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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1167285
審判番号 不服2003-18763  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-25 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 特願2001-374908「ビデオゲーム装置及び動きセンサ構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月24日出願公開、特開2003-175279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月7日の出願であって、平成15年1月17日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成15年3月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成15年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年9月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年10月8日付けで手続補正がなされた。
その後、当審において平成19年5月22日付けで平成15年10月8日付けの手続補正を却下する補正の却下の決定がされるとともに、同日付けで最後の拒絶理由通知がされ、その指定期間内である平成19年7月30日付けで手続補正がされたものである。

2.平成19年7月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年7月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「立直の多角柱形状又は円柱形状をなすプレイ領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面に対するプレイヤの動きを遠隔的に検出する動きセンサ構造体であって、前記一面のうち前記プレイ領域の上半部の面と交差する動きを検知する検知面を有する第1センサと、前記一面のうち前記プレイ領域の下半部の面と交差する動きを検知する検知面を有する第2センサとを備え、前記第1、第2センサが前記プレイ領域を囲む前記一面の上部に、該一面と交差する方向に近接して配設されていることを特徴とする動きセンサ構造体。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に従属する請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「プレイ領域」について「プレイヤがプレイする空間であるプレイ領域」を「立直の多角柱形状又は円柱形状をなすプレイ領域」と補正することによって、「立直の多角柱形状又は円柱形状をなす」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)当審の最後の拒絶理由と引用例
当審において平成19年5月22日付けで最後の拒絶理由として通知した拒絶の理由2の概要は、本件出願の下記の請求項1?10に係る発明は、本願の出願前に頒布された、特開2001-239054号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2001-232059号公報(以下、「引用例2」という。)及び特開2000-254351号公報(以下、「引用例3」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1には、
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、曲の再生に連動してプレイヤーにダンス動作を指示するダンスゲーム装置に関する。」(段落「【0001】)、

