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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1167036
審判番号 不服2005-84  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-04 
確定日 2007-10-30 
事件の表示 特願2002-153549「印刷回路基板製造技術により製造した弱磁界感知用センサー及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月25日出願公開、特開2003-270310〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年5月28日(優先日:平成14年3月9日)を出願日とする出願であって、平成16年11月26日付(発送日:平成16年11月30日)で拒絶査定がされ、これに対し平成17年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに平成17年2月2日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年2月2日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月2日付の手続補正を却下する。

[理由]
2-1.本件補正の内容
本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1および8を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1および7のそれぞれに補正することを含むものである。

(1)「【請求項1】 二つの磁性バンドが一定の間隔を置き配置された形態、単一の磁性体バンド形態又は長方形の帯形態を有する磁性体と、該磁性体の下部及び上部にそれぞれ対向して積層され、前記磁性体を巻回するように互いに導通するドライビングパターンが形成された第1積層体及び第2積層体と、該第1積層体の下側面及び該第2積層体の上側面に積層され、前記磁性体及びドライビングパターンを取り囲むように互いに導通するピックアップパターンが形成された1対の第3積層体と、を含み、前記ドライビングパターン及びピックアップは多数の直線が平行に配列されたものであることを特徴とする印刷回路基板製造技術により製造した弱磁界感知用センサー。
【請求項8】 第1導電層、第1基板層及び磁性体の順に積層して第1積層体を製作する段階と、前記第1積層体上に第2基板層及び第2導電層の順に積層して第2積層体を製作する段階と、前記第1導電層及び第2導電層にバイアホールを形成して互いに導通させる段階と、前記第1導電層及び第2導電層に、磁性体のパターンに対応するドライビングパターンを形成する段階と、前記ドライビングパターンが形成された第1積層体の下側面及び第2積層体の上側面に第3基板層及び第3導電層の順に積層して1対の第3積層体を形成する段階と、前記1対の第3導電層の間にスルーホールを形成して互いに導通させる段階と、前記第3導電層にピックアップパターンを形成する段階と、を含み、前記磁性体は、二つの磁性バンドが一定の間隔を置き配置された形態、単一の磁性体バンド形態又は長方形の帯形態であり、前記ドライビングパターン及びピックアップは多数の直線が平行に配列されたものであることを特徴とする印刷回路基板製造技術による弱磁界感知用センサーの製造方法。」

(2)「【請求項1】 二つの磁性バンドが一定の間隔を置き配置された形態、単一の磁性体バンド形態又は長方形の帯形態を有する磁性体と、該磁性体の下部及び上部にそれぞれ対向して積層され、前記磁性体を巻回するように互いに導通され、多数の平行な直線形態に配列され、前記磁性体の長さ方向に垂直に形成されたドライビングパターンが形成された第1積層体及び第2積層体と、該第1積層体の下側面及び該第2積層体の上側面に積層され、前記磁性体及びドライビングパターンを取り囲むように互いに導通され、多数の平行な直線形態に配列され、前記磁性体の長さ方向に垂直に形成されたピックアップパターンが形成された1対の第3積層体と、を含むことを特徴とする印刷回路基板製造技術により製造した弱磁界感知用センサー。
【請求項7】 第1導電層、第1基板層及び磁性体の順に積層して第1積層体を製作する段階と、前記第1積層体上に第2基板層及び第2導電層の順に積層して第2積層体を製作する段階と、前記第1導電層及び第2導電層にバイアホールを形成して互いに導通させる段階と、前記第1導電層及び第2導電層に、磁性体のパターンに対応するドライビングパターンを形成する段階と、前記ドライビングパターンが形成された第1積層体の下側面及び第2積層体の上側面に第3基板層及び第3導電層の順に積層して1対の第3積層体を形成する段階と、前記1対の第3導電層の間にスルーホールを形成して互いに導通させる段階と、前記第3導電層にピックアップパターンを形成する段階と、を含み、前記磁性体は、二つの磁性バンドが一定の間隔を置き配置された形態、単一の磁性体バンド形態又は長方形の帯形態であり、前記ドライビングパターンを形成する段階で、ドライビングパターンを多数の平行な直線形態に配列し前記磁性体の長さ方向に垂直に形成し、前記ピックアップパターンを形成する段階で、ピックアップパターンを多数の平行な直線形態に配列し前記磁性体の長さ方向に垂直に形成することを特徴とする印刷回路基板製造技術による弱磁界感知用センサーの製造方法。」(下線はそれぞれ、請求人が手続補正書提出時に補正箇所に対して付したものである。)

2-2.本件補正の適否について
〈1〉 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ドライビングパターン」および「ピックアップパターン」について、ともに「磁性体の長さ方向に垂直に形成」されているとの限定を付加するものとなっている。
〈2〉 本件補正前の請求項3は削除された。
〈3〉 本件補正後の請求項7は、本件補正前の請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項である「ドライビングパターンを形成する段階」および「ピックアップパターンを形成する段階」について、ともに「磁性体の長さ方向に垂直に形成」するとの限定を付加するものとなっている。

