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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1167326
審判番号 不服2005-2464  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-10 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 平成10年特許願第362945号「学習用文書編集装置、学習用文書編集プログラム並びに学習用文書編集プログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-187657〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月21日の出願であって、平成16年2月17日付けの拒絶理由通知に対して同年4月21日付けで手続補正がなされたが、同年12月28日付けで拒絶査定(平成17年1月11日発送)がなされ、これに対し、平成17年2月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年2月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成17年2月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲は、次の通りである。
なお、下線は、補正箇所を示すものとして、補正書に表記されたものを援用した。
「【請求項1】 情報供給元からコンピュータネットワークを介して情報供給先に供給されるマークアップ言語で記述された情報を参照者の学習レベルに基づいて編集する学習用文書編集装置において、
漢字毎に習得すべき学年を設定した学年別漢字辞書と、
前記情報に含まれる漢字のうち前記参照者が習得していない漢字を前記学年別漢字辞書に基づいて検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された漢字を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加し、前記振り仮名を振る行に振り仮名を振る振り仮名付加手段と
を有することを特徴とする学習用文書編集装置。
【請求項2】 請求項1記載の学習用文書編集装置において、
前記学年別漢字辞書、検出手段、振り仮名付加手段は、参照者の操作する端末装置に設けられることを特徴とする学習用文書編集装置。
【請求項3】 請求項1又は2記載の学習用文書編集装置において、
前記振り仮名付加手段は、前記検出手段により検出された漢字が連続する漢字の一部であるときに、その連続する漢字全体に振り仮名を振る判断手段を有することを特徴とする学習用文書編集装置。
【請求項4】 請求項3記載の学習用文書編集装置において、
前記振り仮名付加手段は、振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の先頭位置から次の振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の先頭位置までの幅を算出する幅算出手段と、
前記振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の振り仮名幅を算出する振り仮名幅算出手段と、
前記幅算出手段より算出された幅と振り仮名幅算出手段より算出された振り仮名幅とを比較して、前記振り仮名幅が大きいときに前記振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の後ろに空白を挿入することで、前記幅算出手段より算出された幅と振り仮名幅算出手段より算出された振り仮名幅とを同一に編集する編集手段とを有することを特徴とする学習用文書編集装置。
【請求項5】 請求項4記載の学習用文書編集装置において、
前記振り仮名を振る漢字又は連続する漢字を表示するときに、視覚的に強調表示する強調表示手段を有することを特徴とする学習用文書編集装置。
【請求項6】 請求項5記載の学習用文書編集装置において、
前記振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の意味を解説する解説ページへのハイパーリンクを利用して前記振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の意味を必要に応じて出力する出力手段を有することを特徴とする学習用文書編集装置。
【請求項7】 請求項6記載の学習用文書編集装置は、ホームページの編集を行なうことを特徴とする学習用文書編集装置。
【請求項8】 情報供給元からコンピュータネットワークを介して情報供給先に供給されるマークアップ言語で記述された情報を参照者の学習レベルに基づいて編集するコンピュータを、
漢字毎に習得すべき学年を設定した学年別漢字辞書と、
前記情報に含まれる漢字のうち前記参照者が習得していない漢字を前記学年別漢字辞書に基づいて検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された漢字、及びその漢字が連続する漢字の一部であるときはその連続する漢字全体を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加し、前記振り仮名を振る行に振り仮名を振る振り仮名付加手段
として機能させるための学習用文書編集プログラム。
【請求項9】 情報供給元からコンピュータネットワークを介して情報供給先に供給されるマークアップ言語で記述された情報を参照者の学習レベルに基づいて編集するコンピュータを、
漢字毎に習得すべき学年を設定した学年別漢字辞書と、
前記情報に含まれる漢字のうち前記参照者が習得していない漢字を前記学年別漢字辞書に基づいて検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された漢字、及びその漢字が連続する漢字の一部であるときはその連続する漢字全体を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加し、前記振り仮名を振る行に振り仮名を振る振り仮名付加手段
として機能させるための学習用文書編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