「【0024】
【発明の実施の形態】図1は本発明をゲームセンター等に設置されるアーケードゲーム機として構成した一実施形態の斜視図である。図2はその正面図、図3は図2のIII-III線に沿った縦断面図、図4は図2のIV-IV線に沿った横断面図である。これらの図から明らかなように、ダンスゲーム機1は、本体ユニット2と、その本体ユニット2の前方の配置されるステージユニット3と、そのステージユニット3の上方に設置されるトップユニット4とを有している。
【0025】本体ユニット2は縦長の筐体2aを有している。筐体2aの前面側には低音再生用のウーファーユニット5、硬貨投入口6aから投入された硬貨の真偽判定を行う硬貨確認装置6、ゲームモードの選択等に使用される入力装置7(図2参照)、モニタ8等が設置される。本体ユニット2の前面の両側には縦長の蛍光管等を利用した照明灯9,9が設置される。
【0026】ステージユニット3はプレイヤーがダンスを行う場を提供するために設けられており、板材を組み合わせた扁平かつ中空の箱形構造を有している。ステージユニット3の上面はダンスフロア3aとして構成され、そのダンスフロア3aとトップユニット4との間にプレイヤー用ダンス領域としてのダンス空間Aが形成される。ダンスフロア3aには正八角形状を描くようにして8つの発光部3b…3bが設けられている。各発光部3bは例えば半透明のレンズ3cで覆われており、そのレンズ3cの内側にLED等の照明灯3dが設置されている(図3参照)。なお、レンズ効果を有しないカバーにて発光部3bを覆ってもよい。カバー上には適当なマークなどを表示してもよい。例えば、ダンスフロア3aの中央(発光部3bが描く正八角形の中心)に立っているプレイヤーから見たときの各発光部3bの方向を示す矢印を発光部3bに表示してもよい。
【0027】トップユニット4は、ステージユニット3の前端左右に設けられた2本の前部支柱10a,10aと、本体ユニット2の上端から突き出た後部支柱10b,10bとによってダンスフロア3aの真上に支持されている。トップユニット4は概略正八角形状のフレーム11を有している。フレーム11が描く正八角形状の中心はダンスフロア3aの中心とほぼ一致する。フレーム11の各辺は対向する各発光部3bの長手方向と同一方向に延びている。図5にも示したようにフレーム11の各辺にはモーション検出装置12…12が取り付けられる。また、フレーム11には、ストロボランプやスポットランプ等で構成された照明灯14a,14bと、スピーカユニット15とが取り付けられる。
【0028】モーション検出装置12はダンスフロア3a上に位置するプレイヤーの手の動作を検出するために設けられたものである。各検出装置12は3つのセンサ13a、13b、13cを有している。一つのセンサ13bはフレーム11の各辺の中央に配置され、他の2つのセンサ13a,13cは中央のセンサ13bに対して等しい距離をおいて配置されている。なお、以下において3つのセンサ13a、13b、13cを区別する必要がないときはセンサ13と表記する。
【0029】各センサ13は、測定対象物に向かって赤外光を射出するとともにその測定対象物からの反射光を受光し、それら赤外光の射出位置と入射位置との位相差に基づいて測定対象物までの距離を検出する反射型の距離センサである。各センサ13の検出領域はほぼ真下に向けられており、その延長上にダンスフロア3aの発光部3bが位置している。そのため、プレイヤーは発光部3bにより各検出装置12の検出領域を概ね把握できる。
【0030】各センサ13a?13cの間隔はそれぞれの検出領域が互いに重複しないように調整されている(図6参照)。但し、各センサ13の検出領域がセンサ13から離れるほど拡大する場合には、ダンスフロア3a上に所定高さの検出対象範囲を設定し、その範囲で検出領域が互いに重複しないようにすればよい。本実施形態のゲーム機1では、手の動きに関する振り付けをプレイヤーに要求するため、検出対象範囲はダンスフロア3aにプレイヤーが立ったときにその手が位置すると予想される範囲として設定する。センサ13には赤外光を利用した距離センサに限らず、各種のセンサを利用してよい。但し、赤外光を利用した距離センサによれば、超音波等を利用したセンサと比較して反応速度が速い利点がある。
【0031】なお、センサ13として距離センサを利用した場合には、センサ13の検出領域に何らかの検出対象(プレイヤーの手や足を含む)が入ったときにセンサ13からその対象までの距離に相関した信号(以下、距離信号)がセンサ13から出力される。しかしながら、本ゲーム機1ではセンサ13の検出領域に検出対象が存在しないときの距離信号を基準信号とし、その基準信号が出力されている状態をセンサ13のオフ、検出対象(プレイヤーの手や足)がセンサ13の検出領域に入って距離信号が変化した状態(センサ13が検出対象に反応した状態)をセンサ13のオンとして処理する。
【0032】本実施形態では一つの検出装置12に複数のセンサ13を設けているため、各センサの検出領域の狭さを補って広い範囲でプレイヤーの動作を検出できる。また、一つの検出装置12における各センサ13の反応パターンに基づいて、プレイヤーの動作をより詳しく検出できる。その例を図7により説明する。なお、図7(a)?(e)の右側はそれぞれ三つのセンサ13a,13b,13cの検出領域と検出対象との位置関係を示しており、左側はそれらに対応した各センサ13a,13b,13cの信号変化(オン・オフ)を示すタイミングチャートである。
【0033】図7(a)は一つの検出装置12を構成する三つのセンサ13a,13b,13cのうち、中央のセンサ13bの検出領域のみにプレイヤーが手(検出対象)を差し入れた場合の反応パターンを示し、図7(b)は二つのセンサ13a,13bの検出領域に跨ってプレイヤーが手を差し入れた場合の反応パターンを示している。これらの反応パターンは、いずれもプレイヤーがセンサ13の並び方向に対してほぼ直交する方向に手を前後動させたときに検出される反応パターンである。」(段落【0024】?【0033】)、

