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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1167098
審判番号 不服2005-2614  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-15 
確定日 2007-10-31 
事件の表示 特願2000-121833「景品獲得装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月30日出願公開、特開2001-300128〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年4月21日に出願されたものであって、平成16年9月28日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して同年12月3日付けで手続補正がなされたところ、平成17年1月5日付けで拒絶査定がなされたが、前記拒絶査定を不服として、平成17年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年3月15日に手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成17年3月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]

2.1 補正の内容及び補正の目的について
平成17年3月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、本件補正前の、

「【請求項1】 下記の要件を備えてなることを特徴とする景品獲得装置。
(イ)装置本体を有すること。
(ロ)前記装置本体は、装置本体内に置かれた景品を獲得するための獲得手段と、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる移動手段とを有すること。
(ハ)前記装置本体は、前記獲得手段を移動させるための指示を入力する操作手段と、前記操作手段からの入力に従って移動手段を制御し、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる制御装置とを有すること。
(ニ)前記装置本体は、前記景品に関する情報を記憶した記憶媒体を着脱自在に装着する再生手段と、前記再生手段によって再生された景品に関する情報を表示する表示手段とを有すること。
【請求項2】 下記の要件を備えてなることを特徴とする請求項1記載の景品獲得装置。
(イ)前記装置本体は、コインの投入を検出する検出手段を有すること。
(ロ)前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出した後に、前記操作手段からの入力に従って前記移動手段を制御し、前記獲得手段を移動させるように構成されていること。
【請求項3】 前記制御装置は、前記再生手段を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の景品獲得装置。
【請求項4】 前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出した後に、前記再生手段を制御し、前記記憶媒体に記憶された景品に関する情報を再生させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の景品獲得装置。
【請求項5】 前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出する前に、前記再生手段を制御し、前記記憶媒体に記憶された景品に関する情報を再生させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の景品獲得装置。
【請求項6】 前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出し又は景品獲得動作が開始してから、景品獲得動作が終了するまでの間、前記記憶媒体に記憶された景品に関する情報を再生しないように前記再生手段を制御するように構成されていることを特徴とする請求項3、4又は5記載の景品獲得装置。
【請求項7】 下記の要件を備えてなることを特徴とする請求項1乃至6のいず
れか1項に記載の景品獲得装置。
(イ)前記景品は、包装部材と、この包装部材内に収納された収納品とで構成されていること。
(ロ)前記記憶媒体には、前記収納品に関する情報が記憶されていること。」

から、本件補正後の、

「【請求項1】 下記の要件を備えてなることを特徴とする景品獲得装置。
(イ)装置本体を有すること。
(ロ)前記装置本体は、装置本体内に置かれた景品を獲得するための獲得手段と、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる移動手段とを有すること。
(ハ)前記装置本体は、前記獲得手段を移動させるための指示を入力する操作手段と、前記操作手段と接続され、前記操作手段からの入力に従って移動手段を制御し、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる制御装置とを有すること。
(ニ)前記装置本体は、前記景品に関する情報を記憶した記憶媒体を着脱自在に装着する再生手段と、前記再生手段によって再生された景品に関する情報を表示する表示手段とを有すること。
(ホ)前記装置本体は、コイン投入口と、コイン投入口へのコインの投入を検出する検出手段を有すること。
(ヘ)前記制御装置は、前記検出手段と接続され、前記検出手段がコインの投入を検出した後に、前記操作手段からの入力に従って前記移動手段を制御し、前記獲得手段を移動させるように構成されていること。
(ト)前記制御装置は、前記再生手段と接続され、前記再生手段を制御するように構成されていること。
【請求項2】 前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出した後に、前記再生手段を制御し、前記記憶媒体に記憶された景品に関する情報を再生させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の景品獲得装置。
【請求項3】 前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出する前に、前記再生手段を制御し、前記記憶媒体に記憶された景品に関する情報を再生させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の景品獲得装置。
【請求項4】 前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出し又は景品獲得動作が開始してから、景品獲得動作が終了するまでの間、前記記憶媒体に記憶された景品に関する情報を再生しないように前記再生手段を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の景品獲得装置。
【請求項5】 下記の要件を備えてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の景品獲得装置。
(イ)前記景品は、包装部材と、この包装部材内に収納された収納品とで構成されていること。
(ロ)前記記憶媒体には、前記収納品に関する情報が記憶されていること。」