上記補正は、補正前の請求項1の発明特定事項である「ネットワークを介して情報供給先に供給される情報」に対して、情報が「マークアップ言語で記述された」との技術的限定を、そして「検出された漢字に振り仮名を振る振り仮名付加手段」に対して、「検出された漢字を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加する」との技術的限定を付加するものであり、また、補正前の請求項4の発明特定事項である「編集手段」に対して、「前記振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の後ろに空白を挿入することで、」という技術的限定を付加し、さらに、補正前の請求項6の発明特定事項である「出力手段」に対して、「前記振り仮名を振る漢字又は連続する漢字の意味を解説する解説ページへのハイパーリンクを利用して」という技術的限定を付加し、さらにまた、補正前の請求項8を削除し、補正前の請求項9および請求項10をそれぞれ請求項8および請求項9に繰り上げるとともにそれぞれの請求項の発明特定事項である「連続する漢字全体に振り仮名を振る振り仮名付加手段」に対して、「漢字全体を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加し、前記振り仮名を振る行に振り仮名を振る」という技術的限定を付加する等のものである。
したがって、平成17年2月10日付けの手続補正により補正された請求項1ないし9については、特許法第17条の2第4項第1号ないし第3号にそれぞれ掲げる請求項の削除、特許請求の範囲の限縮及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開平5-257925号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】新聞記事情報を、コンピュータを利用して編集し、出力する電子新聞編集システムにおいて、少なくとも知識レベルを含む読者のレベルに対応して、上記新聞記事情報の文字編集を行ない、出力する文字編集手段を設けることを特徴とする読者レベル適応型電子新聞編集システム。
【請求項2】請求項1に記載の読者レベル適応型電子新聞編集システムにおいて、上記文字編集手段は、各読者を、少なくとも読字能力と知識レベルを含む任意に定めた読者レベル別に分類して登録する読者レベル登録処理手段と、該読者レベル登録処理手段で用いる各読者レベルに対応して、上記新聞記事情報の文字編集を行なうレベル別文字編集処理手段と、該レベル別文字編集処理手段で文字編集した上記新聞記事情報を、上記各読者レベル別に格納するレベル別新聞記事格納処理手段と、読者の新聞記事情報の出力依頼に基づき、該レベル別新聞記事情報格納処理手段から、該出力を依頼した読者に対応する読者レベルの新聞記事情報を出力する配送処理手段とを具備することを特徴とする読者レベル適応型電子新聞編集システム。
【請求項3】請求項2に記載の読者レベル適応型電子新聞編集システムにおいて、上記読者レベル登録処理手段は、少なくとも上記読者の年齢と学歴、および、職種を含む読者情報に基づき、該読者の上記読者レベルを決める読者情報レベル変換処理手段を具備することを特徴とする読者レベル適応型電子新聞編集システム。
【請求項4】請求項2、もしくは、請求項3のいずれかに記載の読者レベル適応型電子新聞編集システムにおいて、上記レベル別文字編集処理手段は、上記読者レベル登録処理手段で用いる各読者レベルに対応して、少なくとも、上記新聞記事情報の振り仮名および解説の付与を行なう知識変換処理手段と、上記新聞記事情報の新旧表記および文字サイズの選択を行なう文字変換処理手段とを具備することを特徴とする読者レベル適応型電子新聞編集システム。」

(イ)「【0004】
図15は、従来の電子新聞編集システムの説明図である。本図の電子新聞編集システムでは、読者が、端末を介して、センタにアクセスすることができる。すなわち、テキスト通信処理装置154は、即時接続により、データベース装置153に接続され、端末156、157は、テキスト通信処理装置154に接続されている。また、データベース装置153には、新聞記事情報151が、新聞編集装置152で編集されて格納されている。そして、読者は、端末156、157を用いて、テキスト通信処理装置154を介して、データベース装置153に格納されている新聞記事情報を、例えば、電子掲示板155で取得することができる。」

(ウ)「【0010】
【作用】
本発明においては、個々の読者の年齢や知識レベルなどからなる読者のレベルに対応して、新聞記事情報の文字の編集を行なう。例えば、読者が、生年月日や分野別専門度などを、読者情報として入力すれば、読書レベル登録処理部などにより、この生年月日や分野別専門度などに基づき、読者を、一般知識レベルや専門知識レベル、または、文字の新旧表記の習得レベルや文字サイズレベルなどからなる読者レベルに分類して登録する。また、電子的に処理されて入力された新聞記事情報を、レベル別文字編集処理部により、読者レベルに応じて、用語知識単位に読者の持つ知識への変換や、振り仮名や解説の付与、さらに、読者の習得した新旧文字への変換、および、読者にとって適当な文字サイズへの文字の変換などを行ない、読者レベルに適応した新聞記事情報に文字編集する。そして、このレベル別文字編集処理部で各読者レベル毎に編集した新聞記事情報を、レベル別新聞記事格納処理部で、各読者レベル別に格納する。さらに、配送処理部により、例えば、読者のファクシミリ端末など、読者の指定する出力形態で、読者レベルに合った新聞記事情報を提供する。
このように、読者レベルに適応した新聞記事の編集が可能であり、それぞれの読者は、最適なレベルの新聞記事情報を得ることができる。」

