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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200412418 審決 特許
不服20042777 審決 特許
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不服20064505 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166893
審判番号 不服2004-1084  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2007-11-01 
事件の表示 特願2001- 57292「入賞口装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月10日出願公開、特開2002-253769〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月1日の出願であって、平成15年8月13日付で拒絶理由通知がなされ、同年10月17日付で手続補正がなされ、同年12月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月4日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月4日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月4日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「遊技盤の遊技領域に設けられる基体の前面には、上側入賞口と、下側入賞口と、上側入賞口に配置されて当該上側入賞口に入賞した球を検出するための上側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔と、下側入賞口に配置されて当該下側入賞口に入賞した球を検出するための下側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔と、上側入賞口と下側入賞口の間で軸を中心として左右に開閉する一対の開閉体とが設けられ、基体の裏面には、一対の開閉体を開閉する開閉駆動機構が、基体から裏側に突出する上記上側入賞球検出器と下側入賞球検出器との間に位置して設けられる一方、上側入賞口と下側入賞口との役を使い分ける入賞口装置において、
一対の開閉体が左右に開いた場合、上側入賞口と一対の開閉体との隙間は遊技領域からの球を取り込むことが可能であって、
開閉駆動機構は電磁ソレノイドと揺動部材とを備え、電磁ソレノイドの励磁コイルを包むヨークが基体に取付けられることによって、電磁ソレノイドのプランジャが前後方向に移動可能に配置され、前後方向に揺り動く揺動部材におけるプランジャよりも上方の上部が上側の軸で基体に取付けられ、揺動部材の中間部がプランジャの先端部にピンで連結され、揺動部材におけるプランジャよりも下方の下部が一対の開閉体に個別に連結される一方、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として前側から後側に回転して一対の開閉体を互いに外側に開き、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として後側から前側に回転して一対の開閉体を互いに内側に閉じる構造であることを特徴とする入賞口装置。」