に補正された。

上記補正は、本件補正前の請求項1を、本件補正前の請求項2及び3の記載事項により減縮するとともに、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記操作手段からの入力に従って移動手段を制御し、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる制御装置」について、「前記操作手段と接続され、」という構成を付加して限定し、本件補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記装置本体は、コインの投入を検出する検出手段を有すること。」について、「コイン投入口と、コイン投入口への」という構成を付加して限定し、本件補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記制御装置は、前記検出手段がコインの投入を検出した後に、前記操作手段からの入力に従って前記移動手段を制御し、前記獲得手段を移動させるように構成されていること。」について、「前記検出手段と接続され、」という構成を付加して限定し、さらに、本件補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記制御装置は、前記再生手段を制御するように構成されていること」について、「前記再生手段と接続され、」という構成を付加して限定する補正を含むものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正された本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.2 引用例及びその記載事項
2.2.1 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-319307号公報には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

・記載事項1-1
「【請求項1】景品を収容し得るゲーム機本体に、景品払出口と、3軸方向に移動可能な景品キャッチャーと、プレイヤーにより操作される景品キャッチャー制御装置とを設け、プレイヤーに景品キャッチャー制御装置を介して景品キャッチャーを操作させ、ゲーム機本体内に収容された景品を吊り上げ、景品払出口に搬送させ、景品払出口から景品を払い出すよう構成されたクレーンゲーム機に於いて、
ビデオカメラをその光軸が景品キャッチャーの中心軸に平行となるように設けると共に、そのビデオカメラの撮影した画像を表示するディスプレイ装置を設けたことを特徴とする上記のクレーンゲーム機。」

・記載事項1-2
「【0006】先ず、図1について説明する。図中、 100はクレーンゲーム機、10は景品キャッチャー、20はビデオカメラ、30はディスプレイ装置である。クレーンゲーム機100 は、少なくとも前面が透明なアクリル樹脂から成る本体110 と、操作盤120 とを有し、操作盤120 には、操作スティック121 、押ボタン122 、ハンドル123 、アクセルペダル124 、ブレーキペダル125 、コイン投入口126 、景品取出口127 などが設けられている。
【0007】一方、本体110 は透明なアクリル樹脂製のキャビネットから成り、景品払出口111 の外、景品供給用の扉などが設けられ、その内部には多数の景品40、40が収容されている。図示されていないが、本体110 の天井には、公知の天井走行クレーンが設けられている。天井走行クレーンは、天井に前後に対をなして設けられた高架ランウェイと、その高架ランウェイ上にに懸け渡され、図中左右方向に移動するガーダーと、そのガーダーの上を走行するトロリとから成る。景品キャッチャー10は、トロリから昇降自在に、かつ、その鉛直中心軸の廻りに回転自在に吊り下げられており、このため、景品キャッチャー10は、本体 110内で前後、左右、上下と三次元移動でき、又更に任意の角度回転できるようになっている。
【0008】プレイヤーは所定のコインをコイン投入口126 に投入した後、操作スティック121 、押ボタン122 、ハンドル123 、アクセルペダル124 、ブレーキペダル125を操作してゲームを行い、景品キャッチャー10で所望の景品を掴み取り、景品払出口111 迄搬送する。操作スティック121 は所望の方向へ一定角度倒すことができ、これを倒した状態で押ボタン122 を押すと、ガーダーとトロリが走行を始め、トロリは操作スティック121 の倒された方向に進み、押ボタン122 が解放されたとき停止する。このときの進行速度は、アクセルペダル124 、ブレーキペダル125 に依って制御される。トロリが停止すると、プレイヤーはハンドル123 を回転させ、景品キャッチャー10を回転させることができるようになる。」