(エ)「【0016】
このような構成により、レベル別文字編集処理部6は、新聞記事情報を、読者レベル別に文字編集する。すなわち、新聞記事読者レベル入力処理部32は、新聞記事収集入力処理部31を介して、電子的に処理された新聞記事情報を受け取ると、図2における読書情報登録部28の登録に用いている各読者レベルと対応付けて、知識変換処理部33に送出する。
知識変換処理部33は、受け取った新聞記事情報に対し、知識変換用情報登録部34と辞書登録部35を参照して、振り仮名や解説の付与など、各読者レベルの特に知識レベルに対応する文字の変換を行ない、その結果の新聞記事情報を、文字変換処理部36に送出する。文字変換処理部36は、受け取った新聞記事情報に対し、文字変換用情報登録部37を参照して、読者レベルの特に年齢などに対応して、文字サイズを大きくするなどの文字変換を行なう。
そして、読者レベル適応型新聞記事出力処理部38は、その結果の新聞記事情報を、図1および次の図4に示すレベル別新聞記事格納処理部7に送出する。
【0017】図4は、図1の文字編集装置におけるレベル別新聞記事格納処理部と配送処理部に係わる構成の一実施例を示すブロック図である。本実施例においては、レベル別新聞記事格納処理部7は、図3におけるレベル別文字編集処理部6で各読者レベル別に文字編集した新聞記事情報を、各読者レベル別に格納する。そして、配送処理部8は、レベル別新聞記事格納処理部7に格納された新聞記事情報を、図2に示す読者情報登録部28を参照して、その配送条件に従い、読者のメールボックス41、あるいは、ファクシミリ端末44に配送する。 また、読者は、端末43a?43bにより、予め、読者レベル毎に管理されている電子掲示板42にアクセスし、読者のレベルに適応した新聞記事情報(電子掲示板情報)を、必要な時に取得することができる。」

(オ)「【0031】
(中略)まず、形態素解析により抽出した処理対象の用語に対し、図10の一般知識レベル対応用語群管理表101と分野j専門知識レベル対応用語群管理表103を参照して、この用語が、レベルL以下の用語に含まれるか否かを判断(ステップ111)する。ここで、レベルL以下の用語とは、読者レベルL以下の読者レベルに対応する用語のことを言う。もし、処理対象の用語が、レベルL以下の用語に含まれていれば、形態素解析により抽出された全ての用語に対し、処理が終了したか否かを判断する(ステップ113)。また、処理対象の用語が、レベルL以下の用語に含まれていない場合には、レベルLe以下の用語に含まれるかどうかの判断を行なう(ステップ112)。もし、ここで、処理対象の用語が、レベルLe以下の用語に含まれていない場合には、用語変換/用語解説、振り仮名処理は行なわずに、ステップ113に進み、また、含まれている場合には、ステップ114に進み、以下の処理を行なう。」

(カ)「【0032】
まず、図10における一般知識レベル対応用語群管理表101と分野j専門知識レベル対応用語群管理表103を参照して、その用語の変換可能な用語(同義語、変換可能な類義語)が、レベルL以下の用語であるかどうかの判断を行なう(ステップ114)。もし、レベルL以下の用語に変換可能であれば、レベルL以下の用語に変換する用語変換処理を行ない(ステップ115)、ステップ113に進む。また、レベルL以下の用語に変換が不可能であれば、その用語が、図10における一般知識辞書102、および、分野専門知識辞書104にあるか否かの判断を行ない(ステップ116)、ある場合には、その用語に対する振り仮名の付与や、用語の解説の付与などの処理を行なう(ステップ117)。」

(キ)「【0036】
以上、図1?図13を用いて説明したように、本実施例の読者レベル適応型電子新聞編集システムでは、個々の読者の年齢や知識レベルなどからなる読者レベルに対応して、振り仮名や解説文の付与や、文字の新旧表記および文字サイズの変換など、新聞記事情報の文字の編集を行なう。このことにより、それぞれの読者は、最適なレベルの新聞記事情報を得ることができる。」

