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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200521087 | 審決 | 特許 |
不服20074192 | 審決 | 特許 |
不服200732597 | 審決 | 特許 |
不服200511870 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1167312 |
審判番号 | 不服2004-22739 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-11-04 |
確定日 | 2007-11-08 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第160861号「ケトン体尿中排泄促進剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月30日出願公開、特開平 8- 26988〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年7月13日の出願であって、平成16年9月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年11月4日に審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年9月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「不飽和脂肪酸基が全脂肪酸基の80重量%以上である炭素数14?22の脂肪酸とグリセリンとのジエステルを有効成分とするケトン体尿中排泄促進剤」 3.引用例の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平4-300826号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。 [イ]「【請求項1】ジグリセリドを有効成分とする体重増加抑制剤。」 (特許請求の範囲の請求項1) [ロ]「本発明は、体重増加抑制剤に関し、更に詳細には脂質の過剰摂取による肥満を防止し、体重の増加を抑制する薬剤に関する。」(第2頁【0001】) [ハ]「本発明の体重増加抑制剤に用いられるジグリセリドとしては、例えば次の一般式(1)・・・[式中、R1、R2及びR3のうち2個は炭素数12?22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸由来のアシル基を示し、残余は水素原子を示す]で表されるジグリセリドから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。かかる飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸としては、・・・等が挙げられる。より好ましくは、炭素数16?20の不飽和脂肪酸由来のアシル基を有するジグリセリドである。・・・かかるジグリセリドの製造法は、・・・エステル交換反応の具体例を挙げれば、リノール酸高含有トリグリセリド100部とリノレン酸高含有トリグリセリド100部との混合物に精製グリセリン30?100部・・・を配合し、触媒としてCa(OH)2を0.2部添加し、・・・ランダムエステル交換反応を行う。・・・蒸留残さ物として濃度85%のジグリセリドを得る。」(第2頁【0006】?【0009】) [ニ]「本発明の体重増加抑制剤は、経口、非経口の何れの方法によっても投与することができ、・・・投与量は通常成人においてジグリセリドとして1日1g?70gであるが、年齢、症状等により増減することができる。なお、好ましい投与形態は通常の食事への添加であり、食事成分中の脂質50重量%以上をジグリセリドに置き換えるのが好ましい。」(第3頁【0012】?【0013】) [ホ]「ジグリセリドの製造:なたね油(ヨウ素価168)375gにグリセリン125gを配合し、全系に対して0.1重量%の水酸化カルシウムを添加して、・・・ランダムエステル交換反応を行った。・・・本発明に適するジグリセリドを含有する反応生成物を165g得た。」(第3頁【0015】) 第3頁、表1には、反応生成物のグリセリドの脂肪酸組成が記載されており、不飽和脂肪酸は、炭素数18・二重結合数1のものが49%、炭素数18・二重結合数2のものが29%、炭素数18・二重結合数3のものが10%含まれていることが示されている。第3頁、表2には、反応生成物の含有分子種として、モノグリセリドが2%、ジグリセリドが79%、トリグリセリドが15%含まれていることが示されている。 [ヘ]「実施例1 表3の組成の食餌を雄性ddYマウスに100日間投与し、体重変動を追跡した。・・・表4より、ジグリセリド食群に比べ、飼料は多く摂取しているにもかかわらず、体重は低下しており、ジグリセリドに体重増加抑制作用があることが明らかとなった。」(第4頁【0018】?【0022】) 4.対比・判断 i)刊行物には、ジグリセリドを有効成分とする体重増加抑制剤(以下、「引用例発明」という。)が記載(前記[イ][ロ][ヘ])されている。引用例発明の有効成分であるジグリセリドは、炭素数12?22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸由来の2個のアシル基を有しており、より好ましくは、炭素数16?20の不飽和脂肪酸由来のアシル基を有するもの(前記[ハ])である。