と補正された。

上記補正は、平成15年10月17日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「上側・下側入賞口のそれぞれに配置されて入賞した球を検出するための上側・下側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔」を「上側入賞口に配置されて当該上側入賞口に入賞した球を検出するための上側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔と、下側入賞口に配置されて当該下側入賞口に入賞した球を検出するための下側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔」と限定し、同じく「上側・下側入賞口間で左右に開閉可能な一対の開閉体」を「上側入賞口と下側入賞口の間で軸を中心として左右に開閉する一対の開閉体」と限定し、同じく「基体の裏面には開閉体に連結された開閉駆動機構が上側・下側入賞球検出器の間に位置して設けられ」を「基体の裏面には、一対の開閉体を開閉する開閉駆動機構が、基体から裏側に突出する上記上側入賞球検出器と下側入賞球検出器との間に位置して設けられ」と限定し、同じく「開閉駆動機構における電磁ソレノイドのプランジャが前後方向に移動することにより一対の開閉体を開閉すること」を「一対の開閉体が左右に開いた場合、上側入賞口と一対の開閉体との隙間は遊技領域からの球を取り込むことが可能であって、開閉駆動機構は電磁ソレノイドと揺動部材とを備え、電磁ソレノイドの励磁コイルを包むヨークが基体に取付けられることによって、電磁ソレノイドのプランジャが前後方向に移動可能に配置され、前後方向に揺り動く揺動部材におけるプランジャよりも上方の上部が上側の軸で基体に取付けられ、揺動部材の中間部がプランジャの先端部にピンで連結され、揺動部材におけるプランジャよりも下方の下部が一対の開閉体に個別に連結される一方、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として前側から後側に回転して一対の開閉体を互いに外側に開き、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として後側から前側に回転して一対の開閉体を互いに内側に閉じる構造であること」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実公平4-13019号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
▽記載事項1:「取付基板の前面に起立及び傾動自在な一対の可動翼片と、該可動翼片の上方部と下方部に位置する上部ガイド枠及び下部ガイド枠と、前記可動翼片間に位置する中央玉受部とを設けると共に、取付基板の裏面に前記可動翼片を起立及び傾動させるソレノイドを設け、
前記可動翼片は、起立状態のとき中央玉受部及び下部ガイド枠に打玉を受け入れないようにすると共に、傾動状態のとき打玉を中央玉受部に導く上部玉流下路及び下部ガイド枠の入賞玉出口に導く下部玉流下路とを区画形成するように設置したことを特徴とするパチンコ機の入賞玉装置。」(実用新案登録請求の範囲)、
▽記載事項2:「取付基板の前面に起立及び傾動自在な一対の可動翼片を設けたパチンコ機における入賞玉装置に関するものである。」(第1欄第16?18行)
▽記載事項3:「可動翼片が起立した状態のときには、中央玉受部及び下部ガイド枠のいずれにも打玉を受け入れることができない。
一方、ソレノイドの作動により可動翼片が傾動したとき、その上面に受けられた打玉は中央玉受部に導かれて入賞玉として処理され、下部ガイド枠に入つた打玉は中央玉受部に入賞した打玉とは異なつた別の入賞玉出口に導かれて流出処理される。」(第3欄第1?9行)、
▽記載事項4:「1は取付基板で、その前面に上部ガイド枠2と下部ガイド枠3を有し、前記上部ガイド枠2には上部玉入口4を備えさせると共に上部ガイド枠2と下部ガイド枠3との間に入賞領域としての左右玉入口5,5を形成し、前記取付基板1のほぼ中央に中央玉受部7を設け、前記下部ガイド枠3の中央には入賞玉出口8が形成される。
前記取付基板1の前面には中央玉受部7の両側に左右一対の可動翼片9,9を枢軸10,10により傾動自在に枢着設置し、前記一対の可動翼片9,9は前記中央玉受部7に連通する上部玉流下路11と前記下部ガイド枠3の入賞玉出口8に連通する下部玉流下路12とを区画形成し、前記一対の可動翼片9,9は第3図実線で示す起立位置において左右玉入口5,5を閉塞し、同図鎖線で示す傾動位置において左右玉入口5,5を開放して打玉をそれぞれ上下の玉流下路11,12へ個別に流入案内させるように設置する。」(第3欄第12?29行)、
▽記載事項5:「前記取付基板1は一対の可動翼片9,9の枢軸10,10を中心とする円弧孔13,13を貫通穿設すると共に前記一対の可動翼片9,9の背面に短杆14,14を突設し、該短杆14を前記円弧孔13,13に貫通させて取付基板1の裏面ヘ突出させ、前記取付板1の裏面には、第4図乃至第6図に示すように、ソレノイド15を設置し、前記ソレノイド15のプランジヤ16に腕軸17,17を固着設置し、前記腕軸17,17の先端に前記一対の可動翼片9,9の背面に突設した短杆14,14を連結接続させ、プランジヤ16の作動により一対の可動翼片9,9を傾動作動させる。
尚、6は前記上部玉入口4及び中央玉受部7に連通する玉通路で取付基盤1の裏面に設置される。前記ソレノイド15は脚杆19により前記玉通路6を股いで固定設置される。更に、前記プランジヤ16に設けた腕軸17,17の先端には横長孔20,20を有し且取付基板1と平面的に接面する枠部21,21を一体に突設し、取付基板1の円弧孔13,13に対応せしめ得るようにする。」(第3欄第30行?第4欄第7行)、
▽記載事項6:「ソレノイド15が作動していない状態では、プランジヤ16がスプリング21′の弾撥力で下方へ押圧位置されて短杆14,14が円弧孔13,13の下端に位置し、そして一対の可動翼片9,9は起立位置にあり左右玉入口5,5は閉塞されている。
この状態でソレノイド15が作動されると、プランジヤ16の吸引により腕軸17,17を上昇移動せしめて短杆14,14を円弧孔13,13に沿つて上昇させ一対の可動翼片9,9を傾動させる。
この一対の可動翼片9,9が傾動することによつて左右玉入口5,5は開かれ、それぞれの上部玉流下路11と下部玉流下路12に個々に開口連通される。そして、傾動した可動翼片9,9の上面に受けられる打玉は上部玉流下路11を通つて中央玉受部7に導かれて玉通路6へ流出し、下部玉流下路12を通つて下部ガイド枠3に入つた打玉は入賞玉出口8ヘ流出せしめられる。」(第4欄第9?27行)、
▽記載事項7:「本考案は、一対の可動翼片によつて上下二段の玉流下路を形成し、前記一対の可動翼片の傾動位置において前記上下二段の玉流下路へ打玉をそれぞれ個別に受け入れ可能にすると共に、これらの上下二段の玉流下路にそれぞれ個々に中央玉受部と入賞玉出口を備えさせ、左右の上下の玉入口に入つた打玉をそれぞれ別々の中央玉受部と入賞玉出口に流出案内させる新規な入賞玉装置を提供し、遊技者に対し新しい興味と興奮を与えることができる等の利点がある。」(第4欄第29?38行)
との記載が認められる。
また、上記摘記事項および第1・2図より、取付基板の前面に一対の可動翼片を設けたパチンコ機における入賞玉装置に関するものであること(記載事項2)、また、第1図等に遊技盤に取り付けるためのねじ穴が4カ所あること等から、取付基板1は、「遊技盤の遊技領域に設けられる」ものと認められ、
また、上記摘記事項および第3・5図等より、取付基板の前面に上部ガイド枠2と下部ガイド枠3を有し、前記上部ガイド枠2には上部玉入口4を備え、前記下部ガイド枠3の中央には入賞玉出口8が形成され、前記取付基板1の前面には中央玉受部7の両側に左右一対の可動翼片9,9を枢軸10,10により枢着設置し、前記一対の可動翼片9,9は第3図実線で示す起立位置において左右玉入口5,5を閉塞し、同図鎖線で示す傾動位置において左右玉入口5,5を開放して打玉をそれぞれ上下の玉流下路11,12へ個別に流入案内させるように設置すること(記載事項4)、取付板1の裏面には、第4図乃至第6図に示すように、ソレノイド15を設置し、前記ソレノイド15のプランジヤ16に腕軸17,17を固着設置し、前記腕軸17,17の先端に前記一対の可動翼片9,9の背面に突設した短杆14,14を連結接続させ、プランジヤ16の作動により一対の可動翼片9,9を傾動作動させること(記載事項5)等から、パチンコ機の入賞玉装置は、「取付基板1の前面には、上部玉入口4と入賞玉出口8の間で枢軸10,10を中心として左右に開閉する一対の可動翼片9,9とが設けられ、取付基板1の裏面には、一対の可動翼片9,9を開閉する開閉駆動機構が設置される」ものと認められ、
また、上記摘記事項および第1・3図より、上部ガイド枠2には上部玉入口4を備えさせると共に上部ガイド枠2と下部ガイド枠3との間に入賞領域としての左右玉入口5,5を形成し、一対の可動翼片9,9は第3図鎖線で示す傾動位置において左右玉入口5,5を開放して打玉をそれぞれ上下の玉流下路11,12へ個別に流入案内させるように設置すること(記載事項4)、一対の可動翼片9,9が傾動することによつて左右玉入口5,5は開かれ、それぞれの上部玉流下路11と下部玉流下路12に個々に開口連通され、傾動した可動翼片9,9の上面に受けられる打玉は上部玉流下路11を通つて中央玉受部7に導かれて玉通路6へ流出し、下部玉流下路12を通つて下部ガイド枠3に入つた打玉は入賞玉出口8ヘ流出せしめられること(記載事項6)等から、一対の可動翼片9,9が左右に開いた場合、「上部玉入口4と一対の可動翼片9,9との隙間は遊技領域からの打玉を取り込むことが可能である」ものと認められる。
また、ソレノイド15は、その機能上、「励磁コイルを包むヨーク」を有することは例をあげるまでもなく周知である。
これらの記載から、引用例1には、