したがって、上記手続補正は、請求項の削除および特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号および第2号の規定に該当するものである。

2-3.独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1?13に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-3-1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-118892号公報(以下,「引用例」という。)には図面と共に,以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、方位計等に使用して好適な磁気センサに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種の磁気センサは、励磁コイルおよび検出コイルを備えたものが知られている。このような磁気センサによる磁気の検出は、磁気センサに金属を接近させると、金属側に発生する渦電流により磁束が変化し、検出コイルの出力が変化する現象を利用することにより行われる。
【0003】近年、この種の磁気センサは、各種電子機器の多機能化に伴い、電子腕時計等の小型電子機器にも多用されてきている。従来、この種の磁気センサは、例えば特開平9-43322号公報に「微弱磁気センサー及びその製造方法」として開示され、図5および図6に示すように構成されている。この磁気センサにつき、同図を用いて説明すると、同図において、符号1で示す磁気センサは、フラックスゲート型の磁気センサからなり、センサコア2と磁界検出コイル基板3と励磁コイル基板4とを有するセンサ基板βを備えている。センサ基板βの四方端縁近傍には、後述する各コイルパターンに接続するスルーホールa?mが形成されている。
【0004】センサコア2は、リング状のアモルファスコアによって形成されている。これは、アモルファス薄板にトロイダルコアを巻回するようにリング状に形成するようエッチング処理を施すことにより製造される。
【0005】磁界検出コイル基板3は、第一検出コイル基板5および第二検出コイル基板6を備えている。第一検出コイル基板5は、センサコア2の上下各側において導通可能に積層する二つの第一検出コイル基板5a,5bを有している。これら各検出コイル基板5a,5bは、ガラスエポキシ板5A1,5B1にX軸方向成分磁界検出コイル形成用のXコイルパターン5A2,5B2を形成することにより製造される。これら各第一検出コイル基板5a,5bには、各Xコイルパターン5A2,5B2に接続する端子用のスルホールa,eが形成されている。
【0006】第二検出コイル基板6は、センサコア2の上下各側において導通可能に積層する二つの第二検出コイル基板6a,6bを有している。これら各第二検出コイル基板6a,6bは、ガラスエポキシ板6A1,6B1にY軸方向成分磁界検出コイル形成用のYコイルパターン6A2,6B2を形成することにより製造される。これら各検出コイル基板6a,6bには、各Yコイルパターン6A2,6B2に接続する端子用のスルホールj,kが形成されている。
【0007】励磁コイル基板4は、センサコア2の上下各側において導通可能に積層する二つの励磁コイル基板4a,4bを有している。これら各励磁コイル基板4a,4bは、ガラスエポキシ板4A1,4B1に励磁コイルパターン4A2,4B2を形成することにより製造される。これら各励磁コイル基板4a,4bには、励磁コイルパターン4A2,4B2に接続する端子用のスルーホールl,mが形成されている。
【0008】このように構成された磁気センサにおけるセンサ基板の製造は、次に示すようにして行われる。先ず、センサコア2を形成するとともに、第一検出コイル基板5(第一検出コイル基板5a,5b),第二検出コイル基板6(第二検出コイル基板6a,6b)および励磁コイル基板4を形成する。
【0009】次に、センサコア2の上下両側に外側から第一検出コイル基板5a,5bと第二検出コイル基板6a,6bと励磁コイル基板4a,4bとを順次各パターン同士が合うようにして導通可能に積層した後、プレスによってセンサ基板βを形成する。このようにして、センサ基板βを製造することができる。」

引用例の上記記載から、以下の[1]および[2]の事項が認められる。

[1] 上記段落【0001】および【0003】の記載からみて、上記段落【0003】?【0009】に記載の磁気センサは、フラックスゲート型の微弱磁気センサーであることは明らかである。
[2] 上記段落【0003】?【0009】の記載からみて、磁気センサは、印刷回路基板製造技術により製造されているものと認められる。

してみると、これらの記載から引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「 リング状のセンサコア(2)と、該センサコア(2)の下部及び上部にそれぞれ対向して積層され、前記センサコア(2)を巻回するように互いに導通された励磁コイルパターン(4A2,4B2)が形成された二つの励磁コイル基板(4a,4b)と、該一方の励磁コイル基板(4b)の下側面及び該他方の励磁コイル基板(4a)の上側面に積層され、前記センサコア(2)及び励磁コイルパターン(4A2,4B2)を取り囲むように互いに導通された、多数の平行な直線形態に配列されたX(またはY)コイルパターン(5A2,5B2(または6A2,6B2))が形成された1対の第一(または第二)検出コイル基板(5a,5b(または6a,6b))と、を含むことを特徴とする印刷回路基板製造技術により製造した微弱磁気センサー。」

