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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1167118
審判番号 不服2005-5025  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-24 
確定日 2007-11-19 
事件の表示 平成10年特許願第312141号「画面表示制御方法ならびにそのための画面表示制御装置およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月16日出願公開、特開2000-137629、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年11月2日の出願であって、平成15年8月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月4日付けで手続補正がなされ、平成16年4月27日付けで拒絶の理由が通知され、平成17年2月15日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成17年3月24に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.補正の適否
平成17年4月22日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、平成15年11月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、この特許請求の範囲の請求項を「補正前の請求項」といい、本件手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項を「補正後の請求項」という。)を次のように補正するものである。

「【請求項1】システムの複数の構成要素それぞれの状態を画面上でループ状に個別表示するための画面表示制御方法であって、
前記構成要素に関する表示対象の総数A(Aは正の整数)と画面上での個別表示総数B(Bは正の整数)とを比較して、「A>B」のときには、(A-B)個の個別表示対象を1つの表示対象として示す集合部をループ状部分の一部に表示するとともに、B相当分の前記表示対象をそれぞれ個別表示し、
前記集合部には、前記画面上に個別表示されていない前記(A-B)個の個別表示対象についての、総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数とを含む、要約情報が表示され、
回転表示の指示に基づいて、前記集合部に該当する任意の個数の前記表示対象を新たに個別表示するとともに、それまで個別表示されていた前記表示対象の当該個数対応分を前記集合部に移行させる、
ことを特徴とする画面表示制御方法。
【請求項2】システムの複数の構成要素それぞれの状態を画面上に表示する表示手段と、
前記構成要素に関する表示対象の回転表示についての指示を行う指示手段と、
前記表示対象の総数A(Aは正の整数)と画面上での個別表示総数B(Bは正の整数)とを比較して、「A>B」のときには、(A-B)個の個別表示対象を1つの表示対象として示す集合部を前記表示手段のループ状部分の一部に表示して、当該集合部には当該画面上に個別表示されていない当該(A-B)個の個別表示対象についての、総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数とを含む、要約情報が表示されるとともに、B相当分の前記表示対象をそれぞれ当該ループ状部分に個別表示するように前記表示手段を制御し、かつ、前記指示手段からの回転表示の指示に基づき、この指示内容に対応する形で、当該集合部に該当する任意の個数の前記表示対象を新たに個別表示するとともに、それまで個別表示されていた前記表示対象の当該個数対応分を当該集合部に移行させるよ
うに前記表示手段を制御する、管理手段とを備えた、
ことを特徴とする画面表示制御装置。
【請求項3】システムの複数の構成要素それぞれの状態を画面上でループ状に個別表示するための画面表示制御に用いられるプログラムを格納した記録媒体において、
当該プログラムが、
前記構成要素に関する表示対象の総数A(Aは正の整数)と画面上での個別表示総数B(Bは正の整数)とを比較して、「A>B」のときには、(A-B)個の個別表示対象を1つの表示対象として示す集合部をループ状部分の一部に表示して、当該集合部には当該画面上に個別表示されていない当該(A-B)個の個別表示対象についての、総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数とを含む、要約情報が表示されるとともに、B相当分の前記表示対象をそれぞれ個別表示し、回転表示の指示に基づいて、前記集合部に該当する任意の個数の前記表示対象を新たに個別表示するとともに、それまで個別表示されていた前記表示対象の当該個数対応分を前記集合部に移行させる、機能をコンピュータに実現させるためのものである、
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能なプログラム記録媒体。」

上記補正は、補正前の請求項1-3において、集合部に表示される情報として記載された、「前記(当該)個別表示対象についての総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数」を、「前記(当該)画面上に個別表示されていない前記(A-B)個の個別表示対象についての、総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数とを含む、要約情報」と補正するものである。

ここで、上記補正前の請求項1-3の記載では、「前記(当該)個別表示対象についての総数」が、個別表示されるものも、個別表示されないもの(集合部として表示されるもの)も含めた、全ての個別表示対象についての総数とも解釈できるが、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0016】の記載
「ノ-ド集合アイコン11には、個別表示されていない各ノ-ドを要約した情報、例えば、
・当該ノ-ドの総数
・当該ノ-ドの中に異常ノ-ドが存在するかどうか
・当該異常ノ-ドの総数
などが表示される。」
から明らかなように、集合部に表示されるべき「総数」は、個別表示されていない(集合部として表示される)個別表示対象についての総数であるから、上記補正により、「前記(当該)個別表示対象についての総数」を、「前記(当該)画面上に個別表示されていない前記(A-B)個の個別表示対象についての、総数」と補正したこと(以下、「補正事項1」という。)は、誤記の訂正、あるいは、明りょうでない記載の釈明にあたる。