「遊技盤の遊技領域に設けられる取付基板1の前面には、上部玉入口4と、入賞玉出口8と、上部玉入口4と入賞玉出口8の間で枢軸10,10を中心として左右に開閉する一対の可動翼片9,9とが設けられ、取付基板1の裏面には、一対の可動翼片9,9を開閉する開閉駆動機構が設置される一方、上部玉入口4と入賞玉出口8との打玉処理を異ならせる入賞玉装置において、
一対の可動翼片9,9が左右に開いた場合、上部玉入口4と一対の可動翼片9,9との隙間は遊技領域からの打玉を取り込むことが可能であって、
開閉駆動機構はソレノイド15と腕軸17,17と取付基板1を可動翼片9,9の枢軸10,10を中心として貫通穿設する円弧孔13,13と可動翼片9,9の背面に突設した短杆14,14とを備え、ソレノイド15の励磁コイルを包むヨークが脚杆19により固定設置させることによって、ソレノイド15のプランジヤ16が上下方向に移動可能に配置され、前記ソレノイド15のプランジヤ16に腕軸17,17を固着設置し、前記短杆14を前記円弧孔13,13に貫通させて取付基板1の裏面ヘ突出させ、前記腕軸17,17の先端に前記短杆14,14を連結接続させる一方、腕軸17,17がプランジヤ16により上昇移動して一対の可動翼片9,9を互いに傾動位置まで開き、腕軸17,17がプランジヤ16により上方から下方に移動して一対の可動翼片9,9を互いに起立位置に閉じる構造である入賞玉装置。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「取付基板1」、「上部玉入口4」、「入賞玉出口8」、「枢軸10,10」、「可動翼片9,9」、「設置される」、「入賞玉装置」、「打玉」、「ソレノイド15」、「プランジヤ16」、「傾動位置まで開き」および「起立位置に閉じる」は、本願補正発明の「基体」、「上側入賞口」、「下側入賞口」、「軸」、「開閉体」、「設けられる」、「入賞口装置」、「球」、「電磁ソレノイド」、「プランジャ」、「外側に開き」および「内側に閉じる」に相当すると認められる。
また、引用例1発明の「開閉駆動機構はソレノイド15と腕軸17,17と取付基板1を可動翼片9,9の枢軸10,10を中心として貫通穿設する円弧孔13,13と可動翼片9,9の背面に突設した短杆14,14とを備え、ソレノイド15の励磁コイルを包むヨークが脚杆19により固定設置させることによって、ソレノイド15のプランジヤ16が上下方向に移動可能に配置され、前記ソレノイド15のプランジヤ16に腕軸17,17を固着設置し、前記短杆14を前記円弧孔13,13に貫通させて取付基板1の裏面ヘ突出させ、前記腕軸17,17の先端に前記短杆14,14を連結接続させる一方、腕軸17,17がプランジヤ16により上昇移動して一対の可動翼片9,9を互いに傾動位置まで開き、腕軸17,17がプランジヤ16により上方から下方に移動して一対の可動翼片9,9を互いに起立位置に閉じる構造である」と、本願補正発明の「開閉駆動機構は電磁ソレノイドと揺動部材とを備え、電磁ソレノイドの励磁コイルを包むヨークが基体に取付けられることによって、電磁ソレノイドのプランジャが前後方向に移動可能に配置され、前後方向に揺り動く揺動部材におけるプランジャよりも上方の上部が上側の軸で基体に取付けられ、揺動部材の中間部がプランジャの先端部にピンで連結され、揺動部材におけるプランジャよりも下方の下部が一対の開閉体に個別に連結される一方、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として前側から後側に回転して一対の開閉体を互いに外側に開き、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として後側から前側に回転して一対の開閉体を互いに内側に閉じる構造である」は、「開閉駆動機構は電磁ソレノイドと駆動伝達付属部材とを備え、電磁ソレノイドの励磁コイルを包むヨークが固定部材に取り付けられることによって、電磁ソレノイドのプランジャが進退方向に移動可能に配置され、プランジャと開閉体とを駆動伝達付属部材を介して個別に連結される一方、プランジャの後退により一対の開閉体を互いに外側に開き、プランジャの前進により一対の開閉体を互いに内側に閉じる構造である」点で共通する。
したがって、両者は、

