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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1167292
審判番号 不服2004-6315  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-30 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 平成 9年特許願第286229号「歯周病原性細菌の付着防止剤」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月27日出願公開、特開平11-116453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年10月3日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものであると認める。

「歯磨き剤中にセラックを含有してなる歯の表面への歯周病原性細菌の付着防止剤。」

2.先願発明
これに対して、原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願の日前の出願に係る特願平8-153659号は、本願の出願人により出願されたものであって、平成15年9月25日付けで拒絶査定がなされ、同年11月4日に拒絶査定不服審判が請求されたが、平成17年3月30日付けで本件審判の請求は、成り立たない旨の審決がなされ、同年5月9日に審決が確定したものである。
上記出願の請求項1に係る発明は、平成15年9月4日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「先願発明」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「セラックを少なくとも含有してなる、歯表面の細菌付着防止歯磨き剤。」

3.対比・判断
本願発明と先願発明を対比すると、両者は、「セラックを含有してなる歯の表面への細菌の付着防止剤。」である点で一致し、本願発明が、「歯磨き剤中にセラックを含有してなる」「細菌の付着防止剤。」としているのに対して、先願発明が、「セラックを・・・含有してなる」「細菌付着防止歯磨き剤。」としている点(相違点1)及び本願発明が、「細菌」を「歯周病原性細菌」と規定しているのに対して、先願発明が、「細菌」の種類を特定していない点(相違点2)で一応相違している。

(相違点1について)
先願明細書に、「本発明は、歯磨き剤中にセラックを含有してなる歯表面の細菌付着防止剤である。」(段落【0004】)、「本発明において、セラックは従来の歯磨き剤に混合されることがもっとも望ましい。」(段落【0006】)、「本発明に係る細菌付着防止剤の製造方法は、セラックをプロピレングリコール等の従来の歯磨き剤に汎用される物質に溶解するほかは、従来の歯磨き剤と同様である。」(段落【0007】)と記載されていることから、先願発明の「細菌付着防止歯磨き剤」が、「歯磨き剤中にセラックを含有してなる細菌の付着防止剤」であることは明らかである。
よって、上記相違点1は表現上の差異に過ぎない。

(相違点2について)
歯周病原性細菌は、先願明細書の実施例で付着阻害効果が確認されているう蝕原性菌(段落【0010】?【0011】)と同じく、人の口腔内の常在細菌として周知なものである。(必要ならば特開平7-187974号公報の段落【0003】、特開平7-69851号公報の段落【0002】、及び特開平4-355339号公報の段落【0003】を参照)
一方、本願発明の付着防止剤の組成を見ると、セラックの含有量は、「一般に0.01?10重量%、好ましくは0.1?7重量%であり、更に好ましくは0.5?5重量%、一層好ましくは1?5重量%である。」(段落【0015】)と記載されるのに対して、先願発明では、「セラックの含有量は、一般に0.1?7重量%であり、好ましくは0.5?5重量%、更に好ましくは1?5重量%である。」(段落【0008】)と記載されており、組成において一致している。

また、使用態様について見ると、本願発明では、「本発明に係る細菌の付着防止剤の使用方法は特に限定されないが、通常は、朝、夕、就寝前のブラッシング時に従来の歯磨剤と同様に使用すればよい。」(段落【0014】)と記載されるのに対して、先願発明では、「本発明に係る細菌付着防止剤の使用方法は特に限定されないが、通常は、朝夕のブラッシング時に、従来の歯磨き剤と同様に使用すればよい。」(段落【0007」】)と記載されており、使用態様において一致している。

更に、セラックの作用を見ると、本願発明では、「う蝕原性菌には有意な付着阻害効果を示さなかった。」(段落【0030】)、「う蝕性原菌 Mutans streptococciには著明な効果を示さなかった。」(段落【0035】)と述べつつも、「歯の表面がセラックにより被覆されることにより滑らかになる為、細菌繁殖の素になる食べかすの付着を防ぎ、更に細菌そのものの付着も防止することができる。」(段落【0036】)と記載され、先願発明の「歯の表面がセラックにより被覆されることにより滑らかになる為、細菌の繁殖の素になる食べかすの付着を防ぎ、更に細菌そのものの付着も防止することができるものと考えられる。」(段落【0009】)と同様の記載がされている。

そうすると、上記相違点2は、先願発明の「細菌」を、単に口腔細菌として周知な「歯周病原性細菌」に限定するものであって、上記のとおり本願発明と先願発明の付着防止剤(歯磨き剤)が、組成や使用態様で一致し、共に歯表面へのセラックの被覆によって口腔内の細菌の付着を防止していることからすれば、先願発明においても、う蝕原性菌のみならず歯周病原性細菌に対する付着防止効果を奏しているものと認められ、これを相違点2に基づく新たな効果と解することはできない。

したがって、上記相違点2として挙げた構成上の差異を実質的な相違点とすることはできない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は先願発明と同一であるので、特許法第39条第1項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-29 
結審通知日 2007-09-04 
審決日 2007-09-25 
出願番号 特願平9-286229
審決分類 P 1 8・ 4- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大宅 郁治  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
福井 悟
発明の名称 歯周病原性細菌の付着防止剤  
代理人 廣田 浩一  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 流 良広  
代理人 廣田 浩一  

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