・記載事項1-3
「【0011】図3及び図4に示したクレーンゲーム機 200に於いて、 210は景品キャッチャー、 220はプレイヤーにより操作される景品キャッチャー制御装置、 230はディスプレイ装置、 240はディスプレイ装置 230を左右方向に移動自在に支承する案内バー、 250は景品である。本実施例に於いては、ディスプレイ装置 230は、景品キャッチャー 210の左右動に追随して、案内バー 240に沿って図中左右に移動せしめられるよう構成されている。
【0012】尚、図を簡略にするために省略したが、上記の目的のため、ディスプレイ装置 230には、天井クレーンのガーダーを左右移動させるのに用いるものと同様な駆動装置が設けられる。景品キャッチャー制御装置 220は、ディスプレイ装置 210の案内バー 240と平行に、クレーンゲーム機 200の前面の操作台上に設けられた一対の案内レール 221、 222と、それら一対の案内レール 221、 222に沿って移動自在に取り付けられた操作盤 223、操作盤 223に設けたスリット 224に沿って前後方向に移動自在設けた操作レバー 225を具備する。
【0013】又、図3及び図4には示されていないが、案内レール 222は、例えば磁気スケール等の位置センサーを具備しており、又、操作盤 223には、図5に示す磁気スケールの読取装置 226と、操作レバー225 の位置センサー 227が内蔵されており、又、操作レバー 225には景品キャッチャー 210を降下させるための指令スイッチ 228が設けられている。磁気スケール読取装置 226と、操作レバー位置センサー 227及び指令スイッチ228 の信号は、CPU 260に伝達され、CPU 260は、ディスプレイ装置の位置制御装置 270、天井走行クレーン制御装置 280及びクレーン昇降制御装置 290を制御する。
【0014】プレイヤーは、図示されていない料金投入口に所定の料金を投入した後、ディスプレイ装置 230の画面を見ながら、操作レバー 225を持って、操作盤 223を案内レール 221、 222に沿って左右に移動させ、その後又はそれと同時に操作レバー225 を前後に動かして、景品キャッチャー 210を所望の位置まで移動させ、景品キャッチャー降下指令スイッチ 228を押して、景品キャッチャー 210を降下させ、景品 250を吊り上げさせる。而して、景品 250が吊り上げられたときは、景品キャッチャー 210は、景品払出口まで自動的に移動し、景品を放出した後、元の景品を吊り上げた位置に復帰するものである。」

・記載事項1-4
「【0015】また、このクレーンゲーム機においては、装置全体を制御するCPUに簡単なゲームプログラムをロードしておき、ディスプレイ装置を利用して、適宜の機会にプレイヤーにゲームを行わせることが望ましい。ゲームとしては、スロットや、抽選、じゃんけんゲームなどが推奨される。プレイヤーが一定数以上のクレジットをしたときや、ゲームに失敗したときなどにゲームを行わせ、その帰趨によってボーナスゲームをさせたり、コインを払い戻したりするように構成するものと、ゲームの興趣が一層高められる。又、ディスプレイ装置を利用して、例えばゲームに成功したプレイヤーを顕彰したり、ゲームが行われていない間に、各種のPR、例えば景品や各種イベントの紹介などを行うことも推奨されるものである。」

・実質的記載事項1-1
図3及び図4に示されたクレーンゲーム機 200は、図1に示されたクレーンゲーム機 100と、ディスプレイ装置の支持機構及び操作盤の具体的構成において異なるものの、他の構成が共通することは明らかであるから、図3及び図4に示されたクレーンゲーム機 200も、図1に示されたクレーンゲーム機 100の本体 110と同様の本体を有することは自明である。そして、当該本体は、景品キャッチャー 210、駆動装置、ディスプレイ装置 230、料金投入口、等の構成を有することも自明である。