以上、(ア)ないし(キ)の記載、及び図面を総合すると、引用例には、
「新聞記事情報を、コンピュータを利用して編集し、読者のメールボックス、ファクシミリ等に出力する電子新聞編集システムにおいて、新聞記事中の用語に対し、年齢や学歴に基づく読者レベルに応じた対応用語群を用語毎に記憶した一般および専門知識レベル対応用語群管理表を参照して、読者レベルL以下の変換可能な用語があるかの判断を行い、レベルL以下の用語に変換が不可能であれば、一般知識辞書に用語があるか否かの判断を行い、ある場合には、その用語に対して振り仮名を振ることで、読者の年齢によって決まる読者レベルに応じて新聞記事情報を編集する文字編集装置を備えた電子新聞編集システム」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「読者」は、本願補正発明の「参照者」に相当し、引用発明の「用語」は、語ないし語句を含むのであるから、「語」という意味において本願補正発明の「漢字」に対応するものであり、引用発明の「新聞記事情報」は、「電子的な情報」であるから、「電子的な情報」である点で本願補正発明の「情報」に対応する。
そして、引用発明の「読者レベル」は、「年齢や学歴、知識レベル」の意味であり、本願補正発明の「学習レベル」は、「特定の漢字の知識を習得している学年」の意味であるから、「知識レベル」という意味において、両者は対応している。
また、引用発明の「文字編集装置」は、「文書を編集する装置」という意味で、本願補正発明の「学習用文書編集装置」に対応する。
さらに、引用発明の「一般および専門知識レベル対応用語群管理表」は、「読者の知識レベルに応じて設定された辞書」であるという意味においては本願補正発明の「学年別漢字辞書」に対応する。
さらにまた、引用発明の「新聞記事中の用語に対し、読者レベルに応じた対応用語群を記憶した一般および専門知識レベル対応用語群管理表を参照して、読者レベルL以下の変換可能な用語があるかの判断を行い、レベルL以下の用語に変換が不可能であれば、一般知識辞書にあるか否かの判断を行い、ある場合には、その用語に対して振り仮名を振る」ということは、読者の知識レベルに応じて新聞記事中の用語を別の用語に変換する辞書を備え、記事情報に含まれる用語のうち読者の知識レベルより大きなレベルの用語を前記辞書に基づいて検出し、この検出された用語に振り仮名を振るということであり、引用発明の「読者」、「読者レベル」、「用語」、「一般および専門知識レベル対応用語群管理表」と、前記したような、本願補正発明の「参照者」、「学習レベル」、「漢字」、「学年別漢字辞書」との対応関係からすれば、上記事項は、本願補正発明において「参照者の知識レベルに応じて設定された辞書と、情報に含まれる単語のうち参照者の知識レベルより大きい単語を前記辞書に基づいて検出する検出手段と、前記検出手段により検出された単語に振り仮名を振る振り仮名付加手段」を備えることに対応しているといえる。

したがって、両者は、
「電子的な情報を参照者の知識レベルに基づいて編集する文書編集装置において、語毎に参照者の知識レベルに応じて設定された辞書と、情報に含まれる語のうち前記参照者の知識レベルより大きい語を前記辞書に基づいて検出する検出手段と、前記検出手段により検出された語に振り仮名を振る振り仮名付加手段を有する文書編集装置」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>本願補正発明は、情報供給元からコンピュータネットワークを介して情報供給先に供給された情報に対して供給先で編集を行っているのに対し、引用発明では、情報供給元で編集を行い、それを供給先に供給するものである点。
<相違点2>本願補正発明の「情報」がマークアップ言語で記述されたものであるのに対し、引用発明の「情報」がどのような言語で記述されているかが不明な点。
<相違点3>本願補正発明が、学習用途であるのに対し、引用発明は学習用途ではない点。
<相違点4>本願補正発明の学年別漢字辞書は、習得すべき学年を設定した漢字辞書であり、しかもその辞書は漢字毎に整理されているのに対し、引用発明の辞書は、学年を設定した辞書ではなく、またその辞書は用語毎に整理されたものである点。
<相違点5>本願補正発明においては、検出手段により検出された漢字を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加し、前記振り仮名を振る行に振り仮名を振るのに対して、引用発明には振り仮名を振る具体的方法が明記されていない点。
<相違点6>本願補正発明は、参照者のレベルよりもレベルの大きな情報があると、直ちに振り仮名を振るのに対して、引用発明においては、一旦、レベルの低い用語に変換できるかどうかを試みてから、それが無理であった場合にのみ振り仮名を振る点。