2-3-2.対比・判断
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「励磁コイル基板(4b)」、「励磁コイル基板(4a)」、「X(またはY)コイルパターン(5A2,5B2(または6A2,6B2))」および「1対の第一(または第二)検出コイル基板(5A,5B(または6A,6B))」は,それぞれ本願補正発明の「第1積層体」、「第2積層体」、「ピックアップパターン」、および「1対の第3積層体」に相当する。
また、引用発明の「微弱磁気センサー」と本願補正発明の「弱磁界感知用センサー」については、引用例の上記記載および本願明細書の発明の詳細な説明の欄の記載からみて、共にフラックスゲート型の磁気センサーである点で一致しているから、引用発明の「微弱磁気センサー」は本願補正発明の「弱磁界感知用センサー」に相当するものであるといえる。
また、引用発明の「センサコア(2)」と本願補正発明の「磁性体」とは、ともに磁界センサーを構成するコイルのコアとしての「磁性体」である点で共通する。
さらに、引用発明の「励磁コイルパターン(4A2,4B2)」と本願補正発明の「ドライビングパターン」とは、ともにフラックスゲート型磁界センサの一次コイルを形成する「ドライビングパターン」である点で共通する。

してみると、両者は
「磁性体と、該磁性体の下部及び上部にそれぞれ対向して積層され、前記磁性体を巻回するように互いに導通されたドライビングパターンが形成された第1積層体及び第2積層体と、該第1積層体の下側面及び該第2積層体の上側面に積層され、前記磁性体及びドライビングパターンを取り囲むように互いに導通され、多数の平行な直線形態に配列されたピックアップパターンが形成された1対の第3積層体と、を含むことを特徴とする印刷回路基板製造技術により製造した弱磁界感知用センサー。」

の点で一致し,以下の点で相違している。

本願補正発明においては、「磁性体」が二つの磁性バンドが一定の間隔を置き配置された形態、単一の磁性体バンド形態又は長方形の帯形態を有しており、「ドライビングパターン」が多数の平行な直線形態に配列されるとともに磁性体の長さ方向に垂直に形成され、「ピックアップパターン」が磁性体の長さ方向に垂直に形成されているのに対して、引用発明においては「センサコア(2)」がリング状であり、「励磁コイルパターン(4A2,4B2)」が多数の平行な直線形態に配列され、「センサコア(2)」の長さ方向に垂直に形成されたものではなく、「X(またはY)コイルパターン(5A2,5B2(または6A2,6B2))」も「センサコア(2)」の長さ方向に垂直に形成されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

二つの磁性体を一定の間隔を置いて配置し、該磁性体の長さ方向に垂直な方向に導線を巻回してドライビングコイルを形成し、さらにその外側に該磁性体の長さ方向に垂直な方向に導線を巻回してピックアップコイルを形成するフラックスゲート型磁気センサの基本構造は、たとえば特開平8-152464号公報(特に、段落【0014】、図3における「コア(52a、52b)」、「励磁用コイル(54a、54b)」および「検出用コイル56」について参照)や実公昭36-27400号公報(特に、第3図における「鉄心(12、12’)」、「一次巻線(6、6’)」および「共通二次巻線7」について参照)に示されているとおり周知の構造であり、引用発明にこのような従来周知の基本構造を適用することで、「センサコア(2)」を二つの磁性体を一定の間隔を置いて配置したものとし、励磁コイルパターン(4A2,4B2)」を多数の平行な直線形態に配列するとともに磁性体の長さ方向に垂直に形成し、「X(またはY)コイルパターン(5A2,5B2(または6A2,6B2))」を磁性体の長さ方向に垂直に形成することにより、上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものといえる。

そして、本願補正発明の効果も引用例および上記周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は引用発明および上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
3-1.本願発明
平成17年2月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成16年9月17日付手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 二つの磁性バンドが一定の間隔を置き配置された形態、単一の磁性体バンド形態又は長方形の帯形態を有する磁性体と、該磁性体の下部及び上部にそれぞれ対向して積層され、前記磁性体を巻回するように互いに導通するドライビングパターンが形成された第1積層体及び第2積層体と、該第1積層体の下側面及び該第2積層体の上側面に積層され、前記磁性体及びドライビングパターンを取り囲むように互いに導通するピックアップパターンが形成された1対の第3積層体と、を含み、前記ドライビングパターン及びピックアップは多数の直線が平行に配列されたものであることを特徴とする印刷回路基板製造技術により製造した弱磁界感知用センサー。」

3-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「2-3-1」に記載したとおりのものである。

3-3.対比・判断
本願発明は、前記「2-2」で検討した本願補正発明から〈1〉において指摘した限定事項を省いたものである。
してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2-3-2」に記載したとおり、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、請求項1に係る発明が特許を受けることのできないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-29 
結審通知日 2007-05-30 
審決日 2007-06-20 
出願番号 特願2002-153549(P2002-153549)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
P 1 8・ 572- Z (G01R)
P 1 8・ 571- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 圭史  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 下中 義之
中村 直行
発明の名称 印刷回路基板製造技術により製造した弱磁界感知用センサー及びその製造方法  
代理人 堀田 実  

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