以上の記載事項1-1乃至1-4、実質的記載事項1-1及び図面によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。

「下記の要件を備えてなるクレーンゲーム機 200。
(イ)本体を有すること。
(ロ)前記本体は、景品 250を吊り上げる景品キャッチャー 210と、景品キャッチャー 210を所望の位置まで移動させる駆動装置とを有すること。
(ハ)前記本体は、プレイヤーにより操作される景品キャッチャー制御装置 220を有し、景品キャッチャー制御装置 220は、クレーンゲーム機 200の前面の操作台上に設けられた一対の案内レール 221、 222と、それら一対の案内レール 221、 222に沿って移動自在に取り付けられた操作盤 223、操作盤 223に設けたスリット 224に沿って前後方向に移動自在設けた操作レバー 225を具備し、案内レール 222は、例えば磁気スケール等の位置センサーを具備しており、又、操作盤 223には、磁気スケールの読取装置 226と、操作レバー225 の位置センサー 227が内蔵されており、又、操作レバー 225には景品キャッチャー 210を降下させるための指令スイッチ 228が設けられており、磁気スケール読取装置 226と、操作レバー位置センサー 227及び指令スイッチ228 の信号は、CPU 260に伝達され、CPU 260は、ディスプレイ装置の位置制御装置 270、天井走行クレーン制御装置 280及びクレーン昇降制御装置 290を制御すること。
(ニ)前記本体は、ゲームが行われていない間に、各種のPR、例えば景品や各種イベントの紹介などを行うディスプレイ装置 230を有すること。
(ホ)前記本体は、料金投入口を有すること。
(ヘ)プレイヤーは、図示されていない料金投入口に所定の料金を投入した後、ディスプレイ装置 230の画面を見ながら、操作レバー 225を持って、操作盤 223を案内レール 221、 222に沿って左右に移動させ、その後又はそれと同時に操作レバー225 を前後に動かして、景品キャッチャー 210を所望の位置まで移動させ、景品キャッチャー降下指令スイッチ 228を押して、景品キャッチャー 210を降下させ、景品 250を吊り上げさせること。」(以下、「引用発明」という。)

2.2.2 引用例2
本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-84057号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

・記載事項2-1
「【0006】
【実施例】以下、図2?図7に基づいてこの発明の実施例を説明する。まず、図2はビデオディスクシステムを搭載したたばこ自動販売機の内部を示す概略正面図で、自動販売機本体1内の右下部及び右上部に、再生装置2及びモニタ3がそれぞれ設置されている。4は商品収納棚である。再生装置2は商品の広告・宣伝情報を映像と音声とで記録した図示しないビデオディスクの情報をレーザビームで再生し、モニタ3はその再生情報を表示する。ここで、再生装置2の周辺には振動センサ5、温度センサ6及び結露センサ7が設置され、モニタ3の周辺には温度センサ8が設置されている。」

以上の記載事項2-1及び図面の記載によれば、引用例2には次の事項が記載されていると認められる。

「商品の広告・宣伝情報を映像と音声とで記録したビデオディスクの情報をレーザビームで再生する再生装置2と、再生情報を表示するモニタ3とを有するビデオディスクシステムを搭載したたばこ自動販売機。」

2.2.3 引用例3
本願の出願前に頒布された刊行物である特許第2952657号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