「【0071】本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の形態で実施してよい。例えば、ステージユニット3にプレイヤーの足の動きを検出する装置(例えば踏み込み操作に反応するフットスイッチでもよいし、赤外線や超音波等を利用したものでもよい。)を設け、手の動きと足の動きの両者をダンスの振り付けとしてプレイヤーに要求してもよい。プレイヤーに対する振り付け動作の案内は、スクロール領域100による表示に代え、または追加してダンスシーンを収録した実写ムービー等をモニタ8上に表示して達成してもよい。
【0072】以上の実施形態では、特にプレイヤーの手の動きを振り付けるものとして説明したが、センサ13の検出領域に届く限り、足、その他、プレイヤーの身体の各部位をセンサ13にて検出させながらダンスを踊る使用方法も当然に可能である。」(段落【0071】、【0072】)、
との記載が認められ、図5、図6及び段落【0027】、【0028】の記載から、プレイヤー用ダンス領域が立直の正八角柱形状であることは自明であり、さらに、モーション検出装置12がプレイヤー用ダンス領域を囲む垂直面と交差する手や足の動作を遠隔的に検出すること及びモーション検出装置12の反射型の距離センサ13がプレイヤー用ダンス領域を囲む面の上部に配設されていることも自明であるから、これらの記載によれば、引用例1には、
「立直の正八角柱形状のプレイヤー用ダンス領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面に対する手や足の動作を遠隔的に検出するモーション検出装置12を備えたダンスゲーム機1であって、前記手や足の動作を検出するモーション検出装置12が各辺に取り付けられた正八角形状のフレーム11を備えるトップユニット4は、ステージユニット3の前端左右に設けられた2本の前部支柱10a,10aと、本体ユニット2の上端から突き出た後部支柱10b,10bとによってダンスフロア3aの真上に支持され、前記プレイヤー用ダンス領域を囲む垂直面と交差する手や足の動作を検知するモーション検出装置12の反射型の距離センサ13がプレイヤー用ダンス領域を囲む面の上部に配設されていることを特徴とするモーション検出装置12を備えたダンスゲーム機1。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

引用例2には、
「【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ゲームプレーヤによる上部空間への被検知体の差出し動作を検知する上部検知手段と、ゲームプレーヤによる下部空間への被検知体の差出し動作を検知する下部検知手段と、前記ゲームプレーヤに対して前記上部空間及び下部空間への被検知体の差出し動作の指示を行うガイド手段とを有し、このガイド手段は、前記上部検知手段に関連する第1のレーン及び前記下部検知手段に関連する第2のレーンを備え、前記第1のレーンには下方から上方の第1の基準マーク位置に向けて第1の移動マーク部が移動すると共に、前記第2のレーンには上方から下方の第2の基準マーク位置に向けて第2の移動マーク部が移動し、前記第1の移動マーク部が所定位置に達したときに前記上部空間への差出し動作を指示すると共に、前記第2の移動マーク部が所定位置に達したときに前記下部空間への差出し動作を指示するようにしたことを特徴としている。
【0008】この構成によれば、第1,第2の移動マーク部が所定位置に達することにより上部空間又は下部空間への被検知体の差出し動作の指示が行われ、その差出し動作指示に応じて手等の被検知体を上部空間又は下部空間に差し出すことにより主として上半身でダンスゲームが実行される。このように、本ダンスゲーム装置では、手等の被検知体を上部空間又は下部空間に差し出すものであるため、前からでも左右上下のいずれからでも手等の被検知体を差し出すことでゲームプレーヤの思いのままの動作が可能になる。」(段落【0007】、【0008】)、

「【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態に係るダンスゲーム装置の右方から見た外観斜視図、図2はその上方から見た外観斜視図である。これらの図において、ダンスゲーム装置10は、ゲームプレーヤに対して手の運びを誘導することにより主として上半身でダンスを行わせるようにしたものであり、音声画像出力部12と、音声画像出力部12の上部左方に対応する位置に配設された第1の上部検知部14と、音声画像出力部12の上部右方に対応する位置に配設された第2の上部検知部14’と、音声画像出力部12の縦方向中間部左方に対応する位置に配設された第1の下部検知部16と、音声画像出力部12の縦方向中間部右方に対応する位置に配設された第2の下部検知部16’と、音声画像出力部12の床設置面に沿って配設されたマット部18とを備えている。」(段落【0011】)、

「【0024】このように構成された第1,第2の左上検知部141,141’及び第1,第2の右上検知部142,142’は、それら各検知部の下方の空間にゲームプレーヤが手を差し出したときに発光素子541から送出された赤外線がその差し出された手で反射されて受光素子542で受光されることで手の差出し動作を検知する。」(段落【0024】)、