そして、実施例1の体重変動の実験に使用されているジグリセリドは、なたね油とグリセリンとをエステル交換反応して製造されたものであって、該反応生成物の脂肪中にジグリセリドを79%含むものであり、その脂肪酸組成は、炭素数18の不飽和脂肪酸を88%(49%+29%+10%)含むものである(前記[ホ])。他方、本願発明の有効成分であるジエステルは、不飽和脂肪酸基が全脂肪酸基の80重量%以上である炭素数14?22の脂肪酸とグリセリンとのジエステルであって、該ジエステルは、ジグリセリド単独であってもよいが、モノグリセリドあるいはトリグリセリドとの混合物であってもよく、ただし、その場合には全グリセリド中の50重量%以上がジグリセリドであることが望ましい旨、本願明細書に記載(段落【0008】)されている。 ii)そこで、本願発明と引用例発明とを対比するところ、刊行物発明の有効成分である、ジグリセリドは、本願発明の有効成分である「不飽和脂肪酸基が全脂肪酸基の80重量%以上である炭素数14?22の脂肪酸とグリセリンとのジエステル」を含むものと認められるから、本願発明と引用例発明とは「不飽和脂肪酸基が全脂肪酸基の80重量%以上である炭素数14?22の脂肪酸とグリセリンとのジエステルを有効成分とする薬剤」である点で一致し、前者がケトン体尿中排泄促進剤であるのに対し、後者が体重増加抑制剤である点で相違する。 iii)以下、この相違点について検討する。 本願明細書には、以下の記載がある。 [A]「本発明者らは脂肪の摂取と尿中ケトン体排泄量との関係について種々検討した結果、意外にもジグリセリドがトリグリセリドに比べて脂肪の体内蓄積性を減じ、尿中へのケトン体排泄を促進する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。」(段落【0005】) [B]「本発明のケトン体尿中排泄促進剤は経口投与することができ、・・・投与量は通常成人においてジグリセリドとして1日1g?70gであるが、年齢、症状等により増減することができる。また、本発明においては、通常の食事成分、栄養剤中のトリグリセリドをジグリセリドに置き換えることによっても投与することができる。」(段落【0012】?【0013】) [C]「表5?表8より、運動負荷しないラットにおいては、血中のケトン体量には差は認められなかったものの、尿中へのケトン体排泄量は、ジグリセリド食で高値を示した。このことは、ジグリセリドが食餌又は体脂肪由来の脂肪酸をケトン体に変え、尿中へ排泄し、脂肪の体蓄積を抑制していることを示す。運動を負荷したラットにおいては、尿中のケトン体は、トリグリセリド群に比較して低値を示した。一方、血中ケトン体はジグリセリド食群及びトリグリセリド食群とも、運動前に比較して運動後に上昇し、その値は両食餌群で差は認められなかった。このことは、ジグリセリドが体内の脂肪を運動時のエネルギー源として利用し、尿中へのケトン体排泄が低下したものと考えられる。すなわち、運動時においてもジグリセリドは体内への脂肪酸を利用して体内への蓄積を抑制している。」(段落【0035】) [D]「本発明の薬剤を投与すれば、TCAサイクル及び糖代謝を促進させ、ケトン体に正常な尿中への排泄を促進させることができる。従って、肥満防止、痛風防止等に有用である。」(段落【0039】) すなわち、本願明細書には、本願発明のケトン体尿中排泄促進剤が、脂肪の体内蓄積性を減じ、尿中へのケトン体排泄を促進する作用を有するものであることが記載され(前記[A])、このことは、実施例1の試験によって、運動負荷しないラットでは、ジグリセリドが食餌又は体脂肪由来の脂肪酸をケトン体に変え、尿中へ排泄して高値を示したこと、また、運動負荷したラットでは、尿中へのケトン体排泄は低下したが、これはジグリセリドが体内の脂肪を運動時のエネルギー源として利用し、運動時においても脂肪酸の体内への蓄積を抑制していることによる考えられること(前記[C])によって裏付けられている。その結果、本願発明は、肥満防止に有用である(前記[D])。 そうすると、本願発明のケトン体尿中排泄促進剤は、ケトン体の尿中への排泄を促進するという生理作用の結果として、脂肪の体内蓄積を抑制し、肥満を防止するという効果を生じるところ、肥満防止は、体重の増加を抑制することと、実質的に同じ生理作用の結果を異なる表現によって示したのもと認められるから、結局、本願発明のケトン体尿中排泄促進剤は、「体重増加抑制剤」としての態様を含むものと認められる。また、本願発明と引用例発明の、投与方法及び投与量においても差違は見出せない(前記[ニ][B])。 したがって、本願発明と引用例発明の相違点に係る構成は、両者における実質的な相違点とはならないから、本願発明は、引用例発明と実質的に同一と認める。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-28 |
結審通知日 | 2007-09-04 |
審決日 | 2007-09-25 |
出願番号 | 特願平6-160861 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 幸司 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
谷口 博 弘實 謙二 |
発明の名称 | ケトン体尿中排泄促進剤 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 山本 博人 |