・記載事項3-1
「【請求項3】ビデオテープ、ビデオディスク、ゲームソフト等、記録担体に記録されている映像ソフトウエア商品の自動販売機であって、
映像ソフトウエア商品の種類を表示する商品のタイトル表示部(7)、
当該タイトル表示部(7)に表示されている映像ソフトウエア商品群の中から購買する商品を選択する購買選択手段、
記録担体に記録されている販売商品の商品情報を再生する再生手段、
当該再生された映像ソフトウエア商品情報を表示するディスプレイ(2)、
記録担体に記録されている映像ソフトウエア商品の商品情報群の中から特定の商品情報を得る場合に必要とされる料金を投入するための料金投入口(10)、
上記記録担体に記録されている商品情報群の中から特定の商品情報を選択するための選択手段、
商品情報群の中から特定の商品情報を選択した場合に、当該選択された特定の商品情報の音声情報を得るスピーカー(5)、
を備えており、
上記再生手段は、上記自動販売機の稼動中は、通常状態では内蔵されている複数種類の映像ソフトウエア商品の情報を各商品毎に編集した一連の商品情報とした商品情報群を上記ディスプレイ(2)に非選択的に表示し、
上記選択手段によって特定の商品情報が選択されたときには、その商品情報をディスプレイ(2)に選択的に表示するよう構成されていることを特徴とする、
映像ソフトウエア商品の自動販売機。」

・記載事項3-2
「【0010】販売商品としては、例えばビデオテープ、ビデオディスク(デジタルビデオディスク、レーザーディスク)などの映像ソフト、オーディオディスクなどの音楽ソフトあるいはゲームソフトなどがあるが、これらに限定されるものではない。商品情報群は、エンドレスで連続的に表示可能でありかつ任意の商品情報の選択的な再生(頭出し再生)が可能な記録担体、例えばビデオテープ、ビデオディスクなどに記録される。これらの記録担体には、販売商品の商品情報が商品ごとに編集されて記録されており、例えば商品の種類が20種類で、各商品の商品情報が30秒間に編集されているとすると、一通り表示するのに十分間かかることになる。表示手段としては、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイなどであるが、それらを複数組み合わせたもの、あるいは複合したものでもよい。」

・記載事項3-3
「【0016】本実施の形態では、ビデオ再生装置PはビデオCDを再生するものである。このビデオCDには、販売されている各ビデオソフトテープの商品情報が各商品ごとに30秒間ずつ、合計九分間に編集されて記録されている。また、ディスプレイ2、2の間には、スピーカー5が設けてあり、その下側にはスピーカーボタン6が設けてある。」

以上の記載事項3-1乃至3-3及び図面の記載によれば、引用例3には次の事項が記載されていると認められる。

「販売商品の商品情報が商品ごとに編集されて記録されている、例えばビデオテープ、ビデオディスク、ビデオCDなどの記録担体に記録されている販売商品の商品情報を再生する再生手段と、当該再生された映像ソフトウエア商品情報を表示するディスプレイ2とを有する映像ソフトウエア商品の自動販売機。」

2.3 対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

・対応関係1
引用発明の「クレーンゲーム機 200」は、本願補正発明の「景品獲得装置」に相当し、以下同様に、「本体」は「装置本体」に、「景品 250」は「景品」に、「景品キャッチャー 210」は「獲得手段」に、「駆動装置」は「移動手段」に、「景品キャッチャー制御装置 220」は「操作手段」に、「ディスプレイ装置 230」は「表示手段」に、「料金投入口」は「コイン投入口」に、それぞれ相当する。

・対応関係2
引用発明の「景品 250を吊り上げる景品キャッチャー 210」は、本体内の景品 250を獲得するために設けられていることは自明であるから、引用発明の「景品 250を吊り上げる景品キャッチャー 210」は、本願補正発明の「装置本体内に置かれた景品を獲得するための獲得手段」に相当する。

・対応関係3
引用発明の「景品キャッチャー 210を所望の位置まで移動させる駆動装置」について、「所望の位置」は、「景品の置かれた位置」であることは明らかであるから、引用発明の「景品キャッチャー 210を所望の位置まで移動させる駆動装置」は、本願補正発明の「前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる移動手段」に相当する。

・対応関係4
記載事項1-3より、「景品キャッチャー制御装置 220」の「操作レバー 225」を操作することにより、「景品キャッチャー 210を所望の位置まで移動させ」るのであるから、引用発明の「プレイヤーにより操作される景品キャッチャー制御装置 220」は、本願補正発明の「前記獲得手段を移動させるための指示を入力する操作手段」に相当する。

