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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166932
審判番号 不服2005-283  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-06 
確定日 2007-11-01 
事件の表示 平成 5年特許願第352404号「取付部品の着脱構造」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月 1日出願公開、特開平 7-194821〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成5年12月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年2月7日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「遊技機の木製取付基板に穿設された円孔と、前記円孔に挿入される脚体と、前記脚体の外周から軸方向に沿って複数枚張り出し自由端部が前記円孔の孔壁の繊維層に食い込み前記円孔に前記脚体を保持した状態で前記脚体を旋回可能とする弾性片と、前記脚体の頭部に連結された長板状のストッパーと、取付部品に穿設され前記ストッパーを貫通させる長孔と、を有し、前記長孔を前記ストッパーに挿入し、前記ストッパーを前記脚体と共に旋回させて前記長孔を前記ストッパーから抜き出し可能、又は、抜き出し不能とすることを特徴とする取付部品の着脱構造。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭61-134298号(実開昭63-40980号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、

▽記載事項1、「(1)、遊技板等の取付部所には挿着孔を開設し、入賞装置、飾り部品類等の取付基板には長さの途中に弾性膨径部を有した縮径可能な係入脚を備え、該係入脚を上記挿着孔に圧入することで前記遊技板等に前記飾り部品類を止着することを特徴としたパチンコ機における飾り部品類の取付構造。
(7) 係入脚は飾り部品類の取付基板とは別体に成形され、嵌込み若しくはビス止めによって結合される・・・ パチンコ機における飾り部品類の取付構造。」(実用新案登録請求の範囲)
▽記載事項2、「[従来技術]
従来、遊技板の前面部等に照明用の飾り部品を止め付けたり、或いは入賞装置類を止める場合、ビスによってネジ止めするのが一般的であったが、堅い合板製の板にビスを揉み込むのは容易なことではなく・・・、製造性を妨げる原因ともなっていた。
そこで、・・・一つの方策として遊技板等の板部の取付部所に透孔を開設しておき、他方部品類には取付基板の背面に係止爪を有した係入脚を延して取付時この係入脚を押入れることで上記透孔の縁に係止爪を掛止め部品類の止付けを行うことが行われるようになった。
この係入脚による止着方法は・・・それまでのビスによる方法に比較して格段に作業性を向上させるものとなったが、係入脚の透孔に対する係止が鈎形に設けた係止爪の掛止めによるものであったことから透孔の開設位置が狂うと係止できなかったり浅い係合によって外れ易く安定性に欠けたり、或いは無理な押込みによって係入脚が破損する問題があった。」(第3頁第2行?第4頁5行)、
▽記載事項3、「図面において1はパチンコ機の・・・扉枠で、2は・・・ガラス枠であり、3は・・・遊技板である。
遊技板3は合板を素材にして形成され、その前面は・・・中央部に遊技部5を形成し、この遊技部の中央部に本考案に係る取付構造を有した入賞装置6を取り付けている。
入賞装置6は第2・3図に・・・示してあるようにプラスチックを素材に形成してあり、遊技板3の前面に添わせる取付基板7には背面に上下2個の係入脚8を備えていある。
・・・係入脚8は取付基板7から一体に延設されるものとなっており、長さの略中央部が最も大径となるよう形成して膨径部9を設ける一方、中心部分を中空に抜いて中空体とし、素材の弾性を利用して縮径可能にすると共に、・・・この係入脚を脚端から切割るスリット10で4つの脚片に分割して係入脚の撓み性が大きくなるよう形成してある。
その一方、この入賞装置6を止着する遊技板3には上記係入脚8に対応した位置に孔径を係入脚の膨径部9より小径にした挿着孔11を開設し、係入脚8を受け入れるようにしてある。
この挿着孔11は入賞装置に飛入した入賞球を遊技板背面に設ける球寄せに誘導するため遊技板3に開設する透孔、或いは上部両隅部に設ける表示ランプ12の取付孔の形成の際、併せて開設しておき、遊技板にレール4、表示ランプのカバー等を組付けるとき、前面から前記入賞装置6を臨ませ、それぞれの挿着孔に係入脚8を押入れることによってその組付けが行えるようになっている。
押込まれた係入脚8は挿着孔の径より大径な膨径部9を素材の弾性を利用して縮径させながら侵入させ、全体が嵌り込んだ時点で弾性による反発力で上記膨径部9を挿着孔の内壁に圧接させてその抜出しを阻止することになる。
従って、・・・上記入賞装置は遊技板の前面側から係入脚8を挿着孔11に向けて押込むことで止着されることになる。」(第5頁第11行?第7頁第12行)、
▽記載事項4、「第4図と第7図は・・・、係入脚8を別体として単独に形成し、両者の成形後にこれをビス13で止め付け結合させて製造するようにした場合である。
この別体に成形する方法は主として入賞装置等取付基板7の本体部分の構造によって成形型の一体化が困難な場合に採用される。」(第7頁第16行?第8頁第3行)、
▽記載事項5、「第5図及び第8図は上記係入脚8を別体としたとき、・・・ネジ込み式に結合するようにした場合で、ここでは係入脚8の基部に雄ネジ形の装着凸部15を設け、他方取付基板7の背面には雌ネジ形の装着凹部16を設けてネジ込みによって両者を結合させるようにしてある。」(第8頁第7?13行)、
▽記載事項6、「第6図は別体に形成した係入脚8を取付基板7に対して嵌め込み式に結合できるようにした場合である。
この実施例では係入脚8の基部に釘の頭部形をした結合部17を設け、他方取付基板7の背面には上記基部を受け入れると同時に係合部17を受け入れ結合する係合受け部18を設けて素材の撓み性を利用して両者を嵌込み式に結合させるようにしてある。」(第8頁第19行?第9頁第7行)、
▽記載事項7、「本考案によれば入賞装置を遊技板に止着するに当って、これに開設する挿着孔に係入脚を押込むだけでその取付けが行えることから、・・・迅速な組付けが可能となる一方、・・・係入脚に備える膨径部を挿着孔の内壁に圧接させ、その摩擦力で係止させる構造としたことから相互の位置に誤差を生じても係入脚が挿着孔に入ればその取付けが果たされるものとなり、しかも常に一定の係止状態が確保されることから安定性に優れる利点がある。
また、・・・入賞装置を取外すときには、取付基板を引いて挿着孔から係入脚を引き抜くと、遊技板から外すことができ、且つ再び押込めば全く同じ状態で止着が果たせることから・・・、入賞装置の交換等の際手際よく作業ができる利点がある。
尚、・・・、本考案は遊技板に対する表示ランプのカバーの取付けや、飾り部品類の取付けにも前記と全く同様に実施することが可能であり、また、遊技板の外、例えば扉枠の前面に装飾部品を止着するような場合にも本考案を実施することができる・・・。」(第9頁第15行?第11頁第3行)、