「遊技盤の遊技領域に設けられる基体の前面には、上側入賞口と、下側入賞口と、上側入賞口と下側入賞口の間で軸を中心として左右に開閉する一対の開閉体とが設けられ、基体の裏面には、一対の開閉体を開閉する開閉駆動機構が設けられる一方、上側入賞口と下側入賞口とを有する入賞口装置において、
一対の開閉体が左右に開いた場合、上側入賞口と一対の開閉体との隙間は遊技領域からの球を取り込むことが可能であって、
開閉駆動機構は電磁ソレノイドと駆動伝達付属部材とを備え、電磁ソレノイドの励磁コイルを包むヨークが固定部材に取り付けられることによって、電磁ソレノイドのプランジャが進退方向に移動可能に配置され、プランジャと開閉体とを駆動伝達付属部材を介して個別に連結される一方、プランジャの後退により一対の開閉体を互いに外側に開き、プランジャの前進により一対の開閉体を互いに内側に閉じる構造である入賞口装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1、基体の前面の構成において、本願補正発明では、「上側入賞口に配置されて当該上側入賞口に入賞した球を検出するための基体から裏側に突出する上側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔と、下側入賞口に配置されて当該下側入賞口に入賞した球を検出するための基体から裏側に突出する下側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔」が設けられているのに対して、引用例1発明では、入賞処理のための玉検出器が何処にどのように設置されているのか明らかでない点、および、上側入賞口と下側入賞口との入賞処理において、本願補正発明では、「役を使い分ける」のに対して、引用例1発明では「打玉処理を異ならせる」ものであり、本願補正発明のような使い分けが行われるのかどうか明らかでない点、