・対応関係5
引用発明では、「景品キャッチャー制御装置 220は、クレーンゲーム機 200の前面の操作台上に設けられた一対の案内レール 221、 222と、それら一対の案内レール 221、 222に沿って移動自在に取り付けられた操作盤 223、操作盤 223に設けたスリット 224に沿って前後方向に移動自在設けた操作レバー 225を具備し、案内レール 222は、例えば磁気スケール等の位置センサーを具備しており、又、操作盤 223には、磁気スケールの読取装置 226と、操作レバー225 の位置センサー 227が内蔵されており、又、操作レバー 225には景品キャッチャー 210を降下させるための指令スイッチ 228が設けられており、磁気スケール読取装置 226と、操作レバー位置センサー 227及び指令スイッチ228 の信号は、CPU 260に伝達され、CPU 260は、ディスプレイ装置の位置制御装置 270、天井走行クレーン制御装置 280及びクレーン昇降制御装置 290を制御する」のであるから、「景品キャッチャー制御装置 220」と「CPU 260」は接続されているといえる。また、磁気スケール読取装置 226と、操作レバー位置センサー 227の信号がCPU 260に伝達され、天井走行クレーン制御装置 280を制御するのであるから、「CPU 260」が「景品キャッチャー制御装置 220」からの入力にしたがって「駆動装置」を制御し、「景品キャッチャー 210」を所望の位置まで移動させているといえる。
よって、引用発明の「CPU 260」は、本願補正発明の「前記操作手段と接続され、前記操作手段からの入力に従って移動手段を制御し、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる制御装置」に相当するといえる。

・対応関係6
引用発明の「ディスプレイ装置 230」は、「ゲームが行われていない間に、各種のPR、例えば景品や各種イベントの紹介などを行う」ものであり、「景品の紹介」は、本願補正発明の「景品に関する情報」に相当することは明らかであるから、引用発明の「ゲームが行われていない間に、各種のPR、例えば景品や各種イベントの紹介などを行うディスプレイ装置 230」と、本願補正発明の「前記再生手段によって再生された景品に関する情報を表示する表示手段」は、「景品に関する情報を表示する表示手段」である点で共通する。

・対応関係7
引用発明においては、「プレイヤーは、図示されていない料金投入口に所定の料金を投入」して景品 250を吊り上げるのであるから、引用発明においても、本願補正発明の「コイン投入口へのコインの投入を検出する検出手段」に相当する構成を備えることは自明である。

・対応関係8
対応関係5及び7より、引用発明の「CPU 260」は、検出手段と接続されており、所定の料金の投入があった後に、「景品キャッチャー制御装置 220」からの入力にしたがって「駆動装置」を制御し、「景品キャッチャー 210」を所望の位置まで移動させているといえる。
してみれば、引用発明は、本願補正発明の「前記制御装置は、前記検出手段と接続され、前記検出手段がコインの投入を検出した後に、前記操作手段からの入力に従って前記移動手段を制御し、前記獲得手段を移動させるように構成されていること。」に相当する構成を備えているといえる。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、

「下記の要件を備えてなる景品獲得装置。
(イ)装置本体を有すること。
(ロ)前記装置本体は、装置本体内に置かれた景品を獲得するための獲得手段と、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる移動手段とを有すること。
(ハ)前記装置本体は、前記獲得手段を移動させるための指示を入力する操作手段と、前記操作手段と接続され、前記操作手段からの入力に従って移動手段を制御し、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる制御装置とを有すること。
(ニ)前記装置本体は、景品に関する情報を表示する表示手段を有すること。
(ホ)前記装置本体は、コイン投入口と、コイン投入口へのコインの投入を検出する検出手段を有すること。
(ヘ)前記制御装置は、前記検出手段と接続され、前記検出手段がコインの投入を検出した後に、前記操作手段からの入力に従って前記移動手段を制御し、前記獲得手段を移動させるように構成されていること。」、