また、上記補正において、「前記(当該)画面上に個別表示されていない前記(A-B)個の個別表示対象についての、総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数」として、「総数」の前に、読点「、」を加えたこと(以下、「補正事項2」という。)は、「前記(当該)画面上に個別表示されていない前記(A-B)個の個別表示対象についての」という限定が、「総数」だけでなく、「総数」、「異常な表示対象の有無」、「異常な表示対象の総数」という3つの情報の全てに対する限定であることを明確化するためのものである。

同様に、「総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数とを含む、要約情報」として、「異常な表示対象の総数」の後ろに、「とを含む、要約情報」との記載を加えたこと(以下、「補正事項3」という。)は、上記3つの情報が、集合部に関する「要約情報」であることを明確化するためのものである。

つまり、これら補正事項1-3は、いずれも、「総数」、「異常な表示対象の有無」、「異常な表示対象の総数」という3つの情報が、個別表示されていない個別表示対象、すなわち、集合部として表示される個別表示についての情報であることを明確化するためのものであり、平成16年4月27日付けで通知された拒絶の理由において、「個別表示対象についての総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数が表示」されるよう制御する技術が、実施可能な程度に明確かつ十分に開示されていない旨の記載不備が指摘されていたことを考慮すれば、上記補正事項1-3は、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明に該当する。

なお、補正事項3に関連し、補正後の請求項1-3における「・・・とを含む、要約情報」との記載によれば、「総数」、「異常な表示対象の有無」、「異常な表示対象の総数」以外の情報も「要約情報」に該当する余地があるが、補正前の請求項1-3の記載も、これら3つの情報「のみ」に限定したものではないから、「・・とを含む」との記載を加えることは、特許請求の範囲を実質的に拡張するものではない。

したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項第3号又は第4号に規定する事項を目的とするものに該当する。
また、本件手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされており、特許法第17条の2第3項の規定に合致するものである。

3.本願発明
平成17年4月22日付けの手続補正は上記のとおり適法なものであるから、本願の請求項1-3に係る発明は、平成15年11月4日付け、及び、平成17年4月22日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲1-3に記載されたとおりのものである。

4.原査定の理由
原審における拒絶査定の要旨は、この出願の請求項1-3に係る発明は、平成15年8月26日付けの拒絶の理由に引用された特開平8-235200号公報(以下、「引用文献1」という。)、特開平10-232757号公報(以下、「引用文献2」という。)及び特開平7-221782号公報(以下、「引用文献3」という。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

5.引用文献
[引用文献1]
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。

A.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、テキスト情報,イメージ情報, 動画情報, 音声情報などのデータをカード単位で管理するカード型データベースを備えたパーソナルコンピュータ,ワークステーション等のデータ表示装置及びその表示方法に関する。」

B.「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は複数の関連するデータを表示するに際して、表示をしたいデータの縮小イメージ群を表示装置の画面に一括して表示できない場合には、かかる縮小イメージをさらに縮小した、あるいはデータを上記縮小イメージよりも大きな縮小率で縮小した再縮小イメージデータを利用し、表示すべきデータを画面に一覧表示するものである。
【0008】
【作用】本発明によれば、再縮小イメージデータを利用して表示することにより表示をしたいデータのすべてを画面上に一覧表示でき、スクロール等の操作を必要とすることなく、データの全体像を把握することができる。」

C.「【0011】ユーザが入力装置3から縮小イメージの表示命令(必要な場合は、縮小イメージとして表示したいカード群の先頭カードの番号)を入力すると(S3)、主制御装置1は縮小イメージ管理装置12をアクセスして、縮小イメージ格納装置13から、カード型データベースDBの全数のカードの縮小イメージを読み出す一方(S4)、カードの全数及び表示装置9の表示画面の縦横の寸法から、全数のカードイメージを表示画面に表示でき、かつ、縮小イメージとして最大の枚数表示できるカードの数を算出し(S5)、表示可能枚数と全カード数とを比較し(S6)、カードの全数が算出した数以下であれば、読み出した縮小イメージを表示装置9に表示する(S7)。一方、カードの全数が表示可能枚数を超える場合、主制御装置1は縮小イメージ管理装置12を再度アクセスし、再縮小イメージ格納装置14から縮小イメージとして表示しきれないカードの再縮小イメージを読み出し(S8)、縮小イメージを表示した余白の領域に再縮小イメージを表示し、全カードの縮小イメージと再縮小イメージとを表示装置9に一覧表示する(S9)。」