(4)判断
<相違点1>について
引用例に、前提となる従来技術として、端末を介してセンタにアクセスする電子掲示板などのテキスト通信処理装置が記載され、センタから編集システムに情報を送信し、端末を用いてその情報を取得することが記載されていることからわかるように、情報処理技術の分野において、コンピュータネットワークを介して情報を取得することは常套手段である。
そして、情報供給先もしくは供給元のどちら側に情報の編集機能を設けるかは当業者が状況に応じて適宜選択すべき設計的事項にすぎないから、引用発明において、コンピュータネットワークを介して取得した情報を供給先で編集するように換えることは当業者が容易になし得たものと認められる。
<相違点2>について
情報処理技術の分野において、情報の記述にマークアップ言語を使用することは常套手段であるので、引用発明の情報をマークアップ言語で記述するように構成することは当業者が容易になし得る程度のものにすぎない。
なお、審判請求人は請求書で、コンピュータネットワークを介して供給された情報がマークアップ言語で記述されているため、本願発明では漢字を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加する処理や、振り仮名を振る処理が極めて容易になる旨主張しているが、請求人の主張する効果は、情報をマークアップ言語で記述したことによる当然の効果にすぎず、本願補正発明の容易性を左右するものではない。
<相違点3>について
「学習用途」とは文字通り単なる用途・目的であって、本願補正発明の学習用文書編集装置と引用発明の文書編集装置との間に、物の発明としての実質的な相違は認められない。
なお、仮に用途に意味があるものとしても、引用発明の文書編集装置を学習用に用いることに格別の困難性は認められない。
<相違点4>について
引用発明の「読者レベルに応じた辞書」とは、ある用語の意味や読みの知識があるか否かを、年齢や学歴からレベルわけして設定した辞書であるから、レベルわけの基準として学年を採用し、読者レベルで設定した辞書を学年で設定した辞書にする程度のことは当業者が容易に想到し得るものと認められる。
そして、引用発明の「用語」についても、振り仮名を振る対象となるものであり、当然漢字も意識していることは明らかであるから、用語毎に整理された辞書を漢字毎に整理された辞書とすることは適宜なし得るものと認められる。
<相違点5>について
文字行の上段に振り仮名を振る行を設けることは周知・慣用技術である(例えば、特開平4-7661号公報、特開平7-56910号公報、特開平6-187331号公報を参照されたい。)。
したがって、引用発明に前記周知・慣用技術を適用して、文字行の上段に振り仮名を振る行を付加し、振り仮名を振る行に振り仮名を振るように構成することは、当業者が容易になし得たものと認められる。
<相違点6>について
2.(2)の(ア)ないし(キ)に記載されているとおり、引用発明はそもそも読者のレベルに応じて読み仮名を振ることを意図したものであるから、引用発明において参照者のレベルよりもレベルの大きな情報があった場合に、情報の変換を試みずに、すぐに振り仮名を振るように構成することは当業者が適宜なし得る程度のものにすぎない。

さらに、本願補正発明の作用効果を勘案しても、本願補正発明に格別の点を認めることができない。

(5)本願補正発明についてのまとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年2月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年4月21日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、これを「本願発明」という。)。

「情報供給元からコンピュータネットワークを介して情報供給先に供給された情報を参照者の学習レベルに基づいて編集する学習用文書編集装置において、
漢字毎に習得すべき学年を設定した学年別漢字辞書と、
前記情報に含まれる漢字のうち前記参照者が習得していない漢字を前記学年別漢字辞書に基づいて検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された漢字に振り仮名を振る振り仮名付加手段とを有することを特徴とする学習用文書編集装置。」

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された事項は、前記「2.(2)」に摘記したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、請求項1の「情報」について、「マークアップ言語で記述された」との技術的限定を削除し、同じく請求項1の漢字に振り仮名を振る「振り仮名付加手段」について、漢字「を含む行の上段に振り仮名を振る行を付加し、前記振り仮名を振る行」という技術的限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)および2.(5)に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上の通りであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2007-09-10 
結審通知日 2007-09-11 
審決日 2007-09-25 
出願番号 特願平10-362945
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 手島 聖治
野崎 大進
発明の名称 学習用文書編集装置、学習用文書編集プログラム並びに学習用文書編集プログラムを記録した記録媒体  
代理人 伊東 忠彦  

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