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願補正発明では、「前記装置本体は、前記景品に関する情報を記憶した記憶媒体を着脱自在に装着する再生手段と、前記再生手段によって再生された景品に関する情報を表示する表示手段とを有する」のに対し、引用発明では、「前記装置本体は、景品に関する情報を表示する表示手段を有する」ものの、景品に関する情報をどのように用意するのか明らかでない点。

相違点2
本願補正発明では、「前記制御装置は、前記再生手段と接続され、前記再生手段を制御するように構成されている」のに対し、引用発明では、対応する構成を有しない点。

2.4 当審の判断
・相違点1について
引用例1には、ディスプレイ装置 230を利用して、景品や各種イベントの紹介などを行うに際し、どのような手段を用いて映像を用意するのか具体的に記載されていないが、ディスプレイ装置 230にて景品の紹介が行われる以上、何らかの映像の供給源が存在することは明らかである。
また、クレーンゲーム機においては、ゲーム機内の景品の減少や景品自体の人気・不人気等の要因により、適宜景品が入れ替えられることは自明であり、ディスプレイ装置で景品の紹介を行うのであれば、景品の入れ替えに応じて紹介する内容も差し替える必要があることは、当業者に当然に認識される事項である。
ここで、現に供給されている商品に関する情報を知らしめるために、商品の供給装置に、供給されている商品の情報を記憶した記憶媒体(例えば、ビデオディスクやビデオCDなど)を着脱自在に装着する再生手段と、再生手段によって再生された商品の情報を表示する表示手段とを設けることは、例えば、引用例2,3に記載されているように周知の技術手段であるといえる。
してみれば、引用発明において、表示手段に景品に関する情報を表示するに際し、上記周知の技術手段を採用して、「装置本体は、前記景品に関する情報を記憶した記憶媒体を着脱自在に装着する再生手段と、前記再生手段によって再生された景品に関する情報を表示する表示手段とを有する」ようにして、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

・相違点2について
引用発明においては、「ゲームが行われていない間に、各種のPR、例えば景品や各種イベントの紹介などを行う」のであるから、景品の情報はCPU 260の制御のもとにディスプレイ装置 230に表示されていることは明らかである。
そして、相違点1についての検討で述べたように、引用発明において、「装置本体は、前記景品に関する情報を記憶した記憶媒体を着脱自在に装着する再生手段と、前記再生手段によって再生された景品に関する情報を表示する表示手段とを有する」ように構成すれば、制御装置と再生装置が接続されることは当然であり、制御装置により再生手段が制御されることもまた当然であるといえる。
してみれば、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明において上記周知の技術手段を採用することにより必然的に生じる構成であり、格別なものではない。

そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の技術手段から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2.5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
3.1 本願発明
上記2.に前述した理由により、平成17年3月15日付けの手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき本願発明は、平成16年12月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 下記の要件を備えてなることを特徴とする景品獲得装置。
(イ)装置本体を有すること。
(ロ)前記装置本体は、装置本体内に置かれた景品を獲得するための獲得手段と、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる移動手段とを有すること。
(ハ)前記装置本体は、前記獲得手段を移動させるための指示を入力する操作手段と、前記操作手段からの入力に従って移動手段を制御し、前記獲得手段を景品の置かれた位置に移動させる制御装置とを有すること。
(ニ)前記装置本体は、前記景品に関する情報を記憶した記憶媒体を着脱自在に装着する再生手段と、前記再生手段によって再生された景品に関する情報を表示する表示手段とを有すること。」(以下、「本願発明」という。)

3.2 引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-319307号公報の記載事項は、「2.2.1 引用例1」に記載したとおりである。

3.3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から「2.1 補正の内容及び補正の目的について」に記載した限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、「2.4 当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-28 
結審通知日 2007-09-03 
審決日 2007-09-14 
出願番号 特願2000-121833(P2000-121833)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 植野 孝郎
森口 良子
発明の名称 景品獲得装置  
代理人 高田 修治  

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