D.「【0015】さらに、本発明装置は、再縮小イメージとして表示されているカードを縮小イメージの表示に変更したい場合に再縮小イメージから縮小イメージへ表示を変更するとともに、カードを再縮小イメージから縮小イメージへ表示変更することによって全数のカードが表示しきれなくなった場合は、縮小イメージとして表示していたカード群の先頭カードから順に再縮小イメージの表示へ変更する。
・・・(中略)・・・
【0019】なお、再縮小イメージから縮小イメージへの表示変更の指定手段はスクロールバーに限らず、キーボード上のカーソルキーで指定する構成であっても、また表示装置9のスクリーンにタッチパネルを用いて、所要のカードを指,ペンなどで指定する構成であってもよい。」

E.「【0022】なお、本実施例ではカードの縮小イメージを、カードに含まれるデータのいずれかを縮小して表示する構成としたが、データの加工方法は縮小に限るものではなく、カードのデータ内容を特定可能な特徴的なデータ部分を、縮小イメージの表示範囲に応じた大きさ分だけ切り出して縮小せずに表示してもよい。また、再縮小イメージは縮小イメージを縮小したものに限らず、カードを特定可能なカード番号などのデータを表示してもよい。」

上記A-Cの記載からみて、各カードは、カード型データベースの構成要素であり、引用文献1には、複数のカードそれぞれの縮小イメージを画面上で一覧表示するための表示方法が記載されている。

上記Cの記載からみて、上記表示方法は、全カード数(以下、「A」という。)、縮小イメージとして表示できる表示可能枚数(以下、「B」という。)とを比較して、カードの全数が表示可能枚数を超える(A>B)のときには、縮小イメージとして表示しきれないカード、すなわち、(A-B)枚のカードを、縮小イメージを表示した余白の領域に再縮小イメージとして表示し、表示可能枚数(B)相当分のカードについては縮小イメージとして表示するものである。

また、上記Dの記載からみて、上記表示方法は、再縮小イメージから縮小イメージへの表示変更の指定に基づいて、再縮小イメージとして表示されてるカードを新たに縮小イメージとして表示するとともに、それまで縮小イメージとして表示されていたカードのうち縮小イメージとして表示しきれなくなった分を再縮小イメージとして表示するものである。

よって、上記A?Eの記載事項及び関連する図面を参照すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「カード型データベースの構成要素である複数のカードそれぞれの縮小イメージを画面上で一覧表示するための表示方法であって、
全カード数(A)と、表示可能枚数(B)とを比較して、A>Bのときには、(A-B)
枚のカードを、縮小イメージを表示した余白の領域に再縮小イメージとして表示するとともに、B枚相当分のカードを縮小イメージとして表示し、
再縮小イメージから縮小イメージへの表示変更の指定に基づいて、再縮小イメージとして表示されてるカードを新たに縮小イメージとして表示するとともに、それまで縮小イメージとして表示されていたカードのうち縮小イメージとして表示しきれなくなった分を再縮小イメージとして表示する、
ことを特徴とする表示方法。」

[引用文献2]
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

F.「【0033】・・・(中略)・・・図4(B)は、図4(A)で選択したTVモニター11を、メディア選択装置のボタン3を押圧することによって確定し、更に、自動的にTVモニター11に近付いた時の映像を示した具体的な例である。更に、メディア選択装置のボタン3を押圧することにより、TVモニター11に表示された下位階層のTVモニター群12を、メディア選択装置のツマミ2を回転させて選択し、番組を見ることができる。」

G.「【0035】図5に示すものは、ラジオチューナー群14から、任意の放送を聴く方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0037】図6に示すものは、電話機群16から、任意の電話をかける方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0039】図7に示すものは、CD群18から任意の音楽をかける方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0041】図8に示すものは、ビデオ映像群20から任意のビデオ映像を見る方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0043】図9に示すものは、家庭電気製品群22から任意の家庭電気製品の電源を操作する方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0045】図10に示すものは、テキスト情報群24から、任意のテキスト情報を表示する方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0047】図11に示すものは、計算処理装置群26から、任意の計算処理装置にアクセスする方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0049】図12に示すものは、アプリケーション群28から、任意のアプリケーションソフトを起動する方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0051】図13に示すものは、オートチェンジャー装置群28から任意のオートチェンジャー装置のメディアを再生する方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。
・・・(中略)・・・
【0053】図14に示すものは、ホームページ群32から、任意のホームページを表示する方法を示した具体的な例であり、操作は図4(B)の説明と同様である。」