相違点2、開閉駆動機構の取付位置において、本願補正発明では、「上側入賞球検出器と下側入賞球検出器との間に位置して設けられる」のに対して、引用例1発明ではそのような構成になっていない点、

相違点3、開閉駆動機構に関して、本願補正発明では、「開閉駆動機構は電磁ソレノイドと揺動部材とを備え、電磁ソレノイドの励磁コイルを包むヨークが基体に取付けられることによって、電磁ソレノイドのプランジャが前後方向に移動可能に配置され、前後方向に揺り動く揺動部材におけるプランジャよりも上方の上部が上側の軸で基体に取付けられ、揺動部材の中間部がプランジャの先端部にピンで連結され、揺動部材におけるプランジャよりも下方の下部が一対の開閉体に個別に連結される一方、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として前側から後側に回転して一対の開閉体を互いに外側に開き、揺動部材がプランジャにより上側の軸を中心として後側から前側に回転して一対の開閉体を互いに内側に閉じる構造である」のに対して、引用例1発明の開閉駆動機構では、ソレノイド15のプランジヤ16による往復運動により、一対の可動翼片9,9を互いに起立位置から傾動位置まで回動するが、本願補正発明のような開閉駆動機構となっていない点、

(4)判断
上記相違点について検討する。

相違点1について、遊技機分野において、一般的に、遊技盤の前面に、上側図柄始動口と、下側図柄始動口と、上側図柄始動口に配置されて当該上側図柄始動口に入賞した遊技球を検出するための上側検出手段と、下側図柄始動口に配置されて当該下側図柄始動口に入賞した遊技球を検出するための下側検出手段とを設けること、および、上側図柄始動口に遊技球が入賞した場合は、下側図柄始動口と違い、検出遊技球数を計数して上側図柄始動口の入賞回数が所定数になると遊技状態を変化させること、すなわち、上側図柄始動口と下側図柄始動口との入賞役を異ならせることが周知{例えば、特開2001-17630号公報(段落【0017】?【0020】、【0033】、【0053】等)、特開2001-17677号公報参照。}であり、および、遊技球を検出する検出手段として、取付基板から裏側に突出する検出手段であって、上下に貫通する遊技球検出孔を設けて遊技球を検出することも周知{例えば、実用新案登録第2520934号公報(第3頁第5欄第48?50行等)、特開平10-113422号公報(段落【0007】、【0011】等)、特開2000-140214号公報(段落【0039】等、図8)参照。}であるから、引用例1発明の上部玉入口4と入賞玉出口8に代えて、前記周知のものを適用して、本願補正発明の相違点1に係る構成とした点に格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

