寸法が最も狭い部分で5?12cm、最も広い部分で10?17cmであるのに対し、引用発明は人の鼻に適用するものであり、その形状及び寸法が明らかでない点。

ウ.当審の判断
外側壁組織60、62の縮みによる鼻閉塞を防止するという課題は、人においてのみでなく、馬においても従来知られていた課題であるから、引用発明を馬の鼻に適用しようとすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明は、鼻支持装置を馬に適用するに当たって、単に、その形状及び寸法を上記相違点のように特定するのみで、それ以外に特段の構成を備えたものではない。
そして、寸法を馬の鼻に合わせて選択することは、設計上当然に行うことであり、上記数値限定に格別の意義があるとも認められないし、形状についても、中線領域の吻-頚背方向寸法を、側部片の吻-頚背方向寸法と少なくとも同程度にすること、及び横方向寸法を、吻-頚背方向において変化させることに格別の技術的意義ないし効果を認めることはできないから、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「家畜の鼻の、第一及び第二の外側前庭壁を支持する鼻支持装置であって、
前記装置は、前記第一及び第二の外側前庭壁を構造的に支持するよう配置された支持層と、前記装置を前記家畜の鼻に固定する結合層とを備え、
前記鼻支持装置が、
前記第一の外側前庭壁に結合し、吻側端部、尾側端部及び第一の吻-頚背方向寸法を有する第一の側部片と、
前記第二の外側前庭壁に結合し、吻側端部、尾側端部及び第二の吻-頚背方向寸法を有する第二の側部片と、
前記第一及び第二の側部片の交差部分を含む中線領域とを含み、
前記中線領域は、吻側端部、及び尾側端部を有するとともに、前記第一の吻-頚背方向寸法並びに第二の吻-頚背方向寸法より選択された一方の寸法と少なくとも同程度の大きさの吻-頚背寸法を有する鼻支持装置。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例及びその記載事項は、上記「2.(3)ア」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明の特定事項のうち、上記2.(2)で述べた限定を省略するものである。
そして、本願発明に、上記限定を付加する本願補正発明が、上記「2.(3)ウ」で述べたように当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-18 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-04 
出願番号 特願平10-546219
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61D)
P 1 8・ 121- Z (A61D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 仲村 靖
一色 貞好
発明の名称 馬用の鼻支持装置及び方法  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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