上記Gの記載からみて、図5-14における各(B)の図面は、それぞれ、ラジオチューナー、電話機、CD、ビデオ映像、家庭電気製品、テキスト情報、計算処理装置、アプリケーション、オートチェンジャー装置、ホームページといった選択対象を表す各アイコンが、ループ状に配列して画面表示された状態を示しており、その操作は、上記Fに記載されている、図4(B)の説明と同様であるとされているから、上記ループ状に配列された各アイコンの表示は、メディア選択装置のツマミを回転することにより、ループに沿って順次回転していくものである。

よって、上記F?Gの記載事項及び関連する図面を参照すると、引用文献2には、選択対象を表す各アイコンを、ループ状に配列して画面表示するとともに、回転指示により、各アイコンの表示をループに沿って順次回転させる技術が記載されている。

[引用文献3]
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

H.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はネットワーク集中監視装置に関し、特にポーリングにより中間監視装置を経由して被監視装置を監視しその監視結果を画面表示するネットワーク集中監視装置に関するものである。
【0002】図10には伝送装置を被監視装置とする集中監視ネットワークが示されており、これらの被監視装置NE(Network Element) は中間監視装置P-SV(Primarysupervisor)及びR-SV(Regional Supervisor) を介して集中監視装置X-SV(Extensive Supervisor)に接続されており、被監視装置NEの状態は集中監視装置X-SVに設けられた処理装置PCからのポーリングにより常に監視されて情報収集が行われ、その監視結果が表示装置CRTに表示される。」

I.「【0005】先ず、表示装置CRTには初期画面(a)が表示される。この初期画面(a)は集中監視装置X-SVから見て最も上位の中間監視装置R-SVの階層における画面であり、図示の様に例えば三つの中間監視装置R-SV1?R-SV3が地図上の配置に合わせて表示される。
【0006】そして、これらの中間監視装置R-SVの配下における被監視装置NEに障害が発生しているものについては別の色に変化させてそれをオペレータに知らせるようになっており、この例では中間監視装置R-SV2がその配下の被監視装置NEに障害が発生していることを知らせる。
【0007】この様な初期画面(a)において装置の色が変化している中間監視装置R-SV2を選択すると中間監視装置R-SV2の配下の中間監視装置P-SVについての画面(b)が地図の配置に合わせて表示され、この場合もその配下にある被監視装置NEが障害状態にある例えば中間監視装置P-SV21の色が変化した状態となっている。
【0008】従ってオペレータは更にこの中間監視装置P-SVを選択すると画面(c)に示すような被監視装置NEについての地図が表示され、この内の被監視装置NE213が障害状態にあることが色の変化により知らされる。」

J.「【0010】
【発明が解決しようとする課題】この様な従来のネットワーク集中監視装置においては、一度に多数の被監視装置に障害が発生した場合、ネットワークの各階層に関してどの装置についてどのくらいの数の障害が発生したのかが分からず、また障害の復旧状況も分からないという問題があった。」

K.「【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明に係るネットワーク集中監視装置は、ポーリングにより収集した各被監視装置の障害発生状態を各被監視装置の上位の中間監視装置に対応させて記憶しておく障害発生状態テーブルと、ネットワークの各階層に対応した表示画面単位の地図上に配置される各装置のアドレス及び座標を記憶した地図情報ファイルとを備えており、更に該地図情報ファイルに基づき所望の画面を選択表示すると共に該所望の画面に表示された各装置の障害集約数を該障害発生状態テーブルに基づいて表示することを特徴としている。」

L.「【0049】このステップS6による障害集約数の表示例は図7に示す各中間監視装置P-SV1,P-SV5の下に示されており、このサブルーチンS6の具体的な処理例が図8に示されている。
・・・(中略)・・・
【0051】そして、全ての被監視対象の装置についてステップS62?S64を実行したのち障害数を表示する(ステップS65)。
【0052】これを図7の例で見ると、画面P-SV・MAP3において□で囲まれた情報として示されており、中間監視装置P-SV1の配下の被監視装置NEに関して大障害(MAJ)状態にある被監視装置NEは1個であり、小障害(MIN)状態にある被監視装置NEの数も1個であり、更に状態変化(STT)があった被監視装置NEの個数が0個であることを表示している。また、中間監視装置P-SV5においては、大障害の被監視装置NEの個数は12個であり、小障害の被監視装置NEは9個であり、そして状態変化のあった被監視装置NEは3個であることが示されている。」