相違点2について、遊技機分野において、チューリップ羽根の開閉を制御する開閉用電磁ソレノイドの取付に際し、開閉用電磁ソレノイドを上側通過球センサと下側過球センサとの間に位置して設けることが従来周知{一例として、特開2000-176095号公報(段落【0007】、【0027】、【0028】等、図8等。)参照。}であるから、引用例1発明の一対の可動翼片9,9を開閉する開閉駆動機構を設置するにあたり、前記周知のものを適用して、本願補正発明の相違点2に係る構成とした点に格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

相違点3について、遊技機分野のチューリップ羽根の開閉駆動機構において、一般的に、開閉用電磁ソレノイドと揺動レバーとを備え、開閉用電磁ソレノイドの励磁コイルを包むヨークが取付基板に取付けられることによって、開閉用電磁ソレノイドのプランジャが前後方向に移動可能に配置され、上下方向に揺り動く揺動レバーにおけるプランジャよりも下方の中間部が中央側の軸で取付基板に取付けられ、揺動レバーの上端部がプランジャの先端部に係合片で連結され、揺動レバーにおけるプランジャよりも下方の最下部が一対の開閉部材に個別に連結される一方、揺動レバーがプランジャにより中央側の軸を中心として下側から上側に回転して一対の開閉部材を互いに外側に開き、揺動レバーがプランジャにより中央側の軸を中心として上側から下側に回転して一対の開閉部材を互いに内側に閉じる構造が周知{例えば、特開2000-197732号公報(段落【0013】、【0014】等、図2?4等)、特開2000-262676号公報(段落【0025】、【0026】等、図2?4等)参照。}であり、また、支点・力点・作用点の位置関係で、揺動レバーがプランジャにより一端側の軸を中心としてプランジャの進退方向からみて前側から後側に回転して開閉板を外側に開き、揺動レバーがプランジャにより一端側の軸を中心としてプランジャの進退方向からみて後側から前側に回転して開閉板を内側に閉じたり、揺動レバーがプランジャにより一端側の軸を中心としてプランジャの進退方向からみて後側から前側に回転して開閉板を外側に開き、揺動レバーがプランジャにより一端側の軸を中心としてプランジャの進退方向からみて前側から後側に回転して開閉板を内側に閉じたりする構造も周知{例えば、特開昭55-116376号公報(第5頁第18欄第2?20行等、第3B図等)、特開平1-299577号公報(第4頁右欄上段第11行?同頁左欄下段第11行等、第9図等)参照。}であり、かつ、開閉体の開閉を行うにあたって、機構学上の種々の駆動伝達方式を用いることは、常識であり、得られる作用効果も同じであるから、引用例1発明の開閉駆動機構に代えて、前記周知のものを適用して、本願補正発明の相違点3に係る構成とした点に格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年2月4日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年10月17日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「遊技盤の遊技領域に設けられる基体の前面には、役を使い分ける上側・下側入賞口と、上側・下側入賞口のそれぞれに配置されて入賞した球を検出するための上側・下側入賞球検出器の上下に貫通する球検出孔と、上側・下側入賞口間で左右に開閉可能な一対の開閉体とが設けられ、基体の裏面には開閉体に連結された開閉駆動機構が上側・下側入賞球検出器の間に位置して設けられ、開閉駆動機構における電磁ソレノイドのプランジャが前後方向に移動することにより一対の開閉体を開閉することを特徴とする入賞口装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-30 
結審通知日 2007-09-04 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願2001-57292(P2001-57292)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 林 晴男
小林 俊久
発明の名称 入賞口装置  
代理人 宮園 純一  

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