「【0036】また、この検知素子70は、検知素子54が略真下に向けてパルス状の赤外線を送出しているのに対し、少し手前(ゲームプレーヤ側)に傾いた位置に向けてパルス状の赤外線を送出するようになっている。また、この検知素子70は、検知素子54が検知素子54直下の位置とマット部18上面よりも少し上方の位置との間に手が差し出された場合に検知が可能になっているのに対し、検知素子70直下の位置と検知素子70から20cm程度下方に離間した位置との間に手が差し出された場合にだけ検知が可能になっている。このような検知素子70を設けているのは、次のような理由による。すなわち、下部空間に手を差し出す場合にはゲームプレーヤによっては十分に手が伸びない場合があるが、そのような場合でもゲームの円滑な進行が妨げられないようにするためである。
【0037】このように構成された第1,第2の左下検知部161,161’及び第1,第2の右下検知部162,162’は、それら各検知部直下の位置と各検知部から20cm程度下方に離間した位置の空間にゲームプレーヤが手を差し出したときには発光素子541又は発光素子701から送出された赤外線が手で反射されて受光素子542又は受光素子702で受光されることで手の差出し動作を検知する一方、各検知部から20cm程度下方に離間した位置とマット部18上の所定の位置との空間にゲームプレーヤが手を差し出したときには発光素子541から送出された赤外線が手で反射されて受光素子542で受光されることで手の差出し動作を検知する。」(段落【0036】、【0037】)、
が記載されている。

(3)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「プレイヤー用ダンス領域」、「モーション検出装置12」は、各々、本願補正発明の「プレイ領域」、「動きセンサ」に相当し、また、引用例1発明の「モーション検出装置12を備えたダンスゲーム機1」の上位概念である「モーション検出装置を備えた構造体」は、本願補正発明の「動きセンサ構造体」と一致し、さらに、引用例1発明の「正八角柱形状のプレイヤー用ダンス領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面」の上位概念である「多角柱形状の正八角柱形状のプレイヤー用ダンス領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面」は、本願補正発明の択一的な記載である「多角柱形状又は円柱形状をなすプレイ領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面」の「多角柱形状をなすプレイ領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面」に一致する。
結局、両者は、
「立直の多角柱形状をなすプレイ領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面に対するプレイヤの動きを遠隔的に検出する動きセンサ構造体であって、前記一面と交差する動きを検知する検知面を有するセンサを備え、前記センサが前記プレイ領域を囲む前記一面の上部に配設されていることを特徴とする動きセンサ構造体。」という点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
センサの検知面について、本願補正発明では、第1センサが、一面のうちプレイ領域の上半部の面と交差する動きを検知する検知面を有し、第2センサが、一面のうちプレイ領域の下半部の面と交差する動きを検知する検知面を有しているのに対し、引用例1発明では、モーション検出装置12の反射型の距離センサ13が、プレイヤー用ダンス領域の垂直面と交差する手や足の動作を検知する検知面を有しているにとどまる点。

[相違点2]
センサの配設位置について、本願補正発明は、「第1、第2センサがプレイ領域を囲む一面の上部に、該一面と交差する方向に近接して配設されている」というものであるのに対し、引用例1発明は、「距離センサ13がプレイヤー用ダンス領域を囲む面の上部に配設されている」というものである点。