との記載が認められ、

また、上記摘記事項および図2・3・6より、別体に形成した係入脚8を取付基板7に対して嵌め込み式に結合できるようにした場合、係入脚8の基部に釘の頭部形をした結合部17を設け、他方取付基板7の背面には上記基部を受け入れると同時に係合部17を受け入れ結合する係合受け部18を設けて素材の撓み性を利用して両者を嵌込み式に結合させること(記載事項6)、入賞装置を取外すときには、取付基板を引いて挿着孔から係入脚を引き抜くと、遊技板から外すことができ、且つ再び押込めば全く同じ状態で止着が果たせること(記載事項7)等から、係入脚8を取付基板7に対して嵌め込み式に結合する構造は、「係合部17を係合受け部18に押込み、前記係合部17を係入脚8と共に嵌込み前記係合部17を前記係合受け部18から抜き出し不能とする」ことができるものと認められる。

これらの記載から、引用例1には、

「パチンコ機1の遊技板3に開設された挿着孔11と、前記挿着孔11に押込まれる係入脚8と、前記係入脚8の中心部分を中空に抜いて中空体とし脚端から切割るスリット10で分割し長さの略中央部が最も大径となる膨径部9が前記挿着孔11の内壁に弾性による反発力で圧接させて前記挿着孔11に前記係入脚8を全体が嵌り込んだ時点で前記係入脚8を抜出しを阻止する弾性脚片と、前記係入脚8の基部に釘の頭部形をした係合部17と、飾り部品類の取付基板7の背面には上記基部を受け入れると同時に係合部17を受け入れ結合する係合受け部18と、を有し、前記係合部17を前記係合受け部18に押込み、前記係合部17を前記係入脚8と共に嵌込み前記係合部17を前記係合受け部18から抜き出し不能とする飾り部品類の取付構造。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「パチンコ機1」、「遊技板3」、「開設された」、「挿着孔11」、「押込まれる」、「係入脚8」、「飾り部品類」および「取付構造」は、本願発明における「遊技機」、「木製取付基板」、「穿設された」、「円孔」、「挿入される」、「脚体」、「取付部品」および「着脱構造」に相当すると認められる。
また、引用例1発明の「係入脚8の中心部分を中空に抜いて中空体とし脚端から切割るスリット10で分割し長さの略中央部が最も大径となる膨径部9が挿着孔11の内壁に弾性による反発力で圧接させて前記挿着孔11に前記係入脚8を全体が嵌り込んだ時点で前記係入脚8を抜出しを阻止する弾性脚片」と、本願発明の「脚体の外周から軸方向に沿って複数枚張り出し自由端部が円孔の孔壁の繊維層に食い込み前記円孔に前記脚体を保持した状態で前記脚体を旋回可能とする弾性片」は、「脚体に設けた特定形状で特定機能を持つ弾性固着片」で共通し、
また、引用例1発明の「前記係入脚8の基部に釘の頭部形をした係合部17」と、本願発明の「前記脚体の頭部に連結された長板状のストッパー」は、「前記脚体の挿入後部に設けた脚体側係合部」で共通し、
また、引用例1発明の「飾り部品類の取付基板7の背面には上記基部を受け入れると同時に係合部17を受け入れ結合する係合受け部18」と、本願発明の「取付部品に穿設され前記ストッパーを貫通させる長孔」は、「取付部品に設けた取付部品側係合部」で共通し、
また、引用例1発明の「係合部17を係合受け部18に押込み、前記係合部17を係入脚8と共に嵌込み前記係合部17を前記係合受け部18から抜き出し不能とする」と、本願発明の「長孔をストッパーに挿入し、前記ストッパーを脚体と共に旋回させて前記長孔を前記ストッパーから抜き出し可能、又は、抜き出し不能とする」は、「取付部品側係合部を脚体側係合部に適宜係合する」で共通する。