上記H、I、Kの記載からみて、引用文献3には、ネットワークの構成要素である被監視装置それぞれの障害発生状態を画面上で表示する方法が記載されている。

上記H、I及び図11の記載からみて、中間監視装置の配下にある複数の被監視装置は、中間監視装置によって代表されて表示されており、その中に障害が発生している被監視装置がある場合には、別の色に変化させることによって、その配下にある被監視装置についての、障害の発生の有無が表示されている。

上記J-Lに記載されているように、その配下にある複数の被監視装置を代表して表示される中間監視装置には、大障害状態にある被監視装置の数や、小障害状態にある被監視装置の数など、その配下にある被監視装置についての、障害集約数が表示されている。

よって、上記H?Lの記載事項及び関連する図面を参照すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「ネットワークの構成要素である被監視装置それぞれの障害発生状態を画面上で表示する方法であって、
中間監視装置の配下にある複数の被監視装置を、中間監視装置によって代表して表示し、
中間監視装置には、その配下にある被監視装置についての、障害の発生の有無及び障害集約数が表示される、
ことを特徴とする方法。」

5.対比・判断
(1)本願の請求項1に係る発明について
本願の請求項1に係る発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「カード型データベース」、「カード」、「縮小イメージ」、「全カード数(A)」、「表示可能枚数(B)」は、それぞれ、本願の請求項1に係る発明の「システム」、「構成要素」、「表示対象」、「表示対象の総数A」、「画面上での個別表示総数B」に相当し、両者は、少なくとも次の点で相違する。

[相違点1]
本願の請求項1に係る発明では、(A-B)個の個別表示対象が、それらを1つの表示対象として示す集合部として表示されるのに対し、引用発明1では、(A-B)枚のカードについて、それぞれの再縮小イメージが、縮小イメージを表示した余白の領域に表示される点。

[相違点2]
本願の請求項1に係る発明が、構成要素それぞれの「状態」を表示するための方法であり、集合部には、「前記画面上に個別表示されていない前記(A-B)個の個別表示対象についての、総数と、異常な表示対象の有無と、異常な表示対象の総数とを含む、要約情報」が表示されるのに対し、引用発明1は、カードの縮小イメージを表示するための方法であり、再縮小イメージが表示される、縮小イメージを表示した余白の領域には、当該領域に再縮小イメージが表示されるカードについての、総数、異常なカードの有無、異常なカードの総数等は表示されない点。

以下、上記各相違点について検討する。

[相違点1について]
引用発明3において、複数の被監視装置が、1つの中間監視装置によって代表されて画面上に表示されているように、複数の表示対象を、1つの表示対象によって代表して表示することは、当業者における周知技術であるから、引用発明1において、当該周知技術を採用し、縮小イメージを表示した余白の領域にまとめて表示されている複数の再縮小イメージを、1つの集合部で代表して表示させるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

[相違点2について]
引用発明3では、中間監視装置によって代表して表示される配下の被監視装置について、障害の発生の有無及び障害集約数を表示することが行われているが、引用発明1は、カードの縮小イメージを表示するための方法であり、上記4.Eに、「カードの加工方法は縮小に限るものではなく、カードのデータ内容を特定可能な特徴的なデータ部分を、縮小イメージの表示範囲に応じた大きさ分だけ切り出して縮小せずに表示してもよい。また、再縮小イメージは縮小イメージを縮小したものに限らず、カードを特定可能なカード番号などのデータを表示してもよい。」との記載のあることを考慮しても、引用文献2には、カードについて障害あるいは異常に関する情報を表示することの記載も示唆もないから、障害に関する情報の表示とは無関係な引用発明1において、障害に関する情報の表示を行うための上記引用発明3に係る公知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ることではない。

したがって、その他の相違点について検討をするまでもなく、本願の請求項1に係る発明は、引用発明1-3に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2)本願の請求項2及び3に係る発明について
本願の請求項2及び3に係る発明は、請求項1に係る発明を、それぞれ、「装置」の発明及び「コンピュータ読み取り可能なプログラム記憶媒体」として記載したものであるから、上記(1)で検討した請求項1に係る発明と同様の理由により、引用文献1-3に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした原査定の判断は妥当でない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2007-10-29 
出願番号 特願平10-312141
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂庭 剛史  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 野仲 松男
相崎 裕恒
発明の名称 画面表示制御方法ならびにそのための画面表示制御装置およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 穂坂 和雄  
代理人 田中 治幸  
代理人 長谷川 文廣  

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