次に相違点を検討する。
[相違点1]について
引用例1の段落【0031】の「センサ13として距離センサを利用した場合には、センサ13の検出領域に何らかの検出対象(プレイヤーの手や足を含む)が入ったときにセンサ13からその対象までの距離に相関した信号(以下、距離信号)がセンサ13から出力される。」との記載から、引用例1発明の反射型の距離センサ13は、検出対象までの距離を識別できるものであることが窺える。
また、引用例1のものと同種のダンスゲーム装置が示される引用例2の段落【0011】及び図1には、ゲームプレーヤによる上部空間への被検知体の差出し動作を検知する上部検知手段と、ゲームプレーヤによる下部空間への被検知体の差出し動作を検知する下部検知手段をそれぞれの空間の上部に配設したものであって、各検知手段を反射型のセンサで構成することが記載されている。
ところで、本願補正発明の「プレイ領域の上半部の面と交差する動きを検知する検知面を有する第1センサと、前記一面のうち前記プレイ領域の下半部の面と交差する動きを検知する検知面を有する第2センサ」の各センサの検知範囲については具体的な限定がないところ、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0025】には、本願補正発明の実施例として、本願補正発明の第1センサ、第2センサに、各々、対応する動きセンサ32、動きセンサ33について、「動きセンサ31、32、33はモニタ11に近い側(プレイ前領域)の前後方向に配設され、手前側の動きセンサ31、32はプレイシート体25までの略上半部までの検知範囲を有し、動きセンサ33はプレイシート体25の直ぐ上部までの検知範囲を有するように、発光光の強度が設定されている。」と記載されるように、第1センサ、第2センサは、異なる検知範囲を有することが示されている。
そして、引用例2の段落【0036】には、下部空間用の検出素子について、「検知素子70は、検知素子54が検知素子54直下の位置とマット部18上面よりも少し上方の位置との間に手が差し出された場合に検知が可能になっているのに対し、検知素子70直下の位置と検知素子70から20cm程度下方に離間した位置との間に手が差し出された場合にだけ検知が可能になっている。」と記載されるように、検知素子70、検知素子54が異なる検知範囲を有することが示されているから、引用例2には、本願補正発明の実施例である、異なる検知範囲を有する第1センサ、第2センサと同様の構成が示されている。
そうすると、引用例2に示される、前記の検知素子70、検知素子54は、下部検出手段に係るものではあるが、この異なる検知範囲を有する検知素子を、引用例1発明のプレイヤー用ダンス領域における手や足の動作の検知のための距離センサ13として採用することが格別困難であるとは認められない。
したがって、引用例1発明において、プレイヤー用ダンス領域を囲む垂直面を上半部と下半部とに分け、それぞれを弁別して検知するために、別個のセンサにて手や足の動きを検出するように構成することは当業者が容易に想到しえたものと認められる。
結局、この相違点に係る本願補正発明の構成は、引用例1発明に引用例2に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易になしえたものと認められる。

[相違点2]について
[相違点1]について、で検討したように、引用例2に示される、異なる検知範囲を有する検知素子検知素子70、検知素子54を引用例1発明のプレイヤー用ダンス領域における手や足の動作の検知のための距離センサ13として採用することが当業者が容易に想到しえたものと認められること、そして、前記した検知素子70、54を前記距離センサ13に換えてプレイヤー用ダンス領域を囲む面の上部に配設する場合には、引用例2の段落【0036】に「この検知素子70は、検知素子54が略真下に向けてパルス状の赤外線を送出しているのに対し、少し手前(ゲームプレーヤ側)に傾いた位置に向けてパルス状の赤外線を送出するようになっている。」と記載されていることを勘案すると、引用例2の検知素子検知素子70、検知素子54を引用例1発明のプレイヤー用ダンス領域における手や足の動作の検知のための距離センサ13として採用した場合、前記検知素子70、54の取付位置は、本願補正発明の「プレイ領域を囲む一面の上部に、該一面と交差する方向に近接して配設されている」と同様の取付位置の構成となることは明らかである。
結局、この相違点に係る本願補正発明の構成は、引用例1発明に引用例2に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易になしえたものと認められる。

そして、本願補正発明の構成により生ずる効果は、前記引用例1、2の記載から予測される範囲内のものである。
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定で準用する同法第126条第4項に規定される独立特許要件を満たしていないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年7月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年3月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるものであり、請求項2が従属する請求項1の記載を踏まえると、以下のとおりのものである。
「プレイヤがプレイする空間であるプレイ領域を囲む面の少なくとも垂直面のうちの一面に対するプレイヤの動きを遠隔的に検出する動きセンサ構造体であって、前記一面のうち前記プレイ領域の上半部の面と交差する動きを検知する検知面を有する第1センサと、前記一面のうち前記プレイ領域の下半部の面と交差する動きを検知する検知面を有する第2センサとを備え、前記第1、第2センサは、前記プレイ領域を囲む前記一面の上部に、該一面と交差する方向に近接して配置されていることを特徴とする動きセンサ構造体。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「立直の多角柱形状又は円柱形状をなすプレイ領域」を「プレイヤがプレイする空間であるプレイ領域」と補正するものであり、実質的に、本願補正発明から、「プレイ領域」の限定事項である「立直の多角柱形状又は円柱形状をなす」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-04 
結審通知日 2007-09-11 
審決日 2007-09-25 
出願番号 特願2001-374908(P2001-374908)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 森内 正明
青木 和夫
発明の名称 ビデオゲーム装置及び動きセンサ構造体  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 樋口 次郎  
代理人 小谷 悦司  

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