したがって、両者は、

「遊技機の木製取付基板に穿設された円孔と、前記円孔に挿入される脚体と、前記脚体に設けた特定形状で特定機能を持つ弾性固着片と、前記脚体の挿入後部に設けた脚体側係合部と、取付部品に設けた取付部品側係合部と、を有し、前記取付部品側係合部を前記脚体側係合部に適宜係合する取付部品の着脱構造。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:脚体に設けた特定形状で特定機能を持つ弾性固着片と、脚体の挿入後部に設けた脚体側係合部材と、取付部品に設けた取付部品側係合部材とを有し、前記取付部品側係合部を前記脚体側係合部に適宜係合するものにおいて、本願発明では、「脚体の外周から軸方向に沿って複数枚張り出し自由端部が円孔の孔壁の繊維層に食い込み前記円孔に前記脚体を保持した状態で前記脚体を旋回可能とする弾性片と、脚体の頭部に連結された長板状のストッパーと、取付部品に穿設されストッパーを貫通させる長孔と、を有し、前記長孔を前記ストッパーに挿入し、前記ストッパーを前記脚体と共に旋回させて前記長孔を前記ストッパーから抜き出し可能、又は、抜き出し不能とする」のに対し、引用例1発明では、そのような構成となっていない点。

4.判断
上記相違点について検討すると、締め付けまたは固定技術分野において、一般的に、脚体の外周から軸方向に膨出し膨出端部が円孔の孔壁を縮小して通過し、通過後元に戻って前記円孔に前記脚体を保持した状態で前記脚体を旋回可能とする弾性膨出部と、脚体の頭部方向に連結された摘み状の平板体と、パネル等に穿設され平板体を貫通させる細長い孔と、を有し、前記細長い孔を前記平板体に挿入し、前記平板体を前記脚体と共に旋回させて前記細長い孔を前記平板体から抜き出し可能、又は、抜き出し不能とすることが周知であり{例えば、特公昭40-22405号公報(第2頁左欄下から第4行?第3頁左欄第10行等、Fig8?12等)、実公昭48-286号公報(第1頁1欄第30行?第2頁3欄第2行等、第5・6図等)参照。}、引用例1発明の係入脚8の弾性脚片と係合部17および取付基板7の係合受け部18の構成に代え、上記周知技術を遊技機分野の部品の着脱技術に適用して、本願発明の「脚体の外周から軸方向に張り出し円孔に前記脚体を保持した状態で前記脚体を旋回可能とする弾性片と、前記脚体の頭部に連結された長板状のストッパーと、取付部品に穿設され前記ストッパーを貫通させる長孔と、を有し、前記長孔を前記ストッパーに挿入し、前記ストッパーを前記脚体と共に旋回させて前記長孔を前記ストッパーから抜き出し可能、又は、抜き出し不能とする」構成とすることは、格別の発明力を要したとはいえず、またその際に、弾性脚片の構造において、個定具挿入部の外周から軸方向に沿って複数枚張り出し自由端部が挿入口の内壁に圧設させることも、同じく締め付けまたは固定技術分野において周知{例えば、実願昭60-127960号(実開昭62-35106号)のマイクロフィルム(第5頁第1行?第6頁第4行、第6頁第11行?第7頁第6行等、第1?3図等)、実願平1-82332号(実開平3-22112号)のマイクロフィルム(第8頁第17行?第10頁第10行、第11頁第9?17行等、第1・3図等)参照。}であるから、本願発明のように脚体の外周から軸方向に沿って複数枚張り出し自由端部が円孔の孔壁の繊維層に食い込ませるようにする構成も、適宜なし得る程度の設計的事項である。してみると、引用例1発明の上記相違点に係る構成に代え、これらの周知技術を適用して、本願発明の相違点に係る構成とすることは、格別の創意工夫を要することなく、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。

そして、本願発明が上記構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-24 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願平5-352404
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎鉄 豊郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 土屋 保光
林 晴男
発明の名称 取付部品の着脱構造  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  

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